8.78 赤毛組合(2)— 話が三重に入れ子になる — Epoché
この篇でできるようになること ★ 三重の入れ子 を、引用符で見分けられる。 ★ 広告の英語 が地の文と違うことに気づける。 ★ うますぎる話が条件で作られる のを見抜ける。 ★ 伏線 がどこに置かれたかを言える。 前提 : 8.77 まで。型は 3.32 まで。語は 4.48 まで。 読む前に ★ 前の篇までのこと。 赤毛の質屋ジェイベズ・ウィルソンが、ホームズのところに来ています。ホームズは身なりから五つ言い当て、★ ウィルソンに新聞の広告を探させました 。 この篇では、その広告が出てきます。★ 赤毛組合という会が、赤毛の男に週四ポンドを払うという知らせ です。 そして、ウィルソンの身の上が語られます。★ 質屋はもうからず、助手は半額の給料で働いている。 ★ その助手が、この広告を持ってきました。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1112 語、文は 70 本、いちばん長い一文は 55 語です。★ red-headed が 8 回出ます。 広告の初めを見ます。 there is now another vacancy open which entitles a member of the League to a salary of £ 4 a week for purely nominal services ★ 一文で、名詞が七つ並んでいます ——空き・会員・組合・給料・週・奉公。★ 動詞は二つしかありません。 ★ これが広告の英語です。 ★ 短く詰めるために、動きを名詞に変えています。 ★ だから読みにくいのです。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 「ええ、今度は見つけました」と彼は、太くて赤い指を欄の半分ほどのところに置いて答えました。「ここです。これがすべての始まりです。ご自分でお読みになってください。」 私は彼から新聞を受け取り、次のように読みました。 「赤毛組合へ。アメリカ合衆国ペンシルヴェニア州レバノンの故エゼキア・ホプキンズ氏の遺贈により、ここに再び空きが一つ生じました。これにより組合員一名は、まったく名ばかりの務めに対して週四ポンドの給料を受ける資格を得ます。心身ともに健全で、二十一歳以上の赤毛の男子はすべて応募の資格があります。月曜日の十一時に、フリート街ポープス・コート七番地の組合事務所にて、ダンカン・ロスまでご本人がお申し込みください。」 「いったいこれはどういう意味だ」と、私はこの奇妙な告知を二度読み返したあとで思わず声を上げました。 ホームズは、上機嫌のときの癖で、くすくす笑いながら椅子の上で体をよじりました。「これはちょっと世間の常道から外れているね」と彼は言いました。「さて、ウィルソンさん、さあ初めから、あなたご自身のこと、お宅のこと、そしてこの広告があなたの運命にどんな影響を与えたかを、すっかり話してください。ドクター、まず新聞の名と日付を書き留めておいてくれたまえ。」 「『モーニング・クロニクル』紙の一八九〇年四月二十七日号だ。ちょうど二か月前だね。」 「結構。では、ウィルソンさん?」 「さて、今お話ししていたとおりなのですよ、シャーロック・ホームズさん」と、ジェイベズ・ウィルソンはひたいの汗をふきながら言いました。「私はシティの近くのコーバーグ・スクエアで小さな質屋をやっております。たいした商売ではなく、ここ数年は、どうにか食べていけるほどにしかなっておりません。以前は助手を二人置くことができたのですが、今は一人だけです。その一人に給料を払うのも難しいところですが、彼は商売を覚えたいからと、半分の給料で来てくれているのです。」 「その気のきく若者の名は何といいますか」とシャーロック・ホームズはたずねました。 「名はヴィンセント・スポールディングといって、それほど若いわけでもありません。年はちょっと分かりかねます。あれ以上に気のきく助手は望めませんよ、ホームズさん。それに、彼ならもっとよい身分になれて、私が払える額の二倍は稼げるだろうと、よく分かっております。でも結局、本人が満足しているのなら、どうしてわざわざ余計な考えを吹きこむ必要がありましょう。」 「まったく、そのとおりです。相場よりも安く来てくれる使用人がいるとは、たいへん運がよいようですね。今の時代の雇い主には、そうあることではありません。あなたの助手は、あなたの広告に劣らず注目に値するのではないかと思いますよ。」 「いや、彼にも欠点はあります」とウィルソン氏は言いました。「あれほど写真に凝る男はおりません。頭を磨くべきときにカメラでぱちぱち撮ってばかりいて、それから写真を現像しに、ウサギが穴にもぐるように地下室へもぐりこむのです。それが主な欠点ですが、全体としてはよい働き手です。悪いところはありません。」 「今もあなたのところにいるのでしょうね?」 「はい、そうです。彼と、ちょっとした料理をしたり家をきれいにしたりする十四歳の娘と、家にいるのはそれだけです。私は妻を亡くしておりまして、家族を持ったことがないのです。私たち三人はとても静かに暮らしております。ほかに何もしなくても、雨露をしのぐ屋根はあり、借金は払っております。 「私たちを最初にかき乱したのが、あの広告でした。ちょうど八週間前の今日、スポールディングがまさにこの新聞を手にして店に降りてきて、こう言うのです。 「『ああ、ウィルソンさん、本当に、自分が赤毛の男だったらよかったのに。』 「『それはまたどうして?』と私はたずねます。 「『だって』と彼は言います。『赤毛組合にまた空きが出ているんですよ。手に入れた人には、ちょっとした財産になる値打ちがあります。それに、聞くところでは、空きの方が人の数より多いので、遺産を預かる人たちはお金をどうしたらよいか思案に尽きているそうです。僕の髪の色さえ変わってくれれば、ここにすぐ収まれる楽な仕事口が用意されているんですがね。』 「『おや、それはいったい何なんだ?』と私はたずねました。おわかりでしょうが、ホームズさん、私はたいへんな出不精でして、商売の方が向こうからやって来るので、こちらから出かける必要がなく、何週間も続けて戸口の敷物から足を踏み出さないこともよくありました。そういうわけで、外で何が起きているかをあまり知らず、ちょっとした知らせでもいつもありがたかったのです。 「『赤毛組合のことを聞いたことがないんですか』と彼は目を丸くしてたずねました。 「『一度もない。』 「『へえ、それは驚きですね。あなた自身、その空きの一つに応募する資格があるのに。』 「『それで、それはどれほどの値打ちがあるんだ?』と私はたずねました。 「『いや、ほんの年に二百ポンドほどですよ。でも仕事は軽いし、ほかの仕事のさまたげになることもあまりないはずです。』 「さて、それを聞いて私が耳をそばだてたのは、おわかりいただけるでしょう。なにしろ商売はここ何年かあまり景気がよくありませんでしたから、余分に二百ポンドあれば、たいへんありがたかったのです。 「『そのことをすっかり話してくれ』と私は言いました。 「『ええと』と彼は広告を見せながら言いました。『ご自分で見てのとおり、組合には空きがあって、詳しいことを問い合わせる住所がここにあります。僕が分かる限りでは、組合はアメリカの大金持ちのエゼキア・ホプキンズという人が作ったもので、この人はたいそう変わった人だったそうです。自分も赤毛だったので、赤毛の男にはみな大いに親しみを持っていました。それで、亡くなったとき、莫大な財産を遺産を預かる人たちの手にゆだね、その利息を、髪がその色の男たちに楽な職を与えるのに使うよう指示していたことが分かったのです。聞く話ではどれも、すばらしい給料で、することはほとんどないそうですよ。』 「『でも』と私は言いました。『応募する赤毛の男は何百万人もいるだろう。』 「『思うほど多くはありませんよ』と彼は答えました。『というのも、実はロンドンの者に、それも大人の男に限られているんです。このアメリカ人は若いころロンドンから出ていった人で、この古い町に恩返しをしたかったのです。それにまた、髪が薄い赤や濃い赤、要するに本当に明るい、燃えるような、火のような赤以外なら、応募しても無駄だと聞いています。さて、ウィルソンさん、もしあなたが応募する気になれば、そのまま入っていけるでしょう。でも、たかだか数百ポンドのために、わざわざ手間をかけるほどのことでもないかもしれませんね。』 語釈 帯の外の語は 61 語です。★ 三分の一が名前と地名 です。★ 広告に出てくる地名は、あとで効いてくるので覚えておいてください。 語(品詞) 意味 注 American en 形 アメリカの The American tourists took many photos near the old bridge. アメリカ人の観光客たちはその古い橋の近くでたくさん写真を撮りました。 Chronicle en 名 クロニクル。新聞の名 Coburg en 名 コーバーグ。広場の名 Duncan en 名 ダンカン Ezekiah en 名 エゼキア Fleet en 名 フリート。通りの名 Holmes en 名 ホームズ Hopkins en 名 ホプキンズ。組合を作った富豪 Jabez en 名 ジェイベズ。ウィルソンの名 Lebanon en 名 レバノン。米国の町の名 London en 名 ロンドン Londoners en 名 ロンドンの人(複数) Londoners often complain about the unpredictable weather in autumn. ロンドンの人たちは秋の予測できない天気についてよく不満を言います。 Lord en 名 主。 I wish to the Lord で「本当に〜であればよいのに」 Lord, I truly wish this endless meeting would end soon. 本当にこの終わりのない会議が早く終わってほしいものです。 Mr en 名 Mister の略 Oh en 間 ああ Oh, I nearly forgot about our meeting this afternoon. ああ、今日の午後の会議のことをもう少しで忘れるところでした。 Pennsylvania en 名 ペンシルヴェニア Pope’s en 名 ポープの。 Pope's Court は小路の名 Ross en 名 ロス Sherlock en 名 シャーロック Spaulding en 名 スポールディング。ウィルソンの助手 U en 名 U.S.A. の一部 Vincent en 名 ヴィンセント Wilson en 名 ウィルソン bequest en 名 遺贈。死んだ人が残した金 The old woman left a generous bequest to the local school. その老婦人は地元の学校に気前のよい遺贈を残しました。 berths en 名 居場所・職(複数) The shipping company offered several berths to new sailors. その海運会社は新しい船員たちに複数の職を提供しました。 blazing en 形 燃えるような( 8.77 読編 ) The blazing campfire kept everyone warm through the cold night. 燃えるようなたき火が寒い夜の間みんなを暖めました。 cellar en 名 地下室 They stored the wine bottles in a cool, dark cellar. 彼らはワインの瓶を涼しく暗い地下室に保管しました。 chuckled en 動 くすくす笑った The old man chuckled quietly at his grandson's silly joke. その老人は孫のばかげた冗談に静かにくすくす笑いました。 confined en 動 限られた The patient was confined to bed for nearly two weeks. その患者はほぼ二週間ベッドに限られていました。 crib en 名 楽な仕事口 He finally landed an easy crib at the local office. 彼はついに地元の事務所で楽な仕事口を見つけました。 diving en 動 もぐりこむこと The boys spent the afternoon diving into the cool lake. 少年たちは涼しい湖にもぐりこんで午後を過ごしました。 ejaculated en 動 思わず声を出した eligible en 形 資格がある Only students over sixteen were eligible for the scholarship. 16歳を超える生徒だけがその奨学金の資格がありました。 fiery en 形 火のような( 8.77 読編 ) Her fiery temper surprised everyone at the quiet dinner table. 彼女の火のような気性は静かな夕食の席にいた全員を驚かせました。 forehead en 名 ひたい Sweat trickled down his forehead during the long hike. 長いハイキングの間、彼のひたいを汗が伝い落ちました。 halfway en 副 半分ほどのところで We stopped to rest halfway up the steep mountain trail. 私たちは急な山道を半分ほどのところで休むために止まりました。 handy en 形 ありがたい A small flashlight is always handy during a power outage. 小さな懐中電灯は停電のときいつもありがたいものです。 interfere en 動 さまたげる Please do not interfere