6.34 감자(じゃがいも) — Epoché
前提 ぜんてい : 6.33 まで。 この 篇 へん でできるようになること 題 だい の 語 ご を 本文 ほんぶん の 注 ちゅう から 読み よみ 、 方言 ほうげん の 台詞 せりふ を 標準 ひょうじゅん 語 ご と 対応 たいおう させられる。 過去 かこ を 重ねる かさねる 形 かたち が、かつての 暮らし くらし を 振り返る ふりかえる 働き はたらき を 説明 せつめい できる。 金額 きんがく と 短い みじかい 動作 どうさ の 描写 びょうしゃ を 追い おい 、 始まり はじまり と 終わり おわり の 対応 たいおう を 説明 せつめい できる。 この 文章 ぶんしょう について 金 きん 東仁 とうじん の 小説 しょうせつ です。 題 だい の 訳 わけ は「じゃがいも」ですが、この 篇 へん の 감자 は、 本文 ほんぶん の 括弧 かっこ の 注 ちゅう にあるとおり、さつまいもを 指し さし ます。 今 いま の 標準 ひょうじゅん 語 ご の 意味 いみ と、この 作品 さくひん での 意味 いみ を 分け わけ て 読み よみ ます。 福 ふく 女 おんな は 農村 のうそん から 平壌 ぴょんやん へ 移り うつり 、 貧しい まずしい 暮らし くらし の 中 なか で 働き口 はたらきぐち を 求め もとめ ます。 物語 ものがたり には、 人身 じんしん 売買 ばいばい 、 性的 せいてき な 搾取 さくしゅ 、 暴力 ぼうりょく と 死 し が 描か えがか れます。 人物 じんぶつ の 行動 こうどう だけでなく、 金銭 きんせん や 立場 たちば がどのように 関わる かかわる かを 追っ おっ てください。 語釈 ごしゃく — 方言 ほうげん と 場面 ばめん 本文 ほんぶん の 語 ご 意味 いみ ・ふつうの 形 かたち 칠성문 ・ 품삯 ・ 송충이 七星 ななえ 門 もん ・ 賃金 ちんぎん ・ 松 まつ 毛虫 けむし 。 移っ うつっ た 場所 ばしょ と 働く はたらく 場面 ばめん の 語 ご 。 님자 ・ 가디요 底本 ていほん の 字 じ 。ふつうは 당신 ・ 가지요 。 相手 あいて を 指す さす 語 ご ・ 行き いき ますよ。 못 벌었쉐다 ・ 왜 그릅네까 底本 ていほん の 字 じ 。ふつうは 못 벌었습니다 ・ 왜 그럽니까 。 稼げ かせげ ませんでした・なぜですか。 사인교 ・ 낫 ・ 교섭 四 よん 人 にん で 担ぐ かつぐ 駕籠 かご ・ 鎌 かま ・ 交渉 こうしょう 。 後半 こうはん の 行動 こうどう を 追う おう 語 ご 。 同じ おなじ 감자 でも、 標準 ひょうじゅん 語 ご ではじゃがいも、 本文 ほんぶん の 畑 はたけ ではさつまいもです。 題 だい だけで 決め きめ ず、 本文 ほんぶん の 括弧 かっこ の 語 ご を 手がかり てがかり に、 何 なん を 盗ん ぬすん だかを 確かめ たしかめ ます。 文法 ぶんぽう メモ — かつての 暮らし くらし 型 かた 編 へん 8 課 か の 過去 かこ の 形 かたち に、さらに 過去 かこ を 重ねる かさねる と、 以前 いぜん の 状態 じょうたい や 出来事 できごと を、そこから 距離 きょり を 置い おい て 振り返れ ふりかえれ ます。 農民 のうみん だったという 冒頭 ぼうとう では、 今 いま の 境遇 きょうぐう との 隔たり へだたり が 強く つよく 出 で ています。 -었었다 は「かつてそうだった( 今 いま はもう 違う ちがう )」を 表し あらわし ます。 농민이었었다 は「もとは 農民 のうみん だった( 今 いま はもう 農民 のうみん ではない)」で、 貧民 ひんみん 窟 くつ へ 来る くる 前 まえ の 暮らし くらし を 示し しめし ます。 訳 わけ には「もとは」「かつては」を 補い おぎない 、「 来る くる 前 まえ までは」という 時間 じかん の 言葉 ことば と 合わせ あわせ て 読み よみ ます。 台詞 せりふ の 丁寧 ていねい な 言い いい 方 かた は 型 かた 編 へん 5 課 か と 対応 たいおう させて 読め よめ ます。 表 ひょう にある 方言 ほうげん の 形 かたち を 本文 ほんぶん から 探し さがし 、 誰 だれ に 向け むけ た 言葉 ことば かを 確かめ たしかめ ましょう。 -가례 ・ -가레 は 平安 へいあん 道 どう の 文末 ぶんまつ に 付い つい て、 促し うながし ・ 念押し ねんおし を 添え そえ ます(〜よ・〜ね)。 형님두 갑세다가례 =お 姉 あね さんも 一緒 いっしょ に 行き いき ましょうよ。 対訳 たいやく 喧嘩 けんか 、 姦通 かんつう 、 殺人 さつじん 、 盗み ぬすみ 、 物乞い ものごい 、 懲役 ちょうえき 、 この世 このよ のあらゆる 悲劇 ひげき と 活劇 かつげき の 源 みなもと であるあの 七 なな 星 せい 門 もん の 外 そと の 貧民 ひんみん 窟 くつ へ 来る くる 前 まえ までは、 福 ふく 女 じょ (ポンニョ)の 夫婦 ふうふ は、( 士 し 農工 のうこう 商 しょう の 第 だい 二 に 位 い に 入る はいる ) 農民 のうみん であった。 福 ふく 女 おんな はもともと、 貧しく まずしく はあっても 正直 しょうじき な 農家 のうか できまり 正しく ただしく 育っ そだっ た 娘 むすめ であった。かつての 士族 しぞく の 厳しい きびしい 規律 きりつ は 農民 のうみん に 落ち おち てからは 無くなっ なくなっ たというが、しかしどこがというわけではないが、ほかの 農民 のうみん より 少し すこし 几帳面 きちょうめん で 厳しい きびしい 家 いえ の 掟 おきて が 彼女 かのじょ の 家 いえ にはそのまま 残っ のこっ ていた。その 中 なか で 育っ そだっ た 福 ふく 女 おんな は、もちろんほかの 家 いえ の 娘 むすめ たちと 同じ おなじ ように、 夏 なつ には 裸 はだか で 小川 おがわ で 水浴び みずあび をし、 股引 ももひき だけで 町 まち を 歩き回る あるきまわる ことを 当たり前 あたりまえ と 思っ おもっ てはいたが、しかし 彼女 かのじょ の 心 こころ の 中 なか には、ぼんやりとではあっても 道徳 どうとく というものへの 怖れ おそれ を 持っ もっ ていた。 彼女 かのじょ は 十 じゅう 五 ご になる 年 とし に、 町 まち の 男やもめ おとこやもめ に 八十 はちじゅう 円 えん で 売ら うら れて、 嫁入り よめいり というものをした。 彼女 かのじょ の 新しい あたらしい 夫 おっと ( 旦 たん 爺 や というほうが 適当 てきとう だろうか)という 人 ひと は 彼女 かのじょ より 二十 にじゅう も 年上 としうえ で、もともと 父親 ちちおや の 代 だい にはひととおりの 農民 のうみん として 畑 はたけ も 何 なん 枚 まい か 持っ もっ ていたが、 彼 かれ の 代 だい に 下っ くだっ てからは 一 ひと つ 二 ふた つと 減り へり 始め はじめ て、 最後 さいご に 福 ふく 女 おんな を 買っ かっ た 八十 はちじゅう 円 えん が 彼 かれ の 最後 さいご の 財産 ざいさん であった。 彼 かれ は 極度 きょくど に 怠け者 なまけもの であった。 町 まち の 年寄り としより の 世話 せわ で 小作 こさく の 畑 はたけ をいくらか 借り かり てやると、 種 しゅ を 撒い まい ておいたあとは 畝 せ も 起こさ おこさ ず 草 くさ も 取ら とら ずそのまま 放っ はなっ ておき、 秋 あき になると 出来 でき た 分 ぶん だけ 適当 てきとう に 取り入れ とりいれ て「 今年 ことし は 不作 ふさく だな」と 言っ いっ て、 地主 じぬし の 家 いえ へは 持っ もっ ていきもせず 自分 じぶん ひとりで 食べ たべ てしまうのだった。だから 彼 かれ は 同じ おなじ 畑 はたけ を 二 に 年 ねん つづけて 借り かり られたことがなかった。こうして 何 なん 年 ねん か 過ごす すごす うちに、 彼 かれ はその 町 まち では 畑 はたけ を 借り かり られないほど 人望 じんぼう と 信用 しんよう を 失っ うしなっ てしまった。 福 ふく 女 おんな が 嫁 よめ に 来 き てから 三 さん 、 四 よん 年 ねん ほどは 義父 ぎふ のおかげでどうにかこうにか 過ごし すごし ていったが、かつての 士族 しぞく のなれの 果て はて である 義父 ぎふ もだんだん 婿 むこ を 憎らしく にくらしく 見る みる ようになった。 彼 かれ らは 妻 つま の 実家 じっか にまで 信用 しんよう を 失っ うしなっ てしまった。 その 夫婦 ふうふ はいろいろ 相談 そうだん したあげく、しかたなく 平壌 ぴょんやん の 城内 じょうない へ 日雇い ひやとい をしに 入っ はいっ てきた。しかし 怠け者 なまけもの の 彼 かれ には 日雇い ひやとい さえやはりできなかった。 一 いち 日 にち じゅう 背負子 しょいこ を 背負っ せおっ て 練 れん 光 こう 亭 てい へ 行き いき 、 大同 だいどう 江 こう ばかり 見下ろし みおろし ているのだから、どうして 日雇い ひやとい など 務まろう つとまろう か。 三、四 さんよん か月 かげつ ばかり 日雇い ひやとい をしてから、 彼 かれ らは 幸い さいわい にもある 家 いえ の 下男 しもおとこ 部屋住み へやずみ に 入る はいる ことになった。 しかしその 家 いえ からも、いくらもしないうちに 追い出さ おいださ れてきた。 福 ふく 女 おんな はまじめに 主人 しゅじん の 家 いえ の 仕事 しごと をしたが、 夫 おっと の 怠けよう なまけよう はどうにもならなかった。 毎日 まいにち 福 ふく 女 おんな は 目 め に 刃 は を 立て たて て 夫 おっと を せき立て せきたて たが、 彼 かれ の 怠け癖 なまけぐせ は 犬 いぬ にくれることもできなかった。 「 米俵 こめだわら をちょっと 片づけ かたづけ てくださいよ。」 「 人 ひと が 眠い ねむい のに、あんたが 片づけ かたづけ なよ。」 「 私 わたくし が 片づける かたづける のかい。」 「 二十 にじゅう 年 ねん も 飯 めし を 食っ くっ ておいて、それも 片づけ かたづけ られんのか。」 「ああもう、ぽっくり 死ん しん じまえばいいのに。」 「この 女 おんな め、なんだと。」 こんな 喧嘩 けんか が 絶え たえ ずつづいたあげく、ついにその 家 いえ からも 追い出さ おいださ れてきた。 これからどこへ 行こう いこう 。 彼 かれ らはしかたなく 七 なな 星 せい 門 もん の 外 そと の 貧民 ひんみん 窟 くつ へ 押し流さ おしながさ れてくることになった。 七星 ななえ 門 もん の 外 そと を 一 ひと つの 部落 ぶらく として、そこに 集まっ あつまっ ているすべての 人 ひと の 本業 ほんぎょう は 乞食 こじき で、 副業 ふくぎょう としては 盗み ぬすみ と「 自分 じぶん たちどうしの」 売春 ばいしゅん 、そのほか この世 このよ のあらゆる 恐ろしく おそろしく 汚らしい きたならしい 罪悪 ざいあく であった。 福 ふく 女 おんな もその 本業 ほんぎょう に 出 で た。 しかし 十 じゅう 九 きゅう 歳 さい という 盛り もり の 年ごろ としごろ の 女 おんな に、 誰 だれ が 飯 めし でもまともにくれようか。 「 若い わかい のに 物乞い ものごい はなぜだ。」 そんな 声 こえ を 聞く きく たびに 彼女 かのじょ はいろいろな 言葉 ことば で、 夫 おっと が 病気 びょうき で 死に しに かけているだのなんだのと 口実 こうじつ をつけたが、そういう 口実 こうじつ には 慣れ なれ きった 平壌 ぴょんやん 市民 しみん の 同情 どうじょう は、やはり 買う かう ことができなかった。 彼 かれ らはこの 七 なな 星 せい 門 もん の 外 そと でもいちばん 貧しい まずしい 人 ひと たちの 側 がわ に 入る はいる ほうであった。その 中 なか でよく 稼ぐ かせぐ 者 もの は、 一 いち 日 にち に 五 ご 厘 りん 玉 たま ばかりで 一 いち 円 えん 七 なな 、 八十 はちじゅう 銭 せん の 現金 げんきん を 握っ にぎっ て 帰っ かえっ てくる 者 もの までいた。 極端 きょくたん なところでは、 夜 よる に 稼ぎ かせぎ に 出 で た 者 もの がその 夜 よる のうちに 四百 よんひゃく 余 よ 円 えん を 稼い かせい できて、その 近く ちかく で 煙草 たばこ の 商い あきない を 始め はじめ た 者 もの までいた。 福 ふく 女 おんな は 十 じゅう 九 きゅう 歳 さい であった。 顔 かお もそれなりに 小 しょう ぎれいであった。その 町 まち の 女 おんな たちが 普通 ふつう にしていることを 見習っ みならっ て、 彼女 かのじょ も 稼ぎ かせぎ のいい 人 ひと の 家 いえ にでもときどき 通え かよえ ば、 毎日 まいにち 五、六十 ごろくじゅう 銭 せん は 稼ぐ かせぐ ことができたはずだが、 士族 しぞく の 家 いえ で 育っ そだっ た 彼女 かのじょ にはそんなことはできなかった。 その 夫婦 ふうふ はやはり 貧しく まずしく 過ごし すごし た。 食べ たべ ずにいることもしばしばあった。 箕子 きし 廟 びょう の 松林 まつばやし に 松 ま