14.25 壺に話しかける — 答えない相手への問い — Epoché
この篇でできるようになること ★ 物に話しかける詩 (呼びかけ)の作りが分かる。 ★ 答えない問いを積む 運びが追える。 ★ 同じ語のくり返しで時を止める 手が見える。 ★ 引用符が誰の声を作るか を考えられる。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は どの篇から読んでもかまいません 。★ 前の篇を読んでいなくても通じるように書いてあります。 ★ これは 千八百二十年 の詩 です。★ 古代ギリシアの壺に 絵が描かれて いて 、★ その絵の中の人と物に 話しかける という詩です。★ 絵ですから 動きません ——★ そこがこの詩の要 です。 どちらのことか 確かめること ★ 文学のこと ★ この時代のイギリスで何が書かれていたか( 12.11 知編 ) ★ 考えのこと ★ 美と真理を並べる考え方の流れ( 12.16 知編 ) ★ 読む前に一つ。 ★ この詩の Thou は壺 です。★ 人ではありません 。★ thou は 親しい相手への二人称 ですから( 3.63 型編 )、★ 語り手は 壺を親しい相手として扱って います。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。★ 韻文なので 一行が一段落 です。本文は 377 語、行は 50 行( 5 連 × 10 行)、一行の語数は平均 7.5 語です。 ★ 数えられた 34 行のうち 32 行が 十音節 です。★ 14.21 英語の名文 や 8.195 読編 と 同じ拍 で、★ 14.24 英語の名文 の八音節より ゆったり しています。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 いまだ誰にも奪われていない、静けさの花嫁よ、 沈黙とゆるやかな時が育てた養い子よ、 森の歴史家よ、お前はこうして語ってみせる、 花に飾られた物語を、私たちの詩よりも甘やかに。 葉の縁取りをもつどんな伝説が、お前の姿のまわりにまつわっているのか。 神々の話か、人間の話か、それともその両方か。 テンペの谷でか、アルカディアの谷あいでか。 この男たちは、神々は誰なのか。いやがる乙女たちは誰なのか。 なんと狂おしい追いかけっこ。逃れようとするなんというもがき。 なんという笛と小太鼓。なんという荒々しい恍惚。 聞こえる節は甘い。だが聞こえない節は もっと甘い。だから、やさしい笛たちよ、吹き続けよ。 肉の耳に向けてではなく、もっといとおしく、 音の無い小唄を、魂に向けて吹け。 木の下の美しい若者よ、お前は去ることができない、 その歌から。そしてあの木々も、決して裸になることはない。 大胆な恋人よ、お前は決して、決して口づけできない、 あと少しで届きそうなのに――それでも、嘆くな。 彼女は色あせることがない。お前が至福を得られなくとも、 お前は永遠に愛し、彼女は永遠に美しいのだ。 ああ、幸せな、幸せな枝よ。お前たちは葉を落とすことも、 春に別れを告げることもない。 そして幸せな楽人よ、疲れることなく、 永遠に新しい歌を、永遠に吹き続ける。 もっと幸せな愛よ。もっと幸せな、幸せな愛よ。 永遠にあたたかく、いつまでもこれから味わわれるもの、 永遠に息をはずませ、永遠に若い。 息づく人間のあらゆる情熱をはるかに超えて。 人の情熱は、心を高く悲しませ、飽き足りさせ、 額を燃やし、舌を渇かせるのだ。 いけにえの場へやって来るこの人々は誰なのか。 どんな緑の祭壇へ、おお、神秘の祭司よ、 お前は、空に向かって鳴くあの若い雌牛を引いて行くのか、 絹のようなその脇腹を、すべて花輪で飾って。 川辺の、あるいは海辺のどんな小さな町が、 あるいは山の上に築かれ、穏やかな砦をもつどんな町が、 この敬虔な朝、この人々を送り出して空になったのか。 そして小さな町よ、お前の通りはいつまでも 静まりかえったままだろう。そして、お前がなぜさびれているのかを 告げるために戻ってくる者は、一人もいないだろう。 おおアッティカの形よ。美しい姿よ。大理石の男たちと乙女たちを、 一面に編み込むように彫り込み、 森の枝と踏みしだかれた草も添えて。 沈黙の形よ、お前は私たちをからかい、思考の外へ連れ出す、 永遠がそうするように。冷たい牧歌よ。 老いがこの世代を衰え滅ぼすときも、 お前は残るだろう、私たちのものとは別の嘆きのさなかに、 人間の友として。そしてお前は人に言うのだ、 「美は真、真は美」と――それが、 お前たちがこの世で知ることのすべてであり、知る必要のあるすべてなのだ。 語釈 帯の外の語は 71 語です。★ 三つに分かれます ——★ 壺の絵にある物 ( timbrels ・ garlands ・ heifer )、★ ギリシアの地名 ( Tempe ・ Arcady )、★ 古い二人称の動詞 ( canst ・ wilt ・ shalt )です。★ 三つめが多いのは、 ずっと壺に話しかけているから です。 語(品詞) 意味 注 Arcady en 名 アルカディア。牧歌の舞台とされる地 Attic en 形 アテナイの Attic vases from ancient Greece often show scenes of daily life. 古代ギリシアのアテナイの壺は、日々の暮らしの場面をよく描いています。 Lead'st en 動 lead の古い二人称の形 Lead'st thou the weary travelers safely through this dark forest? あなたは、疲れた旅人たちをこの暗い森を通って無事に導きますか。 Pastoral en 名 牧歌。羊飼いの世界を歌う詩 The old poet wrote a pastoral about shepherds and quiet fields. その老いた詩人は羊飼いと静かな畑についての牧歌を書きました。 Sylvan en 形 森の A sylvan path wound gently between the tall, quiet pines. 森の小道は高くて静かな松の間をゆるやかに曲がっていました。 Tempe en 名 テンペ。ギリシアの美しい谷の名 Thou en 代 あなたは。 you の古い形 Thou shalt find comfort here whenever the world feels heavy. 世界が重く感じられるとき、あなたはいつもここで慰めを見つけます。 Thy en 代 あなたの。 your の古い形 Guard thy words carefully before speaking to the frightened child. 怖がっている子どもに話す前に、あなたの言葉を丁寧に選びなさい。 Ye en 代 あなたたちは。 you の古い複数 Ye who seek shelter may rest safely within these old walls. 宿を求めるあなたたちは、この古い壁の中で安全に休んでかまいません。 adieu en 間 さらば She waved a quiet adieu before boarding the evening train. 彼女は夕方の列車に乗る前に、静かにさらばと手を振りました。 ah en 間 ああ Ah, the garden looks even lovelier after this morning's rain. ああ、この朝の雨の後、庭はいっそう美しく見えます。 altar en 名 祭壇 Fresh flowers were placed carefully upon the small stone altar. 新鮮な花が、小さな石の祭壇の上に丁寧に置かれました。 bare en 形 むき出しの The bare branches stood black against the pale winter sky. むき出しの枝が、淡い冬の空に黒く浮かんでいました。 bliss en 名 至福 The quiet garden gave her a rare afternoon of bliss. 静かな庭は彼女に珍しい至福の午後を与えました。 boughs en 名 大枝(複数) Snow bent the heavy boughs of the old pine tree. 雪がその古い松の重い大枝をたわめました。 brede en 名 浮き彫りの模様 A delicate brede of vines circled the edge of the vase. つるの繊細な浮き彫りの模様が壺の縁を巡っていました。 bride en 名 花嫁 The young bride wore her mother's old lace veil. その若い花嫁は母親の古いレースのベールをつけました。 canst en 動 can の古い二人称の形 Canst thou finish this letter before the ship departs tonight? 今夜船が出る前に、あなたはこの手紙を書き終えられますか。 citadel en 名 城塞 Soldiers guarded every gate of the ancient hilltop citadel. 兵士たちはその古代の丘の上の城塞のすべての門を守っていました。 cloy'd en 形 飽き飽きした dales en 名 谷(複数) Sheep grazed peacefully across the green dales below the hills. 丘の下の緑の谷々を、羊たちが穏やかに草を食んでいました。 deities en 名 神々 The old temple honored several deities of the sea and sky. その古い神殿は海と空のいくつかの神々をまつっていました。 desolate en 形 人けのない The desolate coastline had not seen a ship in years. その人けのない海岸には、何年も船が来ていませんでした。 ditties en 名 小唄 The old sailors sang cheerful ditties while mending their nets. 老いた船乗りたちは網を繕いながら、明るい小唄を歌いました。 dost en 動 do の古い二人称の形 Dost thou remember the summer we spent by the lake? あなたはあの湖で過ごした夏を覚えていますか。 doth en 動 does の古い形 The river doth wind slowly through the quiet valley below. その川は下の静かな谷をゆっくり曲がりながら流れます。 drest en 形 装った。 dressed の古い綴り e'er en 副 ever を一音節に詰めた形 Few travelers e'er returned from that dark, silent forest. その暗く静かな森から戻った旅人はほとんどいませんでした。 ecstasy en 名 我を忘れるほどの高まり The dancers moved with a wild, joyful ecstasy that night. その夜、踊り手たちは激しく喜びに満ちた我を忘れる高まりで動きました。 endear'd en 形 いとおしくなった enjoy'd en 動 味わった eternity en 名 永遠 It felt like an eternity before the doctor finally appeared. 医者がついに現れるまで、それは永遠のように感じられました。 evermore en 副 いつまでも He promised to love her evermore, whatever life might bring. 人生が何をもたらそうと、彼は彼女をいつまでも愛すると約束しました。 flanks en 名 わき腹 The horse's flanks trembled after the long, hard ride. その馬のわき腹は、長く厳しい乗馬の後に震えていました。 flowery en 形 花で飾られた A flowery meadow stretched out beyond the old wooden fence. 花で飾られた草地が、古い木の柵の向こうに広がっていました。 forehead en 名 額 Sweat gathered on his forehead during the long summer walk. 長い夏の散歩の間、彼の額には汗がにじみました。 fring'd en 形 縁取られた garlands en 名 花の輪 Children wove garlands of daisies to wear during the festival. 子どもたちは祭りの間につける、ひな菊の花の輪を編みました。 grieve en 動 深く悲しむ The whole town continued to grieve for the lost fishermen. 町全体は、失われた漁師たちのために深く悲しみ続けました。 hast en 動 have の古い二人称の形 Thou hast grown wiser since we last spoke, my friend. 前に話したときより、あなたは賢くなりましたね、友よ。 haunts en 動 つきまとう An old sorrow still haunts him whenever autumn arrives. 秋が来るたび、古い悲しみがまだ彼につきまといます。 heifer en 名 若い雌牛 A young heifer wandered away from t