8.13 Pochi — 犬のポチ — Epoché
この篇でできるようになること 英語だけで書かれた 329 語の物語を、辞書を引かずに最後まで読める。 同じ過ぎた形が、一度きりの出来事とあのころの習わしのどちらを言っているかを見分けられる。 犬を he で受けていることに気づき、その he が誰を指すかを追える。 329 語を 1 分あたり 120 語(2 分 44 秒)で読み切れる。 前提 : 8.12 まで。 読編「読」の第 13 篇です。語り手は 8.1 読編 〜 8.11 読編 と同じケン。こんどは飼っていた犬の話で、329 語あります。第 1 篇は 251 語でしたから、78 語ぶん長くなりました。第 16 篇では 350 語ほどになります。 第 1 期の 16 篇のうち、 物語はこの篇だけ です。ほかの篇は、語り手が自分の暮らしや町や仕事を説明する形でした。説明は今の形で書けます。「わたしは本屋で働いています」「冬は寒いです」——いつのことでもない、いつもそうであることを言えばよいからです。物語はそうはいきません。 物語は、起きたことを起きた順に並べるもの です。だからこの篇は、最初の語から最後の語まで、ぜんぶ過ぎた形で書かれています。 どれくらい徹底しているかは、出てこない語を見ると分かります。この篇には is ・ are ・ do ・ will が一度も出てきません。今の形になる語を 11 通り数えて、どれも 0 回でした。 8.9 読編 と読み比べてみてください。あちらは「毎年そうなること」を今の形で語り、最後の段落だけが過ぎた形に落ちる作りでした。この篇はその逆で、はじめから終わりまで落ちたままです。 この篇で宣言した帯の外の語は 5 語です。うち新しく足したのは Pochi と dog の二つだけ。 Pochi は犬の名前なので、人名と同じ扱いで宣言できます。残りの 3 語( river ・ park ・ bridge )は 8.3 読編 で宣言した町の語をそのまま引き継ぎました。8.1 から 8.11 までの 11 篇で宣言された語は、重なりを取ると 38 語です。この篇の 5 語のうち 3 語はその 38 語の中にあり、課程ぜんたいで増えたのは Pochi と dog の二つだけ、ということになります。 名前を除く 4 語の順位を並べると、 park (657 番)・ dog (895 番)・ river (1,176 番)・ bridge (1,546 番) となります。どれもカタカナの相棒が語彙表に載っていて、CEFR-J でもいちばんやさしい A1 に置かれています。やさしい語なのに帯 600 の外にある—— 8.9 読編 で見た落ち方が、ここでも同じ形で起きています。動物をひとまとめに呼ぶ animal は 587 番で帯の中にありますが、一頭ずつの名前は外です( dog 895 番・ horse 1,139 番・ bird 1,271 番・ cat 1,678 番)。 まとめて呼ぶ語は中に残り、一つずつの名前が外へ落ちる のです。犬・猫・鳥・馬のどれを書こうとしても、まず宣言から始めることになります。 park en 帯の順位 657 番 カタカナとの差 パーク → ● (3 拍を 1 音節に) When I was late he waited in the park, and when I came over the bridge at night he knew me before I could see him. 帰りが遅い日はポチは公園で待っていて、夜にわたしが橋を渡ってくると、こちらが見えるより先にわたしだと分かりました。 May I park my car here? [1] ここに車をとめてもよろしいですか。 dog en 帯の順位 895 番 カタカナとの差 ドッグ → ● (3 拍を 1 音節に) I heard something at the door, and when I opened it there was a small black dog outside. 戸口で物音がして、開けてみると、外に小さな黒い犬がいました。 My mother gave him food, and my father said that we could not keep a dog. 母は食べ物をやり、父は、犬は飼えない、と言いました。 river en 帯の順位 1,176 番 カタカナとの差 リバー → ●○ (3 拍を 2 音節に) My father asked at every shop on the street, and at night he walked down along the river. 父は通りのどの店でも聞いてまわり、夜には川ぞいに下っていきました。 The river was not so clean. [2] その川はあまりきれいではなかった。 bridge en 帯の順位 1,546 番 カタカナとの差 ブリッジ → ● (4 拍を 1 音節に) On the third morning I found him under the bridge with a cut on his foot. 三日目の朝、わたしは橋の下で、足に切り傷をつけたポチを見つけました。 A few days ago I walked over the bridge and stopped at the place where he waited for me. 数日前、わたしは橋を渡って、ポチが待っていた場所で立ち止まりました。 読む前に 語り手はケン、二十歳。山にはさまれた小さな市で母・父と三人で住み、駅から川へ下りていく通りの本屋で働いています( 8.1 読編 〜 8.11 読編 の続きです)。母は町の学校の先生、父は隣の市の会社へ電車で通っています。父はふだん、家では新聞を読んで一時間も何も言わない人です。 起こることはこれだけです。ケンが八つだった年の夜、小さな黒い犬が戸口に来る。父は飼えないと言い、一週間後に、その父が名前をつける。犬は毎朝ケンと学校へ行き、通りの突き当たりで帰りを待つ。十のときに三日いなくなり、橋の下で見つかる。やがて年を取り、ケンが学校を出た年に死ぬ。そして数日前、ケンは橋の上で足を止める。 この篇は 6 段落で、一段落が一つの時期に当たります。段落の頭に置かれた時の語句が、そのつど話を次の時期へ運びます。 One day ・ After that ・ A few days ago ——これだけで、八つの年から二十歳までの時間が動きます。読むときは、まず段落の頭の語句を拾ってください。それが物語の目盛りです。 読みどころは 過ぎた形の二つの働き です。日本語の「た」も同じ二役をこなします。「犬が来た」は一度きりの出来事ですが、「毎朝いっしょに学校へ行った」はあのころ繰り返しそうだったことです。形はどちらも「た」で変わりません。英語も同じで、どちらも過ぎた形になります。見分けるための手がかりは、 every morning ・ one night ・ for two days のような時を言う語句のほうにあります。 もう一つ、読みながら数えてほしいものがあります。犬を指す語です。この篇には he ・ him ・ his が合わせて 25 か所出てきますが、そのうち 22 か所は犬のポチを指しています。 it は 2 か所しかなく、しかもどちらもポチではありません。英語は飼っている生き物を人と同じように受けます。ここは日本語と大きく違うところです。使われている型は型編の 8 課の範囲だけです。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。6 段落・24 文・329 語で、どの段落も四文ずつです。冒頭はこう始まります。 Pochi came to our house one night when I was eight. 先に原文だけを、辞書も訳も見ずに最後まで読んでください。分からないところがあっても止まらず、最後まで行ってから戻ります。それが済んでから、下の「語釈」「構文の骨」「訳」を見ます。この順を守ってください。訳を先に見ると、訳を読んで英語を読まない癖がつきます。 語釈 はじめの 5 語が宣言語で、 帯 600 の外にある、この篇で本当に新しい語 です。あとの 11 語はどれも帯の中にありますが、 この文の中では知っているのと違う意味で働いている語 を選びました。「この文ではこの意味」という形で確かめてください。 Pochi en 名前 ポチ。犬の名で、この篇の題。日本で犬によく付ける名前。人名と同じ扱いで宣言した(語彙表に順位が無い唯一の語) Pochi came to our house one night when I was eight. ポチがうちに来たのは、わたしが八つだった年のある夜でした。 Pochi died in the year I left school. ポチが死んだのは、わたしが学校を出た年でした。 dog en 名詞 犬。895 番なので帯 600 の外にあり、題の語として宣言した。カタカナの「ドッグ」は 3 拍だが、英語は 1 音節で言い切る I heard something at the door, and when I opened it there was a small black dog outside. 戸口で物音がして、開けてみると、外に小さな黒い犬がいました。 My mother gave him food, and my father said that we could not keep a dog. 母は食べ物をやり、父は、犬は飼えない、と言いました。 river en 名詞 川。1,176 番。 8.3 読編 で宣言した町の語をそのまま引き継いだ。この篇では父がポチを探して下っていく道になる My father asked at every shop on the street, and at night he walked down along the river. 父は通りのどの店でも聞いてまわり、夜には川ぞいに下っていきました。 park en 名詞 公園。657 番。同じく 8.3 からの引き継ぎで、橋の向こうにある。この篇ではポチが待つ場所 When I was late he waited in the park, and when I came over the bridge at night he knew me before I could see him. 帰りが遅い日はポチは公園で待っていて、夜にわたしが橋を渡ってくると、こちらが見えるより先にわたしだと分かりました。 bridge en 名詞 橋。1,546 番。同じく 8.3 からの引き継ぎ。この篇では最初にポチが見つかる場所であり、最後にケンが立ち止まる場所 On the third morning I found him under the bridge with a cut on his foot. 三日目の朝、わたしは橋の下で、足に切り傷をつけたポチを見つけました。 A few days ago I walked over the bridge and stopped at the place where he waited for me. 数日前、わたしは橋を渡って、ポチが待っていた場所で立ち止まりました。 keep en 動詞 飼う。 we could not keep a dog は「犬は飼えない」。8.9 では「開けたままにしておく」の意味で出た語で、生き物を相手にすると「うちに置いて世話をする」ほうになる My mother gave him food, and my father said that we could not keep a dog. 母は食べ物をやり、父は、犬は飼えない、と言いました。 Don't keep the TV on! [3] テレビをつけっぱなしにするな! name en 名詞 名前。 gave him his name は「名前をつけた」。日本語は名前を「つける」が、英語は「与える」ほうの語を使う A week later my father was the one who gave him his name. 一週間後、名前をつけたのは、その父でした。 He said nothing all day, and after that he never said the name again. 一日じゅう何も言わず、それきり二度とその名前を口にしませんでした。 out en 副詞 外へ出る。 until I came out は「わたしが校舎から出てくるまで」。 come out で一つの動きになり、どこから出るかは言っていない He walked behind me to the end of the street and waited there until I came out. わたしの後ろを通りの突き当たりまで歩いてきて、わたしが出てくるまでそこで待っていました。 I'm out of my mind. [4] 気が狂いそうだ。 take en 動詞 連れていく。 he took me home the same way は「同じ道でわたしを家まで連れて帰った」。物を手に取るという意味だけの語ではなく、人や生き物にも使う I had to take a cab. [5] タクシーに乗らなくちゃいけなかった。 Let's go take a look. [6] 見に行こうよ。 end en 名詞 突き当たり/終わり。 the end of the street は通りの突き当たり、 at the end は「最後には」。同じ語が場所にも時にも出る My teacher saw him at the end of the street every day and said nothing about it. 先生は毎日その姿を通りの突き当たりで見ていましたが、何も言いませんでした。 He did not eat for thre