3.12 不定詞と動名詞 — どちらを取る動詞か、形式主語 it — Epoché
この課でできるようになること 動詞を名詞のように使う二つの形を見分け、文の中でどこにあるか指せる。 to と -ing のどちらを取るかを、手前の動詞が未来を向いているかどうかで見当がつけられる。 長い主語を It で置き換えて後ろへ送れる。 Would you mind ...? に正しく答えられる。 前提 : 3.11 まで。 「泳ぐことが好きです」と言いたいとします。日本語は動詞に「こと」を足すだけで名詞にできます。「泳ぐこと」「読むこと」「待つこと」——例外はありません。英語には同じ道具が 二つ あり、どちらを使うかは場所によって決まります。この二つの使い分けが、学校英語でいちばん暗記量の多い項目になっています。 ところが、暗記の量は見かけほどではありません。並べ方を変えるだけで、ほとんどが一本の理屈に収まります。 to の形はこれから起きることを、 -ing の形はもう起きていることを指す ——これだけです。「〜したい」「〜するつもりだ」「〜すると決めた」は全部これからのことなので to 。「〜し終えた」「〜するのをやめた」「〜するのを楽しんだ」はもう起きていることなので -ing 。この課は、その一本をどこまで信用してよいかを確かめる課です。 例文で見る まず 10 文を見ます。6 番めと 7 番めは 対 になっていて、同じ動詞が両方の形を取り、しかも意味が変わりません。両方取れる動詞があることを先に知っておくと、後の説明がすっきり入ります。語はどれも第 2 期の範囲の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ Reading books is important. [1] 本を読むことは大切です。 動詞に -ing を付けると主語になる Seeing is believing. [2] 百聞は一見にしかず。 主語も補語も -ing の形 It is good to do your best. [3] 最善をつくすことはよいことである。 It を先に置いて、長い主語を後ろへ送る He wants to go. [4] 彼は行きたがっています。 want は to のほうを取る He stopped talking. [5] 彼は話をやめた。 stop は -ing のほうを取る I like working. [6] 働くのが好きなんだよ。 like は両方取れる。これは -ing I like to work. [7] 私は働くことが好きです。 同じ動詞、同じ意味。こちらは to I told him to come. [8] 私は彼に来るように言った。 目的語をはさんで to を置く I told her not to go. [9] 彼女に行かないようにと言った。 否定は to の手前に not I know what to do. [10] 何をすればいいのかは分かってます。 疑問詞のあとに to を続けられる 十の文で、 to の形と -ing の形が出てきた場所は四つあります。主語の位置、動詞の後ろ、目的語のさらに後ろ、そして疑問詞の後ろです。どこに置いても、していることは同じ—— 動詞を名詞のように使う ことです。 骨組み この課の規則は一つです。 to は「これから」、 -ing は「もうしている・した」。 手前の動詞が未来を向いていれば to 、すでに起きていることを扱っていれば -ing です。 to を取る動詞 — 未来を向いている He wants to go. [4] は、行くのはこれからです。 I want to know. [11] も、知るのはこれから。望む・決める・約束する・期待する——どれも まだ起きていないこと を扱う動詞で、だから to の形と組みます。 否定するときは、 to の 手前 に not を置きます。 I told her not to go. [9] は「行かないように言った」で、 not が to の前にあります。ここを取り違えて didn't tell にすると「言わなかった」になってしまい、意味が変わります。 It'd be better not to go out. [12] も同じ形です。 目的語をはさむ形もあります。 I told him to come. [8] は「彼に」「来るように」の二段で、 She wanted me to come. [13] は「私に」「来てほしい」。日本語では「彼に来るように言った」と助詞で関係を示しますが、英語では 並べる順 が関係を示します。動詞・誰に・何を、の順です。 -ing を取る動詞 — もう起きている He stopped talking. [5] は、話していたのをやめたのですから、話すことはもう起きていました。 I don't mind paying you back. [14] も、返すという行為を頭に置いたうえで「かまわない」と言っています。楽しむ・終える・やめる・避ける・気にする——どれも すでにある行為を扱う 動詞で、だから -ing の形と組みます。 記憶に関わる動詞もこちら側です。 I remember seeing her. [15] は「会ったことを覚えている」で、会ったのは過去です。 I remember reading the book. [16] も同じで、読んだのは過去。覚えているという行為より、覚えられている中身のほうが 先に起きている ——この順が -ing を選ばせています。 両方取る動詞 — 同じ意味のものと、変わるもの 両方取れる動詞があります。 I like working. [6] と I like to work. [7] は ほとんど同じ意味 で、どちらでもかまいません。強いて言えば -ing のほうがふだんそうしている感じ、 to のほうがそうすることを選んでいる感じですが、日常では区別しません。 ところが stop だけは 意味が変わります 。 He stopped talking. [5] は「話すのをやめた」。 He stopped to talk to them. [17] は「話しかけるために立ち止まった」。やめたのか、立ち止まったのか——正反対に近い違いです。 They stopped to talk. [18] も同じ形で、止まったのは歩みのほうです。 この差も、さきほどの一本で説明がつきます。 -ing の側は もう話していた ので、やめる対象がそれです。 to の側は これから話す ので、止まったのは別のこと——歩くこと——になります。一覧を暗記するかわりに、 どちらが先に起きているか を考えてください。 He stopped to think which way to go. [19] は、立ち止まってから考えた、という順です。 前置詞の後ろは必ず -ing 前置詞の後ろに動詞を置きたいときは、選ぶ余地がありません。 必ず -ing の形 になります。 It goes without saying. [20] は「言うまでもない」、 I did it without thinking. [21] は「何も考えずにやった」。 Start by doing the books. [22] も、 by の後ろに -ing が来ています。 ここは規則が例外なしなので、覚えるだけで済みます。そして 日本語話者がいちばん間違える場所 でもあります。前置詞の to と、不定詞の to が同じ形に見えるからです。前置詞の to の後ろには -ing が来ます。見分け方は一つ、 その to の手前が動詞かどうか 。動詞なら不定詞、名詞や形容詞にくっついているなら前置詞です。 形式主語 It — 長い主語を後ろへ送る 主語の位置に to の形を置くこともできますが、実際にはあまりしません。主語が長くなりすぎるからです。英語は It をまず置いて、中身を後ろへ送ります。 It is good to do your best. [3] がその形で、 It は何も指していません。 場所を取っているだけ です。 It is good to be kind to others. [23] も同じ形、 It is better to give than to take. [24] は二つ並べた形です。 これは 3.8 型編 で見た「名詞を先に出して説明は後ろへ」と同じ理屈です。英語は 聞き手を待たせない 言語なので、長いものは後ろへ送ります。誰がするのかを言いたいときは for ではさみます。 It's time for us to go. [25] の for us がそれで、 There is no need for her to work. [26] も同じ形です。 なお -ing の形は主語の位置にそのまま置けます。 Reading books is important. [1] や Seeing is believing. [2] は It を使っていません。 短ければそのまま、長ければ It で送る ——それだけの使い分けです。 「〜するために」を言う二つの形 目的を言うときは to の形をそのまま使えますが、はっきりさせたいときは二語の形を足します。 I ran in order to be on time. [27] の in order to と、 Walk fast so as to be in time. [28] の so as to です。どちらも「〜するために」で、 in order to のほうがよく使われます。 He ran, so as to arrive on time. [29] のように、書き言葉では so as to も出ます。 疑問詞のあとの to 疑問詞の後ろに to の形を続けると、「何をすべきか」「どうやるか」という塊になります。 I know what to do. [10] 、 I didn't know what to say. [30] 、 He stopped to think which way to go. [19] がその形です。これは丸ごと名詞のはたらきをするので、動詞の目的語にそのまま置けます。会話でとてもよく出る形なので、塊のまま覚えてしまってください。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも、動詞を名詞にする仕組みがあります。 「泳ぐこと」「読むの」——「こと」「の」を足すだけで、どんな動詞でも名詞になります。ずれるのは 形が二つある ことと、 どちらを使うかを手前の動詞が決める ことです。 日本語は一つ、英語は二つ 日本語 英語の形 なぜその形か 行きたい want + to + 動詞 行くのはこれから 話すのをやめた stop + 動詞 -ing 話すことはもう起きていた 働くのが好きだ どちらでもよい 先か後かが問題にならない 日本語の側は三行とも「こと」「の」で足りています。だから日本語から英語にするときには、 毎回どちらかを選ばされる ことになります。選ぶ手がかりは手前の動詞です。その動詞が未来を向いているか、すでにあることを扱っているか——これを先に決めてから形を選んでください。迷ったら、 その行為はもう起きているか と自分に訊けば足ります。 日本語に無い区別 — 同じ動詞で意味が変わる 日本語では「やめる」は一つの語です。英語の stop は、後ろの形で二つに分かれます。 He stopped talking. [5] と He stopped to talk to them. [17] は同じ動詞なのに、やめたものが違います。日本語で「立ち止まって話しかけた」と「話すのをやめた」はまったく別の言い方になるので、 日本語からは区別が見えません 。英語を読むときにここでつまずいたら、後ろが to か -ing かを見てください。 日本語に無い区別 — 誰がするのかを形で示す もう一つ、日本語に無いものがあります。 to の形には主語がありません。誰がするのかは文脈で決まります。はっきりさせたいときだけ for ではさみます。 It's time for us to go. [25] は「私たちが」行く時間、 There is no need for him to work. [31] は「彼が」働く必要です。日本語では「〜が」と助詞で示すところを、英語は 置き場所と前置詞 で示します。書くときにここを落とすと、誰の話か分からない文になります。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。下の五つは、どれも もう一度言ってほしい と頼んでいて、中身は五つとも同じです。上から下へ、相手に預ける度合いが増えます。最上段だけが、この課で扱った -ing の形を使います。 英文 日本語訳 どんな相手に Say that again. [32] もう一度言って。 親しい相手・急いでいるとき Can you say that again? [33] もう一度言ってもらっていいですか? 訊く形にする。それだけで一段上がる Could you say that again? [34] もう一度言ってもらえますか。 過去形の距離を使う。初対面・仕事 Would you say it once more? [35] もう1度言っていただけますか。 相手の意向を訊く形。さらに柔らかい Would you mind saying that once more? [36] もう一度繰り返していただけませんか。 「迷惑ですか」と訊く。最上段 一行めは命令の形で、親しい相手か急いでいるときだけに向きます。二行めは訊く形にしただけで一段上がります。三行めは 3.10 型編 で見た過去形の距離、四行めは相手の意向を訊く形です。五行めの Would you mind は 「迷惑ですか」と訊いている 形で、相手が断りやすいぶん、いちばん柔らかくなります。聞き返すときの定型なので、そのまま覚えてしまってください。 ただし、この形には落とし穴があります。訊かれているのは「気にしますか」なので、 いいですよと答えるときは No です。 Yes と答えると「はい、迷惑です」になります。日本語の感