10.28 送る一通と、経歴の紙 — Epoché
この課でできるようになること ★ 投稿の一通を、六行で書ける 。 ★ なぜこの雑誌かを、相手の紙面から言える 。 ★ 倫理の宣言を、四つ書ける 。 ★ 学術の経歴の紙の核が分かる 。 前提 : 10.27 まで。論は 9.24 まで。型は 3.64 まで。語は 4.88 まで。読は 8.192 まで。 ★ 断っておきます。 ★ この課が扱うのは 学術の側 だけ です——★ 投稿の一通と、 業績を並べる紙 。 ★ 仕事に応じるときの履歴書と、面接の答えの組み立ては、 11.20 商編 が受け持ちます。 ★ 学習順ではこの課が先 なので、★ そちらを読んでいなくても この課は通ります 。 手本 ★ 手本は二つ です。 ★ 8.124 読編 の第二段 ——★ ダーウィンが、 なぜいま、なぜここに出すのか を書いているところ。 ★ そして 8.189 読編 ——★ 一通の 形 そのもの。 一 — なぜいま出すのかを、先に書く ★ ダーウィンは、 本が完成していないこと から書き始めます。 My work is now nearly finished; but as it will take me two or three more years to complete it [2] ★ 「私の仕事はほぼ終わっている。しかし仕上げるにはあと二、三年かかるので」。 I have been urged to publish this Abstract [2] ★ 「この摘要を出すよう勧められてきた」。 どう書き出すか 読む人はどう受け取るか ★ 中身の自慢から ★ 売り込みだと読む ★ なぜいま出すのかから ★ 事情のある投稿だと読む ★ 下の行が効くのは、 受け取る側が毎日たくさん受け取っている から です。 ★ 中身の良さは、 原稿を読めば分かります ——★ 一通に書くのは、 原稿からは分からないこと だけ です。 二 — なぜここに出すのかを、相手の紙面から言う ★ ダーウィンは、 同じ結論に達した人 の話を書きます。 has arrived at almost exactly the same general conclusions that I have on the origin of species [2] ★ 「種の起源について、私とほとんどまったく同じ一般的な結論に達している」。 ★ そのうえで、 だれが出すのを薦めたか を書きます。 honoured me by thinking it advisable to publish [2] ★ 「出すのがよいと考えてくださって、私を厚く扱ってくださった」。 ★ いまの投稿で、 これに当たるもの は何か。 ★ 推薦者ではありません ——★ その雑誌が すでに載せた仕事 です。 どう書くか 何が伝わるか ★ 「貴誌の趣旨に合うと存じます」 ★ 紙面を見ていない ★ 「貴誌は同じ問いを二度載せている」 ★ 読者を知っている ★ 下の形にするには、 その雑誌を実際に読む しかありません 。 ★ けれども二本挙げれば足ります ——★ 二本挙げた一通と、一本も挙げない一通の差は、 大きい です。 三 — 弱みは、こちらから書く ★ 8.189 読編 の売り手が、遅れを知らせる一通でこう書きます。 which is a weakness in our own planning and one we are now working on [3] ★ 「これは我々自身の段取りの弱みであり、いま手を入れているところです」。 ★ 投稿の一通でも、 同じ手が使えます 。 ★ 前の課で書いた限界のうち いちばん大きい一つ を、一通のほうに一行で書いておく ——★ 査読で必ず出る一点 だからです。 だれが先に言うか 査読でどうなるか ★ 読む側が見つける ★ 見落としとして書かれる ★ 書く側が先に言う ★ 範囲として扱われる ★ 10.27 作編 で「限界を先に書くと枠になる」と置きました。 ★ 一通は、 いちばん前 です ——★ 本文より先に読まれる紙に書けば、 いちばん強い枠になります 。 四 — 一通の、形 ★ 形そのものは、仕事の一通と同じ です。 ★ 8.189 読編 の件名を見てください。 Subject: Delay in order 2026-0412 [3] ★ 用件が、 件名に名指しされています 。 ★ 投稿なら、 原稿の題と、何をしてほしいか です。 ★ そして、 並べ方 。 To answer your questions in order. [3] ★ 「ご質問に順にお答えします」。 ★ この一行のあと、 番号の順に答えが並びます 。 ★ 査読の返事を書くときに、 そのまま使える形 です。 型 ★ 一通に入れるのは、 三つだけ です。 何を書くか 何行か どこから採るか ★ 何を送るか ★ 二行 ★ 自分の原稿 ★ なぜここか ★ 一〜二行 ★ 相手の紙面 ★ 宣言 ★ 三〜四行 ★ 決まった型 ★ 入れないものも、決めておきます。 入れないもの なぜ入れないか ★ 結果の数 ★ 原稿を読めば分かる ★ 自分の経歴 ★ 別の紙にある ★ 謝辞 ★ 原稿の末尾にある ★ 一つめを守れない人がいちばん多い です。 ★ 一通が 抄録の作り直し になっているのが、よくある形 です——★ 抄録は すでに同じ束に入っています ( 10.17 作編 )。 投稿の一通のひな型 — 六行 ★ ひな型を置きます。 ★ この期で通してきた、 手で行う検査 の調べ です——★ 雑誌も人も架空、数はすべて仮 です。 We submit the paper named above for your journal. [1] It reports four trials on one line, and it asks how long a checker holds accuracy. [1] Your journal has carried two studies on the same question. [1] The work is our own, and it is not under review anywhere else. [1] All four of us have read the paper and agree to send it. [1] We have no interest in the maker of the checking sheets. [1] どの行か 何をしているか ★ 一行め ★ 何を送るか ★ 二行め ★ 何を問うた仕事か ★ 三行め ★ なぜここか ★ 四行め ★ 自分のもの・重ねて出していない ★ 五行め ★ 著者全員が読んだ ★ 六行め ★ 利害が無い ★ 四行めから六行めが、 倫理の宣言 です。 ★ 四つを覚えてください。 何を宣言するか 何を防ぐか ★ 自分たちの仕事である ★ 写しだという疑い ★ ほかに出していない ★ 二重に載ること ★ 著者全員が承知している ★ あとからの申し立て ★ 利害が無い(あれば書く) ★ 身びいきの疑い ★ 四つめは、 「無い」と書くより「ある」と書くほうが強い ことがあります。 ★ 関わりがあるなら、 関わりの中身を一行で書く ——★ 隠して見つかるのと、 書いてあるのとでは、扱いがまるで違います 。 一通の、言い回し どこで使うか どう書くか ★ 何を送るか We submit the paper named above … [1] ★ 何を問うたか It asks whether … [1] ★ なぜここか Your journal has carried … [1] ★ 自分のもの The work is our own. [1] ★ 重ねて出していない It is not under review elsewhere. [1] ★ 利害 We have no interest in … [1] 学術の経歴の紙 ★ もう一枚が、 自分の来歴を並べた紙 です。 ★ 学術のものは、 仕事に応じるときの紙とは核が違います 。 どちらの紙か 何が核になるか ★ 学術の紙 ★ 業績の一覧 ★ 仕事の紙 ★ 動詞と数の行 ★ 長さも違います。 ★ 仕事の紙は 一枚か二枚 に収めますが、★ 学術の紙に 長さの決まりはありません ——★ 業績が増えれば、そのぶん長くなります。 ★ 並べる段は、この順が多い です。 どの段か 何を並べるか ★ 学歴 ★ 学位と年 ★ 職歴 ★ 役と年 ★ 論文 ★ 査読のあるものを先に ★ 講演 ★ 招かれたものを先に ★ 助成 ★ 名と期間 ★ 教育 ★ 科目と年 ★ 行の形を、三つ置きます。 Sato, K. (2026). How long a checker holds accuracy. Journal of Plant Work. [1] Invited talk, spring meeting of the Plant Work Society, May 2026. [1] Grant from the plant safety fund, 2025 to 2027. [1] ★ 論文の行は、 引用の形そのまま です。 ★ 自分で書式を作らないでください ——★ 出し先の分野の書式にそろえます。 ★ どちらの紙にも、 写真・年齢・性別は書きません 。 ★ 並べる向きも、どちらも 新しいほうから です。 ★ ここは共通なので、 11.20 商編 と同じことを言っています。 課題 ★ ここまでの三課で書いたものを、 送る形 にします。 ★ 出す先は、 架空でよい です——★ ただし 読者はだれかを決めてから 書いてください。 ★ 件名を一行書く 。★ 原稿の題と、 何をしてほしいか 。 ★ 一通を六行で書く 。★ 何を・なぜここに・宣言四つ 。★ 七行になったら、 結果の数が混ざっています ——★探して消す。 ★ 「なぜここか」の一行を、 相手の紙面から書く 。 ★ 出し先が架空なら、 載っていそうな二本の題 を自分で決めて書く。 ★ 限界のいちばん大きい一つを、一通に一行で入れる 。★ 10.27 作編 で書いた三つから選ぶ。 ★ 経歴の紙を、六段で作る 。★ 中身が無い段は 段ごと落とす ——★ 空の見出しを残さない。 練習 「手本」に引いた四文(未完/勧められた/同じ結論/弱み)を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。 ★ ひな型の六行を、 一息ずつ 音読する。 ★ 四行めから六行めは、 ためらわずに読む ——★ 宣言は、 言い切る文 です。 ★ 自分の書いた一通を、 声に出して読む 。 ★ 四十秒を超えたら、 長すぎます ——★ 受け取る人が一通にかける時間 です。 AI への頼み方 ★ 一通でいちばん効くのは、 受け取る側の目で読ませること です。 ★ 書く側には、 自分の原稿の値打ち しか見えません。 何を頼むか 頼み方の型 ★原稿からも分かる行を指させる 「この一通の各行について、 原稿を読めば分かること か、 一通にしか書けないこと かを分けてください。★ 前者は消す候補 です」 ★宣言の抜けを挙げさせる 「 自分たちの仕事である・ほかに出していない・著者全員が承知している・利害 の四つのうち、★ この一通に書かれていないもの を挙げてください」 ★書き足させずに直させる 「 冠詞・数・三人称単数の s ・時制だけ を直し、直した理由を一行ずつ日本語で書いてください。★ 行を増やさないでください 」 ★ 一つめが、 この課でいちばん使える頼み方 です。 ★ 「消す候補」という言い方にしておくのが要点 です——★ 「消してください」と頼むと、 六行が三行になって宣言まで落ちます 。 ★ 三つめの 「行を増やさないでください」 は、この課に特有 です。 ★ ていねいにしようとすると、 挨拶の段が足されます ——★ 投稿の一通に、 挨拶の段は要りません 。 自己点検表 点検すること 合格の目安 ★件名 題と用件が入っている ★一通の行数 ★ 六行まで ★結果の数 入っていない ★なぜここか ★ 相手の紙面から書いた ★自分たちの仕事である 書いた ★ほかに出していない 書いた ★著者全員の承知 書いた ★利害 無いと書いた/中身を書いた ★限界の一行 ある ★声に出したときの長さ ★ 四十秒まで ★経歴の紙の段 空の見出しが無い ★経歴の紙の向き 新しいほうから 第 8 期の作編、四つ この期の四課で書いたものを、まとめておきます。 どの課 何を書いたか 何語か 10.25 作編 ★ 序論 百五十〜二百語 10.26 作編 ★ 方法と結果 二百二十〜三百三十語 10.27 作編 ★ 議論と結論 ★ 解釈四割・限界三割・含意三割 この課 ★ 送る一通と経歴の紙 ★ 六行まで ★ 四つに共通しているものが、一つあります。 どの課も、何をしたか どこに出たか ★ 扱わないことを書いた 10.25 作編 ★ 解釈をはがした 10.26 作編 ★ 限界を先に置いた 10.27 作編 ★ 弱みを自分から書いた この課 ★ 四つとも、 自分で線を引くこと です。 ★ 学術の文章が仕事の文書といちばん違うのは、ここ です——★ 第 7 期の四課は 「いつまでに決めるか」 を書きました( 10.24 作編 )。 ★ 第 8 期の四課は、 「どこまでなら言えるか」 です。 この課のまとめ ★ 一通に書くのは、原稿から分からないことだけ 。結果の数は入れない。 ★ なぜいま出すのかを、先に書く 。中身の自慢から入ると、売り込みに読まれる。 ★ なぜここかは、相手の紙面から書く ——その雑誌が載せた仕事を二本挙げる。 ★ 倫理の宣言は四つ ——自分たちの仕事・ほかに出していない・著者全員の承知・利害。 ★ 利害は、あるなら中身を書く 。隠して見つかるのと、書いてあるのとでは扱いが違う。 ★ いちばん大きい限界を、一通に一行 。本文より先に読まれる紙に書くと、いちばん強い枠になる( 10.27 作編 )。 ★ 宣言は言い切る 。ここでヘッジを足すと、宣言でなくなる。 ★ 学術の経歴の紙の核は、業