8.31 三つの寓話 — 束・鈴・狼(イソップ) — Epoché
この篇でできるようになること 題を手がかりに、話の切れ目を見つけられる 。 大文字で書かれた普通名詞を、 登場人物 として受け取れる。 名詞がそのまま動詞になる ことに気づける。 教訓が どこに置かれているか を二通り知る。 前提 : 8.30 まで。 読む前に 三つの話が入っています。順に、 束ねた棒 、 猫に鈴をつける相談 、 子をあやす母と、それを聞いた狼 です。 一つめの話は、 8.28 読編 で読んだ「七本の棒」と 同じ話 です。ただし 書き手が違います 。読みくらべると、 同じ話が書き手によってどう変わるか が分かります。下の「構文の骨」で並べます。 気をつけるところを三つ置きます。 一つめ、 題が段落として出てくる ことです。十五段落のうち 三つが題で、どれも 動詞も句点もありません 。 8.23 読編 の「札」と同じ見かけですが、こちらは ほんとうに題 です。見分けは簡単で、 そのあとに別の話が始まるかどうか です。 二つめ、 獣の名が大文字 だということです。 the Cat 、 the Mice 、 the Wolf ——どれも人の名のように大文字で始まります。 登場人物だから です。 8.23 読編 で「大文字で始まる語は名前として飛ばす」と置きましたが、寓話では 飛ばせません 。話の主人公だからです。 三つめ、 どの話も途中から始まる ことです。 8.26 読編 と同じです。窓で切り出しているので、話の始まりは入っていないことがあります。 驚かずに読み進めて ください。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 424 語、十五段落です。読 B でいちばん語数の多い篇の一つですが、 三つに割れている ので、一つ一つは読本の篇より短いことになります。 One day when the quarreling had been much more violent than usual 先に原文だけを、 辞書も語釈も見ずに 最後まで読んでください。 題のところで一度手を止めて 、「ここから別の話だ」と自分に言ってから先へ進んでください。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 棒の束 ある日、けんかがいつにも増して激しく、息子たちがそれぞれむっつりとふさぎこんでいたとき、父はその一人に棒の束を持ってくるように言いました。それから束を息子たちに順に渡し、折ってみるように言いました。けれども、一人ひとりが精いっぱいやってみても、誰も折ることができませんでした。 そこで父は束をほどき、棒を一本ずつ息子たちに渡して折らせました。息子たちはそれをいともたやすく折りました。 「息子たちよ」と父は言いました。「お前たちが互いに心を合わせ、助け合えば、敵がお前たちを傷つけることはできない。それがどれほど確かなことか、分からないか。だが、お前たちが仲間割れをすれば、この束の中の一本の棒ほどの強さしかなくなるのだ。」 猫に鈴をつける たくさんの案が話し合われましたが、どれも十分によいとは思われませんでした。とうとう、とても若いネズミが立ち上がって言いました。 「ぼくには、とても簡単そうに見えるけれど、きっとうまくいくと分かっている案があります。猫の首に鈴をかけさえすればいいのです。鈴が鳴るのが聞こえたら、敵が来るとすぐに分かります。」 ネズミたちはみな、どうしてこんな案をこれまで思いつかなかったのかと、たいそう驚きました。ところが、自分たちの幸運をみなで喜んでいるさなかに、年寄りのネズミが立ち上がって言いました。 「若いネズミの案はたいへんよいと言っておこう。だが、一つだけ聞かせてくれ。誰が猫に鈴をつけるのかね?」 何かをすべきだと言うことと、それを実際にすることとは、まったく別のことです。 母親と狼 こんなにおいしい食事にありつけそうだと驚きながらも喜んだ狼は、開いた窓の下に腰を据え、今にも子どもが外へ差し出されるものと待ちかまえました。けれども、子どもがぐずり続けたにもかかわらず、狼は一日じゅう待ってもむだでした。やがて日が暮れかかるころ、母親が窓のそばに腰を下ろし、歌をうたって赤ん坊を揺すり寝かしつけようとする声が、また聞こえてきました。 「よしよし、坊や、よしよし!狼なんかにつかまらないよ。だめだめ!お父ちゃんが見張っているし、狼が近くに来たら、お父ちゃんがやっつけてくれるからね!」 ちょうどそのとき、父親が家の見えるところまで帰ってきました。狼は上手に駆けて、やっとのことで犬たちから逃げ延びました。 聞いたことを何でも信じてはいけません。 語釈 帯の外の語は 38 語です。下に 全部 出します。 八つは登場人物の名 (大文字のもの)なので、覚えるのは残りです。 語(品詞) 意味 注 Belling en 動 鈴をつけること( bell を動詞に使った - ing の形) Belling the cat seemed like a brilliant idea at first. 猫に鈴をつけることは、最初は名案のように思えました。 Bundle en 名 束(題の中の語) Bundle in hand, the boy hurried to his father's side. 束を手に、男の子は父親のそばへ急ぎました。 Cat en 名 猫。登場人物なので大文字 Cat's en 名 猫の Daddy en 名 お父ちゃん Mice en 名 鼠たち( mouse の複数) Mice often nest inside old barns during winter. 鼠たちは冬になるとよく古い納屋の中に巣を作ります。 Mouse en 名 鼠。登場人物なので大文字 Wolf en 名 狼。登場人物なので大文字 arose en 動 立ち上がった( arise の過去形) A sudden noise arose from the crowded street below. 群衆でにぎわう下の通りから突然物音が起こりました。 barely en 副 かろうじて He barely finished the race before collapsing from exhaustion. 彼はかろうじてレースを終えたあと、疲労で倒れ込みました。 bell en 名 鈴( bell the Cat では動詞で「鈴をつける」) The young mouse boldly offered to bell the cat himself. その若い鼠は自分が猫に鈴をつけると大胆にも申し出ました。 bundle en 名 束 The old man tied his tools into a bundle. 老人は道具をひとまとめにして束にしました。 clever en 形 機転のきく The clever fox found a way to escape the trap. 機転のきく狐はわなから逃げる方法を見つけました。 daddy en 名 お父ちゃん( Daddy と同じ語) delicious en 形 おいしそうな The delicious smell of fresh bread filled the kitchen. 焼きたてパンのおいしそうな匂いが台所いっぱいに広がりました。 delighted en 形 大喜びの She was delighted to receive such a wonderful gift. 彼女はそんなに素敵な贈り物をもらって大喜びでした。 divided en 形 分かれた。 be divided among で仲間割れする The committee members were divided over the new plan. 委員会のメンバーは新しい計画をめぐって意見が分かれました。 enemies en 名 敵(複数) The two nations had once been bitter enemies. その二つの国はかつて激しく敵対していました。 enemy en 名 敵 The soldiers spotted an enemy camp near the river. 兵士たちは川の近くに敵の野営地を見つけました。 fortune en 名 運。 good fortune で幸運 By good fortune, the lost dog found its way home. 幸運にも、迷子になった犬は家への道を見つけました。 fret en 動 ぐずる The baby began to fret when she got hungry. 赤ちゃんはお腹がすくとぐずり始めました。 impossible en 形 できない It seemed impossible to finish the work by morning. その仕事を朝までに終わらせるのは不可能に思えました。 injure en 動 傷つける The fall could easily injure a careless climber. 転落は不注意な登山者を簡単に傷つけかねません。 manner en 名 ようす。 in a surly manner で不機嫌そうに The clerk greeted every customer in a friendly, patient manner. その店員はどの客にも親しみやすく辛抱強い態度で応対しました。 midst en 名 まっただ中。 in the midst of で〜の最中に Right in their busy midst, the old cat slept peacefully. その忙しい真っただ中で、老いた猫は静かに眠っていました。 moping en 動 ふさぎこんでいる He has been moping around the house all day. 彼は一日中家の中でふさぎこんでいます。 neck en 名 首 She wrapped a warm scarf around her neck. 彼女は暖かいマフラーを首に巻きました。 nightfall en 名 日暮れ The travelers hoped to reach the village by nightfall. 旅人たちは日暮れまでに村に着きたいと願っていました。 prospect en 名 見込み。 the prospect of で〜という見込み She was excited about the prospect of a new job. 彼女は新しい仕事という見込みに胸を躍らせていました。 quarreling en 動 言い争っている The neighbors were quarreling loudly over the old fence. 隣人たちは古い垣根をめぐって大声で言い争っていました。 rejoicing en 名 喜び合うこと There was great rejoicing when the long war ended. 長い戦争が終わったとき、大きな喜びがありました。 settled en 動 腰を落ち着けた( settle down で) The family finally settled down in a quiet village. 家族はついに静かな村に落ち着きました。 sight en 名 見えるところ。 within sight of で〜の見えるところに From the hilltop, the old barn was still within sight. 丘の上から、その古い納屋はまだ見えるところにありました。 surly en 形 不機嫌な The surly clerk refused to answer any questions. その不機嫌な店員は質問に一切答えようとしませんでした。 untied en 動 ほどいた He untied the rope and let the small boat go. 彼はロープをほどいて小舟を放しました。 usual en 形 いつもの。 than usual でいつもより She arrived earlier than usual this morning. 彼女は今朝いつもより早く到着しました。 vain en 形 むだな。 in vain でむだに He tried in vain to open the stuck door. 彼は動かなくなったドアを開けようとむだに試みました。 violent en 形 激しい A violent storm knocked down several old trees. 激しい嵐が古い木を何本もなぎ倒しました。 構文の骨 ★題が話の切れ目 この篇には題が 三つあります。段落として、本文の中に立っています。 話の題 何番めの段落か そのあとの話 The Bundle Of Sticks 一つめ 父が息子たちに棒の束を折らせる Belling The Cat 五つめ 鼠たちが猫に鈴をつける相談をする The Mother And The Wolf 十一つめ 狼が母のことばを真に受ける 題には 動詞も句点もありません 。 8.23 読編 の「札」とそっくりです。けれども働きが違います。 どちらか そのあとに来るもの 札( 8.23 読編 ) 同じ話の続き 。札はその段落の見出し 題(この篇) 別の話 。題はそこから先ぜんぶの見出し 見分けるには 先を見る しかありません。そのあとに 別の登場人物が出てきたら題 、同じ登場人物が続いたら札です。この篇なら、猫と鼠が出てきた時点で「棒の話は終わった」と分かります。 ★普通名詞を大文字にすると登場人物になる この篇の獣は、みな大文字で書かれています。 原文の書き方 ふつうの書き方 意味の違い the Cat the cat この話の「猫」という人物/ただの猫 the Mice the mice この話の「鼠たち」/ただの鼠 the Wolf the wolf この話の「狼」/ただの狼 英