3.58 語順の焦点 — 知っていることを先に、新しいことを後に — Epoché
この課でできるようになること ★ 旧情報 → 新情報 という並びが分かる。 ★ 文末焦点 ——いちばん言いたい語を最後に置ける。 ★ 順を変える三つの道具 (主題化・分裂文・擬似分裂文)を使い分けられる。 ★ 日本語の「は」との違い が分かる。 前提 : 3.57 まで。 例文で見る 10 文を並べます。行を押すと音が鳴ります。★ はじめの二文は 中身がまったく同じ です。★ 違うのは順だけ ——★ それでも、 聞こえ方が違います 。 英文 日本語訳 どこを見るか In February there are only 28 days. [1] 2月は28日しかない。 ★ In February が先 。 焦点は日数 There are only 28 days in February. [2] 2月は28日しかありません。 ★ 同じ中身で逆の順 。 焦点は月 Today, it's Monday. [3] 今日は月曜日。 ★ 主題化 。 「今日は」を前に出した Today, I have other plans. [4] 今日は他の予定があるんだけどな。 ★ 主題化 。 新しいのは other plans It was I that came here first. [5] 最初にここに来たのは私です。 ★ 分裂文 。 I に焦点を当てる It was here that I saw her. [6] 私が彼女を見たのはここでした。 ★ 分裂文 。 場所に焦点 What I want to say is this. [7] 私の言いたいことはこのことだ。 ★ 擬似分裂文 。 結論を最後に置く What I like is her way of talking. [8] 私が気に入っているのは、彼女の話し方だ。 ★ 擬似分裂文 。 新しいのは後半だけ What you say is right. [9] 君の言うことは正しい。 ★ 擬似分裂文 。 短くても働きは同じ It is easy to talk. [10] 口で言うのは簡単だ。 ★ 重い主語を後ろへ 。 次の課の予告 骨組み ★旧情報が先、新情報が後 ★ これが、この課でいちばん大事な一つ です。 ★ 話し手と聞き手が すでに知っていること を先に置き、★ そこへ新しいものを足す ——★ 英語の文は、 ほとんどいつもこの形 になって います。 文のどこか 何が来るか 声はどうなるか ★ はじめ ★ もう分かっているもの 弱い まんなか つなぎ 弱い ★ おわり ★ 新しいもの ★ 強い ★ 1.8 音編 で置いた 核強勢 が、ここにつながります ——★ 文のいちばん強い山は ふつう最後の内容語 に落ちます。★ 語順と音は、 同じことの表と裏 です。 ★ 例文の一つめと二つめを 声に出して比べて ください 。★ 一つめは 日数 で終わり、二つめは 月の名 で終わります ——★ 一つめは「二月は何日あるか」への答え、二つめは「どの月が短いか」への答え です。 ★文末焦点 — Strunk の規則 18 Strunk は規則 18 でこう言います [11] —— Place the emphatic words of a sentence at the end 。★ 説明も短い —— The proper place in the sentence for the word, or group of words, which the writer desires to make most prominent is usually the end 。 ★ Strunk 自身の例が分かりやすい —— Humanity has hardly advanced in fortitude since that time, though it has advanced in many other ways を、 Humanity, since that time, has advanced in many other ways, but it has hardly advanced in fortitude に直します。 ★ 中身は同じ です。★ 直したほうは 「勇気の点では進んでいない」で終わり ます——★ それが 言いたいこと だから です。★ もとの文は 言いたいことを先に言って、そのあと別の話で終わって います 。 ★順を変える三つの道具 ★ 言いたいものが たまたま文の最後に来ない ことがあります 。★ そのときに使う道具が三つ です。 道具 どんな形か どこに焦点が行くか ★ 主題化 Today, I have other plans ★ 後半 ★ 分裂文 It was here that I saw her ★ here ★ 擬似分裂文 What I like is her way of talking ★ is のうしろ ★ 一つめの主題化は 「これから何の話をするか」を先に置く 道具です。★ 焦点そのものは動かしません ——★ 動かすのは 話の舞台 です。 ★ 二つめの分裂文は 文を二つに割って、割れ目に焦点を置く 道具です。★ It was と that のあいだに入った語が、 唯一の答え になります ——★ It was here that I saw her は 「ほかの場所ではない」 と言っています。 ★ 三つめの擬似分裂文は いちばん使いでがあります 。★ What I want to say is this のように、 前半で「これから結論を言う」と予告し、後半で言う ——★ 発表や交渉で、 相手の注意を一度そろえてから言う のに使えます ( 6.54 話編 )。 日本語ならどう言うか 日本語との差を三つ挙げます。 何が 日本語では 英語では 主題の立て方 ★ 「は」で立てる ★ 前に出して読点で切る 焦点の置き場 述語は必ず最後 ★ 新しいものを最後に持ってくる 語順の自由さ ★ 助詞があるので動かせる ★ 格は語順で決まるので動かしにくい ★ いちばん上は、 日本語話者に有利 です。★ 「今日は、ほかの予定がある」の「は」が、 そのまま Today, になります ——★ 主題化は 日本語の感覚がそのまま使える 数少ない場所 です。 ★ 真ん中は逆に、 いちばん身につきにくい ところです。★ 日本語では 述語が最後と決まっている ので、★ 「最後に置く」ことで強めるという発想が そもそも無い のです。 ★ いちばん下が、二つの理由 です。★ 日本語は助詞が格を示すので 語順を動かしても文が壊れません 。★ 英語は 語順が格そのもの なので、★ 動かしたいときには 上の三つのような仕掛けが要ります 。 丁寧さの段 ★ 語順は 丁寧さにも効きます 。★ 悪い知らせを どこに置くか です。 どう並べるか 聞こえ方 ★ 断りを先、理由を後 ★ 冷たい ★ 理由を先、断りを後 ★ やわらかい ★ 理由だけで断りを言わない ★ 伝わらない ★ 真ん中が定型 です( 3.55 型編 ・ 7.6 訳編 )。★ ただし 文末焦点の規則からすると、断りが最後に来て強く聞こえます ——★ だから、 そのあとに一行足して終える のがふつうです(代案・次の機会)。 ★ いちばん下は 日本語話者がやりがち です。★ 理由を丁寧に並べれば察してもらえる、 という前提が英語では働きません 。 よくある誤り 三つ挙げます。下の誤文は Epoché の作例です。 新しいものを先頭に置く。 A new manager will join us next month. は、★ A new manager という 初めて出るもの が主語になって います。★ Next month, a new manager will join us のほうが 読みやすい です——★ 時が舞台、人が新情報 。 分裂文を使いすぎる。 ★ It is … that … を 続けて三度 使うと、★ どれが本当の焦点か分からなくなります 。★ 分裂文は 一段落に一度 が目安です。 主題化のあとの読点を落とす。 Today I have other plans と書くと、★ Today が 主題なのか副詞なのか がぼやけます 。★ 主題として立てるなら 読点で切ります ( 3.45 型編 )。 ★ 一つめが、いちばん多い です。★ 日本語では 「新しいマネージャーが来月来ます」 で何の問題もありません ——★ 「が」が 新情報の印 だからです。★ 英語には その印がありません ので、★ 位置で示すしかない のです。 実文で通す ★ 読 E の Strunk から、 段落の規則の一文 を取ります ( 8.131 読編 )。 原文 焦点はどこか The object of treating each topic in a paragraph by itself is, of course, to aid the reader [12] ★ to aid the reader The beginning of each paragraph is a signal to him that a new step in the development of the subject has been reached ★ has been reached ★ 上の文は 擬似分裂文に近い形 です——★ The object of ... is ... to aid the reader 。★ 前半はぜんぶ すでに話した内容 で、★ 新しいのは 最後の四語だけ です。 ★ 下の文も同じ形 です。★ The beginning of each paragraph は 直前の段落で話したこと 、★ a signal to him から後ろが 新しい 。★ Strunk は 自分の規則 18 を守って 書いて います。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Academic Insights – 9 top tips for... academic writing BBC Learning English (3:06, 2017) 学術文の九つの勘どころ。語順と流れの話が入っている 練習 「例文で見る」の 10 文を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。★ 一つめと二つめで、 声がいちばん高くなる語 が違うのを確かめる。 ★ 並べ替える 。 We will announce the results on Friday. を、( a ) 結果 に焦点、( b ) 金曜 に焦点、の二通りに書き分ける。 ★ 三つの道具を使う 。「この案がうまくいかない理由は費用だ」を、 主題化・分裂文・擬似分裂文 の三通りで英語にする。 この課のまとめ ★ 英語は旧情報が先、新情報が後 ——文のいちばん強い山は、ふつう最後の内容語に落ちる( 1.8 音編 )。 ★ 文末焦点 ——いちばん言いたい語は文の終わりに置く( Strunk 規則 18)。 ★ 主題化 は話の舞台を先に置く道具。焦点は動かさない。 ★ 分裂文 It was ... that ... は「ほかではない」と言う道具。一段落に一度が目安。 ★ 擬似分裂文 What ... is ... は結論を予告してから言う道具( 6.54 話編 )。 ★ 主題化は日本語の「は」がそのまま使える ——ただし読点で切る( 3.45 型編 )。 ★ 文末焦点はいちばん身につきにくい ——日本語は述語が最後と決まっているので、その発想が無い。 ★ 日本語の「が」は新情報の印。英語にはその印が無いので位置で示す。 ★ 断りは理由の後に置くが、そのあと一行足して終える ——文末焦点で強く聞こえるから( 3.55 型編 ・ 7.6 訳編 )。 次の課へ 次は 3.59 、 長い主語を避ける です。★ この課の最後の例文( It is easy to talk )が その入口 でした。★ 重いものを後ろへ回す のは、★ 文末焦点と 同じ理由から出てくる 決まり です。 答え ★ 音読したとき。 ★ 一つめ In February there are only 28 days. は days が高く 、★ 二つめ There are only 28 days in February. は February が高く なります。★ 同じ語の並べ替えで、 声の山が動いた ——★ これが文末焦点です。 ★ 並べ替えたとき。 ★ ( a ) 結果に焦点なら On Friday, we will announce the results 。★ ( b ) 金曜に焦点なら We will announce the results on Friday のまま で、★ もっと強めるなら It is on Friday that we will announce the results です。★ ( a ) は主題化、( b ) は分裂文 ——★ 道具が違うだけで、 やっていることは同じ です。 ★ 三通りで書いたとき。 ★ 主題化: As for this plan, the problem is the cost 。★ 分裂文: It is the cost that makes this plan fail 。★ 擬似分裂文: What makes this plan fail is the cost 。★ 三つとも cost で終わって います ——★ 道具が違っても、 焦点を最後に持ってくるという目的は同じ です。 参考文献 Tatoeba 文 #7056495(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/7056495 Tatoeba 文 #2261094(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/2261094 Tatoeba 文 #1193587(CC BY 2.0 FR)。https://tat