14.98 アーサー王の死 — つなぎ続ける語りと、言い切らない終わり — Epoché
この篇でできるようになること ★ and でつなぎ続ける語り が読める。 ★ thou と ye の使い分け が分かる。 ★ 言い切らない書き方 (伝聞の形)に気づける。 ★ 易しい語だけで物語が組める ことが見える。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は順番に読む必要がありません ——1 篇が 1 作品で、★ この篇が最初の一篇でもかまいません 。 ★ 12.7 知編 で、読み継がれた話には形があると置きました。 ★ この篇はその形が文字になった瞬間 です——アーサー王の話は何百年も口と写本で伝わり、マロリーが一つの筋にまとめ、キャクストンが刷りました。 ★ 語のほうは 12.1 知編 の骨の側 ——四字以下の語が七割を超えます。 どちらのことか 確かめること ★話のこと ★伝わった話が書き留められる形( 12.7 知編 ) ★語のこと ★短い骨の語と、長い肉の語( 12.1 知編 ) ★ 近くの篇との読み分け です。 14.97 英語の名文 は韻文で、そちらは行の作りを見ますが、★ この篇は散文で、文の切れ目がなかなか来ません 。 14.99 英語の名文 は教科書で、そちらは神話を短い文で説明しますが、★ この篇は神話そのものを語ります 。 14.100 英語の名文 はそちらが英雄の始まりで、★ この篇は英雄の終わり です。 読編の 8.211 読編 は欽定訳聖書で、そちらは文を改めて And で始めて進みますが、★ この篇は一つの文の中でつなぎ続けます ——切れ目の置き場所が違うのです。 ★ 大事な断り です。 ★ この本の綴りは近代化されています ——写本の knyght ではなく knight の形です(この版で数えて確かめました)。 ★ だから古さが出るのは綴りではなく、動詞の語尾と代名詞です ——そこだけ見ればよいので、かえって読みやすくなります。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。★ 6 段落・ 1701 語 です。 文は 62 本、一文の平均は 27.4 語で、★ いちばん長い文は 90 語 あります。 ★ 落としたのは紙面の装置だけ です——章の内容表示( CHAPTER V. How King Arthur commanded のような行)と、ラテン語の一行を囲む斜体の印。 ★ 語は一つも変えていません 。 ★ 話の筋 は、こうです。 最後の戦のあと、王のそばに残ったのはベディヴィアだけになり、王は剣を水に返してこいと命じます。 それから船が来て王は運ばれて行き、ベディヴィアは朝、森で墓を見つけます。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 「だが、私は立っていられない。頭がひどくうずくのだ。ああ、ランスロット卿よ」とアーサー王は言いました。「今日ほどおまえがいなくて困った日はない。ああ、私がおまえに刃向かったことが悔やまれる。今こそ私は死を迎えるのだ。ガウェイン卿が夢の中で私に警告したとおりに。」そこでルーカン卿が王の片側を、ベディヴィア卿がもう片側を抱え上げましたが、持ち上げるうちに王は気を失いました。ルーカン卿も持ち上げた拍子に気を失って倒れ、はらわたの一部が体から出てしまい、それとともにこの気高い騎士の心臓は破れました。王が気がつくと、ルーカン卿が口から泡を吹いて倒れ、はらわたの一部が足もとに落ちているのが目に入りました。「ああ」と王は言いました。「この気高い公爵が私のためにこうして死ぬのを見るのは、私にはまことにつらい眺めだ。彼は私を助けようとしてくれたのに、助けがもっと要ったのは彼のほうだった。ああ、彼は自分の苦しみを訴えようとはしなかった。それほど一心に私を助けようとしていたのだ。どうかイエスよ、彼の魂に憐れみを。」するとベディヴィア卿は兄弟の死を悼んで泣きました。「その嘆きと涙はやめよ」と王は言いました。「どれも私の助けにはならぬ。よく知っておけ、もし私が生きられるものなら、ルーカン卿の死をいつまでも悲しむであろう。だが、私の時は急ぎ足で迫っている」と王は言いました。「だから」とアーサーはベディヴィア卿に言いました。「わが良き剣エクスカリバーを持って、あの水辺へ行け。そこに着いたら、命じる、わが剣をその水に投げ入れ、戻って来て、そこで何を見たかを私に告げよ。」「わが君」とベディヴィアは言いました。「お言いつけのとおりにいたします。すぐにお知らせに戻ります。」 こうしてベディヴィア卿は出かけましたが、道すがらその気高い剣を眺めると、柄頭も柄もすべて宝石でできていました。そこで彼は心の中で言いました。「この豪華な剣を水に投げ込んだら、そこから良いことは何も生まれず、害と損があるばかりだ。」そしてベディヴィア卿はエクスカリバーを木の下に隠しました。そして、できるだけ早く王のもとへ戻り、水辺へ行って剣を水に投げ入れてきたと言いました。「そこで何を見たか」と王は言いました。「わが君、波と風のほかは何も見えませんでした」と彼は言いました。「それは偽りだ」と王は言いました。「だから、すぐにもう一度行って、私の言いつけを果たせ。おまえが私にとって親しく大切な者であるなら、惜しまずに投げ入れよ。」そこでベディヴィア卿はまた引き返し、剣を手に取りましたが、その気高い剣を投げ捨てるのは罪であり恥であるように思われ、またしても剣を隠し、戻って来て、水辺へ行って言いつけを果たしてきたと王に告げました。「そこで何を見たか」と王は言いました。「わが君、水がひたひたと打ち、波が暗くうねるほかは、何も見えませんでした」と彼は言いました。「ああ、不実な裏切り者め」とアーサー王は言いました。「これでおまえは二度も私を裏切った。だれがそんなことを思っただろう、私にとってこれほど親しく大切だったおまえが。おまえは気高い騎士と呼ばれているのに、剣の豪華さのために私を裏切ろうとするのか。だが今度こそすぐに行け。おまえが長く手間取るせいで、私の命は大きな危うさにさらされている。体が冷えてしまったのだ。今度こそ私の言うとおりにしなければ、もしまたおまえに会うことがあれば、この手でおまえを殺す。おまえは私の豪華な剣のために、私が死ぬのを見ようとしているのだから。」 そこでベディヴィア卿は出かけて剣のところへ行き、すぐにそれを取り上げて水辺へ行きました。そこで彼は帯を柄に巻きつけ、それから剣をできるかぎり遠く水の中へ投げました。すると水の上に一本の腕と手が現れてそれを受け止め、つかみ、三度振って高くかざし、それから手は剣とともに水の中へ消えてしまいました。こうしてベディヴィア卿は王のもとへ戻り、見たことを告げました。「ああ」と王は言いました。「私をここから連れ出してくれ。長く手間取りすぎたのではないかと恐ろしい。」そこでベディヴィア卿は王を背負い、その水辺へと連れて行きました。水辺に着くと、岸のすぐそばに小さな平たい船が漂っていて、中には美しい貴婦人がおおぜい乗っており、そのなかに一人の女王がいました。みな黒い頭巾をかぶり、アーサー王を見ると、みな泣き叫びました。「さあ、私をその船に乗せてくれ」と王は言いました。ベディヴィアはそっとそのとおりにしました。すると三人の女王が深い嘆きとともに王を迎え入れ、腰を下ろし、そのうちの一人のひざにアーサー王は頭を横たえました。そしてその女王は言いました。「ああ、いとしい弟よ、なぜこんなに長く私のもとに来なかったのですか。ああ、頭のこの傷はひどく冷えてしまいました。」それから彼女たちは岸から漕ぎ出し、ベディヴィア卿は貴婦人たちがみな自分から離れて行くのを見つめていました。そこでベディヴィア卿は叫びました。「ああ、わが君アーサーよ、あなたが私から去り、私を敵のなかにひとり残して行かれるなら、私はどうなるのでしょう。」「心を強く持て」と王は言いました。「そして、できるかぎりのことをせよ。私にはもう頼りになるものは何もない。私はアヴィリオンの谷へ行って、このいたましい傷を治すのだ。もし私のことを二度と聞かなければ、私の魂のために祈ってくれ。」しかし女王たちと貴婦人たちはずっと泣き叫び、聞くにたえないほどでした。ベディヴィア卿は船が見えなくなるとすぐ、泣き嘆き、森へ入りました。そして夜通し歩き、朝になって、灰色の二つの木立の間に、礼拝堂と隠者の住まいがあるのに気づきました。 ベディヴィア卿は喜び、そちらへ向かいました。礼拝堂に入ると、一人の隠者が四つんばいにひれ伏しているのが見え、そのすぐそばには新しく掘られた墓がありました。隠者はベディヴィア卿を見ると、だれなのかよく分かりました。というのも、隠者は少し前までカンタベリの主教で、モードレッド卿に追い払われた人だったからです。「もし」とベディヴィアは言いました。「あなたがこれほど熱心に祈っておられるのは、ここにだれが葬られているからですか。」「わが子よ」と隠者は言いました。「確かなことは知りません。推し量るばかりです。けれども今夜、真夜中に、ここへおおぜいの貴婦人がやって来て、一つの亡骸を運び込み、葬ってほしいと私に頼みました。そしてここに百本の細いろうそくを供え、私に百枚のビザンティン金貨をくれたのです。」「ああ」とベディヴィア卿は言いました。「それはわが君アーサー王でした。この礼拝堂にここに葬られて眠っておられるのは。」そう言うとベディヴィア卿は気を失いました。気がつくと、彼は隠者に、ここでずっと一緒にいさせてもらい、断食と祈りのうちに暮らしたいと願いました。「私は自分の意志で、ここから決して離れません」とベディヴィア卿は言いました。「生涯の日々をすべて、ここでわが君アーサーのために祈って過ごします。」「よく来られました」と隠者は言いました。「あなたが思っておられるより、私はあなたのことをよく知っているのです。あなたは勇敢なベディヴィアで、まことに気高い公爵、給仕頭のルーカン卿はあなたの兄弟でした。」そこでベディヴィア卿は、皆さんが先に聞いたとおりのことを、すべて隠者に語りました。こうしてベディヴィア卿は、以前カンタベリの主教であった隠者のもとにとどまり、そこで粗末な衣を身にまとい、断食と祈りのうちに、まことにへりくだって隠者に仕えました。 こうして、アーサーについて、権威ある書物に書かれたことを私はこれ以上見つけられず、その死のまことの確かさについても、これ以上読んだことはありません。ただ、彼は三人の女王が乗った船で連れ去られたということだけです。一人はアーサー王の姉、モーガン・ル・フェイ(妖精のモーガン)女王、もう一人はノースゲイリズの女王、三人めは荒れ地の女王でした。またそこには、湖の乙女の長で、良き騎士ペレアスと結婚したニミュエもいました。この貴婦人はアーサー王のために多くのことをしてきました。そして彼女はペレアス卿が命の危険にさらされるような場所には決して行かせなかったので、彼は生涯の終わりまで、彼女とともに大いに安らかに暮らしました。アーサー王の死について、私はそれ以上を見つけることはできませんでした。ただ、貴婦人たちが彼を葬りの場へ運んだことだけです。そして、ある人がそこに葬られたことは、かつてカンタベリの主教であった隠者が証言しました。けれども隠者は、それがまことにアーサー王の亡骸であったかどうかを確かには知りませんでした。この話は、円卓の騎士ベディヴィア卿が書き留めさせたものです。 それでもイングランドの多くの地方では、アーサー王は死んでおらず、主イエスの御心によって別の場所へ移されたのだと言う人たちがいます。そして、彼はまた戻って来て、聖なる十字架を勝ち取るだろうと言われています。私はそうなるとは言いません。むしろこう言いましょう。この世では、彼は生を変えたのだ、と。けれども多くの人は、彼の墓にこの詩句が刻まれていると言います。 Hic jacet Arthurus, Rex quondam, Rexque futurus. (ここに眠るアルトゥルス、かつての王、そしてこれから来る王。)さて、ここでベディヴィア卿を隠者とともに残しておきましょう。隠者はそのころグラストンベリのそばの礼拝堂に住んでおり、そこが彼の隠者の住まいでした。こうして二人は、祈りと断食と大いなる節制のうちに暮らしました。さてギネヴィア妃は、アーサー王が討たれ、気高い騎士たちもみな、モードレッド卿も残った者たちもみな討たれたと知ると、五人の貴婦人を連れてひそかに抜け出し、アムズベリへ行きました。そこで彼女は尼となり、白と黒の衣をまとい、この国の罪深い女人のだれもしたことがないほどの重い悔いの行いを自らに課しました。もうだれも彼女を楽しませることはできませんでした。彼女は断食と祈りと施しのうちに暮らし、あらゆる人びとが、彼女がいかに徳高く変わったかに驚きました。さて、ギネヴィア妃をアムズベリに、白と黒の衣をまとった尼として残しておきましょう。彼女はそこで、道理にかなって女子修道院長となり、治める者となりました。そして彼女から離れて、湖のランスロット卿のことを語りましょう。 語釈 — 名と、人と場所 ★ 帯の外の語は 155 語 です。 多いので★ 三つに割って置きます 。 まず名が 69 語——人と地の名、剣にまつわる物の名( pommel ・ haft )、ラテン語とフランス語の名残( Rex ・ le )です。 ★ 人の名は覚えなくてよい ——三人で筋は追えます。 語(品詞) 意味 注 Abbess en 名 女子修道院の長 The old abbess welcomed every weary traveler at the convent gate. その老いた女子修道院長は、修道院の門でくたびれた旅人を皆迎え入れました。 Almesbury en 名 アムズベリ。妃が尼になった地 Arthur en 名 アーサー。ブリテンの王 Arthurus en 名 Arthur のラテン語の形 Arthur’s en 名 アーサーの Avilion en 名 アヴィリオン。王が運ばれた島。 Avalon の古い綴り Bedivere en 名 ベディヴィア。最後まで王に付いた騎士 Bishop en 名 主教 T