8.68 秘密の花園 三 — 書かないことで書く — Epoché
この篇でできるようになること ★ 書かれていない出来事 が、どこで起きたかを言える。 視点を一人に縛ると何ができなくなるかを説明できる。 冷たく書かれた一行が、なぜ冷たくないかを考えられる。 帯の外の語を、語釈を見ながら読み通せる。 前提 : 8.67 まで。型は 3.24 まで。語は 4.36 まで。 読む前に 前の篇では、誰も病気の名を言いませんでした。この篇では、 cholera が 4 回 出ます。 ★ 名が出ると、話の調子が変わります。 におわせる段階が終わり、 起きたことを並べる段階 に入ります。 読みながら、 メアリが見ていないこと を数えていてください。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 493 語、段落は 4 つです。 After that appalling things happened, and the mysteriousness of the morning was explained to Mary. 一文めで、もう答えが出ています。 前の篇いっぱいをかけてにおわせてきたことが、ここで 一行で片づきます 。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 そのあと恐ろしいことが起こり、あの朝の不思議なことのわけがメアリにも分かりました。コレラがいちばんたちの悪い形ではやりはじめ、人々がばたばたと死んでいたのです。アーヤは夜のうちに病気になり、ちょうど死んだところでした。使用人たちが小屋で泣き叫んでいたのはそのためでした。次の日になる前に、ほかの使用人が三人死に、ほかの者たちはおびえて逃げ出しました。どこもかしこも大混乱で、どのバンガローにも死にかけている人がいました。 二日目の混乱とうろたえのなか、メアリは子ども部屋に隠れていて、みんなに忘れられていました。誰もメアリのことを考えず、誰もメアリを必要とせず、メアリの何も知らない不思議なことが起きていました。メアリは何時間ものあいだ、泣いたり眠ったりを繰り返しました。メアリに分かっていたのは、人々が病気だということと、不思議でこわい音が聞こえるということだけでした。一度、メアリは食堂にそっと入ってみましたが、誰もいませんでした。それでも、食べかけの食事がテーブルの上にあり、椅子や皿は、食事をしていた人たちが何かのわけで急に立ち上がったときに、あわてて押しやったように見えました。メアリは果物とビスケットを少し食べ、のどがかわいていたので、ほとんどいっぱいに注がれたまま置いてあったワインを一杯飲みました。それは甘く、メアリにはそれがどんなに強いか分かりませんでした。まもなくワインのせいでひどく眠くなり、メアリは子ども部屋に戻って、また閉じこもりました。小屋から聞こえる叫び声や、急いで行き来する足音がこわかったのです。ワインのせいでとても眠くて、目をあけているのもやっとだったので、メアリはベッドに横になり、長いあいだ何も分からなくなりました。 メアリがぐっすり眠っていたあいだに、たくさんのことが起こりました。けれどもメアリは、泣き叫ぶ声にも、バンガローに物が運びこまれたり運び出されたりする音にも、目をさましませんでした。 目がさめると、メアリは横になったまま壁を見つめていました。家はすっかり静まりかえっていました。こんなに静かなのは、これまで一度も知りませんでした。話し声も足音も聞こえなかったので、みんなコレラがよくなって、厄介ごとはすっかり終わったのだろうかと思いました。また、アーヤが死んだ今、誰が自分の世話をしてくれるのだろうとも思いました。新しいアーヤが来るだろうし、その人は新しいお話を知っているかもしれない。メアリは前からのお話にはいいかげん飽きていたのです。メアリは、ばあやが死んだからといって泣きはしませんでした。メアリは情の深い子ではなく、これまで誰のこともあまり気にかけたことがなかったのです。コレラをめぐる騒ぎや、あわただしい行き来や、泣き叫ぶ声がこわかったし、自分が生きていることを誰も覚えていないようなのに腹を立てていました。みんなおびえきっていて、誰にも好かれていない小さな女の子のことなど考えるゆとりがなかったのです。人はコレラにかかると、自分のことしか覚えていないようでした。でも、もしみんなまたよくなったのなら、きっと誰かが思い出して、自分を探しに来てくれるでしょう。 語釈 帯の外の語は 43 語です。前の篇と重なる語が多いので、 読む速さは落ちない はずです。 語(品詞) 意味 注 Ayah en 名 アーヤ。子守りの女性使用人 The ayah sang softly to calm the crying baby. アーヤは泣いている赤ちゃんを落ち着かせようと、そっと歌を歌いました。 Mary en 名 メアリ affectionate en 形 情の深い She gave her little brother an affectionate hug before school. 彼女は学校に行く前、幼い弟に情の深いハグをしました。 alternately en 副 かわるがわる The lights flashed alternately red and green throughout the night. 夜通し、明かりは赤と緑にかわるがわる点滅していました。 appalling en 形 ぞっとする The appalling smell from the kitchen made everyone leave at once. 台所からのぞっとするにおいで、みんなすぐに出ていってしまいました。 awakened en 動 目がさめた She awakened suddenly to the sound of thunder outside. 彼女は外の雷の音で、突然目がさめました。 bewilderment en 名 うろたえ He stared in bewilderment at the strange message on the screen. 彼は画面に映った変なメッセージを、うろたえながらじっと見つめました。 biscuits en 名 ビスケット(複数) She baked a fresh batch of biscuits early that morning. 彼女はその朝早く、新しいビスケットを一焼き分焼きました。 bungalow en 名 バンガロー。平屋の家 They rented a small bungalow near the quiet beach. 彼らは静かな浜辺の近くの小さなバンガローを借りました。 bungalows en 名 バンガロー(複数) Rows of white bungalows lined the quiet seaside road. 静かな海沿いの道には、白いバンガローが立ち並んでいました。 cholera en 名 コレラ The village suffered greatly when cholera spread through the water. 水を通してコレラが広がったとき、その村はひどく苦しみました。 confusion en 名 混乱 The sudden announcement caused confusion among the waiting passengers. 突然の発表は、待っていた乗客たちの間に混乱を引き起こしました。 crept en 動 そっと入った She crept quietly into the dark room without making a sound. 彼女は音を立てずに、そっと暗い部屋に入りました。 diners en 名 食事をしていた人(複数) The diners looked up in surprise when the waiter dropped the tray. ウェイターがトレイを落としたとき、食事をしていた人たちは驚いて顔を上げました。 dining en 名 dining-room で食堂 They gathered quietly in the dining room for a family dinner. 彼らは家族の夕食のために、静かに食堂に集まりました。 disturbed en 動 じゃまされた He was disturbed by the loud music coming from next door. 彼は隣から聞こえる大きな音楽にじゃまされていました。 drowsy en 形 眠い The warm afternoon sun made her feel pleasantly drowsy. 暖かい午後の日差しが、彼女を心地よく眠くさせました。 fatal en 形 命にかかわる The doctor warned that ignoring the symptoms could be fatal. 医者は、症状を無視すれば命にかかわると警告しました。 fond en 形 be fond of で「かわいがる」 She has always been very fond of her younger cousin. 彼女はずっと、年下のいとこをとてもかわいがってきました。 footsteps en 名 足音(複数) She heard heavy footsteps approaching slowly down the hallway. 彼女は廊下をゆっくり近づいてくる重い足音を聞きました。 frightened en 形 おびえた The frightened cat hid quietly under the bed during the storm. 嵐の間、そのおびえた猫はベッドの下にそっと隠れていました。 frightening en 形 おそろしい It was a truly frightening experience to be lost in the woods. 森の中で迷子になるのは、本当におそろしい経験でした。 hastily en 副 あわてて He hastily grabbed his coat and rushed straight out the door. 彼はあわててコートをつかむと、まっすぐドアから飛び出しました。 heavily en 副 深く After the long hike, she slept heavily through the entire night. 長いハイキングのあと、彼女は一晩じゅう深く眠りました。 hurrying en 形 急いでいる The hurrying commuters pushed past each other on the crowded platform. 急いでいる通勤客たちは、混雑したホームで互いを押しのけました。 huts en 名 小屋(複数)。使用人の住まい The workers lived in small huts near the open fields. 働く人たちは、広い畑の近くの小さな小屋に住んでいました。 intensely en 副 ひどく She focused intensely on her work throughout the whole afternoon. 彼女は午後じゅう、仕事にひどく集中していました。 mary en 名 メアリ( Mary と同じ語) mysterious en 形 ただならぬ A mysterious stranger appeared at the door late that night. その夜遅く、ただならぬよそ者が戸口に現れました。 mysteriousness en 名 ただならなさ A strange mysteriousness surrounded the empty cabin by the lake. 湖のそばの空き小屋には、不思議なただならなさが漂っていました。 nursery en 名 子ども部屋 The baby's crib stood quietly in the corner of the nursery. 赤ちゃんのベビーベッドは、子ども部屋の隅に静かに置かれていました。 panic en 名 うろたえ騒ぎ The fire alarm caused panic among the students in the hallway. 火災報知器が、廊下にいた生徒たちの間にうろたえ騒ぎを引き起こしました。 scarcely en 副 ほとんど〜ない She could scarcely believe the wonderful news when she heard it. その素晴らしい知らせを聞いても、彼女はほとんど信じられませんでした。 servants en 名 使用人(複数) The servants hurried to prepare the house for the sudden guests. 使用人たちは急な客のために、急いで家の支度をしました。 silent en 形 しんとした The house was completely silent after everyone had gone to bed. みんなが寝てしまうと、家はすっかりしんとしました。 sleepy en 形 眠い He felt sleepy after eating such a heavy lunch. あんなに重い昼食を食べたあと、彼は眠くなりました。 stared en 動 じっと見た She stared out the window, lost deep in thought. 彼女は物思いにふけりながら、窓の外をじっと見ていました。 stricken en 形 panic-stricken で「うろたえきった」 The panic-stricken crowd rushed toward the exits when the alarm rang. アラームが鳴ると、うろたえきった群衆は出口へと殺到し