感情を理解する――定義・命題・証明 — Epoché
解説 定義:受動を、観念として捉える 観念は、心が物事を捉えるあり方。「受動」は、外からの影響を十分に理解できないまま受ける側面をいう。 原文:Affectus, qui animi Pathema dicitur, est confusa idea 訳:精神の受動と呼ばれる感情は、混乱した観念である。 感情の一般的定義の冒頭だけ。続きには身体の力などの説明がある。全ての感情を否定した定義ではない。 出典1 命題:受動であることが変わる 「明晰で判明」は、はっきり区別して捉えられること。何を結論とするかを、命題として先に示す。 原文:Affectus, qui passio est, desinit esse passio, simulatque ejus claram et distinctam formamus ideam. 訳:受動である感情は、私たちがそれについて明晰で判明な観念を作るとすぐに、受動であることをやめる。 感情そのものを全て消す、という意味にしない。意志の力だけで抑え込めるという助言でもない。 出典1 証明:定義と、他の命題をつなぐ 証明は定義から始まり、別の命題を参照して結論へ進む。 原文:Affectus, qui passio est, idea est confusa (per gener. Affect. Defin.). Si itaque ipsius affectus claram et distinctam formemus ideam, haec idea ab ipso affectu, quatenus ad solam Mentem refertur, non nisi ratione distinguetur (per Prop. 21. p. 2. cum ejusdem Schol.); adeoque (per Prop. 3. p. 3.) affectus desinet esse passio. Q. E. D. 訳:受動である感情は、混乱した観念である(感情の一般的定義による)。したがって、その感情について明晰で判明な観念を作れば、この観念は、感情が精神だけに関わる限り、その感情そのものと考えの上でしか区別されない(第2部命題21とその注解による)。それゆえ感情は、受動であることをやめる(第3部命題3による)。証明終わり。 「精神だけに関わる限り」という条件を残す。第2部21・第3部3の証明全体は今回引用していない。この短い節だけで全体系を証明したとも、医学的な効果が確かめられたとも言わない。 出典1 定義・命題・証明を分ける 形式 この節での役割 定義 受動と呼ばれる感情を、混乱した観念として捉える 命題 明晰で判明な観念ができると、受動でなくなる 証明 定義と他の命題をつなぎ、結論を支える 定義の冒頭と命題3・証明の別単位。体系の他の証明を省いている。 参考文献 [1] Spinoza/J.van Vloten・J.P.N.Land編1895年第2版第1巻。原版から本教材が独自転記・日本語訳。「スピノザ『エチカ』第3部・感情の一般的定義/第5部命題3と証明」。 出典 本教材の独自訳・解説 CC BY-SA 4.0(古典のラテン語原文)