8.2 My Family — わたしの家族 — Epoché
この篇でできるようになること 英語だけで書かれた 200 語の文章を、辞書を引かずに最後まで読める。 所有の ' s を重ねた my mother's mother のような言い方を、そのまま受け取れる。 200 語を 1 分あたり 120 語(1 分 40 秒)で読み切れる。 前提 : 8.1 まで。 読編「読」の第 2 篇です。語り手は 8.1 読編 と同じケン。こんどは家族の話で、200 語あります。前の篇と同じく、使う語は基本語の上位 600 語だけ、範囲外の語は固有名詞のケンだけです。篇はここから少しずつ長くなり、第 16 篇では 350 語ほどになります。 この篇を書いているときに 1 つ分かったことがあります。 英語の家族の語は、上位 600 語にほとんど入っていない のです。よく使う家族の語を 18 語並べてみると、上位 600 に入るのは 6 語だけでした( family ・ mother ・ father ・ parent ・ child ・ kid )。残りのうち 7 語は 600 番のすぐ外で、 wife 602 番、 son 687 番、 husband 801 番、 brother 821 番、 baby 871 番、 daughter 927 番、 sister 964 番。 cousin ・ grandmother ・ uncle ・ aunt はもっと遠く、 grandfather は基本語 2,809 語の中にすらありません。 日本語で考えると意外です。「兄」「姉」「妻」「祖父」は日本語ならごく基本の語で、小学校に上がる前に覚える語だからです。ここに、頻度で作った語彙表の性格が出ています。基本語の順位は、その言語で何がよく 書かれる かの順位であって、生活で何が大事かの順位ではありません。家族の中身は文章にはあまり書かれないのです。 そこでこの篇では、祖母を my mother's mother (母の母)と呼びます。これは苦しまぎれの言い換えではなく、英語として普通の言い方です。所有の ' s を重ねる形は 3.4 型編 の内容で、ここではそれが 1 人の呼び名として働きます。そして、この言い換えこそ英語で毎日使う技です。知らない語に出会ったとき、知っている語 2 つで言い直せる人は止まりません。 読む前に 語り手はケン、二十歳。小さな市で母・父と三人で住み、家の近くの本屋で働いています( 8.1 読編 の続きです)。この篇に出てくるのは四人だけ——ケン、父、母、そして電車で一時間のところに住む母の母です。 何も起こりません。父は隣の市の会社へ行き、家では黙ってニュースを読みます。母は近くの学校の先生で、家に帰ってからも動きつづけています。祖母は月に一度会う人です。夜八時に三人で食べる——その一時間だけが、全員が同じ部屋にいる時間です。 最後の段落でケンは「これは変わる」と言います。父は働くのをやめ、自分はこの家を出る。それでも今は三人で、毎晩同じ食卓につく。 家族とは、毎晩同じ食卓につく人たちのことだ ——そう言い切って終わります。読み取るのはここだけで十分です。 もう 1 つ、見どころがあります。 この篇には過去形が 1 つも出てきません。 現在形と will の形だけでできています。家族の話は「いつものこと」の話なので、現在形が主役になるのです。読みながら、動詞の形が変わらないことを確かめてください。最後の段落で初めて will が 3 回出て、そこで時間が動きます。動詞の形が変わった場所が、この文章の山です。 固有名詞は Ken (ケン)だけです。ほかの語はすべて第 1 期の 600 語に入っています。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。6 段落・200 語。冒頭はこう始まります。 There are three people in my house: my mother, my father, and me. 先に原文だけを、辞書も訳も見ずに最後まで読んでください。分からないところがあっても止まらず、最後まで行ってから戻ります。それが済んでから、下の「語釈」「構文の骨」「訳」を見ます。この順を守ってください。訳を先に見ると、訳を読んで英語を読まない癖がつきます。 語釈 enough en 形容詞・副詞 十分な。 it is enough for us で「わたしたちにはこれで足りる」 Our house is old and not big, but it is enough for us. うちは古くて大きくありませんが、わたしたちには十分です。 It's warm enough to swim. [1] 泳ぐのには十分暖かい。 next en 形容詞 隣の。 the next city は「次の市」ではなく「隣の市」で、場所を指す My father works at a company in the next city. 父は隣の市の会社で働いています。 May I sit next to you? [2] 隣に座っても良いですか。 leave en 動詞 出る・去る。 leave at seven (七時に家を出る)と leave this house (この家を出ていく) He leaves at seven and comes back after eight. 七時に家を出て、八時すぎに帰ってきます。 My father will stop working, and I will leave this house. 父は働くのをやめ、わたしはこの家を出ます。 back en 副詞 もとの場所へ。 come back で「帰ってくる」 He leaves at seven and comes back after eight. 七時に家を出て、八時すぎに帰ってきます。 news en 名詞 報道・知らせ。数えない語で、 the news の形で使う At home he reads the news at the table and says nothing for an hour. 家では食卓でニュースを読み、一時間なにも言いません。 The news can't be true. [3] その知らせは本当であるはずがない。 nothing en 代名詞 何も〜ない。 say nothing で「何も言わない」(動詞のほうは否定しない) At home he reads the news at the table and says nothing for an hour. 家では食卓でニュースを読み、一時間なにも言いません。 another en 形容詞 別の・もう一つの。 an と other が合わさった語 My mother's mother lives in another town, an hour away by train. 母の母は別の町に住んでいます。電車で一時間のところです。 I won't say another word. [4] もう何も言わないよ。 town en 名詞 町。 city (市)より小さい集落。この篇では city を「市」、 town を「町」と訳し分けた She is eighty-four, and she knows all the people in her town. 八十四歳で、町の人をみんな知っています。 My town is by the sea. [5] 私の街は海の側にある。 away en 副詞 離れて。 an hour away で「一時間のところに」 My mother's mother lives in another town, an hour away by train. 母の母は別の町に住んでいます。電車で一時間のところです。 once en 副詞 一度。 once a month で「月に一度」 We go there once a month. 月に一度、そこへ行きます。 I do it once a year. [6] 年に一回してるよ。 one en 形容詞 ただ一つの。 the one hour は「一つの時間」ではなく「唯一の時間」 That is the one hour when we are all in the same room. わたしたち全員が同じ部屋にいる、ただ一つの時間です。 It's all one to me. [7] それは私にとってはどうでもよいことです。 change en 動詞 変わる。 this will change は「これは変わる」で、目的語を取らない I know that this will change. これが変わることは分かっています。 I change my mind a lot. [8] 私の思考は当てもなく曲がりくねる。 about en 前置詞 〜について。 ask about ・ talk about で話題を示す My father asks about the book shop. 父は本屋のことを聞きます。 My mother talks about her students. 母は生徒のことを話します。 上の 13 語は範囲外の語ではありません。この篇に範囲外の語は 0 語です。挙げたのは 知っているのに文の中で意味が動く語 で、どれも語編の語表に出てくる語です。ここでは「この文ではこの意味」という形で確かめます。 とくに next ・ one ・ change の 3 語に注意してください。 the next city は「次の市」ではなく「隣の市」で、時間ではなく場所の話です。 the one hour は「一つの時間」ではなく「唯一の時間」。 change は「変える」と覚えている人が多いのですが、この篇の this will change は「これは変わる」で、目的語を取りません。1 つの語が自動詞にも他動詞にもなるのは英語では普通のことで、辞書を引くときは「この文でどちらか」を先に決めます。 構文の骨 第 1 期の読み物には スラッシュ を付けます。意味の塊の切れ目に斜線を入れ、その塊ごとに頭から意味を置いていく読み方です。 7.1 訳編 の方法を、まとまった文章で使います。第 3 期からは長い文だけ、第 4 期からは付けません。自分で切れるようになるからです。 スラッシュを入れた英文 塊ごとの日本語 There are three people / in my house: / my mother, my father, and me. 三人いる / わたしの家に / 母、父、わたし My father works / at a company / in the next city. 父は働いている / 会社で / 隣の市の At home / he reads the news / at the table / and says nothing / for an hour. 家では / ニュースを読む / 食卓で / そして何も言わない / 一時間 My mother's mother lives / in another town, / an hour away by train. 母の母は住んでいる / 別の町に / 電車で一時間のところ That is the one hour / when we are all / in the same room. それがただ一つの時間だ / わたしたち全員がいる / 同じ部屋に 切れ目は 5 か所に入ります——前置詞の前、接続詞の前、関係詞の前、不定詞の前、長い主語の後ろ。上の 5 文はどれもこの規則で切れています。最後の 1 文だけ、切れ目が関係副詞の前にあります。 the one hour when we are all in the same room は the one hour を後ろから説明している形で、 3.8 型編 の内容です。塊の中では語順を入れ替えず、塊の単位で日本語を置いていくのがこの読み方です。 3 つ目の at the table は、日本語にすると「食卓で」です。英語は場所を後ろに足していきます——「読む・ニュースを・食卓で・一時間」。日本語は逆で、「一時間・食卓で・ニュースを・読む」。返り読みとは、この逆向きを毎回たどり直すことで、そのぶん時間がかかります。塊のまま前から置いていけば、順を戻さずに読めます。 訳 段落ごと、文ごとの対訳です。 先に自分で読んでから 見てください。 段落 英文 日本語訳 第 1 段落 There are three people in my house: my mother, my father, and me. わたしの家には三人います。母と、父と、わたしです。 (同じ段落) My name is Ken, and I am twenty. わたしの名前はケンで、二十歳です。 (同じ段落) Our house is old and not big, but it is enough for us. うちは古くて大きくありませんが、わたしたちには十分です。 第 2 段落 My father works at a company in the next city. 父は隣の市の会社で働いています。 (同じ段落) He leaves at seven and comes back after eight. 七時に家を出て、八時すぎに帰ってきます。 (同じ段落) He does not talk much. 父はあまりしゃべりません。 (同じ段落) At home he reads the news at the table and says nothing for an hour. 家では食卓でニュースを読み、一時間なにも言いません。 第 3 段落 My mother works at a school near our house. 母は家の近くの学校で働いています。 (同じ段落) She is a teacher, and the children like her. 先生で、子どもたちに好かれています。 (同じ段落