3.29 強調と倒置 — 崩すと目立つ — Epoché
この課でできるようになること ★ do を足して 動詞を強め られる。 ★ 分裂文 で、言いたいところを取り出せる。 ★否定の語を頭に出すと 倒置が起きる ことが分かる。 if を落とした倒置を、読んで見分けられる。 前提 : 3.28 まで。読は 8.72 まで。 例文で見る 十文を並べます。行を押すと音が鳴ります。 右の列は、どう崩しているか です。 英文 日本語訳 どう崩しているか I do think so. [1] 本当にそう思います。 ★ do を足して 動詞を強める Do come in! [2] さあどうぞお入りください。 ★命令形に do 。 ぜひどうぞ It was here that I saw her. [3] 私が彼女を見たのはここでした。 ★ 分裂文 。 It was と that で挟んで強める It was not until last night that I got the news. [4] 昨夜になってやっと知らせを受けた。 ★ not until を挟んだ形。 〜してはじめて Never have I seen such a thing. [5] そんなものは未だかつて見たことがない。 ★否定の語を頭に出すと、 主語と動詞がひっくり返る Little did I think that I would win. [6] 自分が勝つとは全く思っても見なかった。 ★ Little も否定の仲間。 思いもしなかった Only then did I realize it. [7] そのとき初めてそれを悟った。 ★ Only then 。 そのときになって、はじめて Not only did he come but he also offered to help me. [8] 彼は来てくれただけでなく、援助してあげようと言ってくれた。 ★ Not only + 倒置。うしろに but also Here comes the train! [9] あ、汽車が来た。 場所の語を頭に出した倒置。 ほら、来た There goes our bus. [10] あっ、バスが行ってしまう。 同じ形。 行ってしまう 骨組み ★ do を足して強める 英語には、 動詞だけを強める語 がありません。「本当に思う」の「本当に」に当たる副詞はありますが、★ 動詞そのものを強めたいときは、 do を足します 。 どう書くか 何をしているか I think so. ふつうの言い方 I do think so. [1] ★ 要らない do を入れた 。そこが強まる ★ do は、本来ここに要りません。 問いと打ち消しのときだけ出る語です( 3.3 型編 )。 要らないところに出たから、目立つ ——これがこの形の働きです。 命令形にも足せます。★ そのときは、強めるのに柔らかくなります。 理由は下の「丁寧さの段」で扱います。 日本語話者は、この形を ほとんど使いません 。実測でも、英語の書き手の 五分の一ほど しか出ません。★ 日本語に同じ手が無い からです——日本語なら「本当に」「たしかに」と 語を足して 強めます。 ★分裂文 — 言いたいところを取り出す 三番めの文を見てください。 It was here that I saw her. [3] ふつうに言えば I saw her here. です。★ here を It was と that で挟んで、前へ引き出しました。 どこを挟むか 何が強まるか 場所 ★ ほかでもない、ここで 人 ほかでもない、その人が 時 ほかでもない、そのときに ★ この形は、文を二つに割ります。 だから 分裂文 と呼びます。 3.24 型編 で一度出しましたが、そこでは「場所取りの it 」として扱いました。 ★ ただし、形が同じでも分裂文とはかぎりません。 下の「実文で通す」に置いた 8.91 読編 の行は、 It is … that … の形ですが 分裂文ではありません 。あちらは 3.24 型編 の 形式主語 です。 ★ 見分け方は一つ—— It was と that を外して、文が立つか。 立てば分裂文、立たなければ形式主語です。 ★倒置は「前に出したから」起きる 五番めから八番めが倒置です。★ 並びを逆にしたのではありません。 まず、 否定の語を文の頭に出す ( Never ・ Little ・ Only then ・ Not only )。 ★ すると、主語と動詞がひっくり返る 。 動詞が be や助動詞でなければ、★ do を借りてくる 。 三つめが大事です。 Little did I think … の did は、★ 強めるための do ではありません 。 ひっくり返すために借りた ものです。 ★ 同じ語が、二つの仕事をしています。 問いのときと同じ働きだと思ってください—— 動詞を前へ出すための取っ手 です。 なぜ、前に出すとひっくり返るのでしょうか。★ 英語の文は、頭に「主語でないもの」が来ると落ち着かない からです。だから、 問いと同じ並びにして、ふつうの文でないことを知らせます 。 場所の語を頭に出す倒置 九番め・十番めは、否定ではありません。★ 場所の語 を頭に出した形です。 Here comes the train! [9] ★ この形は、主語が名詞のときだけ です。代名詞なら、ひっくり返りません——「ほら、来た」は Here it comes. です。 ★ ここは規則として覚えてください。 名詞なら後ろ、代名詞なら前。理由は 3.24 型編 と同じ—— 新しいものを後ろへ回す からです。代名詞は もう出たもの なので、回す必要がありません。 ★ if を落とすと、倒置になる 3.22 型編 で仮定の形を習いました。★ かたい文章では、 if を落として倒置にします。 ふつうの形 かたい形 If there had been … ★ Had there been … If it had been … ★ Had it been … ★ if が消えた代わりに、 had が前へ出ています。 倒置そのものが「もし」の印 になっている。 この形は、★ 読 D に二度出ます ——ホームズと『赤毛のアン』で。 作家も時代も違うのに、同じ形 です。下の「実文で通す」で並べます。 日本語ならどう言うか ★ 日本語には、倒置という現象がありません。 日本語 何が起きるか 彼は昨日、京都へ行った ふつうの並び 昨日、彼は京都へ行った ★ 何も起きない 京都へ、彼は昨日行った ★ やはり何も起きない ★ 語順を変えても、動詞の形は動きません。 日本語は 助詞が役割を示す ので、どこに置いても分かるからです。 では、日本語はどうやって強めるのでしょうか。★ 助詞を変えます。 どう言うか 何を強めるか 彼 が 来た ふつう 彼 こそ 来た ★ほかでもない彼が 彼 しか 来なかった ★彼だけ ★ 英語は語順で、日本語は助詞で強めます。 だから、 日本語話者は「語順を崩す」という発想を持ちません 。★ 強めたいときは、助詞を探すのではなく、前に出すことを考えてください。 丁寧さの段 四つとも「入ってください」を伝えています。 英文 日本語訳 どう和らげたか Come into the room. [11] 部屋の中に入ってください。 言い切る命令形。 そっけない Please come in. [12] どうぞ、お入り下さい。 please を足す。 ふつうの丁寧さ Do come in! [2] さあどうぞお入りください。 ★ do を足す。 強めているのに、やわらかい Won't you come in? [13] お上がりになりませんか? ★打ち消しの問いにする。 いちばん柔らかい ★ 三つめが面白いところです。 do は 強める 語なのに、命令形に付けると 柔らかくなります 。 なぜでしょうか。★ 強めているのが「命令」ではなく「歓迎」だから です。「入れ」を強めているのではなく、 「どうぞ」を強めています 。 四つめは、 3.26 型編 でやった手です——★ 打ち消しの問いにすると、相手に断る余地が残ります。 12.9 知編 で「英語の礼儀は、言わないことで言う」と置きました。★ ここでは、言い切らないことが丁寧さになっています。 よくある誤り 三つ挙げます。下の誤文は Epoché の作例です。 否定の語を頭に出して、倒置にしない。 Never I have seen it. → Never have I seen it. の形に。★ 頭に出したら、必ずひっくり返します 。片方だけやると、 いちばん目立つ誤り になります。 倒置の do を強調だと思う。 ★これは読むときの誤りです。 Little did I think の did は ひっくり返すために借りた もので、強めてはいません。 代名詞なのに場所の倒置を使う。 Here comes it. → Here it comes. の形に。★ 名詞なら後ろ、代名詞なら前 です。 実文で通す 読 D の篇から五つ引きました。 どの篇から 原文 何が起きているか 8.73 読編 nor did Alice think it so very much out of the way [14] ★ nor + 倒置。 借りてきた did 8.84 読編 Had there been women in the house, I should have suspected [15] ★ if を落とした倒置。 ホームズ 8.100 読編 Had it been any other man in Avonlea [16] ★ まったく同じ形 。作家も時代も違うのに 8.91 読編 It is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune must be in want of a wife. [17] ★これは 分裂文ではない 。形式主語( 3.24 型編 ) 8.95 読編 There was clearly nothing to do but flop down on the shabby little couch and howl. [18] There 構文。 倒置ではない ★ 二行めと三行めを並べて読んでください。 片方は 探偵が推理を語る場面 、もう片方は 村の噂話の場面 です。書かれた国も時代も違います。★ それでも、同じ形が出ます。 これが、この形が 読むために要る 理由です。★ 使えるようにならなくてかまいません。 けれども、 出てきたときに読めなければなりません 。 四行めと五行めは 倒置でも強調でもありません 。★ 形が似ているだけ です。 3.24 型編 で組んだ二つの形—— 形式主語 と there 構文 ——を、ここで 見分けられるか が試されます。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 BBC English Masterclass: Inversion 1: After Negative or Limiting Adverbs BBC Learning English (3:42, 2016) 否定語が前に出たときの倒置 Grammar: Giving emphasis in English - BBC English Masterclass BBC Learning English (3:29, 2016) 強調のしかた全体 練習 「例文で見る」の 10 文を、行を押して音を聞いてから 続けて音読 する。★ 頭に出した語を強く、長く 言う。倒置は 声でも前が立ちます 。3 周する。3 周目は 5 番めと 7 番めを、音声に重ねて シャドーイング する。 ★ 崩す練習 。「私はそこで彼女に会った」を、 三通りで 言う——ふつうの形/分裂文で場所を強める形/ do で動詞を強める形。 ★ 見分ける練習 。 8.91 読編 の一行を読み直して、 It is と that を 外してみる 。文が立つかどうかで、 分裂文か形式主語か を決める。 この課のまとめ ★ 英語は語順がきつい。だから崩すと目立つ。 ★ do は、要らないところに出るから強める。 日本語話者はこの形を使い足りない。 ★ 分裂文は、言いたいところを挟んで前へ引き出す。 見分け方は 外して文が立つか 。 ★ 倒置は「前に出したから」起きる。 頭に否定の語を出す → 主語と動詞がひっくり返る。 ★ 倒置の do は、強めていない。 ひっくり返すために借りた取っ手。 場所の倒置は 主語が名詞のときだけ 。代名詞は前( 3.24 型編 の「新しいものを後ろへ」)。 ★ if を落とすと倒置になる。 倒置そのものが「もし」の印。読 D に二度出る。 ★ 英語は語順で、日本語は助詞で強める。 「こそ」「しか」を探すかわりに、 前に出す ことを考える。 ★ この課の形は、使えなくてよい。読めればよい。 次の課へ 次の課は 3.30 、 仮定法 II です。 3.22 型編 で「事実でないことを言う形」を置きました。★この課では、 過去完了の仮定 (あのときこうしていれば)、 as if 、 if only 、そして 提案の仮定法 を扱います。★最後のものは、 商の文章 (第 7 期)で毎日使う形です。 答え 「練習」の二つめと三つめについて。 ★三つとも作れますが、 強めている相手が違います 。分裂文は 場所 を、 do は 会ったという事実 を強めます。★ 「何を強めたいか」を先に決めてから、形を選んでください。 形から入ると、強めたくないところが強まります。 ★ 外すと文が立ちません。 a truth universally acknowledged だけでは文になりません。だから 形式主語 です。★この一文は、 英語の小説でいちばん有名な書き出し の一つです。そして、 言っていることは皮肉 です( 12.9 知編 )——「誰もが認める真理」と大げさに始め