10 この案内について — Epoché
この案内の組み立てと読む順 この案内は 10 の文書でできています。どれから読んでも困らないように書いてあります。ここでは全体の並びを示します。読者ごとの順路は 哲学は何を問うのか の「この案内の読み方」にあります。 文書 役割 哲学は何を問うのか 具体的な問いから入り、隣の学問との境界と、よくある誤解を扱う 問題の地図 — 哲学は何を論じてきたか 9 つの問題領域を、何が問題になり、どう答えられ、今どう読まれているかで並べる 地図 1 古代 — 世界のあちこちで問いが立った 古代。ギリシア・中国・インドを同じ構えで並べる 地図 2 中世・近世 — 聖典・注釈・そして近代の入口 中世と近世。ラテン中世・イスラーム・インド・中国・日本 地図 3 カントとヘーゲル — 近代の転回 カントとヘーゲル。二人の問いと答え、主著にどの順で入るか 地図 4 近代・現代 — 分かれた道と、いま ヘーゲル以後と現代。分かれた道と、現在の研究 学び方の道筋 — 初学者から専門家まで 段階 0 から 4 までの学び方。大学の道と大学の外の道 本棚 — 段階別のおすすめ 段階ごとの本と、図書館で読める原典 道具箱 — 事典・講義・原典・学会 事典・無料の原典と講義・論文の探し方・学会・語学と、イスラーム哲学へ英語から入る道 この文書 使い方、偏りと限界、どこで線を引いたか、最終確認日と更新の記録 本文には 3 つの印があります。節の頭にある要点は、そこだけ読んでも節の核心が分かるように書いてあります。「さらに深く」と題した囲みは、段階 2 以上の読者に向けた話なので、読み飛ばしても本筋は通ります。「段階 2 以上」のような断りは、その記述がどの位置の読者に向いているかの目印です。 書籍カードには、書名・著者・出版社・刊行年と、段階と役割の札が付きます。表紙の画像と、書誌を確かめるためのリンクも一緒に出ます。 偏りと限界 この案内には、分かっている偏りがあります。ここには、実際に数えたことと、確かめられなかったことだけを書きます。印象で「足りている」「足りていない」とは書きません。 西洋中心になりやすい。 哲学史として流通している資料の多くが西洋の哲学を軸にしているため、そのまま書くと西洋の分量が大きくなります。対処として、地図を時代で 3 つに割り、それぞれの時代の中で西洋・中国・インド・イスラーム・日本を同じ節の構えで並べました。それでも、扱えていない伝統があります。アフリカとアフリカ系の哲学、ラテンアメリカの哲学、先住民の思想は、この案内に節を持ちません。このうちアフリカ系の哲学とラテンアメリカの哲学については、英語の事典にそれぞれ独立した項目が立っています [1][2] 。関心のある読者は、そこから入る道があります。 日本語で読める範囲に制約がある。 インドについては、京都大学文学部のインド古典学専修が、サンスクリットの研究業績の大半はドイツ語・フランス語・英語で書かれている、と書いています [3] 。イスラームとアフリカについては、この案内では同じ形の根拠を取れていません。いずれにせよ、この案内は日本語話者に向けて書いているので、段階 2 以降で英語の資料へ渡す箇所がいくつもあります。中国語や韓国語で読める資料の層については、今回は見ていません。 本棚に空いた枠がある。 本棚の書籍カードは 39 枚です(1 冊を 1 つの段階に置いています)。非西洋の伝統を扱う本はどれも概説か研究入門で、非西洋の原典の訳書は棚にありません。代わりに、図書館で読める『論語』『荘子』『老子・道徳経』へ段階 0 からつないでいます。日本語の入門書が少ないイスラーム哲学(ファルサファ)は、英語から入る道を 道具箱 — 事典・講義・原典・学会 に置きました。領域ごとの概論や、哲学に特化した論文の書き方の本の枠も、まだ空いています。 女性の哲学者が少ない。 第 2 版で、ボヘミアのエリザベト・ボーヴォワール・アーレントを地図に足しました。それでも、地図に名前の出る哲学者は男性が大半です。書き手(著者と訳者)の性別の内訳は、すべての本に同じ基準で当てられる典拠を決められないので、数えていません。数えていないことと、偏りが無いことは別です。日本哲学会の 2026 年の大会には、男女共同参画ワークショップと女性研究者支援の懇話会が置かれています [4] 。 大学の課程を根拠に使っている。 この案内の「学び方の道筋」は、日本の大学の課程の記述を主な根拠にしています。ただし、大学の学科の区切りは学問の区切りそのものではありません。京都大学文学部の中国哲学史専修は、西洋哲学の概念や類型に当てはめて事足れりとすることを戒めると書いています [3] 。事典の区切りは大学の専修の区切りとは違う形をしています [5] 。この案内は、大学の課程と事典の両方を見て組みました。 国外の課程とは比べていない。 今回、国外の大学の課程の資料は取得できませんでした。語学の階段も、科目の型の説明も、日本の大学の記述だけで組んでいます。国ごとの違いは、この案内では扱えていません。 本の選び方 本棚の本は、出所の違う根拠を 2 つ持つものから選びました。新刊や、代わりの無い解説書は、根拠 1 件で置いたものがあり、紹介文にそう書いています。1 冊ごとの根拠は、書誌の記録に URL と確認日つきで残しています。 根拠に数えたのは、大学のシラバス、大学図書館の読書案内、新聞や学会誌の書評(本文が読めるもの)、研究者の署名入りの読書案内です。同じ大学の別の科目は、出所 1 つと数えます。数えなかったのは、予備校や受験情報サイトの紹介 [6] 、署名の無い研究室のページ [7] 、そして著者本人が担当する科目のシラバスです [8][9] 。最後のものは、大学が採ったのではなく、著者が自著を挙げただけだからです。 根拠が 1 件の本は 5 冊です。新刊でまだ書評が出ていない本と、同じ役割を果たす本がほかに無い解説書です(たとえば『純粋理性批判』を原典の全節の順に読む日本語の本は 1 冊だけです)。どれも段階の「まずこの 1 冊」にはしていません。カントとヘーゲルの解説書は、評判に加えて目次と頁数で比べ、原典のどこをどの順に扱うかを見て選びました。 刊行から 20 年を超える本は、原則として選んでいません。用語や記法が現在の標準と離れると、学習の妨げになるからです。例外は 2 冊で、理由はその本の紹介文に書きました。 原典の訳は、いま入手できること、訳者がその分野の研究者であること、注と解説が学習を助けることの順で選びました。大学の資料が名指しする訳は、資料ごとに違います。 原典 本棚の訳 資料が挙げる訳の例 ソクラテスの弁明 納富信留訳 納富訳(東京大学の授業)、久保勉訳(大阪大学の案内) ニコマコス倫理学 渡辺邦夫・立花幸司訳 同じ訳(東京大学の授業)、加藤信朗訳(大阪大学の案内) 方法序説 山田弘明訳 谷川多佳子訳(大学の案内 3 件) 純粋理性批判 熊野純彦訳 大学院の演習はドイツ語の原典を読む 精神現象学 熊野純彦訳 長谷川宏訳(立教大学の演習) ツァラトゥストラ 丘沢静也訳 授業は訳を指定していない 論理哲学論考 丘沢静也訳 奥雅博訳、野矢茂樹訳(大学の資料による) そのため、訳を選んだ理由は、訳者の専門・刊行年・注の量・分冊かどうかという書誌の事実に限って書きました。どの訳が最も広く使われているかは書いていません。 どこで線を引いたか 境界に接する分野は、入口までを書いて、体系的な展開はそれぞれの案内に渡します。「扱わない」と書いた分野にも、地図に節がある場合があります。どこまでを書いてどこから先を渡したのか、一覧にします。 分野 この案内で読めるところ 倫理学の体系 「善とは何か」を問う領域として 問題の地図 — 哲学は何を論じてきたか に節があり、入口の本は 本棚 — 段階別のおすすめ にあります。各説の比較や応用の事例までは書いていません 論理学の技術的な展開 哲学に必要な道具として 学び方の道筋 — 初学者から専門家まで に置き、記号の入口までです。証明体系や計算の理論までは書いていません 科学哲学の各論 領域として 問題の地図 — 哲学は何を論じてきたか に節があり、いま活発であることが分かるところまでです 宗教学 宗教という現象を観察して記述する学です。哲学との違いは 哲学は何を問うのか にあります 神学 信仰の内側から教義を組み立てる学です。哲学との違いは 哲学は何を問うのか に一度だけ書いてあります 美学・美術史 「美とは何か」は 問題の地図 — 哲学は何を論じてきたか の領域として置いてあります。作品と様式の歴史までは書いていません 思想史 論証を追うのが哲学、思想が社会でどう働いたかを追うのが思想史です。この線引きは 哲学は何を問うのか にあります 心理学 日本十進分類法では 140 が哲学(100)の下に置かれ、図書館の書架では隣にあります [10] 。現在は別の学問で、「心の哲学」との違いは 哲学は何を問うのか にあります 人生論・自己啓発 この案内では扱っていません。ここで扱うのは論証と概念の検討です 最終確認日と、毎年見直すところ この案内が拠った資料は、初版の分を 2026 年 9 月 16 日に、第 2 版で足した分を 2026 年 10 月 10〜11 日に開いて確かめました。外部の資料は変わるので、少なくとも年に 1 度、決まった箇所を見直します。 とくに変わりやすいのは次の 6 つです。第 1 に、学会の大会の年と会場です。この案内に書いた大会の日付はすべて 2026 年のもので、毎年書き換わります [4] 。第 2 に、学会誌の収録本数です。 道具箱 — 事典・講義・原典・学会 に書いた本数は 2026 年 9 月 16 日の時点のもので、新しい号が載るたびに増えます。第 3 に、学会のサイトの所在です。公式サイトにたどり着けなくなることは現に起きるので、リンクの生死を確かめます。第 4 に、事典の項目の改訂日です。項目ごとに実質的な改訂の日付が変わります [11] 。第 5 に、大学の公開講義の置き場です。過去に移転した例があるので、移転先を確かめます [12] 。第 6 に、本棚の本の新刊・改訂・品切れです。新しい版が出ていれば、そちらに差し替えます。 誤りが見つかったときは、本文と、書誌をまとめた記録の両方を直します。片方だけだと、次に組み直したときに元に戻ってしまうからです。この案内は完成したものではなく、確かめ直しながら形を変えていくものだと考えています。 更新の記録 日付 直したこと 2026 年 9 月 16 日 初版 2026 年 10 月 11 日 第 2 版。地図「カントとヘーゲル」を足し、段階を組み直した(主著 2 冊は段階 3 へ、短い原典を段階 0 へ) 同 生没年・論争の相手など 16 か所を事典と典拠で直した(藤原惺窩・李栗谷・道元・四端七情・太極ほか) 同 実存主義・社会契約論・提唱者の名を補い、図書館で読める原典へのリンクを置いた 内容について「ここは違うのではないか」と思われた箇所があるかもしれません。根拠は各文書の参考文献に出してあるので、書いた側の判断はそのまま確かめ直せます。 参考文献 Outlaw Jr., Lucius T. "Africana Philosophy." Stanford Encyclopedia of Philosophy, 2010-10-11. https://plato.stanford.edu/entries/africana/ (accessed 2026-09-17). Gracia, Jorge and Vargas, Manuel. "Latin American Philosophy." Stanford Encyclopedia of Philosophy, 2013-08-14. https://plato.stanford.edu/entries/latin-american-philosophy/ (accessed 2026-09-17). 京都大学文学部「文学部専修案内」 https://ceschi.bun.kyoto-u.ac.jp/archive/bun_archive/wp-content/uploads/d41d9ce644e95b1044e1311af93204f7.pdf(2026-09-17閲覧) 日本哲学会「第85回大会(2026年度龍谷大会)」 https://philosophy-japan.org/conference/taikai2025-5/(2026-09-17閲覧) Stanford Encyclopedia of Philosophy. "Table of Contents". https://plato.stanford.edu/contents.html (accessed 2026-09-17). みらいぶっく「インド哲学10講」 https://miraibook.jp/book/book-detail/11370(2026-09-17閲覧) 九州大学「推薦図書」 https://www2.lit.kyushu-u.ac.jp/~philosophy/books.html(2026-09-17閲覧) 立教大学「哲学概論 1」 https://sy.rikkyo.ac.jp/web/preview.php?nendo=2026&kodo_2=AU325(2026-09-17閲覧) ZEN大学「統計学を哲学する」 https://syllabus.zen.ac.jp/subjects/2027/HUM-3-C1-1030-001(2026-09-17閲覧) 慶應義塾大学メディアセンター「日本十進分類法(NDC) 第2次区分表 (綱目表)」 https://www.lib.keio.ac.jp/mita/files/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8D%81%E9%80%B2%E5%88%86%E9%A1%9E%E8%A1%A8_%E7%AC%AC2%E6%AC%A1%E5%8C%BA%E5%88%86%E8%A1%A8.pdf(2026-09-17閲覧) Ichika