11.3 論語 為政 — 學びて思はざれば則ち罔し — Epoché
この篇でできるようになること 二句で入れ替わる語と、同じ位置に残る語を示せます。 条件と結果を分け、現代語との対応を説明できます。 句の切れ目を保って暗誦し、繁体字で書けます。 前提 :11.2「論語 學而 — 吾日に吾が身を三省す」。短いまとまりの並びが、内容をどう伝えるかを読みます。 二つの句を並べる 為政篇のこの章は、学び方についての言葉です。篇名だけから政治の話だと決める必要はありません。 子曰 を含め、句読点を除いて十四字です。発言の二句は、それぞれ六字あります。 二句をそろえると、何が同じで何が違うかを見つけやすくなります。このように対応する形を並べたものが対句です。飾りとして眺めるだけでなく、内容を比べるために使いましょう。 A 読み B 読み 違い 學而不思則罔 學びて思はざれば則ち罔し 思而不學則殆 思ひて學ばざれば則ち殆ふし 学ぶ・考えるの位置と、最後の結論が替わる 學 ・ 思 が入れ替わり、 而 ・ 不 ・ 則 は同じ位置にあります。最後は 罔 ・ 殆 で異なります。似た形にしたため、二つの良くなさの違いが目立ちます。「どちらも悪い」で終わらず、それぞれ何が足りないのかを読んでください。 条件の後に結果を置く 學而不思 が条件で、 則罔 が結果です。学ぶが考えないなら、その結果どうなるか、という順です。 則 は、ここでは結果の側の頭に置く接続の字です。 もう一つの句も同じ区切りになります。考えるが学ばないという条件の後に、危ういという結果を置きます。 型編 34課 で見た現代語の 就 も、条件を受けた結果の前に来る形があります。字の訳だけでなく、句をつなぐ位置を比べます。 則 を「規則」という名詞として読むと、前と後のつながりを見失います。この二句では、条件を読み終えてから、結果を導く字として読んでください。 学ぶが、考えない ここでの 而 は、前の行動にもう一方の行動が伴わない、という関係をつないでいます。学んでいるが考えない、考えているが学ばないという関係です。 特別編 1篇 で確認したように、同じ字でも前後の意味から読みます。 否定の 不 は、すぐ後ろの動詞を打ち消します。初めの句は学ぶことを否定していません。後の句は考えることを否定していません。二つをまとめて「学びも思いもない」としてしまうと、対句の組み立てが失われます。 學 は、教わったり、まねたりして学ぶことです。 思 は、自分で考えることです。日本語の「そう思う」のように、気持ちや感想を持つことだけに狭めないようにしましょう。現代語の 想 ・ 思考 が手がかりになります。 違う二つの結論 罔 は「罔し」と書いて、くらし、と読みます。見通しが利かず、得るところがないこととして読みます。字の形から、網に捕まった絵を作るのではありません。学ぶが考えないという条件に結び付けて意味を取ります。 殆 は「殆ふし」と書いて、あやふし、と読み、危ういことです。考えるだけで学ぶことがない場合の結論として置かれています。注釈には別の読みもありますが、ここではこの二つの意味を中心に比べます。 本文の発言には、学ぶ人の名も、学ぶ対象も書かれていません。そのため、読む人は自分の学び方に当てはめられます。現代語でも、文脈で省けることはあります。ただし、主語や対象を明示して文を作る練習と比べると、何が書かれていないかに気づけます。 思 を「感じる」とだけ訳すと、考える働きが抜けます。本文は、学ぶことと自分で考えることを、両方必要なものとして並べています。 語釈 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 學 動詞 教わる・学ぶ 考えることと対になる 學而不思 学ぶが考えない 思 動詞 自分で考える 感想だけではない 思而不學 考えるが学ばない 而 接続詞 前後をつなぐ ここでは一方が伴わない対比 學而不思 学ぶが考えない 不 副詞 〜しない 後ろの動詞を否定する 不思 考えない 則 接続詞 そうならば この句では結果の前 則罔 そうならば見通しが利かない 罔 形容詞 見通しが利かない くらしと読む 則罔 そうならば見通しが利かない 殆 形容詞 危うい あやふしと読む 則殆 そうならば危うい 練習 空欄を埋め、本文の句を書いてください。 學_不思_罔 學而不思則罔 の学ぶ・考えるを入れ替え、結論を危ういという字にして、後の句を組み立ててください。 空欄を埋め、本文の句を書いてください。 思而_學則殆 學而不思則罔 を、学ぶだけで考えなければ見通しが利かない、という現代語の条件文にしてください。 二つの句を暗誦した後、原文を閉じて、発言の二句を繁体字で書いてください。 二つの句を比べ、入れ替わる動詞、同じ位置の字、違う結論をそれぞれ書いてください。 二つの結論を日本語で説明してください。 本を読むだけの人と考えるだけの人を言う文を、 看书 と 思考 を入れ替えて「 只 +動詞+ 不 +動詞、 就 …」の形で、現代中国語で二文書いてください。結果の側には、一文に前に学んだ 无聊 を、もう一文に危ういことを言う 容易出错 (間違えやすい)を入れます。 ▶ で手本を聞き、 學而不思 と 則罔 の間で区切ります。後の句も同じ場所で区切り、二つの結論を意識して、暗誦できるまで読んでください。 この篇のまとめ 対句は形をそろえ、入れ替わる動詞と違う結論を比べる道具です。条件を四字、結果を二字として読み、学びと考えることの関係を保ちます。 次の篇へ 次の11.4では、知ることについて同じ字を繰り返す章を読みます。指示の語と、判断の結びを確かめます。 答え 學而不思則罔 思而不學則殆 思而不學則殆 只学习不思考,就会糊涂。 學而不思則罔,思而不學則殆。 動詞は 學 ・ 思 。同じ位置の字は 而 ・ 不 ・ 則 。結論は 罔 ・ 殆 です。 学ぶだけでは見通しが利かず、考えるだけでは危ういという違いです。学びと自分で考えることの両方が必要だと読めます。 只看书不思考,就会觉得无聊。 只思考不看书,就容易出错。 参考文献 孔子の弟子たち『論語 為政』。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。本文は抄。 出所: 当館所蔵の文書