8.84 赤毛組合(8)— 種明かしは順を逆にたどる — Epoché
この篇でできるようになること ★ 種明かしの順 が読んだ順と逆であることが分かる。 ★ 身分と犯罪が同じ人物にある おかしみを読み取れる。 ★ 語り手の問いが二度出る 働きに気づける。 ★八篇を通して、 伏線がどこに置かれていたか を言える。 前提 : 8.83 まで。型は 3.32 まで。語は 4.48 まで。 読む前に ★ 前の篇までのこと。 四人は銀行の地下室で明かりを消して待ちました。★ 一時間十五分ののち、床の石が回り、二人の男が出てきました 。 この篇では、 その二人を取り押さえます 。★ 一人は逃げますが、扉の外に警官が待っています。 そして、朝方のベイカー街で、★ ホームズが全部を説明します 。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1139 語、文は 79 本、いちばん長い一文は 75 語です。★ 問いが 7 個 あります。 捕まえるところを見ます。 It’s no use, John Clay ★ 四語です。 ★ そして、ここで初めて助手の本当の名が呼ばれます。 ★ 8.82 読編 でジョーンズが語った「ジョン・クレイ」という名が、ここで助手と結びつきます。 ★ 二篇はさんで、名前がつながりました。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 「だいじょうぶだ」と彼はささやきました。「のみと袋は持ったか。しまった!跳べ、アーチー、跳べ。おれは縛り首になってもかまわん!」 シャーロック・ホームズが飛び出して、侵入者の襟首をつかんでいました。もう一人は穴へ飛びこみ、ジョーンズがその上着のすそをつかむと、布の裂ける音が聞こえました。明かりが拳銃の銃身にきらめきましたが、ホームズの狩猟用のむちが男の手首に振り下ろされ、拳銃は石の床に当たってかちんと鳴りました。 「むだだよ、ジョン・クレイ」とホームズは穏やかに言いました。「きみにはまったく勝ち目がない。」 「そのようですね」と相手はこのうえなく落ち着いて答えました。「でも、相棒はうまく逃げたと思いますよ。上着のすそはつかまれたようですがね。」 「戸口で三人の男が彼を待っている」とホームズは言いました。 「おや、そうですか!ずいぶん抜かりなくやったようですね。おほめしなくてはなりません。」 「わたしのほうもきみをほめよう」とホームズは答えました。「赤毛の思いつきは、たいへん新しくて効き目があった。」 「おまえの相棒にはすぐまた会えるさ」とジョーンズが言いました。「あいつは穴を下りるのがおれより速いんだ。手錠をかけるあいだ、手を出していろ。」 「その汚い手でわたしに触らないでいただきたい」と、手錠が手首でがちゃりと鳴ったとき、わたしたちの捕虜は言いました。「ご存じないかもしれないが、わたしの血管には王家の血が流れているのです。それから、わたしに話しかけるときは、必ず『卿』と『どうぞ』を付けていただけますかな。」 「いいとも」とジョーンズは、目をみはり、くすくす笑いながら言いました。「では、恐れ入りますが卿、上へお進みください。そこで辻馬車を拾って、殿下を警察署までお運びいたしますので。」 「それでよろしい」とジョン・クレイは落ち着きはらって言いました。彼はわたしたち三人に大きくおじぎをし、刑事に連れられて静かに歩いていきました。 「本当に、ホームズさん」と、地下室から彼らのあとについて出ていくとき、メリーウェザー氏が言いました。「銀行としてあなたにどうお礼を申し上げ、どうお報いしたらよいか分かりません。わたしがこれまでに出会った中でもいちばん大胆な銀行強盗のくわだての一つを、あなたがこのうえなく見事に見破り、打ち破ってくださったのはまちがいありません。」 「わたしも、ジョン・クレイ氏とは、自分なりに片をつけたい小さな貸し借りが一つ二つありましたので」とホームズは言いました。「この件では多少の出費がありまして、それは銀行に払い戻していただくつもりです。けれども、それ以上は、いろいろな点で類のない経験をし、赤毛組合というたいへん珍しい話を聞けたことで、十分に報いられています。」 「いいかい、ワトソン」と、明け方近く、ベイカー街でウイスキーのソーダ割りを前に座っているときに、彼は説明しました。「組合の広告と百科事典の書き写しという、このかなり突飛な仕事の目的は、あのあまり頭の切れない質屋を毎日何時間か追い払っておくこと以外にはありえない。それは初めからまったく明らかだった。妙なやり方だが、実のところ、これよりよいやり方を考えるのは難しいだろう。この方法は、まちがいなく、共犯者の髪の色からクレイの巧みな頭に浮かんだのだ。週四ポンドというのは、彼を引き寄せずにはおかない餌で、何千ポンドもの大勝負をしている連中にとって、そんなものが何だろう。彼らは広告を出し、悪党の一人が仮の事務所を構え、もう一人の悪党がそこへ申しこむよう男をそそのかす。そして二人がかりで、毎週、朝のあいだ男を確実に留守にさせることができたわけだ。助手が給料半分で来たと聞いたときから、その男がこの勤め口を確保したい強い動機を持っていることは、わたしには明らかだった。」 「でも、その動機が何なのか、どうして見当がついたんだい。」 「家に女性がいたなら、ただの俗っぽい色恋ざたかと疑ったろう。けれども、それは問題にならなかった。男の商売は小さなものだったし、家の中には、あれほど手の込んだ準備や、彼らがかけていたような出費の説明がつくものは何もなかった。だとすれば、家の外の何かにちがいない。それは何だろうか。わたしは助手が写真好きなことと、地下室に消える癖のことを考えた。地下室だ!そこがこのもつれた糸の端だった。それから、このなぞめいた助手について調べてみると、相手はロンドンでいちばん冷静で大胆な犯罪者の一人だと分かった。彼は地下室で何かをしていた。何か月も続けて、一日に何時間もかかる何かをだ。もう一度言うが、それは何だろうか。どこかほかの建物までトンネルを掘っているということしか、わたしには考えられなかった。 「現場を見に行ったときには、そこまで考えが進んでいた。わたしがステッキで舗道をたたいたので、きみは驚いたね。わたしは、地下室が前へ延びているのか、後ろへ延びているのかを確かめていたのだ。前ではなかった。それからわたしが呼び鈴を鳴らすと、思ったとおり、助手が出てきた。わたしたちはこれまでに何度か小競り合いをしてきたが、顔を合わせたことは一度もなかった。わたしは彼の顔はほとんど見なかった。見たかったのはひざだ。どれほどすり切れ、しわが寄り、汚れていたか、きみも自分で気づいたにちがいない。あのひざは、何時間も掘り進んだことを物語っていた。残るただ一つの点は、何のために掘っていたかだった。わたしは角を曲がって、シティ・アンド・サバーバン銀行がわれらの友人の店に接しているのを見て、問題が解けたと感じた。音楽会のあと、きみが馬車で家へ帰ったとき、わたしはスコットランド・ヤードと銀行の重役会の会長を訪ねた。その結果は、きみが見たとおりだ。」 「それで、彼らが今夜くわだてを実行すると、どうして分かったんだい」とわたしは尋ねました。 「そうだね、彼らが組合の事務所を閉めたのは、もうジェイベズ・ウィルソン氏がいてもいなくてもかまわないという印だった。言いかえれば、トンネルを掘り終えたということだ。けれども、それをすぐに使うことがぜひとも必要だった。見つかってしまうかもしれないし、金塊がよそへ移されるかもしれないからだ。土曜日なら、ほかのどの日よりも彼らに都合がよかった。逃げるのに二日あるからだ。こうしたすべての理由から、わたしは彼らが今夜来ると見こんでいたのだ。」 「見事な推理だ」と、わたしは心から感嘆して叫びました。「こんなに長い鎖なのに、どの輪も本物の音がする。」 「おかげで退屈せずにすんだよ」と、彼はあくびをしながら答えました。「ああ!もう退屈がわたしに迫ってくるのを感じる。わたしの一生は、ありふれた暮らしから逃げようとする一つの長い努力に費やされている。こうした小さな問題が、その助けになってくれるのだ。」 「そして、きみは人類の恩人というわけだ」とわたしは言いました。 彼は肩をすくめました。「まあ、結局のところ、多少は役に立っているのかもしれないね」と彼は言いました。「『 L’homme c’est rien—l’œuvre c’est tout 』(人間は何でもない。作品がすべてだ)と、ギュスターヴ・フローベールがジョルジュ・サンドに書いたようにね。」 語釈 帯の外の語は 104 語です。★ 最後にフランス語の一文 が出ます。★ 8.76 読編 と同じで、訳さずに置かれています。 語(品詞) 意味 注 Alas en 間 ああ(なげく声) Alas, the little garden was completely ruined by the storm. ああ、その小さな庭は嵐で完全にだめになってしまいました。 Archie en 名 アーチー。逃げるほうの男の呼び名 Baker en 名 ベイカー( 8.82 読編 ) Clay en 名 クレイ( 8.82 読編 ) Clay’s en 名 クレイの Encyclopædia en 名 百科事典( 8.79 読編 ) l'œuvre en 名 ★フランス語。作品 Flaubert en 名 フローベール。フランスの作家 George en 名 ジョルジュ Gustave en 名 ギュスターヴ Highness en 名 殿下。 your Highness でからかっている The children giggled and called their older sister Your Highness as a joke. 子どもたちは、笑いながらからかって姉を『殿下』と呼びました。 Holmes en 名 ホームズ John en 名 ジョン Jones en 名 ジョーンズ( 8.82 読編 ) London en 名 ロンドン L’homme en 名 ★フランス語。人間は Mr en 名 Mister の略 Oh en 間 ああ Oh, I nearly forgot about the important meeting this morning. ああ、今朝の大切な会議のことを、うっかり忘れかけていました。 Scotland en 名 スコットランド( 8.82 読編 ) Scott en 名 スコット。 Great Scott ! は「なんてことだ」 Great Scott! I forgot the front door keys again this morning. なんてことだ、今朝もまた玄関の鍵を忘れてしまいました。 Sherlock en 名 シャーロック Suburban en 形 郊外の( 8.81 読編 ) Watson en 名 ワトソン Wilson’s en 名 ウィルソンの abutted en 動 背中合わせだった( 8.81 読編 ) The old warehouse abutted directly onto the quiet side street. その古い倉庫は、静かな裏道に直接背中合わせに接していました。 accomplice's en 名 共犯者の The thief hid the stolen jewels inside his accomplice's small house. そのどろぼうは、盗んだ宝石を共犯者の小さな家の中に隠しました。 admiration en 名 感嘆 The whole audience gasped in admiration at the daring trapeze act. 観客全員は、その大胆な空中ブランコの演技に感嘆の声をあげました。 amply en 副 十分に The long, hard journey amply proved how patient she really was. その長く困難な旅は、彼女が実にどれほど辛抱強いかを十分に証明しました。 ascertaining en 動 確かめていた He spent the whole morning ascertaining the exact cause of the fire. 彼はその火事の正確な原因を確かめるのに、朝じゅうをかけました。 barrel en 名 銃身 He carefully checked the barrel of the old rifle before cleaning it. 彼はその古いライフルの銃身を、掃除する前に注意深く確認しました。 beautifully en 副 みごとに The old grandfather clock was beautifully restored by a skilled craftsman. その古い柱時計は、腕のいい職人によってみごとに修復されました。 beg en 動 こう( 8.76 読編 ) I must beg you to forgive my sudden and rather rude question. 私の突然で少々失礼な質問を、どうかお許しいただきたく存じます。 benefactor en 名 恵む人( 8.78 読編 ) An anonymous benefactor donated a large sum to the small orphanage. ある匿名の恵む人が、その小さな孤児院に大きな金額を寄付しました。 blandly en 副 さらりと She answered the awkward question blandly, without showing any real emotion. 彼女は、何の本当の感情も見せずに、その気まずい質問にさらりと答えました。 bow en 名 おじぎ He gave a polite bow before quietly leaving the crowded room. 彼は混んだ部屋を静かに出る前に、礼儀正しいおじぎをしました。 bullion en 名 地金( 8.83 読編 ) Thieves