11.19 柳宗元 江雪 — 獨り釣る寒江の雪 — Epoché
この篇でできるようになること 前半二句の対と、消えたことを表す動詞を挙げられます。 千・萬を、正確な数ではなく範囲の広さとして読めます。 釣る場所を補って最後の句を訳し、現代語の順にできます。 前提 :11.18「王之渙 登鸛雀樓 — 更に上る一層の樓」。前半の景色と後半の人の動きを、今回もつなげます。 鳥も人も消えた景色 柳宗元の五言絶句です。一句五字、四句の短い詩ですが、初めから老人を見せるわけではありません。前の十字で、山と道に何がないかを述べ、その後に舟と老人を置きます。 前の篇では日と河が動いていました。こちらは、飛ぶ鳥の姿が絶え、人の足跡が消えています。目に見えるものを増やして景色を描くのではありません。消えたものから広さや静けさを感じ取る作りです。 二つの消える動詞 絕 は絶える、 滅 は消えるという動詞です。 鳥飛絕 は鳥の飛ぶ姿が絶えたこと、 人蹤滅 は人の足跡が消えたことを述べます。形容詞述語文として読むのではありません。 不 ・ 無 を置かなくても、動詞そのものによって、あったものが今はないと表せます。単に飛ばないと言う 不飛 や、足跡がないと言う 無蹤 との違いは、消えていく時間が入っていることです。現代語にする練習でも、変化の 了 を使い、その点を残します。 山という山、道という道 千山 と 萬徑 は、山や道を数えた報告ではありません。山という山、道という道という広がりです。大きな数で範囲を広げてから、そこに姿がないと言います。 特別編 11篇 の旅の遠さを述べる大きな数とも比べられます。ここでは、広げた景色の中から鳥と人が消えるため、後で現れる一人が目立ちます。広い空白を先に置いていると読めます。 山が千、道が一万と数を確定しないでください。この二つの数は、ありとあらゆる山や道という広がりを表します。 前半の対をそろえる 一句目の語 読み 二句目の語 読み 違い 千山 せんざん 萬徑 ばんけい 山と道の広がり 鳥飛 ちょうひ 人蹤 じんしょう 鳥の動きと人の足跡 絕 たえる 滅 きえる 姿が絶えることと跡が消えること 形をそろえることで、鳥も人もいないことを、違う場所から重ねて伝えます。単に同じ内容を繰り返すのではありません。山と道、飛ぶ姿と足跡を組にして読みましょう。 舟と老人を置く 孤舟簑笠翁 には、舟、蓑と笠、老人が並び、動作を言う動詞がありません。日本語の体言止めに近く、まず姿を置いています。次の句で、老人が釣る動きを読みます。 本文の 簑 は、本によって 蓑 とも書かれます。本文は 簑 の字で書かれています。 孤 と 獨 が、一つ、一人という意味を重ねます。名前や細かな来歴は示されていません。遠く小さく見えると感じることはできますが、それは描写からの受け取り方です。 釣る場所を補って読む 獨釣寒江雪 は、雪の降る寒い川で、一人釣っていると読めます。場所を結ぶ介詞を置かず、釣る動詞の後ろに場所やその様子を示しています。名詞が動詞の前に来て「〜で」を表す形(後の課で見ます)とは別です。 現代語なら、 在 で場所を示すまとまりを、釣る動詞より前へ置けます。 型編 9課 で見た位置を使います。雪を釣る対象として機械的につながないようにします。ただし、字どおり雪を釣ると受け取る読みもあり、一つの解釈だけに決まるわけではありません。 四句の頭を続けると 千萬孤獨 になります。そう読む読み方は知られていますが、作者が意図したかは分かりません。頭の字の並びより、鳥と人が消えた前半から、後半の一人へ進む流れを読みましょう。 ここでは雪の川を場所として読むと意味がつながります。動詞の後ろにある名詞が、いつでも直接の対象になるとは考えないでください。 四句を日本語にするときも、最初から老人を主語にして、鳥も人も見えないと説明し直さないようにします。原文は山と道の広さを先に示し、舟と老人を後で出します。訳でその順を保つと、何もない景色から一人の姿が現れる変化を受け取れます。 語釈 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 絕 動詞 絶える 姿がなくなる変化 鳥飛絕 鳥の飛ぶ姿が絶える 滅 動詞 消える 跡がなくなる変化 人蹤滅 人の足跡が消える 徑 名詞 細い道 山に対する場所 萬徑 道という道 蹤 名詞 足跡 人そのものではなく跡 人蹤 人の足跡 簑 名詞 蓑 蓑と書く本もある 簑笠翁 蓑と笠を着けた老人 笠 名詞 笠 老人の装い 簑笠翁 蓑と笠を着けた老人 翁 名詞 老人 名前は示されない 簑笠翁 蓑と笠を着けた老人 獨 副詞 一人で 釣る動詞より前 獨釣 一人で釣る 練習 空欄を埋めて本文の句を書いてください。 千山鳥飛_ 空欄を埋めて本文の句を書いてください。 萬徑人蹤_ 空欄を埋めて本文の句を書いてください。 _舟簑笠翁 空欄を埋めて本文の句を書いてください。 _釣寒江雪 前半二句を現代語にし、姿がなくなった変化を 了 で表してください。 獨釣寒江雪 を、雪の降る川を場所として読む現代語にしてください。 在 のまとまりを動詞より前に置きます。 不飛 ・ 無蹤 と 飛絕 ・ 蹤滅 を、「ただそうでない・ない」「あったものがなくなった」に分けてください。 前半で範囲を広げてから姿を消すと、後半の老人はどう見えますか。 前の課で学んだ語( 寒冷 ・ 独自 ・ 宁静 ・ 黑暗 )から二つ以上を使い、冬の川の場面を現代語の二文で書いてください。一文目で天気や川の様子を言い、二文目で老人が一人で何をしているかを、 在 のまとまりを動詞より前に置いて言います。 千山 ・ 萬徑 の千・萬は、山や道の数を表していますか。何を表すかを答えてください。 音読:次の原文の句を ▶ で聞き、声に出して読んでください。 獨釣寒江雪 ▶ の手本に続き、最後の五字を等しくゆっくり読んでください。 この篇のまとめ 大きな数で広げた景色を、絶える・消えるという動詞で読みました。後半の名詞の並びと釣る動作をつなぎ、一人を際立たせる前半の働きを確かめます。 次の篇へ 次の11.20では賈島の作と伝わる尋隱者不遇を読みます。少年の答えから、書かれない問いを考え、言と去の働きを見ます。 答え 千山鳥飛絕 萬徑人蹤滅 孤舟簑笠翁 獨釣寒江雪 山上的鸟都不见了。 路上也没有人的脚印了。 老人独自在下雪的江上钓鱼。 前の組はただそうでない・ない、後の組はあったものがなくなったことを表します。 広い景色の中の一人として際立ちます。何もないことを先に述べる前半が、老人を置く余白になると読めます。 天气很寒冷,江上很宁静。 老人独自在小船上钓鱼。 数ではありません。山という山、道という道、つまりありとあらゆる山や道という範囲の広がりを表します。 参考文献 柳宗元『江雪』。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。本文は全文。 出所: https://zh.wikisource.org/wiki/江雪