6.12 漢字はどう作られたか(抄) — Epoché
この篇でできるようになること 六書の名を日本語と対応させ、中国語の音で読めます。 年号と手続きを拾い、字表の変化を順に整理できます。 定義や分類の形を使い、字について短く説明できます。 前提 :6.11。原文の文書を開きます。知っている漢字の話でも、知識を先に当てはめず、本文がどの範囲まで述べているかを確かめます。 知っている内容を手がかりに読む この篇は、六書と漢字の記事からの抜粋です。六書の名を日本語で知っていれば、字から内容を推しやすくなります。ただし、全員が同じことを習っているとは限りません。知らない用語は語表で対応を確かめ、知っている部分から読み進めます。 本文は、漢字を説明する理論、字形を簡単にしてきた経緯、公の字表、筆順と部品の配置へ進みます。字の成り立ちという一つの話題の中に、昔の書き方、行政の手続き、現在の分析方法が出てきます。それぞれ別の説明です。段落ごとに何を説明するかを見失わないようにします。 読んだ後は、前の篇と比べてどこが読みやすかったかを振り返ってください。速く読めたなら、語を知っていたのか、内容を知っていたのかを分けます。内容を知っているからといって、語の意味や本文の留保まで確かめなくてよいわけではありません。 定義と分類を取り出す 「何は何である」という定義は、既習の 是 でつながります。第五段の 笔顺是笔画的书写次序。 は「筆順は筆画を書く順序です」という定義です。長い説明の中でも、定義されるものと、その説明を分けて読むと骨が見えます。 分为 は分ける、分類する時のまとまりです。本文では部品の配置を、独体・左右・上下・囲みなどに分けます。 分出 はさらに分けて取り出すことです。二つとも分類の話に出ますが、後ろに何を分けるかを続けて意味を確かめます。 会因地区规范而异 は「地域の規範によって異なることがある」です。全部の字が違うという断定ではありません。 会 が示す可能性と、何によって異なるかを一緒に読みます。 本文の行為者を添える 由 と 直到…才… の形は、後の課で学びます。 年号と手続きを分けて追う 第三段では、公布したことと、その後に施行を見合わせたことを区別します。一度案が出ればずっと使われた、と読まないようにしてください。1977年の案の廃止(1986年)は、1986年の総表の再発表の後に書かれています。ただし、その案が出たのは1977年です。 一覧を作る時は、年、対象となる字表や案、手続きという順に書きます。同じ1986年にも、総表の調整・再発表と、別の案の廃止があります。年が同じだから一つの手続きにまとめず、対象まで見比べます。 第四段は日本の字表と、中国大陸の簡化字との関係です。本文は一部が同形で、それぞれ別の簡化の結果もあると述べています。日本の字体を知っていることは手がかりになりますが、中国語を書く時に日本の字体をそのまま使ってよい根拠にはなりません。 同じ形になった字があることと、二つの体系が同じであることを混同しないようにします。「一部」と「それぞれ」の語を残して、本文の説明を言い直してください。 第五段では、筆順の原則と地域による違いを分けています。第六段は部首と部件の役割の違い、第七段は「八種類」という言い方の位置づけです。教えるための口ずさむ文句と、細かく分析する分類を、同じ精度の一覧として比べないようにします。 語表 語 品詞 意味 例文 訳 象形 名詞 象形 象形、会意、形声、假借等术语 象形・会意・形声・仮借などの用語 指事 名詞 指事 具体包括象形、指事、会意、形声、转注、假借 具体的には象形・指事・会意・形声・転注・仮借を含む 会意 名詞 会意 象形、会意、形声、假借等术语 象形・会意・形声・仮借などの用語 形声 名詞 形声 象形、会意、形声、假借等术语 象形・会意・形声・仮借などの用語 转注 名詞 転注 具体包括象形、指事、会意、形声、转注、假借 具体的には象形・指事・会意・形声・転注・仮借を含む 假借 名詞 仮借 象形、会意、形声、假借等术语 象形・会意・形声・仮借などの用語 汉字 名詞 漢字 日本于1946年公布《当用汉字表》 日本は1946年に『当用漢字表』を公布した 笔顺 名詞 筆順 笔画名称和笔顺规则也有区域标准。 字画の名前と筆順の決まりにも、地域ごとの標準がある。 字形 名詞 字形 并整理部分字形。 あわせて一部の字形を整理した。 简化字 名詞 簡化字 1964年发布《简化字总表》 1964年に『簡化字総表』を発表した 部首 名詞 部首 看部首 部首を見る 部件 名詞 字を構成する部分 不同分析系统各有部件边界。 分析の体系が違えば、部件の境目もそれぞれ違う。 六書は、 象形・指事・会意・形声・转注・假借 です。日本語の転注・仮借とは字体も少し違います。 汉字・字形・简化字 は漢字・字形・簡化字、 笔顺・部首・部件 は筆順・部首・部品です。部首は字を検索する分類の目印、部件は字の構成部分を指せる語です。 音を比べる 中国語 読み 日本語 象形 xiàngxíng しょうけい 指事 zhǐshì しじ 会意 huìyì かいい 形声 xíngshēng けいせい 转注 zhuǎnzhù てんちゅう 假借 jiǎjiè かしゃ 見慣れた字を日本語の音読みのまま読まないようにします。中国語は音節ごとの声調も確認し、二音節を一つの用語として読みます。日本語の拍の数と中国語の音節の数を同じだと思わないでください。 語釈 語・まとまり 意味 六书 漢字を説明する六つの分類の名 具体包括 具体的に含む 构造/系统理论 構造/体系的理論 《说文解字》 『説文解字』 东汉/经学家/许慎 後漢/経学者/許慎 阐发 説き明かす 理论基础/历来 理論の基礎/従来 深受重视 重んじられる 术语/广泛应用 専門用語/広く使われる 逐渐/框架 徐々に/枠組み 省笔/连写 画を省く/続けて書く 替换/手写材料 入れ替える/手書き資料 俗字/官方规范 通俗的な字体/公の規範 涉及/识字教育 関連して扱う/文字を覚える教育 语言政策 言語政策 公布/发布 公布する/発表する 翌年/暂缓推行 翌年/施行を一時見合わせる 方案/草案 案・計画/草案 总表/调整 総表/調整する 重新/废止 改めて/廃止する 整合/异体字 まとめ合わせる/異体字 现行/取代 現在行われている/置き換える 修订/收 改訂する/収める 各自/采用 それぞれ/採用する 书写次序 書く順序 先外后内 外を先に、内を後に 楷书/形态 楷書/形 接合方式/一致 つなぎ方/一致する 空间配置 空間上の配置 独体/包围 一まとまり/囲み 多层组合 複数の層の組合せ 层级/有助 階層/助けになる 字典检索/输入法 字典の検索/入力方式 边界/标记 境界/目印 偏旁/组成部分 字の構成要素/構成部分 区域标准 地域ごとの標準 永字八法 永の字で示す書法の八つの基本 概括/笔势 まとめる/筆の運び 资讯处理 情報処理 折笔/细分 折れる画/細かく分ける 口诀 口ずさめる覚え方の文句 対訳 第1段 六書とは、具体的には象形・指事・会意・形声・転注・仮借を指し、漢字の組み立てについての最も早い体系的な理論で、『説文解字』の著者である後漢の経学者・許慎が説き明かしたものです。六書は中国の伝統的な文字学の理論の土台であり、古くから重んじられてきました。象形・会意・形声・仮借といった用語は、今なお漢字の教育と研究で広く使われています。二十世紀の新しい文字学になってはじめて、しだいに六書の枠から出て、新しい体系の枠組みが打ち出されるようになりました。 第2段 画を省くこと、続けて書くこと、部品を入れ替えることは、古い時代の手書きの資料の中ではすでによく見られました。俗字の一部は、のちに印刷や公の規範に入っていきました。近代の漢字改革は、字形の簡略化、常用字の範囲、拼音の方式、字を覚えるための教育、そして国の言語政策までを同時に扱うものでした。 第3段 一九三五年、中華民国教育部は『第一批簡体字表』を公布しましたが、翌年、施行は当面見合わせとなりました。中華人民共和国国務院は一九五六年に『漢字簡化方案』を公布し、一九六四年に『簡化字総表』を出し、一九八六年に手直ししてあらためて出しました。一九七七年の『第二次漢字簡化方案(草案)』は一九八六年に廃止されました。二〇一三年に公布された『通用規範漢字表』は、通用字・簡化字と一部の異体字の規範をまとめたもので、中国大陸で今行われている規範の字表となっています。 第4段 日本は一九四六年に『当用漢字表』を公布し、字形の一部を整理しました。一九八一年に『常用漢字表』に改められ、二〇一〇年の改訂で二千百三十六字を収めています。日本の新字体と中国大陸の簡化字には、同じ形になったものもあれば、それぞれ別々の簡略化の結果になったものもあります。シンガポールで今行われている中国語教育と公の書き方は、主に中国大陸の簡化字の体系を採っています。 第5段 筆順とは筆画を書く順序のことです。よく言われる原則には、上から下へ、左から右へ、外を先に内をあとに、などがありますが、細かい規則や少数の字の筆順は、地域ごとの規範によって異なることがあります。印刷の字形、手書きの楷書、書道の作品も、一画ずつの形やつなぎ方まで完全に同じである必要はありません。 第6段 部品の空間の配置は、おおまかに独体、左右、上下、囲み、多層の組み合わせといった形に分けられます。たとえば「明」は左右の構造、「苗」は上下の構造、「国」は全体を囲む構造です。「樹」「贏」などはさらにいくつもの層に分けられます。こうした分析は、字典を引くこと、字形を教えること、入力方式を設計することの助けになりますが、分析の体系が違えば部品の切れ目も違ってきます。「部首」は字を引くときに選ばれた一つの分類の目印です。「偏旁」または「部件」のほうは、字形の中のそれぞれの構成部分を指すことができます。 第7段 筆画の名前と筆順の規則にも地域ごとの標準があります。たとえば「永字八法」は「永」の一字で書道の伝統にある八種の基本的な筆の勢いをまとめたもので、現代の字形学と情報処理では、折れる画をさらに細かく何種類もの筆形に分けることがよくあります。「漢字には八種類の筆画しかない」というのは、主に書道を教えるときの口ずさむ文句として使われています。 練習 本文を使う問いでは、該当する文の範囲を先に決めてください。自分で作る文も、定義や分類に必要な短い形から組みます。 六書の名を、日本語の象形・指事・会意・形声・転注・仮借と対応させて書きます。 第三段の語を入れます: 1935年,中华民国教育部__《第一批简体字表》 翌年__推行。 に、第三段の語を入れます。 《第二次汉字简化__(草案)》 に、本文の語を入れます。 第三段から、空欄に語を入れます: 于1986年__。 「国」と「好」がどの構造の字か、 是 を使って中国語で書いてください。一字に一文ずつです。 分为 を使い、身近な物を二つ以上の種類に分類する中国語の文を書きます。分ける基準も決めます。 变化・成为・称为・出现・至今 のうち二語以上を使い、字形について本文に沿って二文書いてください。 第三段の年と手続きを、起きた順に並べてください。中国語の公布・暂缓・发布・调整・废止などを使います。 日本の新字体と中国大陸の簡化字の関係を述べる一文を引き、日本語で説明します。 戻り語 指定の段落を読んでから閉じ、各語を使って本文の内容を中国語で書き直します。一つの文に語を全部入れる必要はありません。書いた後で本文と見比べます。 成为・现行 を使い、第三段の2013年の字表について中国語で書いてください。 部分・各自・整理 を使い、第四段の日本の字表と、日中の字体の関係を中国語で書いてください。 至今・应用 を使い、第一段の用語について中国語で書いてください。 会因…而异 を使い、筆順や字形が地域で違うことを一文で書きます。 例如・提出・主要 を使い、第一・第四・第六段から、例の挙げ方・新しい理論・シンガポールの書き方を表す部分を中国語で書いてください。 音読:第一段の六書の名を同じ間合いで読みます。中国語を読んだ後、日本語の用語を続けて言い、音節と拍の違いを確かめます。 この篇のまとめ 知っている内容を足場にし、本文の範囲を確かめます。 年・対象・手続きを分ければ、同じ年の別の処置も追えます。 日中の字体には同形のものも、それぞれの結果もあります。 定義、分類、教育用の文句を区別して読みます。 次の篇へ 次の6.13「中国の学校(抄)」では、幼稚園から高考までの仕組みを読みます。日本と似た名前でも中身が同じかを確かめます。 答え 象形・指事・会意・形声・转注・假借 が順に対応します。最後の二語は日本語の字体と違う所も確認します。 公布 です。 暂缓 です。公布と、その後の施行の見合わせは別の手続きです。 方案 です。 废止 です。 “国”是全包围结构的字。/“好”是左右结构的字。 本文の構造の説明を、定義の形へ組み替えた答えです。 色を基準にした例: 笔分为红笔和蓝笔。 (ペンを赤いペンと青いペンに分けます。) 言い直した例: 字形有变化。 / 部分俗字成为规范字。 (字形には変化があり、一部の俗字は規範の字となりました。) 1935年: 公布 。1936年: 暂缓推行 。1956年:方案を 公布 。1964年:総表を 发布 。1977年:第二次の草案。1986年:総表を 调整后重新发布 、第二次案を 废止 。2013年:通用規範漢字表を 公布 。 日本的新字体与中国大陆简化字有部分同形,也有各自的简化结果。 一部は同形で、それぞれ別の簡略化の結果もあるという意味です。全部同じとも、全部違うとも述べていません。 2013年の表を指して: 这成为现行规范字表。 (これが現行の規範字表となりました。) 日本于1946年公布《当用汉字表》,并整理部分字形。 と 有部分同形,也有各自的简化结果 が本文のまとまりです。後者は二つの側をどちらも残します。 象形・会意などの用語について: 这些术语至今仍有应用。 (これらの用語は今も使われています。) 本文の見本は 少数字的笔顺会因地区规范而异 です。全部の字が違うのではなく、違うことがあるという言い方です。 本文の見本は 提出新的系统