9.10 問いを立てる — Epoché
この課でできるようになること ★ 答えが出る形か で問いを見分けられる。 ★ 問いを三度書き直す ことができる。 ★ 外れる答えがあるか を確かめられる。 第 4 期の論編で置いた四つを、ひととおり言える。 前提 : 9.9 まで。読は 8.104 まで。 道具 調べるために立てる問いを、英語では research question と言います。★ よい問いの条件は、一つだけです。 どんな問いか 何が言えるか ★ 答えが出る形 ★ 問いである ★ 答えが出ない形 ★ 問いの顔をした感想 ★ 「答えが出る」とは、正しい答えが分かるという意味ではありません。 ★ どうすれば答えられるかが決まっている、という意味です。 ★ 9.8 論編 の「確かめる道があるか」と同じ考え方です。 ★ あちらは文について、こちらは問いについて言っています。 ★三つの型 答えの出ない問いには、★ 三つの型 があります。 どんな問いか なぜ答えが出ないか ★ 広すぎる ★ どこまで調べれば終わりか決まらない ★ 言葉が決まっていない ★ 「よい」「大事な」の中身が人による ★ 答えが一つしかない ★ 調べる前から決まっている ★ 三つめがいちばん厄介です。 ★ 「なぜ読書は大切なのか」は、問いの形をしています。 ★ けれども、「大切でない」という答えが初めから外されています。 ★ だから、これは問いではありません。 ★ 結論を先に決めて、理由を探しに行くだけ です。★ 9.7 論編 で「別の説明をつぶして初めて自分の説明が立つ」と置きました。 ★ 別の答えが無い問いは、つぶすものがありません。 実例 ★ 読 D の篇から、三つの問いを立ててみます。 一つめ — 広すぎる問いを狭める 8.100 読編 のリンド夫人は、★ 一つの問いから始めました。 Now, where was Matthew Cuthbert going and why was he going there? [1] ★ 「どこへ行くのか、なぜそこへ行くのか」。 ★ 二つの問いが並んでいます。 どちらの問いか 答えは出るか ★ どこへ行くのか ★ 出る 。聞けば分かる ★ なぜ行くのか ★ 出る 。ただし、本人に聞く必要がある ★ 二つとも答えが出ます。 ★ だから、リンド夫人は聞きに行けました。 ★ もし「マシューはどんな人か」と問うていたら、行くところがありません。 ★ 広い問いは、次の一歩が決まりません。 ★ 問いのよさは、 次に何をすればよいかが分かること で測れます。 二つめ — 答えが出ないと分かっている問い 8.104 読編 の記事には、★ 答えの出ていない問いが書いてあります。 She said it is unclear what caused such a sharp decrease in the western population in just one year [2] ★ 「一年でこれほど急に減った原因は、はっきりしない」。 ★ これは、よい問いです。 ★ 答えは出ていませんが、答えが出る形をしています ——★ 原因が分かれば答えられます。 どんな状態か 問いとして 文章として ★ 答えが出る形で、まだ出ていない ★ よい問い ★ そう書いてよい ★ 答えが出ない形 ★ 問いでない ★ 立て直す ★ 9.7 論編 で「つぶしきれない反対は残したまま書く」と置きました。 ★ 答えの出ていない問いも同じです。 ★ 残したまま書いてよい。 三つめ — 外れる答えがある問い 8.81 読編 のホームズは、★ 問いを一つだけ立てました。 I was ascertaining whether the cellar stretched out in front or behind [3] ★ 「地下室が前に伸びているか、後ろに伸びているかを確かめていた」。 ★ 答えは二つしかありません。 ★ 前か、後ろか。 ★ そして、どちらでもありえました。 ★ これが、よい問いの三つめの条件です ——★ 外れる答えがあること。 どんな問いか 調べる意味があるか ★ 答えが二つ以上ありうる ★ ある ★ どう答えても同じ結論 ★ ない ★ ホームズは、舗道をたたいて前を確かめました。 ★ 前ではなかった。 ★ だから後ろだと決まりました。 ★ もし前でも後ろでも同じ結論になるなら、たたく必要がありません。 ★ 調べる手間をかける価値は、外れる可能性があるところにあります。 ★問いは三度書き直す よい問いは、★ 一度では書けません。 ★ 広い問い を書く。「なぜ蝶が減っているのか」 ★ 狭い問い に直す。「西部の蝶が去年一年で減った原因は何か」 ★ 確かめられる問い に直す。「去年七月の熱波と、西部の蝶の減少に関わりはあるか」 ★ 三段で、できることが決まってきます。 ★ 三つめなら、気温の記録と蝶の記録を突き合わせればよい。 ★ 一つめのままでは、何をすればよいか分かりません。 ★ 書き直すのは、問いを小さくするためではありません。 ★ 次の一歩を決めるためです。 言い回し 問いを立てて書くときの言い方を置きます。★ どれも池から取りました。 英文 日本語訳 問いを示す That's what I want to know. [4] それが知りたい。 ★ 問いを立てる 。★ 調べる前に、これを一行書く That's what we want to know. [5] それが私達の知りたいことです。 複数で立てる 。★ 論文では we を使うことが多い What happened next, I don't know. [6] 次に何が起きたのか、私は知らない。 ★ 分からないと書く 。問いのまま残す形 ★ 三つめに注目してください。 ★ 「次に何が起きたのかは、分からない」。 ★ 分からないと書くのは、 8.104 読編 の記事と同じ作法です。 英文 日本語訳 答えが出ないときに書く It seems that he knows about it. [7] 彼はそれについて知っている様だ。 見え方を言う ( 9.8 論編 ) Even so, there are risks. [8] それでも、リスクはある。 ★ 残っていると書く ( 9.7 論編 ) Nevertheless, the topic is worth discussing. [9] それでもやはり、その話題は話し合う価値がある。 ★ それでも調べる価値がある と言う ★ 三つめが、この課の締めです。 ★ 「それでもやはり、その話題は話し合う価値がある」。 ★ 答えが出ていなくても、問いに値打ちがあることは言えます。 やってみる 自分がいま知りたいことを一つ選び、★ 広い問い として一行書く。 それを 狭い問い に直す。★ いつ・どこ・誰のことかを入れる。 さらに 確かめられる問い に直す。★ 「どうすれば答えられるか」を一行で書けるようになるまで 直す。 ★ 外れる答えを探す練習 。三つめの問いに対して、 ありうる答えを二つ 書く。★ 二つ書けなければ、それはまだ問いになっていません。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 How Library Stuff Works - Choosing a Research Question McMaster Libraries (2:46, 2021) 問いの立て方。マクマスター大学図書館。★CC BY(再利用可) 練習 「実例」に引いた三つの英文を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。 「言い回し」の六文を音読する。★ It seems that と Even so は 続けて 読んで、 働きの違い を耳で覚えてください。 ★ Nevertheless, the topic is worth discussing. [9] を そらで言えるまで 音読する。★ 答えの出ない問いを書き残すときの一文です。 AI への頼み方 問いを立ててもらうと、AI は きれいな問いを並べてくれます 。★ けれども、答えの出ない問いが混じります。 頼み方を三つ置きます。 何を頼むか 頼み方の型 ★答え方を書かせる 「立てた問いそれぞれについて、 どうすれば答えられるか を一行で書いてください」 ★外れる答えを出させる 「それぞれの問いに、 ありうる答えを二つ 書いてください。二つ書けない問いは外してください」 狭めさせる 「広すぎる問いがあれば、 いつ・どこ・誰 を入れて狭めてください」 ★ 二つめが効きます。 ★ ありうる答えを二つ書かせると、答えの決まっている問いが落ちます。 ★ AI は、頼んだ人が望む結論に向かう問いを立てがち です。★ だから、反対の答えも書かせます。 第 4 期の論編、四つの道具 この期の四課で置いたものを、まとめておきます。 どの課 何を置いたか 9.7 論編 ★ 別の説明をつぶす 9.8 論編 ★ 事実と意見を分ける 9.9 論編 ★ 数が隠しているものを見る この課 ★ 答えの出る問いを立てる ★ 四つを並べると、一つの線が見えます。 ★ どれも「疑う」道具 です。 ★ 第 3 期の論編は「組み立てる」期でした ( 9.3 論編 〜 9.6 論編 )。★ 第 4 期は「疑う」期です。 ★ 順が大事です。 ★ 組み立てられない人が疑っても、何も出てきません。 ★ 組み立てられるようになってから疑うと、自分の組み立てが直せます。 ★ そして、この四つは全部、自分に向けて使うものです。 ★ 人の文章を切るためではありません。 ★ 自分の文章を、出す前に自分で切るため です。 この課のまとめ ★ よい問いは、答えが出る形をしている。 正しい答えが分かるという意味ではなく、どうすれば答えられるかが決まっている。 ★ 答えの出ない問いには三つの型 ——広すぎる/言葉が決まっていない/答えが一つしかない。 ★ 「なぜ〜は大切なのか」は問いではない。 「大切でない」という答えが初めから外されている。 ★ 問いのよさは、次に何をすればよいかが分かることで測れる。 ★ よい問いには、外れる答えがある。 どう答えても同じ結論なら、調べる意味がない。 ★ 問いは三度書き直す ——広い問い → 狭い問い → 確かめられる問い。 ★ 答えが出ていない問いは、残したまま書いてよい ( 9.7 論編 )。 ★ 第 3 期の論編は「組み立てる」期、第 4 期は「疑う」期。 ★ 四つとも、自分の文章を出す前に自分で切るための道具。 次の課へ 論編の第 4 期はここで終わりです。★第 4 期の学習順では、論の次は 作 です。次の課は 10.9 、 説明文 150 語 です。★ 疑う道具をそろえたので、こんどは書きます。 ★ そして、書いたものをこの四つの道具で自分で切ります。 答え 「やってみる」の四つの答えです。 ★ 広い問いは、たいてい「なぜ」で始まります。 ★ それでかまいません。 ★ ここは、書き直す前の段階です。 ★ いつ・どこ・誰を入れると、問いが急に小さく見えます。 ★ 小さくなったと感じたなら、うまくいっています。 ★ 大きい問いは、答えられないから大きく見えるだけ です。 ★ 「どうすれば答えられるか」が一行で書けたか。 ★ 書けないうちは、まだ直す余地があります。 ★ 書けたら、その一行がそのまま調べ方になります。 ★ ありうる答えが二つ書けたか。 ★ 一つしか書けなかったなら、答えが決まっている問いです。 ★ そのときは、自分が何を確かめたいのかをもう一度考えます。 ★ たいていは、確かめたいのではなく納得したいのです。 ★ それは調べることではありません。 参考文献 原文の出所: L. M. Montgomery『Anne of Green Gables』(1908), "CHAPTER I. Mrs. Rachel Lynde Is Surprised(1/3)"。パブリックドメイン(Project Gutenberg #45)。原文は 1 字も変えていない。https://www.gutenberg.org/ebooks/45 原文の出所: VOA Learning English, "monarch_butterfly_count_nears_30_year_low"。パブリックドメイン(アメリカ合衆国政府の制作物)。原文は 1 字も変えていない。https://learningenglish.voanews.com/ 原文の出所: Arthur Conan Doyle『The Adventures of Sherlock Holmes』(1892), "II. THE RED-HEADED LEAGUE(5/8)"。パブリックドメイン(Project Gutenberg #1661)。原文は 1 字も変えていない。https://www.gutenberg.org/ebooks/1661 Tatoeba 文 #1256793(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/1256793 Tatoeba 文 #43112(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/43112 Tatoeba 文 #264169(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/264169 Tatoeba 文 #291437(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/291437 Tatoeba 文 #10987888(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/10987888 Tatoeba 文 #42990(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/42990