9.4 者と所 — 名詞化の二方向 — Epoché
この課でできるようになること 者 と 所 が、どちら側を取り出すかを説明できます。 所 の右を読み、名詞のまとまりの終わりを探せます。 所 と 者 が同じ句にある形を、まとまりに分けて読めます。 原文を書き戻し、現代語の 的 を使った形にも替えられます。 前提 :9.3。文を名詞のまとまりとして読む考え方を使います。 取り出す側と、置く位置を比べる 者 ・ 所 は、どちらも動詞などのまとまりから名詞のまとまりを作ります。日本語で「〜するもの」と訳せる場合があるため、同じ働きに見えるかもしれません。 しかし、 者 はする側、 所 は動作の向かう先を取り出します。食べるという動作で考えるなら、する人と、食べるものの違いです。 所 は物事だけでなく、その動作に関わる場所も表します。 字 置く位置 取り出す側 原文の例 者 動詞などのまとまりの後ろ 動作をする人・もの 知人者 [1] 所 動詞などのまとまりの前 動作の向かうもの・ところ 己所不欲 [2] 者 は後ろから、 所 は前から、まとまりを作ります。 者 の手前には何が入っていたか、 所 の後ろには何が続くかを見ます。位置を確かめるだけでも、同じ訳語に引きずられにくくなります。 者 は、動作をする側を取り出す 知人者、智,自知者、明 [1] は、人を知る 者 は知恵があり、自分を知る 者 は聡明だと述べています。 知人 は人を知るという動作です。その後ろに 者 を置くと、人を知る人を表します。 自知者 [1] も同じ向きです。知る対象は自分ですが、者で取り出すのは、それを知る側です。前の動詞が何を対象にしているかと、 者 がどちら側を取り出すかは、分けて考えます。 物語に、人物を登場させる 宋人有耕田者 [3] は、宋の国の人に、田を耕す 者 がいたという書き出しです。 耕田 に 者 を付け、田を耕す人を取り出しています。 有 の後ろに、その人がどんな人かを述べたまとまりが来ます。日本の昔話で「あるところに〜がいました」と人物を出すのに似た役目です。ここから、その人に起きた出来事を読むことになります。 文の最後の者だけを「もの」と訳して済ませず、どこからが人物の説明かを見てください。この例なら、田を耕すという動作まで戻って、一まとまりにします。 所 は、ものや場所を取り出す 己所不欲,勿施於人 [2] の前半は、自分がしてほしくないことです。自分が望まない人を取り出すのではなく、望まない対象を取り出します。 所 の後ろに、否定の 不 と、望むという動詞の 欲 が続きます。 所 を見た瞬間には区切りません。不欲まで読んで初めて、何を取り出したかが分かります。前の課で見た否定の範囲も、ここで役立ちます。 場所を表す例は、 道之所存、師之所存也 [4] です。道があるところに、師がいると述べています。前半と後半の 所 は、それぞれ道のあるところ、師のあるところを表します。 この 存 は、何かに動作を加えるという意味ではありません。そのため 所 を、いつも動作を受ける物だと考えると読みにくくなります。ものか、ところかを、後ろの動詞と文全体から選びます。 者 も 所 も「〜するもの」と訳すと、する側か、向かう先かが隠れてしまいます。まず「する人」「その人が〜するもの(対象)」「その動作に関わる場所」と言い分け、その後で自然な訳にします。 所 の右を、途中で切らない 舟から剣を落とした人は、舟に印を付けて 是吾劍之所從墜 [5] と言います。ここが、私の剣が落ちたところだ、という意味です。 是 はここを指し、 吾劍 は落ちた剣が誰のものかを示します。最後の 所從墜 [5] が、そこから落ちたところというまとまりです。從で止めると、そこから何が起きたのかがまだ読めません。墜まで追います。 之 は前の剣と、後ろの 所 のまとまりをつないでいます。 所從墜 は名詞のまとまりなので、この 之 は 文編 3課 で見た、名詞を結ぶ「の」に当たります。剣がそこから落ちたという関係を保って読みます。 読み終えたら、まとまり全体を「〜したところ」と言い換えます。それを 是 の後ろへ置くと、「ここが、剣が落ちたところだ」とつながります。短く切りすぎていないかを確かめる方法です。 所 の次の一字まで読めば終わり、とは限りません。この例では從だけでなく墜まで必要です。動作を表す語を探し、前後の文につながる一まとまりにしてください。 所 と 者 が、同じ句にある 所欲有甚於生者 [6] では、望むものの中に、命よりも大切なものがあると述べています。まず 所欲 で望むものをまとめます。次に 甚於生者 で命よりも大切なものをまとめます。 二つのあいだの 有 が、「その中に、そういうものがある」と結びます。 者 は人だけを表すのではなく、この例のように、ある性質を持つものも取り出します。 所見无非牛者 [7] も、二つのまとまりに分けます。 所見 は目に入るもの、 非牛者 は牛でないものです。そのあいだの无が、牛でないものは無いと述べています。 この原文では、 無 に当たる字を 无 と書いています。牛が見えないという意味ではありません。目に入るのは牛ばかりだった、ということです。否定の字を見て、何を打ち消しているかを最後まで追います。 現代語の 的 と結び付けて読む 現代中国語の 作者 ・ 读者 には、する人を表す 者 が残っています。 所有 ・ 场所 にも 所 の字があります。日本語の「学者」「所有」も、字を見直す手がかりになります。 ただし、今の二字語を知っているだけで、文言の 所 の句が全部読めるわけではありません。現代語で言い換えるときは、 型編 4課 の 的 を使う形と比べます。する人なら、動作を述べてから人を置きます。するものなら、誰が何をするかを的でまとめます。 読む順を決めましょう。 所 を見たら右の動詞を探す。その動詞に必要な語まで読む。全体を「〜するもの・ところ」と言い換える。最後に、その前後が自然につながるかを確かめます。 語表 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 者 名詞化の語 〜する人・もの 動作などの後ろに置く 知人者 [1] 人を知る人 所 名詞化の語 〜するもの・ところ 動詞などの前に置く 所不欲 [2] 望まないもの 知 動詞 知る 何を知るかが後ろに来る 知人者 [1] 人を知る人 自 代詞的な語 自分を 知る対象を表す 自知者 [1] 自分を知る人 欲 動詞 望む 所で望む対象を取り出す 所欲 [6] 望むもの 耕田 動詞のまとまり 田を耕す 者で耕す人になる 耕田者 [3] 田を耕す人 存 動詞 ある 所で場所を取り出す 所存 [4] あるところ 從 介詞 〜から 後ろの落ちる動作まで読む 所從墜 [5] そこから落ちたところ 墜 動詞 落ちる 剣の動きを表す 所從墜 [5] そこから落ちたところ 劍 名詞 剣 この話では舟から落ちる物 吾劍 [5] 私の剣 甚 形容詞 まさる・程度が大きい ここでは命との比較 甚於生者 [6] 命より大切なもの 生 名詞 命・生きること 比較の基準 甚於生者 [6] 命より大切なもの 无 否定の動詞 ない 原文では無に当たる字 无非牛者 [7] 牛でないものはない 非 否定の語 〜でない 牛かどうかの判断を否定 非牛者 [7] 牛でないもの 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 人を知る者は知恵があり、自分を知る者は聡明である。人に勝つ者は力があり、自分に勝つ者は強い。 子貢が尋ねた。「ひとことで、一生それを行っていけるようなものはありますか。」先生が言われた。「それは恕(思いやり)であろうか。自分がしてほしくないことは、人にしてはならない。」 宋の国の人に、畑を耕す者がいた。畑の中に切り株があった。兎が走ってきて切り株にぶつかり、首を折って死んだ。そこで男は鋤を捨てて切り株を見張り、また兎を手に入れたいと願った。しかし兎は二度と手に入らず、男は宋の国じゅうの笑いものになった。 こういうわけで、身分の高い低いも、年の上下もなく、道のあるところこそが、師のいるところなのである。 楚の国の人に、長江を渡る者がいた。その剣が舟から水の中に落ちた。男はすぐにその舟べりに刻みをつけて言った。「ここがわたしの剣が落ちたところだ。」 生きることはわたしの望むことだが、望むことの中に生きることよりも大切なものがある。だから、いいかげんな手段で生き延びようとはしないのである。 わたしが好むのは道であって、技術より一歩進んだものです。わたしが初めて牛を解体していたころは、目に入るのは牛ばかりでした。 練習 側を分け、字を補う する側と、向かうもの・ところを取り出す側に分けてください。 知人者 [1] / 己所不欲 [2] / 道之所存 [4] / 宋人有耕田者 [3] 者 か 所 を入れ、原文の形で全文を書いてください。 知人_、智 者 か 所 を入れ、原文の形で全文を書いてください。 己_不欲,勿施於人 者 か 所 を入れ、原文の形で全文を書いてください。 宋人有耕田_ 者 か 所 を入れ、原文の形で全文を書いてください。 道之_存 書き戻しと言い換え 「己の欲せざる所」を原文の字の順で書き戻してください。 「田を耕す者」を原文の字の順で書き戻してください。 「見る所」を原文の字の順で書き戻してください。 耕田者 [3] を、現代語の 的 と人を使って言い換えてください。 己所不欲 [2] を、現代語の 的 を使って「自分が望まないもの」と言い換えてください。 知人者 [1] を、現代語の 的 を使って「他人のことが分かる人」と言い換えてください。 長いまとまりを読む 是吾劍之所從墜 [5] を三つに区切り、それぞれの働きを日本語で書いてください。 所見无非牛者 [7] の无は何を打ち消していますか。 前の語で人や物を説明する 語 冰箱 ・ 能干 ・ 护士 を一語ずつ使い、的でまとめた部分を含む三文を書いてください。五問を通して「〜する人」と「〜するもの・ところ」の両方を作ります。 語 毛衣 ・ 诚实 ・ 导游 を一語ずつ使い、的でまとめた部分を含む三文を書いてください。五問を通して「〜する人」と「〜するもの・ところ」の両方を作ります。 語 外套 ・ 专心 ・ 诗人 を一語ずつ使い、的でまとめた部分を含む三文を書いてください。五問を通して「〜する人」と「〜するもの・ところ」の両方を作ります。 語 打扫 ・ 自信 ・ 丈夫 を一語ずつ使い、的でまとめた部分を含む三文を書いてください。五問を通して「〜する人」と「〜するもの・ところ」の両方を作ります。 語 修理 ・ 冷静 ・ 妻子 を一語ずつ使い、的でまとめた部分を含む三文を書いてください。五問を通して「〜する人」と「〜するもの・ところ」の両方を作ります。 所 のまとまりを続けて読む 原文を▶で聞き、中国語の音で通して読んでください。 所 の句は途中で意味を切らず、まとまりの終わりまで続けます。書き下し文でも「〜する所」がどこまでかを探してください。 この課のまとめ 者 はする側を、 所 は向かうもの・ところを取り出します。 者 は後ろ、 所 は前からまとまりを作ります。 所 の右の動詞を探し、まとまりの終わりまで読みます。 所 と 者 が並ぶときは、二つのまとまりと、あいだの 有 ・无などを分けて見ます。 次の課へ 次の9.5では、 以 ・ 於 ・ 而 を読みます。動詞の前後の位置と、文を順につなぐか、逆につなぐかという違いを確かめます。 答え 知人者 と 宋人有耕田者 の 者 は、する側を取り出します。 己所不欲 の 所 は望まない対象、 道之所存 の 所 は道のあるところを取り出します。 知人者、智 [1] 己所不欲,勿施於人 [2] 宋人有耕田者 [3] 道之所存 [4] 己所不欲 [2] 耕田者 [3] 所見 [7] 耕田的人 です。田を耕す側を取り出します。 自己不想要的 です。望む側ではなく、その対象を取り出します。 懂得别人的人 です。人を理解する側を取り出します。 是 / 吾劍之 / 所從墜 。 是 はここを指し、 吾劍之 は私の剣を、名詞を結ぶ「の」で後ろのまとまりに結び、 所從墜 はそこから落ちたところを表します。全体で、ここが私の剣が落ちたところだ、と読みます。 牛でないもの、というまとまりを打ち消しています。目に入るもののうち、牛でないものが一つも無いという意味です。 这是我买的冰箱。 她是能干的人。 她是教我的护士。 这是她织的毛衣。 他是诚实的人。 他是带路的导游。 这是我穿的外套。 他是专心读书的人。 他是我喜爱的诗人。 这是她打扫的屋子。 她是自信的人。 这是我丈夫做的饭。 这是我修理的东西。 她是冷静的人。 这是我妻子买的书。 参考文献 老子『老子 第三十三章』( 知人者 、 知人者、智,自知者、明 、 自知者 、 知人者、智 )。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。引用は当館の特別編にある同じ原文から。 出所: 特別編 10篇 孔子の弟子たち『論語 衛靈公』( 己所不欲 、 己所不欲,勿施於人 、 所不欲 )。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。引用は当館の特別編にある同じ原文から。 出所: 特別編 7篇 韓非『韓非子 五蠹』( 宋人有耕田者 、 耕田者 )。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。引用は当館の特別編にある同じ原文から。 出所: 特別編 12篇 韓愈『師說』( 道之所存、師之所存也 、 所存 、 道之所存 )。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。引用は当館の特別編にある同じ原文から。 出所: 特別編 64篇 呂不韋ら『呂氏春秋 察今』( 是吾劍之所從墜 、 所從墜 、 吾劍 )。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。引用は当館の特別編にある同じ原文から。 出所: 特別編 14篇 孟子『孟子 告子上』( 所欲有甚於生者 、 所欲 、 甚於生者 )。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。引用は当館の特別編にある同じ原文から。 出所: 特別編 52篇 莊子『莊子 養生主』( 所見无非牛者 、 无非牛者 、 非牛者 、 所見 )。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。引用は当館の特別編にある同じ原文から。