9.2 一文で要約する — Epoché
この課でできるようになること 要約が 主張だけを残すこと だと分かる。 原文から 要約になる一文を選べる 。 文章の種類によって、その一文が どこにあるか を言える。 選べないときに 日本語で一文にしてから英語に載せる 手順を持つ。 前提 : 9.1 まで。 道具 要約とは 捨てること です。短く書き直すことではありません。 9.1 論編 で分けた二つのうち、 根拠を捨てて、主張だけを残す 。それだけです。 だから、要約の良し悪しは 何を捨てたか で決まります。短くても主張が落ちていれば失敗で、長くても主張が残っていれば成功です。 ★三つの段——選ぶ・削る・作る どの段 すること いつやるか 選ぶ 原文の中から 要約になる一文を探す この課 。まずここだけ 削る 選んだ一文から、要らない語を落とす 第 3 期 作る 原文に無い一文を、自分で組み立てる 第 4 期以降 学校では三つめだけを「要約」と呼びますが、 順は逆 です。選べない人が削れることはなく、削れない人が作れることもありません。 そして、選ぶのは 思ったより多くの場合にできます 。書き手は、たいてい どこかに一度は言っている からです。探さずに作り始めるのは、 書いてあることを読まずに書く のと同じです。 実例 読 B の篇で、 要約になる一文 を探します。在り処は種類によって決まっています。 説明文 — 一文目が要約 8.22 読編 の書き出しです。 A hospital is a place where a person goes to be healed when they are sick or injured. [1] これで 記事ぜんぶの要約になっています 。残りの三段落は、泊まる患者と泊まらない患者、道具と機械、歴史とお金——どれもこの一文の 中身を詳しくしたもの です。 8.24 読編 も同じです。 A book is a set of printed sheets of paper held together between two covers. [2] 説明文の一文目は、たいてい定義 です。そして定義は、その記事ぜんぶの要約になります。 8.18 読編 で「段落の頭の一文に主題がある」と置きましたが、 文章の頭の一文には、文章ぜんぶの主題があります 。 ただし、 8.24 読編 で見たとおり、 この定義は途中で破られる ことがあります。要約として使うときは、 最後まで読んでから決めて ください。 寓話 — 最後の一文が要約 8.33 読編 の蟻とキリギリスの終わりです。 There's a time for work and a time for play. [3] 9.1 論編 で置いたとおり、 寓話は根拠が先、主張が最後 でした。だから要約になる一文も最後にあります。 教訓がそのまま要約 です。 説明文と寓話で、在り処がちょうど逆になっています。これは覚えておく値打ちがあります—— 説明文は先に言い、物語は後に言う 。 物語 — 要約になる一文が無い 8.30 読編 の、苺を母のために持ち帰る話です。最後の一文はこうでした。 The nearer he came to his home, the less he wished to taste them. [4] 美しい一文ですが、 要約ではありません 。「家に近づくほど食べたくなくなった」だけでは、 誰が何をした話か分かりません 。 物語には、要約になる一文が 無いのがふつう です。物語は 出来事の連なり でできていて、その連なり自体が中身だからです。 8.27 読編 で置いたとおり、物語は 説明せず見せます 。説明していないものを抜き出すことはできません。 では、物語はどう要約するか。 作るしかありません 。ただし、第 2 期では英語で作りません。下の「選べないとき」でやり方を置きます。 台本 — 締めの一言が要約 8.38 読編 の最後、アナの締めの言葉です。 There are many different jobs you can have in Washington, D.C. [5] 台本は物語に近いのですが、 番組なので締めの言葉があります 。話し手が最後に「今日の話は何だったか」を言うので、そこが要約になります。 これは台本にかぎりません。 誰かに向けて話す文章には、締めがあります 。講演も、授業も、報告も同じです。 締めを聞き逃すと、要約を自分で作る羽目になります 。 四つを並べる 文章の種類 要約になる一文は 理由 説明文 一文目 (定義) 先に言ってから詳しくする 寓話 最後の一文 (教訓) 納得させてから言う 物語 無い 出来事の連なりが中身 台本・講演 締めの一言 聞き手に向けて話しているから 選べないとき — 日本語で作ってから英語に載せる 物語のように、要約になる一文が無いときの手順です。三つ。 日本語で一文にする 。「誰が、何をして、どうなったか」の三つだけを入れる。形容詞も、場面も、せりふも入れない。 その一文を、さらに短くする 。二十字を目安に。入らないものは、 根拠だったということ です。 英語の型に載せる 。型は下の「言い回し」に置きます。型に載らなければ、まだ長すぎます。 一つめで 日本語を通す のが要です。英語で考えようとすると、 言える形に合わせて中身がゆがみます 。先に中身を決めてから、器を選んでください。 言い回し 要約を言うときの型です。行を押すと音が鳴ります。 要約だと知らせる 英文 日本語訳 要約の合図 In a word, life is short. [6] 要するに人生は短い。 In a word ——「一言で言えば」。 そのあとが要約 だと知らせる In short, he was wrong. [7] つまり、彼が間違ってたのよ。 In short ——「つまり」。話したあとで締めるときに使う The point is they're too young. [8] 要は、彼らがあまりに若すぎるということです。 The point is ——「要は」。 主張だけを言う ときの形 三つとも 合図 です。英語では、要約に入る前に合図を置くのがふつうです。合図があると、聞く側は ここからは根拠を待たなくてよい と分かります。 何についての文章かを言う 英文 日本語訳 題目と要点 This book is about education. [9] これは教育に関する本です。 This book is about … —— 題目だけ を言う形。要約の半分 I couldn't even understand the main point of what he said. [10] 私は彼の話の要点が分からなかった。 the main point of … ——「〜の要点」。要点という語そのもの Take down the main points of the speech. [11] 話の要点を書き留めなさい。 要点を 書き留めよ という言い方。聞きながら要約するときの心得でもある 一つめに気をつけてください。 This book is about education. [9] は 要約ではありません 。「教育についての本だ」と言っただけで、 教育について何を言っているか がありません。 これが初学者のいちばん多い失敗です。 題目を言って要約したつもりになる 。要約には、 題目と、それについて何を言っているか の二つが要ります。 言ったこと 要約になっているか この本は教育についての本だ なっていない 。題目だけ この本は、教育は家で始まると言っている なっている 。題目 + 言っていること やってみる 8.20 読編 (学校の記事)を開いて、 要約になる一文を選ぶ 。説明文なので、在り処は決まっています。選んだら、それが記事ぜんぶを覆っているかを確かめる。 8.34 読編 の三つの寓話から、 要約になる一文があるものを一つ選ぶ 。三つのうち一つにしかありません。 無い二つがなぜ無いか も一行書く。 8.29 読編 (学校をさぼる子)を 日本語で一文に要約する 。二十字以内。「誰が、何をして、どうなったか」だけを入れる。 書いた日本語の一文を、 The point is that … の形で 英語にする 。載らなければ、日本語の一文がまだ長すぎます。 短くしてから、もう一度載せる 。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 What is a main idea? | Reading | Khan Academy Khan Academy (5:14, 2020) 中心の考えとは何か。カーンアカデミー(非営利) Quick Reading Strategies University of Washington Libraries (1:45, 2015) 速く読むための手つき。ワシントン大学図書館 練習 「実例」に引いた五つの一文を、 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。五つのうち どれが要約で、どれが要約でないか を言いながら読む。 「言い回し」の六文を音読する。合図の三つ( In a word ・ In short ・ The point is )は、 そのあとに一拍おいて 読む。合図のあとに間があると、聞く側が構え直せます。 8.33 読編 の教訓の一文を そらで言えるまで 音読する。短い一文なので覚えられます。 要約は覚えられる長さでなければ要約ではありません 。 AI への頼み方 要約は、AI がいちばん得意に見えて いちばん確かめにくい 仕事です。頼み方を三つ置きます。 何を頼むか 頼み方の型 選ばせる 「次の文章から、 要約になる一文をそのまま引用して ください。言い換えずに、原文の一文をそのまま出してください」 無いと言わせる 「要約になる一文が 無い場合は『無い』と答えて ください。作らないでください」 照らし合わせる 「あなたの要約に出てくる内容が、 原文のどこに書いてあるか を一つずつ示してください」 二つめが大事です。 AI は「無い」と言うのが苦手 で、頼めば必ず何かを作ります。作られた要約は、 もっともらしいのに原文に無いこと を含んでいることがあります。 だから三つめを必ず付けてください。 要約の各部分が原文のどこから来たか を示させる。示せないところがあれば、 そこは AI が足したもの です。 9.1 論編 で置いた注意と同じです—— AI が出したものは、確かめるまでただの文 。要約では、確かめる相手が 原文 になります。 この課のまとめ ★ 要約とは捨てること。 根拠を捨てて、主張だけを残す。良し悪しは 何を捨てたか で決まる。 ★ 要約は三段——選ぶ・削る・作る。 第 2 期は 選ぶ だけ。選べない人が削れることはなく、削れない人が作れることもない。 ★ 要約になる一文の在り処は、種類で決まっている。 説明文は一文目、寓話は最後の一文、台本・講演は締めの一言、 物語には無い 。 説明文は先に言い、物語は後に言う。 物語のように無いときは 日本語で一文にしてから英語の型に載せる 。英語で考え始めると、言える形に合わせて中身がゆがむ。 ★ 題目を言っただけでは要約ではない。 「〜についての本だ」+「それについて何を言っているか」の二つが要る。 要約の前には 合図 を置く( In a word ・ In short ・ The point is )。 要約は覚えられる長さでなければ要約ではない。 AI には 「無い場合は無いと答えて」 と頼む。そして 原文のどこから来たか を示させる。 次の課へ 次の課は 10.1 、 作編 のいちばん初めです。論編で 読んだものを縮める ことをしました。作編では 自分のことを書きます 。一課目の課題は 自己紹介文を八十語 。第 2 期の作編は四課あり、どれも 手本を見て、型に載せて、自分で点検する という同じ運び方をします。英語を 出す側 に回る、その最初の一歩です。 答え 「やってみる」の四つの答えです。 一文目です—— A school is an educational learning institution designed to provide learning spaces and learning environments で始まる文。説明文の一文目は定義で、記事ぜんぶを覆います。途中の一文を選んだ場合、 そこだけ詳しい話 を選んでいます。要約は いちばん広い一文 です。 要約になる一文があるのは 一つめ(星占い師) で、 Take care of the little things and the big things will take care of themselves. です。残り二つに無いのは、 窓の外で切れているから です( 8.34 読編 )。教訓は話の最後に置かれるので、 話が終わっていなければ教訓も入っていません 。 「学校をさぼった子が舟に乗り、風に流された」——このくらいで十分です。「晴れた朝に」「なまけた子らと」などが入っていたら、 それは根拠 です。落としてください。 「載らない」と感じたなら、それが正しい感覚です。 The point is that … のうしろに入るのは 一つの主語と一つの動詞 だけ。「さぼった」と「流された」の二つを入れようとすると入りません。 どちらが主張か を決めてください。この話の題は「さぼる子」なので、主張は前のほうです。 参考文献 原文の出所: Simple English Wikipedia, "Hospital"。CC BY-SA 4.0。原文は 1 字も変えていない。https://simple.wikipedia.org/wiki/Hospital 原文の出所: Simple English Wikipedia, "Book"。CC BY-SA 4.0。原文は 1 字も変えていない。https://simple.wikipedia.org/wiki/Book 原文