5.40 演説 II — 形がくり返されると、耳が先に気づく — Epoché
この課で聞き取れるようになること ★ 反復 ——頭と末尾がそろう形を聞き取れる。 ★ 対句 ——語が同じで順だけ違う形に、意味より先に気づける。 ★ 三点構造 ——三つ並んで止まるところを耳で数えられる。 ★ くり返しが効く理由 を、自分の言葉で言える。 前提 : 5.39 まで。 聞く前に ★ 二つの演説を聞きます。 どちらもアメリカの大統領のもので、 二十年離れています 。 誰の演説か いつのものか どんな場面か ローズベルト 1941 年 ★ 議会への年次の教書 ケネディ 1961 年 ★ 大統領に就く日に ★ 二十年のあいだに、ラジオからテレビへ、聞かせ方は変わりました。 それでも 使っている道具は同じ三つ です。★ その三つを先に置いてから聞きます。 どの道具か 耳で何が起きるか どこを聞くか 反復 頭と末尾がそろう ★ 同じ語が返ってくるところ 対句 ★ 語は同じ、順だけが違う ★ 文の切れ目のすぐあと 三点構造 三つで止まる ★ 三つめのあとの下がる調子 ★ 大事なのは、三つとも「意味を分かってから気づく」ものではないことです。 ★ 形が先に耳に届きます。 だから 語をいくつか取りこぼしても、話の骨は落とさずに追える のです。★ これが、演説が講義( 5.25 聞編 )より聞き取りやすい理由です。 反復 — 頭をそろえ、末尾もそろえる ★ 一段落めと二段落めが、ローズベルトです。 四つの自由を並べるところで、 文の頭が The first is ・ The second is とそろいます 。原本で数えると、この形は 四回 あります。 ★ そろうのは頭だけではありません。 ★ 末尾もそろいます —— where in the world で終わる文が 四つ あります。★ ただし、そのうち三つが everywhere で、 四つめだけ anywhere です 。 ★ ここが聞きどころです。 ★ 反復はぴったりそろっているときより、最後だけわずかに崩れるときに強く残ります。 三つそろったところで耳が「次も同じ」と待ち、★ その待ちを一語ずらされる からです。 ★ ケネディの反復は、頭だけをそろえます。 Let both sides で始まる文が、演説の全体では 五回 出ます。★ 台本にはそのうち二回を入れました。 ★ 一度目で「またこの形が来る」と分かれば、二度目からは中身だけに耳を向けられます。 対句 — 語は同じ、順だけが違う ★ 四段落めの終わりを聞いてください。 ★ 二つの短い文が続きます ——前は「恐れから交渉するのはやめよう」、後は「交渉することを恐れるのはやめよう」。 どちらの文か 並び 言っていること 前の文 never negotiate out of fear ★ 怖いから譲る、をしない 後の文 never fear to negotiate ★ 話すこと自体を怖がらない ★ 使われている語は、ほとんど同じです。 違うのは 順 だけです。★ だから意味を取る前に、耳が「いま入れ替わった」と分かります。 ★ 六段落めが、この課でいちばん有名な対句です。 ask not が 二度 出て、そのあとの語順が入れ替わります。★ 「国が自分に何をしてくれるか」ではなく、「自分が国に何をできるか」。 ★ 入れ替えたことで、聞いた人の側に問いが返ります。 ★ 3.58 型編 で語の並びを変えて重さを移す形を置きました。 ★ 対句は、それを二つ並べて聞かせる形だと考えてください。 三点構造 — 三つ並べて、止める ★ 二段落めのローズベルトに、短い三点構造があります —— the hands and heads and hearts 。★ 三つとも同じ音で始まり、「そして」で三つつながります。 ★ 四つめは来ません。 ★ 三段落めのケネディは、長い三点構造です。 新しい世代を三つの句で言い表します—— born in this century 、 tempered by war 、 disciplined by a hard and bitter peace 。★ どれも「〜された」の形で始まり、三つめがいちばん長い です。 ★ 三点構造は、三つめで調子が下がります。 ★ その下がりが、「ここでひと区切り」という合図です。 ★ 長い文の途中で迷ったら、この下がりを待ってください。 ★ ただし、演説はいつも三つで止まるとは限りません。 ★ 五段落めの最後は、五つ並べて速さを作っています ——星・砂漠・病・海・学芸と商い。★ 三つは「覚えさせる」ため、五つ以上は「勢いをつける」ためです。 知っておく語 ★ この二つの演説には、日ごろの会話には出ない語が混じります。 ★ そのうち九語を辞書に入れました ので、台本の語をたどれば意味が出ます。★ 聞く前に覚える必要はありません。 ★ 台本を見て確かめる段で、分からなかった語だけを引いてください。 聞き方 ★ 設計書の手順どおり、シャドーイングまで通します。 ★ 台本を見ずに二回 聞く。★ 一度目は、六つの区切りのどこで話し手が変わるかだけを取る。 ★ 二度目は、上の三つの道具のどれが来たかを数える。 ★ 語の意味は追わなくてよい。 ★ 声を重ねて三回 。★ 反復の文は、頭の二語だけでも合わせる。 ★ 台本を見て確かめる 。★ 合わなかったところに印を付ける。 ★ もう一度、見ずに通す 。★ ここが仕上がりです。 問い 台本を聞いて、答えてください。 ★ 一段落めで、文の頭がそろうのは何回か。 ★ その二文は、どちらも同じ四語で終わります。何と言っているか。 ★ 四段落めの短い二文は、どこが入れ替わっているか。 ★ 三段落めで、新しい世代を言い表す句はいくつ並ぶか。 ★ 五段落めの最後は、いくつ並ぶか。三つではないのはなぜか。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Four Freedoms Speech US National Archives (2:37, 2016) 米国国立公文書館。四つの自由の演説を、当日の声で聞ける。 練習 台本を 上の「聞き方」の五段どおりに通す 。★ 最後の一回は、必ず台本を見ずに 。 ★ 対句を音読する 。四段落めの短い二文を、 入れ替わるところで一拍おいて 三度読む。 ★ 三つ並べて言ってみる 。自分の一日を三つの句で言い表し、 三つめをいちばん長く する。 ★ 反復を作る 。同じ二語で始まる文を三つ書き、★ 四つめだけ一語ずらす (ローズベルトがしていることと同じです)。 この課のまとめ ★ 演説の道具は三つ ——反復・対句・三点構造。 ★ 反復は頭だけでなく末尾もそろう 。★四つのうち三つが同じ語で、四つめだけずれると強く残る。 ★ 対句は語が同じで順だけが違う 。★だから意味より先に耳が気づく( 3.58 型編 )。 ★ 三点構造は三つめで調子が下がる 。★その下がりがひと区切りの合図。 ★ 三つは覚えさせるため、五つ以上は勢いをつけるため 。 ★ 形が先に届くから、語を取りこぼしても骨は追える ——演説が講義より聞き取りやすい理由です( 5.25 聞編 )。 次の課へ ★ 第 8 期の聞編は五課あります。 次の課は 5.41 、 朗読 です。★ 演説は「覚えて帰ってもらう」ための形でしたが、朗読は「その場で味わってもらう」ための形です。 ★ 同じ英語の拍が、こんどは物語と詩の側から聞こえます。 答え 「問い」の五つの答えです。 ★ 台本の一段落めでは二回 です( The first is と The second is )。★ 演説の全体では四回 あります。★ 四つの自由を一つずつ数えているからです。 ★ どちらも everywhere in the world で終わります。 ★ 演説の全体では、この末尾が四回くり返されます。 ★ そして四回めだけ、頭が anywhere に替わります。 ★ 聞くときは、三つそろったあとの一語に気を付けてください。 ★ 「恐れ」と「交渉」の順 です。★ 前の文は「恐れ」が理由の側にあり、後の文は「交渉」が恐れられる側にあります。 ★ 語を足したり引いたりはしていません。 ★ 三つ です( born in this century 、 tempered by war 、 disciplined by a hard and bitter peace )。★ どれも「〜された」の形で始まります。 ★ 五つ です(星・砂漠・病・海・学芸と商い)。★ ここは覚えてもらう場所ではなく、勢いをつける場所だからです。 ★ 三つで止めると、「これで全部」と聞こえてしまいます。 台本 ★ 六つの区切り で読まれます。★ 一段落めと二段落めがローズベルト、三段落めからがケネディ です。 In the future days, which we seek to make secure, we look forward to a world founded upon four essential human freedoms. [1] The first is freedom of speech and expression—everywhere in the world. [1] The second is freedom of every person to worship God in his own way—everywhere in the world. [1] This nation has placed its destiny in the hands and heads and hearts of its millions of free men and women; and its faith in freedom under the guidance of God. [1] Our strength is our unity of purpose. [1] We dare not forget today that we are the heirs of that first revolution. [2] Let the word go forth from this time and place, to friend and foe alike, that the torch has been passed to a new generation of Americans, born in this century, tempered by war, disciplined by a hard and bitter peace, proud of our ancient heritage, and unwilling to witness or permit the slow undoing of those human rights to which this nation has always been committed, and to which we are committed today at home and around the world. [2] So let us begin anew–remembering on both sides that civility is not a sign of weakness, and sincerity is always subject to proof. [2] Let us never negotiate out of fear. [2] But let us never fear to negotiate. [2] Let both sides explore what problems unite us instead of belaboring those problems which divide us. [2] Let both sides seek to invoke the wonders of science instead of its terrors. [2] Together let us explore the stars, conquer the deserts, eradicate disease, tap the ocean depths and encourage the arts and commerce. [2] And so, my fellow Americans: ask not what your country can do for you–ask what you can do for your country. [2] 参考文献 原文の出所: Franklin D. Roosevelt, "Annual Message to Congress(the Four Freedoms speech)"(1941)。アメリカ合衆国政府の制作物・パブリックドメイン。原文は 1 字も変えていない。https://en.wikisource.org/ 原文の出所: John F. Kennedy, "Inaugural Address"(1961)。アメリカ合衆国政府の制作物・パブリックドメイン。原文は 1 字も変えていない。https://en.wikisource.org/