14.29 半韻 — 揃っていないのに、韻に聞こえる — Epoché
この篇でできるようになること ★ 賛美歌の拍 (長い行と短い行の組)が数えられる。 ★ 半韻 (近い音で済ませる韻)が分かる。 ★ 比喩を先に置いて名を後に出す 作りが追える。 ★ 短い詩の読み方 が身につく。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は どの篇から読んでもかまいません 。★ 前の篇を読んでいなくても通じるように書いてあります。 ★ これは 十九世紀のアメリカ の詩 です。★ 書いた人は 生きているあいだにほとんど発表しませんでした 。★ この版は 没後に編まれた詩集 で、★ 題( Hope )も その詩集が付けた もの です。 どちらのことか 確かめること ★ 歴史のこと ★ この国がどう作られたか( 12.12 知編 ) ★ 拍のこと ★ 賛美歌の英語がどこから来たか( 12.17 知編 ) ★ 8.209 読編 は 同じ詩集の別の詩 です。★ あちらは 韻を踏みません でした。★ この詩は 踏もうとしている のですが、★ 半分は 揃っていません ——★ そこが この詩人の印 です。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。★ 韻文なので 一行が一段落 です。本文は 70 語、行は 12 行です。 ★ 数えました 。★ 偶数行は すべて六音節 で、★ 奇数行は 七か八音節 です。 どの行か 音節 ★ 奇数行(一・三・五…) ★ 7・8 音節 ★ 偶数行(二・四・六…) ★ 6 音節 ★ 長い行と短い行が 交互 です。★ これは 賛美歌の拍 で、★ 教会で歌う歌の形 です( 12.17 知編 )。★ だから 節に乗せて歌える ——★ 実際、この詩人の詩は 賛美歌の節で歌えます 。 ★ ダッシュを数えたら 0 個 でした 。★ この詩人は 手書きの原稿でダッシュを多く使った と言われ ますが、★ この版には 一つもありません ——★ 読点と分号に 直されて います。 ★ 版によって 息づかいが変わる ということです。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 望みとは、羽のあるもの、 魂のなかにとまって、 そして言葉のない節を歌い、 決して、少しもやむことがない。 そして疾風のなかでいちばん美しく聞こえる。 その嵐は、よほど激しいものでなければならない、 この小さな鳥をくじけさせることができるとしたら—— こんなにも多くの者を温めてきた鳥を。 私はそれを、いちばん寒い土地で聞いた、 いちばん見知らぬ海の上でも。 それでも、決して、どんなに追いつめられたときにも、 それはパンのかけら一つも、私に求めなかった。 語釈 帯の外の語は 8 語しかありません。★ 第 III 部でいちばん少ない です。★ やさしい語だけで書かれていて、 難しいのは組み立てだけ ——★ abash (気をくじく)と extremity (窮まったところ)を押さえれば読め ます。 語(品詞) 意味 注 abash en 動 気をくじく A single sharp question was enough to abash the confident speaker. たった一つの鋭い質問が、その自信ある話し手の気をくじくのに十分でした。 chillest en 形 いちばん冷える January brought the chillest morning the town had felt in years. 一月は、その町が何年も感じなかったいちばん冷える朝をもたらしました。 crumb en 名 パンのかけら A tiny crumb of bread fell beneath the wooden table. 小さなパンのかけらが木の卓の下に落ちました。 extremity en 名 切り詰まったきわ。窮まったところ Only in extremity did the old captain finally ask for help. 窮まったところに至って、老いた船長はついに助けを求めました。 feathers en 名 羽 Bright feathers covered the floor near the parrot's cage. オウムの籠の近くの床は、明るい羽で覆われていました。 gale en 名 強い風 A sudden gale tore several branches from the old elm. 急な強い風が、古いにれの木からいくつかの枝を引き裂きました。 perches en 動 止まり木にとまる The small finch perches quietly on the same branch each dawn. その小さな鶸は、夜明けごとに同じ枝の止まり木にとまります。 sore en 形 はなはだしい His arm was sore for days after chopping all that wood. あの木をすべて割った後、彼の腕は何日もはなはだしく痛みました。 半韻 — 揃っていない韻 ★ 行末の音を機械で測りました。 ★ 四行ずつ三つのまとまり があり、★ 一・三行めと二・四行めが 揃う形 です。★ ところが、 機械で揃うのは 3 組だけ でした。 どのまとまりか 揃った組/揃わない組 ★ 一〜四行 ★ 揃わない: feathers / words 、 soul / all ★ 五〜八行 ★ 揃う: heard / bird 、 storm / warm ★ 九〜十二行 ★ 揃う: sea / me 。揃わない: land / extremity ★ 一つめのまとまりを見てください ——★ soul と all 。 ★ どちらも l で終わり ますが、★ 母音が違い ます。★ これを 半韻 と呼び ます——★ ぴったりではないが、 近い 。 どちらの韻か 何が揃うか ★ 完全な韻 ★ 最後の母音と、そのあとの音のぜんぶ ★ 半韻 ★ 子音だけ、または母音だけ ★ なぜ半韻を使うのでしょうか 。★ この詩に即して言えば、 ぴったり揃わないことが 意味に合っている からです。★ この詩は 望みが かすかに 続くこと を書いて います——★ だから 音も、かすかに外れて います。 ★ 14.23 英語の名文 で 機械が外す韻 を見ました 。★ あちらは 測り方の穴 でしたが、★ こちらは 本当に揃っていません ——★ この二つを 分けて考えて ください。 比喩を先に置いて、名を後に出す ★ 第一行が 定義の形 です。 Hope is the thing with feathers ★ the thing with feathers —— 「羽のあるもの」 。★ 鳥だとは 言っていません 。 ★ bird という語が出るのは 7 行め です。 That could abash the little bird どの行か 何と呼ぶか ★ 一行め ★ 羽のあるもの ★ 二〜六行 ★ とまる、歌う、やまない(動きだけ) ★ 7 行め ★ 小さな鳥(ここで初めて名が出る) ★ 順が大事 です。★ 先に 名を出してしまうと 、 ただのたとえ話になり ます ——★ 「望みは鳥である」 。★ 名を伏せると、 読み手は 何のことかを探しながら読み ます 。 ★ もう一つ、 And が 5 回 出ます 。★ 行の頭に並ぶ ので、★ 文が 足し算のように伸び ます ( 3.44 型編 )。★ これも 賛美歌や聖書の運び です( 12.17 知編 )。 訳 ★ 難しいところだけ訳します。 原文の要 日本語 Hope is the thing with feathers ★ 望みとは、 羽のあるもの And sings the tune without the words ★ そして 言葉のない節 を歌う And sore must be the storm ★ その嵐は、 よほど激しいものでなければならない It asked a crumb of me. ★ それは パンのかけら一つ も、私に求めなかった ★ 三つめが難所 です。★ 語順が崩れて いて、★ ふつうに直すと the storm must be sore です。★ sore を 行の頭に出して います ( 3.29 型編 ・ 3.58 型編 )。★ そのあとに 「その鳥をくじけるほどの嵐」 と続く ので、★ 順が 「よほどの嵐でなければ → くじけない」 になり ます。 音読 三周します 。★ 一周めは奇数行だけ 、★ 二周めは偶数行だけ 、★ 三周めは通して 読みます。判定は次の 2 文でします。 Hope is the thing with feathers It asked a crumb of me. 一文めは、★ Hope のあとで 切らないで ください。 ★ 定義の文 なので、★ is をまたいで ひと息で 言います。★ 強く読むところは 三つ ——★ Hope ・ thing ・ feath- です。 二文めは、★ いちばん静かに、 下げて 読んでください。★ 六音節しかありません 。★ ここが 詩の終わり で、★ 直前の行が 七音節 ですから、★ 短くなることで 閉じた感じ が出ます。 この篇で使う型 型の名 この篇での出方 戻る課 定義の文型 Hope is the thing with feathers 3.37 型編 倒置 And sore must be the storm 3.29 型編 並列構造 And never stops at all 3.44 型編 関係詞 That perches in the soul 3.13 型編 比喩 the thing with feathers 3.61 型編 考える ★ 最後の二行が、 この詩でいちばん静かなところ です。 Yet, never, in extremity, It asked a crumb of me. ★ 考えてほしいのは、 なぜ「求めなかった」で終わるのか です。★ 手がかりは crumb (パンのかけら) ——★ いちばん小さいもの です。★ 望みは 何も取らずに、ずっと歌っていた ——★ それを ほめているのか、不思議がっているのか 。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 "'Hope' is the thing with feathers" by Emily Dickinson Poetry Foundation (0:51) Poetry Foundation(非営利)。この篇の詩そのものの朗読(51 秒)。偶数行が六音節でそろうのが聞き取れる。★この 1 本だけ probe が lengthSeconds を返さないので、長さは検索頁の実測値(0:51)。 練習 原文を 通して音読 する。3 周する。1 周目は奇数行だけ、2 周目は偶数行だけ、3 周目は通して読む。★ 偶数行はどれも六音節。そろっているか確かめること。 ★ 韻を耳で判じる 。六組の行末の語を並べ、 完全に揃う/近いだけ で分ける。★ 機械と自分の判じが違った組 を書く。 ★ 名を先に出す 。第一行を「望みは鳥である」の形に書き直し、 詩がどう変わるか を一行で書く(日本語でよい)。 この篇のまとめ ★ 賛美歌の拍 ——偶数行はすべて 6 音節、奇数行は 7・8 音節( 12.17 知編 )。 ★ この版にダッシュは 0 個 ——版によって息づかいが変わる。 ★ 韻を踏む形なのに、機械で揃うのは 6 組のうち 3 組 。 ★ 半韻=子音だけ、または母音だけが揃う韻 —— soul / all 。 ★ 14.23 英語の名文 の「機械が外す韻」とは別のこと ——あちらは測り方の穴、こちらは本当に揃っていない。 ★ 比喩を先に置いて、名を後に出す —— bird は 7 行めで初めて出る。 ★ And が 5 回、行の頭に並ぶ ——足し算のように伸びる( 3.44 型編 )。 ★ 終わりは六音節で、いちばん静か —— It asked a crumb of me. 。 次の篇へ 次の篇は 14.30 、 イェイツの短い詩 三つ です。★ 第 III 部の最後の篇 で、★ 一人の詩人の 三つの詩 を並べます。★ 三つで 韻の作りが三通り ——★ 最後の一つは 同じ語で韻を踏み ます。 答え ★ 三周したとき。 ★ 奇数行だけを読むと 言い足りない感じ 、★ 偶数行だけを読むと 短く切れる感じ になります。★ 通して読むと 長・短・長・短 で 歌の拍になり ます ——★ 知っている賛美歌の節に 乗せられる はずです。 ★ 韻を耳で判じたとき。 ★ 機械と同じ判じになった組が多い はずです。★ 分かれやすいのは feathers / words です——★ どちらも z の音で終わる ので、★ 耳では 近い と感じ ます。★ これが 半韻の働き です——★ 揃っていなくても、 結んで聞こえます 。 ★ 名を先に出したとき。 ★ 詩が 説明になり ます 。★ 「望みは鳥である」と言われたら、 読み手はそこで納得して止まり ます 。★ 本文の形だと、 7 行めまで 探しながら読む ので、★ そのあいだに とまる・歌う・やまない が ぜんぶ望みの話として入り ます。 参考文献 原文の出所: Emily Dickinson『Poems』(1890),「Hope」, "Poems (1890),「Hope」"。パブリックドメイン(1929 年より前の出版物)。パブリックドメイン(Project Gutenberg)。原文は 1 字も変えていない。https://www.gutenberg.org/ebooks/12242