9.18 方法と結果 — やったことと、出てきたこと — Epoché
この課でできるようになること ★ 方法と結果を分けて書く ことができる。 ★ 結果に解釈を混ぜない ことができる。 ★ 否定の結果を書く ことができる。 ★ 表と図を三手で読む ことができる。 前提 : 9.17 まで。読は 8.168 まで。作は 10.16 まで。 道具 ★ 報告の中ほどは、二つの部屋に分かれます。 どの部屋か 何を書くか ★ 方法 ★ 何を、どうやったか ★ 結果 ★ 何が出てきたか ★ 分ける理由は、 読む人の疑い方が違う から です。 どこを読むとき 何を疑うか ★ 方法 ★ そのやり方で分かるのか ★ 結果 ★ ほんとうにそう出たのか ★ 混ざっていると、 どちらを疑えばいいか分からなくなります 。 ★方法は、同じことができるように書く ★ 方法の節の合格点は、一つだけです ——★ 読んだ人が、 同じことをもう一度できるか 。 何を書くか 書き落としがちなもの ★ 材料 ★ どこで手に入れたか ★ 手順 ★ どの順でやったか ★ 条件 ★ いつ、どれだけ待ったか ★ 三つめが、いちばん落ちます。 ★ 自分でやっているときは、 待った時間を数えていない から です。 ★ 本を読むときは、 逆から見てください ——★ 条件が書いていない方法は、 自分ではやっていない ことがあります。 ★結果に「だから」を書かない ★ 結果の節には、 出てきたものだけ を書きます。 ★ 「だから〜だと言える」は、 次の節(議論) の仕事 です。 どちらの書き方か どこに置くか ★ 温度は三度上がった ★ 結果 ★ だから熱が出ている ★ 議論 ★ 面倒に見えますが、これは 自分を守る仕掛け です。 ★ 解釈が間違っていても、 結果は残ります ——★ 別の人が、別の解釈で使えます。 ★ 混ぜて書くと、 解釈が崩れたときに結果ごと捨てられます 。 ★否定の結果も、結果 ★ やってみて できなかった ことは、失敗ではなく結果 です。 どんな結果か 読む人にとっての値打ち ★ 思ったとおりになった ★ 先へ進める ★ ならなかった ★ 同じ道をもう一度歩かずに済む ★ 9.15 論編 で「直せなかったことも書く」、 9.16 論編 で「扱わないことを書く」と置きました。 ★ この課の「できなかったことを書く」も同じ線の上にあります ——★ どれも、 読む人の手間を減らすため です。 ★表と図を、三手で読む ★ 表や図が出てきたら、 本文より先に 見てください。 ★ 本文は、書き手が見せたいところしか指しません。 どの手か 何を見るか ★ 一 ★ 軸と単位。何が何で測られているか ★ 二 ★ 何と何を比べているか ★ 三 ★ 書いていないものは何か ★ 三つめが、いちばん力が要ります。 ★ よくあるのは、この三つ —— 何が無いか 何が起きるか ★ 目盛りの下が切ってある ★ 小さな差が大きく見える ★ 分母が書いていない ★ 何に対する割合か分からない ★ ばらつきが書いていない ★ たまたまかどうか分からない ★ 表と図の使い分けも、覚えておいてください。 どちらを使うか どんなとき ★ 表( Table ) ★ 値そのものを読ませたいとき ★ 図( Figure ) ★ 形や向きを見せたいとき ★ 英語の論文では、表は Table 、図は Figure と呼び、 番号を付けて本文から指します 。 ★ 表の説明は 上 に、図の説明は 下 に置くのがふつう です。 実例 ★ 読 E の三篇から、方法と結果の書き方を見ます。 一つめ — 手順を、順に書く 8.120 読編 のファラデーは、★ ろうそくの作り方を問いから始めます。 And how are these candles made? [1] ★ 「では、このろうそくはどうやって作られるのか」。 ★ 方法の節を 問いで開ける のは、読む人の向きをそろえる手 です。 ★ そして、順に入ります。 The first thing to be done is to put a wick through them [1] ★ 「まず最初にすべきことは、そこに芯を通すことである」。 ★ The first thing to be done —— 最初にすべきこと 。 ★ このあと、ファラデーは 下から上へ 書いていきます ——★ 底で芯を留め、上に渡した細い棒で張る。 どんな順で書くか 読む人はどうなるか ★ 作業の順 ★ 手を動かせる ★ 物の場所の順 ★ 絵が浮かぶ ★ ファラデーは両方やっています。 ★ 作業の順で進みながら、そのつど どこの話か を置いています。 ★ 時間の条件も、落としていません。 After a certain time, when the moulds are cool [1] ★ 「しばらくして、型が冷えたころ」。 ★ a certain time は きっちり測った時間ではない という言い方 です。★ けれども 何を目印にするか は書いてあります ——★ 型が冷えたら。 ★ これが条件の書き方です ——★ 時計で測れないときは、 何を見て次に進むか を書きます。 二つめ — できないことを、書く ★ 同じ篇に、 否定の結果 が出てきます。 A wax candle can never be cast [1] ★ 「蝋のろうそくは、けっして鋳込めない」。 ★ cast は 型に流し込んで作る です。 ★ ふつうに考えれば、 溶けるものは流し込める はずです。 ★ ファラデーは、聞き手がそう言うところまで書いてから、否定します。 how things turn up which one would not expect beforehand [1] ★ 「前もっては予想しないようなことが、どんなふうに現れてくるか」。 ★ この一文が、否定の結果を書く 理由 です ——★ 予想と違ったからこそ、 書く値打ちがあります 。 ★ そして、ファラデーは 範囲も切っています 。 but I must not spend much time on it [1] ★ 「けれども、それに時間をかけるわけにはいかない」。 ★ 9.16 論編 のロックの「道の外」と同じ手 です——★ 面白いと認めたうえで、ここでは扱わないと言っています。 三つめ — 結果から、原理へ 8.121 読編 は、★ 結果の節の手本のような組み立てになっています。 ★ 四つの段で進みます。 ★ 一 まず、見えたもの。 You see, then, in the first instance, that a beautiful cup is formed [2] ★ 「まず第一に、美しい杯ができるのが見える」。 ★ ろうそくの上の 溶けたろうのくぼみ のこと です。 ★ You see が 結果の言い方 です ——★ 「こうなるはずだ」ではなく「こう見える」。 ★ 二 次に、なぜそうなるか。 As the air comes to the candle it moves upwards by the force of the current [2] ★ 「空気がろうそくに来ると、熱が作る流れの力で上に動く」。 ★ そして ふちを内側より冷たく保つ と続きます。 ★ 三 次に、 もしそうでなかったら 。 If I made a current in one direction, my cup would be lop-sided [2] ★ 「もし流れを一方向に作ったら、杯は片寄るだろう」。 ★ lop-sided は 片方に傾いた です。 ★ これが 対照 です。 ★ 実際にはやっていません ——★ If I made と 仮定法 で言っています( 3.30 型編 )。 どんな対照か どう書くか ★ 実際にやった ★ 結果として書く ★ やっていない ★ 仮定法で書く ★ ここを混ぜると、 やっていない実験をやったことにしてしまいます 。 ★ 英語では 動詞の形で見分けられます ——★ 日本語より、ここははっきりしています。 ★ 四 最後に、原理。 You see, therefore, that the cup is formed by this beautifully regular ascending current [2] ★ 「したがって、杯はこの美しく規則正しい上昇する空気の流れによって作られるのが分かる」。 ★ therefore がここで初めて出ます。 ★ 一つめの You see には 無かった のに注意してください ——★ 見えたものを言うときには「したがって」は要りません。 ★ そして、 例外 も書きます。 No fuel would serve for a candle which has not the property of giving this cup [2] ★ 「この杯を作る性質を持たない燃料は、ろうそくには使えないだろう」。 ★ そのあとに アイルランドの沼地の木は別 と続けます ——★ それ自体が海綿のようで、自分の燃料を抱えているから。 ★ 原理を言い切ったあとに例外を一つ置くのは、 強い書き方 です ——★ 「例外を知ったうえで言っている」と分かるから です。 四つめ — 経過を、日付で書く 8.124 読編 のダーウィンは、★ 実験ではなく 二十年の作業 を方法として書いています。 by patiently accumulating and reflecting on all sorts of facts [3] ★ 「あらゆる種類の事実を根気よく積み上げ、それについて考えることによって」。 ★ これが方法の宣言 です。 ★ そのあと、日付が並びます。 いつ 何をしたか ★ 一八三七年 ★ この問いを思いついた ★ 五年後 ★ 推論を自分に許した ★ 一八四四年 ★ 草稿にまとめた work I allowed myself to speculate on the subject [3] ★ 「働いたのち、私はこの主題について推論することを自分に許した」。 ★ allowed myself —— 自分に許した 。 ★ 強い言い方です。 ★ 推論は いつでもできる のに、五年は してはいけないこと にしていた、ということ です。 ★ そして、 なぜこれを書くのか を書きます。 I hope that I may be excused for entering on these personal details [3] ★ 「こうした個人的な詳細に立ち入ることを、お許しいただきたい」。 ★ そして理由が続きます。 to show that I have not been hasty in coming to a decision [3] ★ 「結論に至るのに急いでいなかったことを示すためである」。 ★ ここは、この課でいちばん見てほしいところ です。★ ダーウィンは、 方法を書く理由をそのまま書いています 。 何を書いたか どういう働きか ★ 日付と経過 ★ 方法 ★ 急いでいないと示すため ★ 方法を書く理由 ★ ふつうは、理由まで書きません。 ★ ダーウィンが書いたのは、 結論が受け入れられにくいと分かっていたから です ——★ 受け入れにくい結論ほど、 方法を厚く書く 必要があります。 言い回し 方法と結果に使う言い方を置きます。★ どれも池から取りました。 英文 日本語訳 数を言う She reads on average three or four books a week. [4] 彼女は1週間に平均3、4冊の本を読む。 ★ 平均でどれだけ、と言う 。★ 幅も一緒に言っている This is twice as large as that. [5] これはあれの2倍の大きさがある。 ★ 二倍だ、と言う 。★ 倍数で比べる Compared with yours, my car is small. [6] 君の車と比べれば、ぼくの車は小さい。 ★ 〜と比べれば、と言う 。★ 比べる相手を先に置く ★ 一つめをよく見てください。 ★ three or four と 幅で 言っています。 ★ 平均だけを書くと、 ばらつきが消えます ——★ 表と図の三つめの手(書いていないもの)で探すのが、まさにこれ です。 ★ 三つめの形も大事です。 ★ Compared with yours と 比べる相手を先に置く と、そのあとの文が短くなります。 英文 日本語訳 結果を言う The number of working women is increasing. [7] 働く女性の数は増えている。 ★ 数が増えている、と言う 。★ 向きを言う It turned out that I was right. [8] 私が正しかったことがわかった。 ★ 〜だと分かった、と言う 。★ 出てきたことを言う As a result of the war, many people died. [9] その戦争の結果として、多くの人が亡くなった。 ★ その結果として、と言う 。★ これは議論の言い方 ★ 三つめに気をつけてください。 ★ As a result of ... は 原因と結果を結んでいます 。★ つまり、 これは結果の節の言い方ではありません 。 ★ 結果の節では、二つめの It turned out that のように書きます ——★ 何が出たか、だけ。 ★ 結んだ瞬間に、 議論に入っています 。 やってみる ★ 混ざっている文を、二つに割る 。自分の書いたもの(あるいは読んでいるもの)から、★ 結果と解釈が一文になっている ところを三つ探し、それぞれ二文に割る。 ★ 条件を足す 。自分の書いた手順を一つ選び、★ 「どれだけ待つか」「何を見て次に進むか」 を書き足す。★ 時計で測れないなら、ファラデーのように 目印 を書く。 ★ 図を一つ、三手で読む 。新聞か本から図を一つ選び、軸と単位/比べているもの/★ 書いていないもの を書き出す。 ★ できなかったことを一つ書く 。★ 「やってみたが、こうならなかった」 という形で一段落。★ そのあとに なぜ書く値打ちがあるか を一文足す。 動画で見る この課の内容に近