10.26 名前 — 姓・名・字・号 — Epoché
この課でできるようになること 姓と名を分けて、自分や家族を紹介できます。 名・字・号の役割を説明し、同じ人物の別名を結びつけられます。 古典の本文の字が変わる理由として、避諱を説明できます。 親しい相手と仕事の相手で、呼び方を選べます。 前提 :10.25。親族を関係から呼び分けたあと、個人の名前と相手への呼びかけを見ます。 姓が先、名が後 中国語の名前は、姓が先で名が後です。 李白 なら、姓が 李 、名が 白 です。日本語の名前と同じ順序ですが、字の数だけで境目を決めないようにします。 姓は一字のものが多くあります。 王 ・ 李 ・ 张 ・ 刘 ・ 陈 はとくに多い姓です。二字の姓もあり、 复姓 と呼びます。 司马 ・ 欧阳 ・ 诸葛 では二字で一つの姓です。最初の一字だけを取り出すと、その人の姓ではなくなります。 フルネーム 姓 名 分けるときの注意 李白 李 白 姓一字、名一字 司马迁 司马 迁 先の二字で姓 欧阳修 欧阳 修 先の二字で姓 诸葛亮 诸葛 亮 先の二字で姓 名は一字か二字のものがよく見られます。 李娜 や 王伟 は、名が一字で、姓と合わせたフルネームは二字です。「一字の名」と「二字の名前」は、数えている部分が違います。 中国では結婚後も、それまでの姓を保つのが一般的です。夫婦だから必ず同じ姓だと考えず、それぞれの名前を確かめます。前の課の父方・母方の区別を知っていても、姓だけから家族の関係を決めることはできません。 同じ姓の人が多いため、姓一字だけでは誰か分かりにくい場合があります。フルネームや肩書きを添えた形を使います。姓を並べた書物の 百家姓 は、姓を覚えるためにも読まれてきました。その題名は、姓が全部で百しかないという意味ではありません。 名・字・号 — 一人にいくつもの呼び名 古典の人物には、名だけでなく字や号があります。ここでの 字 は「あざな」です。名は生まれたときに親がつけます。伝統的な作法では、親や目上の人が呼ぶものでした。字は、成人したときにつける呼び名です。ほかの人が相手の名を直接呼ぶのを避けるために使いました。 号は、多くは自分でつける雅号です。住んでいる場所や好みなどに関わる名を使います。名・字・号は、どれもその人を指せます。ただし、つける時期や使われ方が違います。現代の全員が三つそろえて持つ、という決まりではありません。 人物 名 字 号 李白 白 太白 青莲居士 苏轼 轼 子瞻 东坡居士 陶潜 潜 元亮 五柳先生 苏东坡 という呼び名は、 苏轼 の号に関わります。別の作者が二人いるわけではありません。 陶渊明 と 陶潜 も同じ人物です。陶淵明の名と字には、伝え方の違いがあります。そのため、まず二つの呼び名を同じ人へ結びつけます。 詩や文章の紹介で呼び名が変わっても、すぐに別人にしないことが大切です。作者を整理するときは、姓と名のほかに、本文や解説に出てきた字と号をそばに置くと、人のつながりを追えます。 前の課では、親族を名前より関係の名で呼びました。ここでは、相手の名を直接呼ぶのを避け、字を使う作法を見ました。どちらも、誰に対してどの呼び名を使うかを考える手がかりになります。 避諱 — 本文の字が変わる理由 目上の人や皇帝の名の字を、呼ぶだけでなく書くことも避ける習慣を 避讳 といいます。日本語では「避諱」です。そのため、同じ古典でも、名の字を別の字に替えた本文が伝わることがあります。 漢の文帝の名は 刘恒 でした。繁体字では 劉恆 です。『老子』の 恆道 が 常道 になった例は、文帝の名の字を避けることと結びついていると説明されます。ここでは字体を区別するために、古い本文の字を繁体字で示しています。 二つの写本で字が違っていても、すぐ写し間違いとは決めません。避諱による変更かもしれないからです。どの名の字を避けているかは、その本が作られたり写されたりした時代を考える手がかりにもなります。ただし、本文の違いがすべて避諱だというわけではありません。一字だけで年代を確定せず、ほかの情報と合わせます。 いまの呼び方 — 親しさと仕事 現代では、同僚や同級生をフルネームで呼ぶ形があります。また、年上や同年配の親しい相手には、姓の前に 老 を置きます。 老王 のような呼び方です。年下の親しい相手には 小李 のように 小 を置きます。単に相手の年齢だけでなく、親しい関係かも見ます。 仕事の場では、姓と肩書きを組み合わせます。教師なら 王老师 、マネージャーなら 李经理 、医師なら 张医生 です。相手の仕事を表す語を姓の後ろへ置きます。日本語の「さん」を、いつでも同じ一語に置き換えられるわけではありません。 先生 は男性への改まった呼び方で、教師を表す日本語の「先生」とはずれます。教師として呼びかけるなら 王老师 です。漢字の見た目だけで職業を決めないようにしましょう。 目上や上司に「さん」のつもりで 老王 を使うのは避けます。親しい年上・同年配への形です。仕事の肩書きがマネージャーなら 王经理 と、場面に合う形を選びます。 語表 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 姓 名詞・動詞 姓・姓が〜である 名前全体ではなく家族の姓を指す 他的姓 / 他姓王 その人の姓/その人は王という姓です 名 名詞 個人の名 姓の後ろの部分 姓王,名伟 姓は王、名は偉 字 名詞 あざな ここでは文字一般でなく成人後の呼び名 字太白 字(あざな)は太白(李白の場合) 号 名詞 雅号 名や字とは別の呼び名 他的号 その人の雅号 名字 名詞 名前 日本語の「名字(姓)」とは違い、名前全体や下の名を指す。姓は 姓 我的名字 私の名前 复姓 名詞 二字などからなる姓 ここでは 司马 などの二字の姓 一个复姓 一つの複姓 避讳 動詞・名詞 名の字を避ける・避諱 目上や皇帝の名の字を避ける習慣 要避讳 名の字を避ける必要がある 族谱 名詞 一族の系譜 世代と親族のつながりを記す 一本族谱 一冊の系譜 老师 名詞 教師・先生 教師への呼びかけに使う 王老师 王先生 先生 名詞 男性への改まった呼び方 教師という職業を表す語とは分ける 王先生 王さん 经理 名詞 支配人・マネージャー 仕事の肩書きとして呼びかける 李经理 李マネージャー 百家姓 固有名詞 姓を並べた書物の名 姓の数を文字どおり百に限定しない 读百家姓 『百家姓』を読む 名前から世代と時代を見る 一族の系譜を 族谱 といいます。一族によっては、同じ世代の名に同じ字を使う決まりがありました。たとえば、ある世代に 文 、その次の世代に 明 を使うという形です。この字は、一族の中でどの世代に当たるかを示します。 ここでいう世代は、単に年齢が同じという意味ではありません。親子のつながりの中の位置です。共通の字を見つけても、まずその一族に、世代の字を決める習慣があるかを確かめます。名の字がたまたま同じというだけでは、親族とは言えません。 名前には時代ごとの流行もあります。1950年代には 建国 ・ 建军 ・ 援朝 のような名が多く見られると言われます。1960〜70年代には、 红 ・ 卫 ・ 军 を使った名が多く見られると言われます。名に当時の社会への思いが表れている例です。 1980年代以降には一字の名がはやったと言われます。その場合は、姓一字と名一字を合わせた二字のフルネームになります。 李娜 ・ 王伟 のような名前です。名の長さとフルネームの長さを分けると、流行の説明を読み違えずに済みます。 こうした流行は、おおよその時代を考える材料です。その名なら必ずその年代に生まれた、と決めることはできません。世代の字は一族の系譜を、名の流行は社会の時代を表します。二つは別の情報です。 名づけでは意味や音の響きも考えます。五行や画数を重んじる習慣もありますが、それは名づけに込める考え方です。名前を読む学習では、その人がどう名のり、どの字を使うかを大切にします。同じ音だから別の字に書き換えてよいわけではありません。 練習 名のりと呼びかけを中国語で書く 架空の名前で構いません。自分について、姓を 姓 で、フルネームを 叫 で伝える中国語を書いてください。 家族の一人を紹介するつもりで、姓とフルネームを中国語で書いてください。架空の人物でも構いません。 年上で親しい同僚の王さんへの呼びかけを中国語で書き、前後の空欄のうち、必要なほうだけを埋めてください。 _王_ 。 年下で親しい李さんへの呼びかけを中国語で書き、前後の空欄のうち、必要なほうだけを埋めてください。 _李_ 。 教師の王さんへの呼びかけを中国語で書き、前後の空欄のうち、必要なほうだけを埋めてください。 _王_ 。 医師の張さんへの呼びかけを中国語で書き、前後の空欄のうち、必要なほうだけを埋めてください。 _张_ 。 李白の字が太白であることを中国語の文で書いてください。 陶淵明と陶潜が同じ人を指すことを、中国語で書いてください。 二つの写本で 恆 と 常 が違う理由を、写し間違い以外の可能性として説明してください。 建国 ・ 建军 は、この課では1950年代と1980年代のどちらの流行として挙げましたか。また、一族で同じ字を使う場合との違いを説明してください。 戻り語 前の課で学んだ語を使って書きます。 名前や呼びかけを使って人物と身近な物を紹介します。語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 诗人 ・ 护士 ・ 导游 。 名前や呼びかけを使って人物と身近な物を紹介します。語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 丈夫 ・ 妻子 ・ 优秀 。 名前や呼びかけを使って人物と身近な物を紹介します。語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 能干 ・ 诚实 ・ 自信 。 名前や呼びかけを使って人物と身近な物を紹介します。語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 喜爱 ・ 眼镜 ・ 耳机 。 名前や呼びかけを使って人物と身近な物を紹介します。語ごとに中国語で一文ずつ書いてください。 外套 ・ 毛衣 ・ 口袋 。 音読 語表の▶で 姓 ・ 名字 ・ 复姓 ・ 避讳 ・ 百家姓 を聞き、音読します。続けて 老王 ・ 小李 ・ 王老师 を言い、親しい相手か、仕事の相手かを思い浮かべます。 この課のまとめ 姓と名を分け、二字の姓も一つのまとまりとして読みます。古典では、名・字・号が違っていても同じ人物を指すことがあります。避諱は本文の字が変わる理由の一つです。現代の呼び方は親しさと肩書きから選び、名前の流行は年代を考える手がかりとして扱います。 次の課へ 次の10.27では、科挙の試験の段階と合格者の呼び名を見ます。名前に添えられた肩書きが、その人の経歴を読む手がかりになります。 答え 例: 我姓李,叫李明。 姓は 李 、名は 明 です。 例: 我姐姐姓王,叫王芳。 家族の関係を先に置いて紹介しています。 老王 小李 王老师 张医生 李白的字是太白。 陶渊明也叫陶潜。 皇帝などの名の字を避ける避諱が考えられます。漢の文帝の名にある 恆 を避け、 常 へ替えた例です。ただし、字の違いだけで理由や年代を確定はできません。 1950年代です。これは社会の時代と名の流行の関係です。一族で世代の字を決める場合は、系譜の中での位置を示します。どちらも、名前だけからその人の年齢を確定するものではありません。 这位诗人姓李。 那个护士姓陈。 我们的导游姓张。 我的丈夫姓刘。 他的妻子姓王。 李老师是优秀的教师。 王经理是能干的人。 小李是诚实的人。 老王有自信。 我喜爱李白的诗。 这是王老师的眼镜。 那是小李的耳机。 这是张医生的外套。 那是李经理的毛衣。 小李的外套有口袋。 参考文献 この課に引用はありません。