3.19 時制の一致と間接話法 — Epoché
この課でできるようになること 人の言葉を、引用符を使わずに自分の文へ取り込める。 ★取り込むときに 動詞を一段後退させられる 。 後退させない場合(今も変わらないこと)が分かる。 疑問と命令を取り込む形( if /疑問詞/ to + 動詞)を使い分けられる。 前提 : 3.18 まで。 人の言葉を伝えるには二通りあります。 そのまま引く か、 自分の文に作り直す かです。そのまま引くときは引用符でくくります—— He said to me, 'I read this book yesterday'. [1] のように。作り直すときは引用符を外し、中身を自分の文の一部にします。物語の地の文はほとんどが後者です。第 3 期の読み物を読むには、この形が読めないと進みません。 作り直すときに起きることは三つあります。 動詞が一段後退する 、 人をさす語が入れ替わる 、 時と場所をさす語が入れ替わる 。このうち二つめと三つめは、日本語でも同じことが起きます。日本語に無いのは 一つめだけ です。だから、この課で覚えることは実質的に一つしかありません。 例文で見る まず 10 文を見ます。どれも外側の動詞が 過去形 で、その内側の動詞も過去のほうへ下がっています。5 番めと 8 番めでは、時と場所をさす語まで入れ替わっています。語はどれも第 3 期の範囲(上位 1,980 語)の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ He said he could do it. [2] 彼はそれができるといった。 現在形 can が could に下がった He said he would come and he did come. [3] 彼は来ると言ったが、その通りやって来た。 will が would に下がった She said she was going to have her own way. [4] 彼女は思い通りにするつもりだと言った。 進行形も、 be が過去に下がる She said that she had seen such and such there. [5] 彼女はそこでしかじかの人々を見たと言った。 過去のことは、さらに一段下がって過去完了に He said he would see me the next day. [6] 翌日私に会うと彼はいった。 ★ tomorrow が the next day に置き換わっている He asked her if she knew him. [7] 彼は彼女に自分を知っているかと尋ねた。 疑問も取り込める。 if は「〜かどうか」 He asked me what I needed. [8] 彼は私に、私が何を必要としているかを尋ねた。 疑問詞のときはそのまま使う。語順は 疑問文にしない I asked him if he would go there the next day. [9] 私は彼に翌日そこへ行くかどうかと聞いた。 場所の語も動く。 there と the next day の両方 He told me to do it. [10] 彼は私にそれをするように言いつけた。 命令を取り込むと to + 動詞になる I told her not to go. [11] 彼女に行かないようにと言った。 打ち消しの命令は not to + 動詞 骨組み この課の規則は一つです。 外側の動詞が過去形なら、内側の動詞も一段後退する。 英語では「時の印は外側に合わせる」という揃え方をします。 一段後退するとはどういうことか 取り込む前 取り込んだあと この課の例 現在形 過去形 She said she was going to have her own way. [4] 過去形 過去完了 She said that she had seen such and such there. [5] will would He said he would come and he did come. [3] can could He said he could do it. [2] may might — 表の右の列を見てください。どれも もう一段だけ過去のほうへ 動いています。過去形の次は過去完了で、そこで止まります。過去完了より先は無いので、 後退は一段まで です。 3.25 型編 で過去完了そのものを扱いますが、ここでは「一段下がった形」として見ておいてください。 後退しない語もあります。 must ・ should ・ could ・ would ・ might は、 もともと一段下がった形 なので動きません。 3.11 型編 で見たとおり、これらは過去を言うための形ではなく、 話し手の構え を言うための形だからです。 人・時・場所をさす語も動く 取り込むと、言った人の立場から 伝える人の立場 へ移ります。だから、その立場に結びついた語が入れ替わります。 どんな語か 取り込む前 取り込んだあと 人をさす語 I ・ you he ・ she など 時をさす語 tomorrow ・ today the next day ・ that day 場所をさす語 here there ものをさす語 this that He said he would see me the next day. [6] を見てください。彼が言ったときの言葉は「明日」だったはずです。それが the next day になっています。伝えている今は、もうその「明日」ではないからです。 I asked him if he would go there the next day. [9] では、場所の there と時の the next day が両方とも動いています。 ここは 日本語でも同じ です。「明日行く」と言った人のことを後から伝えるなら、「翌日行くと言っていた」になります。だから、この部分で日本語話者がつまずくことはあまりありません。 ★後退しないとき 規則には例外があります。 今も変わらないことは、後退させません 。変わらないものに過去の印を付けると、「昔はそうだった」という意味が出てしまうからです。 下の「実文で通す」に実例を置きました。 8.71 読編 の that envy is not always connected with it [12] は、外側が said なのに is のままです。ねたみと競争心の関係は、昔も今も変わらないからです。同じ理由で、習慣・性質・変わらない事実は現在形のままにします。 どちらでもよい場合も多くあります。迷ったら 後退させてください 。後退させるのが原則で、しないのは「今も変わらない」とはっきり言いたいときだけです。 疑問を取り込む — 語順を疑問文にしない 疑問も取り込めます。二通りあります。 はい・いいえで答える問い は if か whether でつなぎます。 He asked her if she knew him. [7] 、 She asked me if I was all right. [13] がその形です。 3.16 型編 で見たとおり、この if は条件ではないので、未来のことなら未来の形にします。 疑問詞で始まる問い は、その疑問詞をそのまま使います。 He asked me what I needed. [8] 、 He asked me what I had bought. [14] がその形です。 どちらの場合も、 語順を疑問文にしません 。主語と動詞をひっくり返さず、疑問詞の後ろはすぐ主語です。訊いているのではなく、 訊いたという出来事を語っている からです。 3.16 型編 で扱った wh 節と同じ規則で、日本語話者がいちばんよく踏む落とし穴でもあります。 ただし、 疑問詞そのものが主語 のときは、見た目が疑問文と同じになります。下の「実文で通す」に置いた 8.55 読編 の asked her what was the matter [15] がその形です。 what が主語なので、後ろにいきなり動詞が来るのが正しい形です。ひっくり返っているのではありません。 命令を取り込む — to + 動詞 命令は that 節にしません。 tell + 人 + to + 動詞 にします。 He told me to do it. [10] 、 I told him to come. [16] がその形です。打ち消すときは not を to の前に置きます—— I told her not to go. [11] 。 ここで say と tell の違いが効いてきます。 tell は 相手を直に目的語に取れます 。 say は取れません。言った中身を伝えるなら say 、相手に向けて言ったことを伝えるなら tell です。命令は必ず相手に向けて言うので、 tell のほうを使います。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも間接話法があります。 「〜と言った」「〜かと尋ねた」「〜するように言った」——形はきれいにそろっています。ずれるのは 中の動詞が動くかどうか 、その一点だけです。 ★日本語に無い区別 — 日本語は後退しない 伝えたいこと 日本語では 英語では 「行く」と言った 行く と 言った(現在形のまま) said he would go (後退する) 「できる」と言った できる と 言った said he could do it (後退する) 「見た」と言った 見た と 言った said he had seen it (さらに一段) 日本語の側は三行とも、 言った人が言ったときの形 のままです。「と」の前は、その人の口から出た言葉をそのまま写しています。英語の側は三行とも動いています。英語では、取り込んだ瞬間に その文は伝える人のもの になり、伝える人の時間に合わせ直されるからです。 この違いから、日本語話者の英語には決まった癖が出ます。 said he goes のように、内側を現在形のまま置いてしまう。日本語の「行くと言った」をそのまま写しているので、本人には正しく見えます。直し方は一つ—— said と書いた瞬間に、次の動詞も過去のほうへ引っぱる 。考えるのではなく、手が動くようにしてください。 日本語の「と」と英語の that 日本語の「と」は落とせません。「行く言った」とは言えません。英語の that は落とせます( 3.16 型編 )。 He said he could do it. [2] には that がありません。落とすほうがむしろふつうです。 日本語では要る印が、英語では要らない ——この差があるので、英語では 動詞の形だけが取り込みの目印 になります。だから後退が大事なのです。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。この課の道具は そのまま角を取る道具になります 。問いを 間接疑問に包む と、直に訊かない形になるからです。下の四つは、どれも「場所を教えてほしい」を伝えています。 英文 日本語訳 どんな相手に Where is the station? [17] 駅はどこにありますか。 直に訊く。親しい相手か、急いでいるとき Do you know where the police station is? [18] 交番はどこにあるかわかりますか。 ★間接疑問に包む。「知っていますか」を外側に置く Could you tell me where I can get a train? [19] 電車はどこで乗れますか。 頼む形にする。 Could you を足す Excuse me, do you know where the economics department library is? [20] すみません、経済学部図書館ってどこか分かりますか? 詫びから入る。知らない相手に道を訊くときの形 一行めは問いがむき出しです。二行めで、問いが Do you know の中に入りました。訊いているのは「知っているかどうか」であって、場所そのものを問い詰めてはいません。 相手が「知らない」と言える余地 ができます。三行めは頼む形を重ね、四行めは詫びから入っています。 日本語でも同じことをしています。「駅はどこですか」より「駅がどこか、ご存じですか」のほうが柔らかい。 包む という作り方まで同じです。違うのは、英語では包んだ瞬間に 語順を変えなければならない ことだけです—— where is the station が where the station is になります。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそのまま持ち込んだ形で、下の誤文は Epoché の作例です。書いた英文ではなく、 話した英文 で自分を確かめてください。 内側を後退させない。 He said he goes. → He said he would go. 日本語の「行くと言った」をそのまま写すと出ます。いちばん多い誤りです。 said と言った瞬間に、次の動詞も引っぱる 。考えて直すのでは間に合わないので、口の癖にしてください。 間接疑問を疑問文の語順にする。 where is it → where it is 疑問詞が出た瞬間に疑問文の形が口をついて出ます。取り込んだ問いは訊いていません。 疑問詞の後ろは主語から と決めておいてください。 3.16 型編 でも同じ誤りを挙げました。二度出るのは、それだけ根が深いからです。 命令を that 節で取り込む。 said that I go → told me to go 命令は to + 動詞で取り込みます。そして相手を目的語に取るので tell を使います。 say は相手を目的語に取れません。 実文で通す 8.62 読編 は、うさぎのベンジャミンとピーターの話です。会話の多い篇ですが、 引用符を使わずに 言ったことを地の文に取り込んでいる箇所が四つあります。そこだけを抜き出すと、この課で見た後退がそのまま並びます。 どの篇から 原文 何が起きているか 8.62 読編 Peter said he hoped that it wo