10.30 面子・人情・関係 — Epoché
この課でできるようになること 面子・人情・関係を、動詞と組にして説明できます。 遠回しな返事が、断りとして働く場面を読めます。 断る内容と代わりにできることを、中国語で伝えられます。 文化の説明を、相手を決めつけずに使えます。 前提 :10.29。買い物の支払いから、人と人の間で払う、譲る、返すというやりとりへ進みます。 三つの言葉を、行為と組にする ここまでの課では、支払いを譲り合うこと、肩書きで呼ぶこと、断り方に気を配ることが出てきました。その場面を読む手がかりが、 面子 ・ 人情 ・ 关系 です。目には見えなくても、やりとりを支える骨組みとして考えられます。 日本語にも同じ字の語があります。ただし、字が同じだから意味も使い方も全部同じとは限りません。この課では、相手を立てる、世話へのお返しをする、つながりを作るという具体的な行為と組にします。 同じ国や地域の人でも、人づきあいの考え方は違います。ここで示すのは場面を読むための見方です。相手が必ずこの通りに考えると決めるための規則ではありません。 面子 — 人前での立場を残す 面子 は、人前でどう見えるか、その人の立場や体面に関わります。 给面子 は相手を立てること、 丢面子 は人前で恥をかき、面子を失うことです。 留面子 は逃げ道を残すように相手の面子を保つことです。 面子は自分で守るだけでなく、相手に与えたり残したりするものとして扱われます。たとえば、人前で相手のよい点を認めることは、その人を立てる行為になります。誤りを指摘するときにも、内容と伝え方を分けます。 会議の資料に誤りがあっても、急いでその場で言う必要がなければ、あとで二人きりで伝える方法があります。その場で確かめる必要があるなら、自分の理解についての確認として切り出せます。これは、相手を責める形にしない方法です。誤りを正さないのではなく、相手の立場をつぶさずに伝える工夫です。 食事に誘った側が払おうとすることも、相手を立てる行為として読めます。人前で直接断ることが難しくなるのも、断られた側の立場へ気を配るためです。ただし、相手を立てるために、どんな頼みでも受ける必要があるという意味ではありません。 人情 — 世話を受け、お返しをする 人情 には、厚意のやりとりとして捉える使い方があります。世話になって借りを負うことが 欠人情 、お返しをすることが 还人情 です。気持ちが、受け取ったり返したりするものとして表されます。 日本語の「人情」は、人らしい情けや温かさという性質を思い浮かべやすい語です。この課の中国語の使い方では、誰にどんな世話になり、何を返すかという関係を見ます。「借り」といっても、必ず金額を計算するということではありません。 大きすぎる世話を受けると、返せないと感じて関係が重くなる場合があります。一方、小さな世話をやりとりし続けることは、関係が続いているしるしとして読めます。贈り物は、品物の価値だけの話ではありません。贈ったこと、受け取ったこと、その後に返すことも含みます。 日本語の「人情がある」のつもりで、人柄をほめる語として 人情 をそのまま当てはめないようにします。この課では 欠人情 ・ 还人情 の使い方です。人柄をほめたいなら、 热情 など、言いたい性質に合う語を選びます。ただし、 人情味 (人情の温かみ)の形なら、人柄が温かいことをほめるのに使えます。 人情 だけと 人情味 を分けて覚えます。 関係 — つながりの内と外 关系 は人と人のつながりです。血縁、同郷、同級生、同僚などのつながりを通じて、頼みごとや紹介が動くことがあります。 拉关系 はそのつながりを作る言い方です。ただし、ふつうは得をするために相手に取り入るという、打算的な響きを伴います。 自己人 は、関係の内側にいる人、身内として扱う人です。血のつながった親族だけに限りません。食事を共にしたり、家に招かれたりしたあと、よそよそしかった相手が親しく接する場合があります。そんな変化も、この内と外を考えると読み取れることがあります。 ただし、人のつながりが制度より優先されれば、公正さを損なう問題も生まれます。 走后门 は「裏口を通る」という字の形から、つてを使って正規でない道を通ることを表します。不正につながる使い方は、中国の中でも批判されてきました。人と親しくなることと、不正な便宜を求めることは分けます。 内側の人は必ず親切で、外側の人には必ず冷たいと決めるための語ではありません。関係より制度を重んじる人もいます。言葉を覚えたら、それを相手の実際の行動と合わせて使います。 断りを、言葉どおりだけで取らない 我看看 は「見てみます」、 再说吧 は「またあらためて」という形です。頼みごとへの返事では、やんわりした断りとして使われることがあります。 有点困难 は「少し難しい」で、引き受けにくいことを伝える言い方です。 日本語の「ちょっと……」「検討します」を知っている人には、この働きはつかみやすいでしょう。言葉の形が検討を表していても、必ず引き受ける約束になったとは限りません。場面と相手の返事の調子も見ます。 我看看 を聞いて、必ず検討して引き受けてくれると決めないようにします。断りを含む返事だった場合、何度も催促すると、相手にはっきり断るよう迫ることになります。曖昧な返事を承諾として扱わず、相手の立場を残します。 断る側なら、 不好意思 で切り出し、今回できないことと、代わりにできることを伝えます。できない内容をぼかすだけでなく、自分でできる一言を添える形を練習します。次の機会に招くことなどが、その一言です。 以茶代酒 は、酒の代わりにお茶で乾杯に加わることです。飲めないことを伝えながら、その場のやりとりへ加わる別の形を示します。断っても関係を保つという説明を、具体的な動作へつなげられる例です。 支払う、勧める、贈る 勧められたものをすぐ受け取らず、一度遠慮するやりとりがあります。勧める側と受け取る側が、気持ちを確かめる形として読めます。ただし、断る回数が一律に決まるわけではありません。相手がはっきり断っているなら、礼儀を理由に押し続ける規則としては使いません。 会計で複数の人が払おうとする場面もあります。 争着买单 は、争うように支払いを引き受けようとすることです。今日受けた厚意を次の機会に返すという、関係を続ける行為として解釈できます。単に見栄の張り合いとは決めません。また、必ず次の約束を意味するとも断定しません。 贈り物をその場で開けないのは、相手の前で中身を値踏みしているように見せない配慮として説明されます。ここでも、品物だけでなく贈った行為を大切にする見方があります。相手や場面による違いもあるので、その場のやりとりを見ます。 日本の「察し」と比べるなら、何に重心を置くかの違いとして考えられます。比べるのは、言わなくても分かることに置く重心と、払う・譲る・招く・返すという行為に置く重心です。国ごとの固定した性格ではなく、配慮がどんな形で現れているかを見るための比較です。 語表 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 面子 名詞 人前での立場・体面 与える、失う、残すという動詞と結ぶ 面子问题 面子の問題 人情 名詞 厚意や、その貸し借り この課では借りを負い、返すもの 这份人情 この厚意の借り 关系 名詞 人と人のつながり 物事を動かすつてにもなる 关系很好 仲がよい 给面子 動詞句 面子を立てる 相手を人前で立てる 很给面子 よく顔を立ててくれる 丢面子 動詞句 面子を失う 人前で恥をかく 会丢面子 面子を失うだろう 留面子 動詞句 面子を残す 逃げ道を残して相手を立てる 要留面子 面子を残す必要がある 欠人情 動詞句 厚意の借りを負う 人に世話になった関係をいう 欠人情了 厚意の借りができた 还人情 動詞句 厚意にお返しをする 还 は返す意味 想还人情 お返しをしたい 拉关系 動詞句 つてを作る 関係を引き寄せるという形 想拉关系 つながりを作りたい 走后门 動詞句 つてで正規でない道を通る 文字どおりの裏口以外の意味 不走后门 不正なつてを使わない 热情 名詞・形容詞 熱意・親切で積極的 人柄をほめるときにも使える 很热情 親切で積極的だ 自己人 名詞 関係の内側にいる人・身内 血のつながった親族に限らない 是自己人 身内だ 不好意思 慣用句 すみません・恐縮です 断りを切り出す合図にもなる 不好意思 すみません(切り出しの一言) 再说吧 慣用句 またあらためて やんわりした断りになることがある 那再说吧 それはまたあらためて 我看看 慣用句 見てみます・考えてみます 引き受ける約束とは限らない 让我看看 ちょっと見てみます 練習 関係を保つ一言を中国語で書く 人前で相手を立てることを表すように、 给 ・ 丢 ・ 欠 ・ 还 から一字を選び、 _面子 を完成させてください。 人前で恥をかくことを表すように、 给 ・ 丢 ・ 欠 ・ 还 から一字を選び、 _面子 を完成させてください。 世話を受け、厚意の借りを負うことを表すように、 给 ・ 丢 ・ 欠 ・ 还 から一字を選び、 _人情 を完成させてください。 厚意にお返しをすることを表すように、 给 ・ 丢 ・ 欠 ・ 还 から一字を選び、 _人情 を完成させてください。 今回の誘いには行けないと断り、次の機会には自分が招くと伝える文を、中国語の短い文で書いてください。 不好意思 で切り出します。 今は手伝えないが、明日なら手伝えるという断りと代案を、中国語で書いてください。 この問いの▶で、字を伏せた頼みごとへの返事を聞き、引き受けるよう催促せずに返す中国語を書いてください。 我看看。 食事に招いてもらい、相手が支払う場面です。感謝と、次回は自分が招くという一言を中国語で書いてください。 会議で資料の誤りを見つけました。相手の面子を残しながら内容を確かめる方法を説明してください。 親しい相手が食事代を引き受けようとしています。毎回必ず割り勘にすると断定するか、一度自分も払おうとし、次の機会を申し出るか。この課の人情の見方に合う方と、その限界を説明してください。 戻り語 前の課で学んだ語を使って書きます。 人とのやりとりを、語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 老实 ・ 诚实 ・ 冷静 。 人とのやりとりを、語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 失望 ・ 放松 ・ 招呼 。 人とのやりとりを、語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 光临 ・ 阿姨 ・ 夫妇 。 人とのやりとりを、語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 姐妹 ・ 鲜花 ・ 巧克力 。 人とのやりとりを、語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 毛衣 ・ 包裹 ・ 修理 。 音読 語表の▶を聞き、面子と人情に組み合わさる動詞を言います。 自己人 ・ 不好意思 ・ 再说吧 も音読し、誰に対して、どんな場面で言うかを考えます。 この課のまとめ 面子は人前の立場、人情は厚意のやりとり、関係は人とのつながりとして見ます。遠回しな返事を承諾と決めず、断る側は代わりにできることを添えます。どの説明も、相手を決めつける規則ではなく、行為を読むための地図です。 次の課へ 次の12.7は第4期の門の前半です。逆接の対と副詞の位置に絞って、自分で文を作れるかを確かめます。知編の続き10.31は、あとの期で学びます。 答え 给面子 丢面子 欠人情 还人情 不好意思,我这次去不了。 下次我请客。 不好意思,我现在帮不了你。 我明天可以帮你。 没关系,以后再说吧。 まず 没关系 (かまいません)と返して相手の負担を軽くし、続けて 再说吧 (またあらためて)と、急がないことを伝えます。相手が使った遠回しな言い方で返すので、承諾したと決めず、検討を迫らない返事になります。 谢谢你,下次我请客。 その場で急いで言う必要がなければ、あとで二人きりで伝えます。その場で必要なら、相手を責めず、自分の理解について確認する形で切り出します。内容を放置することと、立場を残すことは別です。 この課の見方なら、一度自分も払おうとし、次の機会に招くと言う形です。受けた厚意を次に返すことにつながります。ただし、相手との合意や場面によるので、割り勘がいつでも不適切だと決めることはできません。 请你老实回答。 我们必须诚实。 我想冷静一下。 我有一点失望。 我想让你放松。 我来打个招呼。 欢迎光临! 阿姨请我吃饭。 这对夫妇邀请了我。 你有多少姐妹呢? [1] 我送你鲜花。 我请你吃巧克力。 谢谢你送我毛衣。 我帮你拿包裹。 我可以帮你修理。 参考文献 実文の出典は Tatoeba Project、ライセンスは CC BY 2.0 FR です。以下は本文の引用番号順です。 Tatoeba 文 #677657( 你有多少姐妹呢? )。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoeba.org/en/sentences/show/677657