精読:エピクテトス『提要』から、自分の判断を扱う短い一節 — Epoché
解説 原文と訳:私たち次第のものを分ける 『提要』第1章1節。印刷版の参照符号と校異欄を除いた原文を示す。 原文:Τῶν ὄντων τὰ μέν ἐστιν ἐφ’ ἡμῖν, τὰ δὲ οὐκ ἐφ’ ἡμῖν. ἐφ’ ἡμῖν μὲν ὑπόληψις, ὁρμή, ὄρεξις, ἔκκλισις καὶ ἑνὶ λόγῳ ὅσα ἡμέτερα ἔργα· οὐκ ἐφ’ ἡμῖν δὲ τὸ σῶμα, ἡ κτῆσις, δόξαι, ἀρχαὶ καὶ ἑνὶ λόγῳ ὅσα οὐχ ἡμέτερα ἔργα. 日本語訳:あるもののうち、私たち次第であるものと、私たち次第でないものがある。私たち次第なのは、判断、行為への衝動、欲求、回避、ひとことで言えば私たち自身の働きである。私たち次第でないのは、身体、財産、評判、公職、ひとことで言えば私たち自身の働きでないものである。 Schenkl編1916巻に収録されたSchweighäuser校訂本文の、印刷5*頁1–4行に限る。訳は本教材が原語から作成した。 出典1 語の対応と、二つのまとめ ὑπόληψιςは判断、ὁρμήは行為への衝動、ὄρεξιςは欲求、ἔκκλισιςは回避と訳した。衝動と欲求を一語にまとめない。もう一方のδόξαιは評判、ἀρχαίは公職と読む。 二つの列は、それぞれ私たち自身の働き、そうでないものという句でまとめられる。単に好きか嫌いかで分ける表ではない。 ここでの訳語を、全ての著作や用法の唯一の訳としない。 出典1 この引用が、まだ述べていないこと この節は二つの列を挙げるところで終わる。身体や財産をどう扱うかの全てや、後続の自由・害についての議論までは引用していない。 この列挙だけから、身体の世話は不要、病気や苦痛が消える、と結論しない。引用の範囲と、学説全体の評価を分ける。 出典1 原文の二つの列を、挙げられた語で比べる。 原文の区分 挙げられるもの 末尾のまとめ 私たち次第 判断・行為への衝動・欲求・回避 私たち自身の働き 私たち次第でない 身体・財産・評判・公職 私たち自身の働きでないもの 第1章1節の列挙をまとめた表。身体の世話や社会での行動の全てを不要とする指示にはしない。 参考文献 [1] Epictetus『提要』/Schweighäuser校訂本文を収録するSchenkl編1916巻。印刷頁から本教材が転記・日本語訳・区切りを作成「エピクテトス『提要』1.1」。 出典 本教材の独自翻案 CC BY-SA4.0(古代原文の新規転記、原版画像は転載しない)