10.33 四大名著 — Epoché
この課でできるようになること 四つの題名と、それぞれの話を中国語で紹介できます。 語り物から本になった経緯と、回の区切りを説明できます。 白話と文言を分け、特別編に収めない理由を言えます。 名・字・あだ名を同じ人物へ結び付けられます。 前提 :10.32「詩の千年」。詩の形から、長い物語の生まれ方へ進みます。 四つの題名と時期 四大名著は、四つのよく知られた長編小説をまとめる呼び名です。中国語では 四大名著 と言います。まず題名を中国語で言い、その後に、いつの作品で何の話かを添えます。 中国語の題名 日本語の題名 時期 作者として伝えられる人 話の中心 三国演义 三国志演義 明 羅貫中とされる 三国の争い 水浒传 水滸伝 明 施耐庵とされる 梁山泊に集まる百八人 西游记 西遊記 明 呉承恩とされる 玄奘と孫悟空の旅 红楼梦 紅楼夢 清 曹雪芹 名門の家の栄えと衰え 前の三つが明、最後が清です。作者の欄は、四つを同じ強さで言い切っていません。長い時間、多くの語り手や書き手が関わった作品では、二つを分けます。伝統的にこの人の作とされることと、今の本を一人で書いたことです。 日本語で「三国志」と呼ばれる小説は、中国語では 三国演义 です。中国語の 三国志 は史書の題です。小説を紹介する場では、題の後ろまで言うと、どちらの本か伝わります。 街で語る話から、本になる 三国や水滸の話は、街の語り手が語っていた話から育ちました。宋の都市の芝居や講釈の場も、その背景です。話が受け継がれ、書き手がまとめるまでに、多くの人の手を経ています。 そのため、まとめた人の名が伝わっていても、物語の全てを一人が考え出したとは言えません。羅貫中や施耐庵について、伝記がよく分からないことも、作者を言い切らない理由になります。 这是谁写的? [1] は「これは誰が書いたのですか」という問いです。この問いに答えるときも、作者の名だけでなく、どこまで確かに言えるかを考えます。日本語の説明では「〜とされる」を残します。 長い物語の章立ては 回 と呼びます。話を切りのよいところで止め、次へ引き継ぐ区切りです。章の初めに詩を置いたり、各回の題を対句にしたりします。こうした形にも、語り物の名残があります。 対句の題は、二つの表現を並べて形をそろえた題です。題を読む段階で、回の中の出来事を予告する働きがあります。長い本を読むときには、回の区切りを見失わず、一つの回で何が起きたかを受け取ります。 『紅楼夢』は、一人の書き手による小説に近い作品です。曹雪芹の家の没落が下敷きになったと言われます。ただし、未完で、後半を別の人が書き継いだ形で伝わっています。最初から最後まで同じ手による本として扱うわけではありません。 それぞれ、何の話か 争いと、集まる人々 『三国志演義』は、後漢末からの争いを語ります。史書をもとにしていても、史実そのままではありません。蜀の劉備・関羽・張飛・諸葛亮を中心に読みます。魏の曹操との対立を、物語として受け取ります。 特別編81篇の『出師表』の書き手、諸葛亮は、この小説の登場人物でもあります。歴史上の人が残した文章と、その人を描いた物語は、同じ資料ではありません。文章で本人が何を述べたかと、物語がその人をどう描いたかを分けると読みやすくなります。 『水滸伝』の舞台は、北宋末です。腐敗した役人に追われた者たちなどが、梁山泊へ集まる話です。百八人の好漢が、まとまりを作ります。一人だけを追うのでなく、人が増えるたびに、名と特徴を結び付けます。 旅と、家の日常 『西遊記』では、玄奘がインドへ経典を求めた史実の旅に、架空の同行者が加わります。孫悟空・猪八戒・沙悟浄の三人です。玄奘の旅が実際にあったことと、同行者の活躍が物語であることを分けます。 『紅楼夢』では、名門の家の日常と若い人々の心が描かれます。家の栄えと衰えの中で、人間関係や感情の動きを追います。大きな事件の数だけで作品を比べるより、その本が何に目を向けているかを紹介しましょう。 白話だから、別の読みの道へ この課で大切なのは、有名な四作品が、なぜ特別編の百篇に入っていないかです。作品の価値が低いからではなく、扱う文体が違うからです。 文言 は古典の書き言葉、 白话 は話し言葉に近い文体です。四大名著は白話の小説で、特別編は文言を扱います。この課程では、白話の系統は読編へ、文言の系統は特別編へつなぎます。 語り物は、街で耳にする人が追える言葉で語られました。その生まれ方と白話の文体がつながります。一方、明清の白話には、今の中国語では使わない古い言い回しも多くあります。 「話し言葉に近い」と聞いて、今日の日常会話と全く同じだと思わないようにします。白話と文言の区別は、簡体字と繁体字の区別でもありません。どの字形で印刷されていても、文体は別に見ます。書き言葉の違いは 知編 3課 と 知編 12課 でも扱いました。 一人に、いくつもの呼び名 中国語の 人物 は登場する人、 作者 は書いた人です。昔の人物には、名と 字 があります。諸葛亮の名は亮、字は孔明です。諸葛亮と諸葛孔明を別々の人物だと思うと、話の筋がつながらなくなります。人名の読み方は 知編 26課 も手がかりになります。 人物 字・あだ名 呼び方をまとめる手がかり 诸葛亮 孔明 亮が名、孔明が字 关羽 云长 羽が名、雲長が字 曹操 孟德 操が名、孟徳が字 宋江 及时雨 困った人をすぐ助ける、ほしい時の雨 林冲 豹子头 豹のような顔つき 李逵 黑旋风 黒い肌と激しい動き 名と字の使い分けは、人と人との関係を見る手がかりになります。地の文と呼びかけで呼び名が変わったときも、まず同じ人物かを確かめます。呼び名の変化から、話す二人の距離にも目を向けます。 『水滸伝』のあだ名は、人の特徴を短く表します。百八人を耳で聞き分けるための工夫だと考えると、多くのあだ名がある理由が分かります。先ほど見た、語り物としての生まれ方とつながる点です。 字とあだ名は同じものではありません。孔明は字、 及时雨 はあだ名です。一人の人物について、名・字・あだ名を一つのまとまりにして覚えると、別の人と取り違えずに読めます。 日本へ伝わった本と、別の括り 『三国志演義』は江戸時代に『通俗三国志』として訳されました。『水滸伝』は曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』に強い影響を与えたとされます。日本で知っている作品の名から、その前にある中国の物語へ進めます。 『西遊記』も日本でドラマなどの題材になっています。ただし、知っている映像作品と原作の内容を、全部同じだとは考えません。何という本を紹介しているか、題名を確かにしておきます。 『金瓶梅』という明の小説を含む「四大奇書」は、別の括りです。三国・水滸・西遊に『金瓶梅』を加えます。『金瓶梅』は『水滸伝』の人物を借り、市井の人々の欲望を描いた作品です。性的な描写も多く、禁書として扱われた歴史があります。二つの「四大」を、同じ四冊の呼び名としないようにします。 語表 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 名著 名詞 よく知られた優れた著作 四つをまとめる呼び名に使う 读名著 名著を読む 小说 名詞 小説 物語として読む作品 长篇小说 長編小説 演义 名詞 歴史をもとに物語として語るもの 史書そのものとは分ける 读演义 演義を読む 白话 名詞 話し言葉に近い文体 古い白話は今の口語と同じではない 白话小说 白話小説 文言 名詞 古典の書き言葉 特別編で扱う文体 文言作品 文言の作品 作者 名詞 書いた人 伝統的な帰属には留保を付ける 小说作者 小説の作者 回 名詞・量詞 長い物語の区切り 章立ての単位 第一回 第一回 字 名詞 名とは別に持つ呼び名 ここでは文字の意味と分ける 他的字 その人の字 外号 名詞 あだ名 名や字と区別する 他的外号 その人のあだ名 人物 名詞 登場する人 同じ人に複数の呼び方がある 小说人物 小説の登場人物 孙悟空 固有名詞 孫悟空 孫の簡体字は孙 演孙悟空 孫悟空を演じる 诸葛亮 固有名詞 諸葛亮 諸の簡体字は诸 像诸葛亮 諸葛亮のようだ(知恵がある) 关羽 固有名詞 関羽 字は雲長 关羽说 関羽が言う 曹操 固有名詞 曹操 字は孟徳 曹操说 曹操が言う 宋江 固有名詞 宋江 あだ名は 及时雨 宋江说 宋江が言う 及时雨 名詞(あだ名) 時宜にかなった雨 宋江のあだ名にもなる 下及时雨 折よく雨が降る 豹子头 名詞(あだ名) 豹の頭 林冲 のあだ名 叫豹子头 豹子頭と呼ばれる 黑旋风 名詞(あだ名) 黒いつむじ風 李逵のあだ名 叫黑旋风 黒旋風と呼ばれる 梁山泊 固有名詞 梁山泊 水滸伝の人々が集まる所 到梁山泊 梁山泊へ行く 猪八戒 固有名詞 猪八戒 西遊記の登場人物 猪八戒说 猪八戒が言う 練習 題と名前を声に出す 四大名著 ・ 三国演义 ・ 水浒传 ・ 西游记 ・ 红楼梦 ・ 孙悟空 ・ 诸葛亮 ・ 白话 を、▶で手本を聞いてから一つずつ音読してください。 内容と人物を紹介する 『紅楼夢』はどの王朝の小説か、作品名を主語にして中国語で書いてください。 『西遊記』に孫悟空が登場することを、作品名と「ある・いる」の型で中国語にしてください。 四つの小説がどんな文体の小説かを、中国語で一文に書いてください。 四作品について、それぞれ何の話かを中国語の一文ずつで書いてください。争い、梁山泊、旅、家の盛衰を手がかりにします。 関羽と雲長、曹操と孟徳、宋江と 及时雨 がそれぞれ同じ人だと、中国語で三文書いてください。 人物へのあなたの見方を三文書いてください。 英勇 ・ 诚实 ・ 能干 ・ 笨 から使う語を選び、関羽・諸葛亮・孫悟空・猪八戒などを主語にします。 宋江・ 林冲 ・李逵のあだ名を、 外号 を使った一文ずつで中国語で書いてください。それぞれ何を表すかも日本語で説明します。 作者を「〜とされる」と書く理由と、「回」や対句の題の生まれ方を日本語で説明してください。 四大名著が特別編に入らない理由と、この課程でつながる編を日本語で説明してください。 読書と人物の感想を書く 前の課の語 窗子 ・ 专心 ・ 丈夫 を一語ずつ使い、本を読む人の暮らしや、人物への感想を中国語で三文書いてください。 前の課の語 镜子 ・ 兴奋 ・ 妻子 を一語ずつ使い、本を読む人の暮らしや、人物への感想を中国語で三文書いてください。 前の課の語 外套 ・ 失望 ・ 姐妹 を一語ずつ使い、本を読む人の暮らしや、人物への感想を中国語で三文書いてください。 前の課の語 鲜花 ・ 天真 ・ 独自 を一語ずつ使い、本を読む人の暮らしや、人物への感想を中国語で三文書いてください。 前の課の語 树林 ・ 冷静 ・ 诗人 を一語ずつ使い、本を読む人の暮らしや、人物への感想を中国語で三文書いてください。 この課のまとめ 三国・水滸・西遊は明、紅楼夢は清の小説です。 語り物から本になった経緯が、作者の帰属や回の区切りに関わります。 白話の小説と文言の文章を分けて、読む先を選びます。 名・字・あだ名を、同じ人物へ結び付けます。 次の課へ 次の10.34「京劇と語り物」では、舞台の役柄と顔の色、地方の芝居、語りの芸を見ます。舞台から日常へ入った言い回しも学びます。 答え 《红楼梦》是清朝的小说。 《西游记》里有孙悟空。 这四部小说是白话小说。 《三国演义》讲三国的战争。 《水浒传》写梁山泊的好汉。 《西游记》讲玄奘的旅行。 《红楼梦》写一个家的兴衰。 关羽就是关云长。 曹操就是曹孟德。 宋江的外号是及时雨。 我觉得关羽很英勇。 我觉得诸葛亮很能干。 我觉得猪八戒有点笨。 宋江的外号是及时雨。 林冲的外号是豹子头。 李逵的外号是黑旋风。 宋江は、困った人をすぐ助けるので「ほしい時の雨」と呼ばれました。 林冲 は豹のような顔つき、李逵は黒い肌と激しい動きに結び付いた呼び名です。 街で語られた話が長い時間と多くの人の手を経て本になったため、一人の作者に定めにくいからです。回の区切りや対句の題には、語り物の形が残っています。 四つは白話の小説で、特別編は文言を扱うからです。白話の系統は読編で扱います。ただし明清の白話は、今の日常語と全く同じではありません。 我在窗子旁边看书。 我专心地看小说。 她丈夫喜欢看小说。 他站在镜子前。 看完小说,我很兴奋。 他妻子喜欢《红楼梦》。 我的外套在椅子上。 这本小说让我很失望。 我的姐妹都爱看书。 她喜欢鲜花。 我觉得他有点天真。 我独自读这部小说。 我想在树林里读书。 我觉得他很冷静。 这位诗人也写小说。 参考文献 Tatoeba 文 #9457641( 这是谁写的? )。簡体字に改めた。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoeba.org/en/sentences/show/9457641