5.6 天気と季節 — 中身の語が 1 つも無い話題を、枠だけで聞く — Epoché
この課で聞き取れるようになること 天気と季節をめぐる 8 段落の会話を、台本を見ずに、用件が 1 つでもあるかどうか聞き取れる。 天気の文の枠が弱く流れることを当てにして、残った 1 語だけに注意を集められる。 終わりが上がる問いと下がる問いを、語が取れなくても調子だけで見分けられる。 知らない語を聞いたときに、音節の数と語の終わりの子音だけは取って持ち帰れる。 前提 : 5.5 まで。 聞編 聞の 6 課目です。 5.1 聞編 で自己紹介、5.2 で買い物、 5.3 聞編 で道案内、 5.4 聞編 で時間と予定、 5.5 聞編 で電話を聞きました。この 5 つはどれも 相手がこちらに向かって話す 場面でした。だから取れなかったときは聞き返せます。 5.5 聞編 の中心はまさにその聞き返しでした。この課は違います。二人が話しているところに、あなたは 居合わせているだけ です。聞き返す相手がいません。取り落としたものは、その場で埋めるしかありません。 そこへもう 1 つ、この課だけの事情が重なります。この課程の第 1 期は、英語の基本語のうち上位 600 語で組んでいます。ところが天気と季節の語は、その 600 語に 1 つも入っていません。しかし 条件そのものを教材にする のがこの課程の作り方です。語が足りない話題をどう聞くかは、この先ずっと付いてまわります。第 1 期の聞編の最後に、その練習をしておきます。 聞く前に 朝の職場です。二人が窓のそばで話しています。話しているのを A と B と呼びます。あなたは隣の席にいて、 話しかけられてはいません 。8 段落あり、A から始まって交互に話します。1 段落が 1 人の話す番で、短い文が 1 つか 2 つ、全部で 14 文です。 聞き取る中身は 1 つだけにしておきます。 この 8 段落で、二人は何かを決めたか。 先に断っておくと、決めごとは いちばん最後の 1 文にだけ あります。残りの 13 文は、どれも用件を運んでいません。これは台本の作りが悪いのではなく、天気の話がもともとそういうものだからです。天気の話は、中身を伝えるためではなく場をつなぐために話されます。日本語の「寒いですね」と同じです。 中身を取ろうとして耳を張りつめると、最後の 1 文で力が尽きます。 この課の語は 600 語の外にある 先に、困った条件のほうを数字で見ておきます。下の表は、天気と季節でまっさきに要る語の順位です。順位は基本語の一覧での並びで、数が小さいほどよく使われます。 天気と季節の語 順位 第 1 期の 600 語 weather 1,068 番 入らない。天気そのものを指す語がまず外にある season 750 番 入らない。季節をまとめて指す語も外 spring 1,332 番 入らない summer 654 番 入らない。4 つの季節でいちばん惜しい winter 1,328 番 入らない fall 320 番 入る。ただし「落ちる」の意味で入った語 rain 1,232 番 入らない snow 1,950 番 入らない。この表でいちばん外 cold 867 番 入らない。風邪の意味でも同じ語 hot 885 番 入らない 季節の名で 600 語に入っているのは fall ただ 1 つで、それも秋の語として入ったのではありません。落ちる、という動きの語として入り、木の葉の落ちる季節の名がそこに乗っただけです。実際に数えると、この課程が使っている例文の池のうち、8 語以下で、天気と季節の語を含み、しかも 600 語だけでできている文は 0 本 でした。 知っておく語 そこで、5 語だけ先に渡します。この 5 語を足すと、同じ池から 839 本 の文が組めるようになります。0 本がこれだけになるのですから、天気の話に要る語はごく少ないのです。「山の位置」の印は 1.6 音編 で立てた黒丸と白丸で、黒丸が強く長く言う音節、白丸が弱く短い音節です。5 語のうち 4 語は 1 音節しかありません。見てほしいのは 語の終わり です。 知っておく語 意味と山の位置 語の終わりと、日本語との差 weather 天気。 ●○ 母音で終わる。5 語で唯一、終わりに子音が立たない。そのぶん取りやすいが、相棒のカタカナが無いので手がかりは音だけ spring 春。 ● 口の奥で鼻に抜けて終わる。舌先はどこにも触れない。スプリングは 5 拍で、1 音節の語が 4 拍ぶんふくらんでいる rain 雨。 ● 舌先を上につけて鼻に抜けて終わる。雨の意味で使われるカタカナが日本語に無いので、ここも音だけが頼り cold 寒い。風邪の意味にもなる。 ● 舌先で止め、のどを鳴らしたまま切る。コールドは 4 拍で、1 音節の語が 3 拍ぶんふくらんでいる hot 暑い。熱い。 ● 舌先で止め、のどを鳴らさずに切る。 cold と止める場所は同じで、のどが鳴るかどうかだけが違う。ホットは 3 拍で、1 音節の語が 2 拍ぶんふくらんでいる 表の右の列に並べたのが、この課で追う 3 つの 1 つ目、 語の終わり です。日本語の語は、はねる音を別にすれば母音で終わります。だから日本語に取り込まれた形では、終わりの子音のうしろに母音が足されます。足された音は 1 拍を取るので、1 音節の語が 3 拍にも 5 拍にもふくらみます。この足された音を当てにして待っていると、英語の側では鳴らないので、 語が終わったことに気づけません 。語の終わりが取れないと、次の語の頭も取れません。 この課で追う 3 つ — 語の終わり・枠と弱形・問いの調子 2 つ目は 枠 です。ここがこの課の中心です。天気の文は、ほとんどが同じ形をしています。頭に主語が立ち、次に「である」を表す語が来て、その後ろに中身の語が 1 つ落ちる——それだけです。台本の 14 文を見ても、渡した 5 語が 2 つ入る文は 1 文しかありません。残りはどれも 中身の語が 1 つ です。文の残りは全部、 1.7 音編 で見た弱く流れる語でできています。 しかも、その主語は 何も指していません 。 it は「それ」と訳される語ですが、天気の文では指すものがありません。空でも、外でも、今日でもありません。ただ枠を埋めるためだけに置かれ、台本 14 文のうち 6 文がこの語を使っています。日本語では「寒いですね」と主語なしで言えるので、この語を聞くと私たちはつい「何が」を探しに行きます。探しに行っているあいだに、後ろの中身の語が流れていきます。 この語が聞こえたら、意味を取らずに次へ進む ——これがこの課でいちばん役に立つ構えです。 台本に出てくる弱い語を下に並べます。どれも山にならないので、聞こえなくて当然です。 弱く流れる語 何を運ぶか 台本での出どころ it 天気の文の主語。何も指していない。いちばん多く鳴るのに、いちばん中身が無い 1・3・5・6・7・8 段落目 is ・ are ・ was 「である」を表す。ここで今のことか過去のことかが決まる。前の語にくっついて縮む形もある 1・4・6 段落目 going to これから起きること。2 語まとめて弱く、山はその次の語に立つ 5・6・7 段落目 will 同じくこれから起きること。台本では縮めない形で出るが、ふだんは母音が消えて子音だけ残る 2・3 段落目 the ・ this 名詞の前に付く。ほとんど鳴らない 1・2・3・6・7 段落目 to ・ in ・ than 名詞や語の前に立つ。1 拍も取らない 3・4・5・6・7 段落目 3 つ目は 問いの終わりの調子 です。 1.8 音編 で決めたとおり、はい・いいえで答える問いは上がって終わり、疑問詞で始まる問いと言い切りは下がって終わります。台本には問いが 5 つあり、上がるものが 3 つ、下がるものが 2 つ入っています。自分あてでない話を横から聞くとき、この見分けは 会話がどこで折り返したか を教えてくれます。上がったところが、話し手が交替する境目だからです。語が 1 つも取れなかった段落でも、そこだけは取れます。 上がる問いがこちらに向けられたときは、返す番です。天気を振られたときの返しを 3 つ挙げておきます。3 つとも上で見た枠でできていて、中身の語を入れ替えるだけで作れます。 英文 日本語訳 見るところ It's nice weather. [1] いい天気だなあ。 相手の言ったことをそのまま受ける。枠と中身の語 1 つだけでできている The weather is good today. [2] 今日はいい天気だ。 同じ枠に日を足した形。中身の語はやはり 1 つ I hope this fine weather holds. [3] こんなすばらしい天気が続けばと思う。 この先も続いてほしい、と足す。天気の話でいちばん無難な足し方 聞き方 この編の課は 音が本体 で、画面の文字はその確かめです。だから台本はこの課の終わり、答えより後ろに置いてあります。先に読むと、文字を追いながら音を聞くことになり、練習になりません。手順は 5.1 聞編 で決めた 4 段と同じです。 台本を見ずに 2 回聞く。 1 回目は 用件を探します 。何か決まったか、決まったとすれば何段落目か。それだけを追ってください。2 回目は逆に、用件を探すのをやめます。問いが何回あったか、そのたびに終わりが上がったか下がったかだけを印で書き取ります。 読み上げに声を重ねる(シャドーイング)を 3 回。 台本は見ません。語を正しく言おうとしないでください。頭の主語と「である」を潰したまま流すことと、中身の語 1 つだけをはっきり言うこと——この 2 つを真似ます。 台本を見て確かめる。 1 段目で探した用件と、2 回目に数えた問いの数を突き合わせます。そのうえで、渡した 5 語が段落のどこに落ちているかを見てください。 台本を見ずに、もう 1 回通して声を出す。 この 4 段目だけを 音読判定 にかけ、綴りどおりに返らなかった段落を書き出してください。 判定が返すのは綴りだけですが、この課ではそれで足ります。返りにくいのは、渡した 5 語の終わりに母音を足してしまった段落です。母音を 1 つ足すと拍が増え、判定の側は別の語だと受け取ります。 返らなかった所を見れば、自分がどの語の終わりを伸ばしているかが分かる 。 問い 聞き方の 1 段目と 2 段目を終えてから、3 段目より先に答えるのがこつです。台本を見てから答えると、聞けたのか読めたのかが分かりません。1 から 3 が中身、4 が調子、5 と 6 が書き取り、7 が仕上げです。 この 8 段落で、二人は何かを決めたか。決めたのなら何段落目か。そこまでの 7 段落は何をしていたのか、1 行で書く。 話は途中で天気から季節へ移り、また天気へ戻る。季節の話に移るのは何段落目か。天気へ戻るのは何段落目か。 渡した 5 語のうち、 weather ・ cold ・ spring ・ rain はそれぞれ何段落目に出てくるか。1 つの文に 2 つ入っているところが 1 か所ある。どこか。 台本には問いが 5 つある。終わりが 上がる のはどれか。何段落目かで答える。残りは下がる。上がる問いのうち、答えが返ってきているのはいくつか。 書き取り。 1 段落目の 1 つ目の文を書き取る。6 語ある。山が立つのは 3 語だけで、残りは弱く流れる。頭の 2 語は上の表に載っている。 書き取り。 6 段落目の 2 つ目の文を書き取る。6 語ある。山が立つのは 2 語しかない。そのうち 1 語が、この課で渡した 5 語のうちの 1 つである。 シャドーイング。 聞き方の 4 段目を 8 段落すべてで行い、 音読判定 にかける。綴りどおりに返らなかった段落を書き出す。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Let's Learn English Lesson 9: Is It Cold? VOA Learning English (5:03, 2016) 寒いかどうかをめぐる会話 この課のまとめ 天気と季節の語は、第 1 期の 600 語に 1 つも入っていない。季節の名で入っているのは fall だけで、それも「落ちる」の意味で入った語である。語が足りない話題は、これから何度も来る。そのときの構えをここで作る。 天気の文は枠でできている。主語と「である」と、中身の語 1 つ。枠は全部弱く流れるので、聞こえなくてよい。中身の語 1 つだけに注意を集めれば、天気の話は取れる。 天気の文の it は何も指していない。「何が」を探しに行くと、そのあいだに中身の語が流れる。聞こえたら意味を取らずに次へ進む。 渡した 5 語のうち 4 語は 1 音節で、終わりは子音で切れる。日本語に入った形ではそこに母音が足されて拍が増えている。足された母音を待っていると、語が終わったことに気づけない。 天気の話は用件を運ばない。8 段落のうち用件は最後の 1 文だけだった。張りつめずに、上がったか下がったかだけ追って、最後まで力を残しておく。 次の課へ 第 1 期の聞編はこれで最後です。次は話編 話に移り、6.1 挨拶と名乗りから始めます。聞編の続き——5.7 旅行の会話——は 第 2 期 にあります。第 2 期の聞編では、音が続けて鳴るときに起きる変化を正面から扱います。この課までは「つながって聞こえるものだ」と思っておくだけで十分です。話の編では、ここまで聞いてきた枠を、こんどは自分の口から出すことになります。枠は弱く、中身の語だけはっきりと——この形をそのまま持っていってください。 答え 決めごとは 8 段落目の If it rains, please call me. [4] 1 つだけである。そこまでの 7 段落は、寒さと季節と雨の話をしていただけで、何も決めていない。天気が始まったら 最後の 1 文まで力を残す と決めておくとよい。 季節の話に移るのは 3 段落目で、A が I feel spring in the air. [5] と言うところである。天気へ戻るのは 6 段落目で、B が What w