8.73 不思議の国のアリス(1)— 括弧の中は語り手の声 — Epoché
この篇でできるようになること ★ 括弧の中が語り手の声 だと分かる。 ★ 長い一文を、切れ目で区切って 読める。 ★同じ語を並べて 時間を作る 書き方に気づける。 ★ 言いまちがいを直さない 書き方の意味が分かる。 前提 : 8.72 まで。型は 3.32 まで。語は 4.48 まで。訳は 7.8 まで。 読む前に アリスは土手で姉のそばに座って、 することが無くて退屈 しています。そこへ 白ウサギ が走ってきます。チョッキのポケットから時計を出して見て、急いでいく。★アリスは追いかけて、 ウサギ穴に落ちます 。 落ちているあいだが、この篇の大部分です。★ 落ちながら、アリスはしゃべり続けます。 地球の中心までの距離、緯度と経度、飼い猫のダイナ。 ★読 D は原文である 読 D の三十二篇は、 すべて原文 です。★ 語をやさしくしたり、文を短くしたりしていません。 段落の境目で切っただけです。 どこが変わるか 読 C では 読 D では 一文の長さ ふつう 20 語ほど ★ 109 語の一文がある 帯の外の語 少なめに選んであった ★ 原文のまま 。この篇は 48 語 書き手 教えるために書いた文もあった ★ 読者のために書いた文だけ ★ この篇の一文は 109 語あります。 ★ 読 C のどの篇よりも長い。 ★ けれども、読めないわけではありません。 ★ 長い一文は、たいてい切れ目があります。 この篇の本文は 1080 語、文は 48 本です。★ 平均すると一文 22.5 語 ——★ 平均は大したことがありません。 ★ 長い文が少しあるだけです。 だから、 その少しを切って読めれば、あとは楽に進みます 。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。★はじめの一文から見ます。 Alice was beginning to get very tired of sitting by her sister on the bank ★ 退屈していることが、最初の一文に書かれています。 ★ 物語は、何も起きていないところから始まります。 だから、 ウサギが走ってきたことが、そのまま事件になります 。 アリスは、姉の読んでいた本をのぞきこんでいました—— the book her sister was reading 。★ 関係代名詞が省かれています ( 3.14 型編 )。★ 原文にはこれがいくらでも出ます。 そして、アリスはこう思います—— and what is the use of a book, 。★ 絵も会話も無い本に、何の役があるのか。 ★ これが、この章のあとを決めます。 ★ 絵と会話だらけの話が、これから始まる からです。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 アリスは、土手でお姉さんのそばに座っていることにも、何もすることがないことにも、すっかりうんざりしはじめていました。一、二度、お姉さんの読んでいる本をのぞいてみましたが、絵も会話も入っていません。「絵も会話もない本なんて、何の役に立つのかしら」とアリスは思いました。 そこでアリスは(暑い日のせいでとても眠く、頭もぼんやりしていたので、できるかぎりではありましたが)心の中で考えていました。ヒナギクの花輪を作る楽しみは、わざわざ起き上がってヒナギクを摘む手間に見合うだろうか、と。そのとき突然、ピンク色の目をした白ウサギが、アリスのすぐそばを走っていきました。 それ自体は、たいして珍しいことではありませんでした。ウサギが「ああ大変だ! ああ大変だ! 遅れてしまう!」とひとりごとを言うのを聞いても、アリスはそれほどおかしなこととは思いませんでした(あとで思い返してみると、これを不思議に思うべきだったと気づきましたが、そのときはすべてがごく当たり前に思えたのです)。けれども、ウサギがほんとうにチョッキのポケットから懐中時計を取り出し、それを見て、また急いで走り出したとき、アリスはぱっと立ち上がりました。チョッキのポケットのあるウサギも、そこから取り出す時計を持ったウサギも、これまで一度も見たことがない、とひらめいたからです。好奇心に燃えて、アリスはウサギを追って野原を駆けていき、運よくちょうど、ウサギが生け垣の下の大きなウサギ穴にぴょこんと飛びこむのを見ることができました。 次の瞬間には、アリスもウサギを追って穴に飛びこんでいました。いったいどうやってまた外に出るのかなどとは、一度も考えずに。 ウサギ穴は、しばらくはトンネルのようにまっすぐ続いていましたが、そこから急に下へ落ちこんでいました。あまりに急だったので、アリスは止まろうと考える暇もなく、気がつくととても深い井戸のようなところを落ちていました。 井戸がとても深かったのか、それともアリスがとてもゆっくり落ちていったのか、落ちていくあいだに、まわりを見回したり、次に何が起こるのだろうと考えたりする時間はたっぷりありました。まず、下を見て、どこに向かっているのかを見きわめようとしましたが、暗すぎて何も見えません。そこで井戸の壁を見てみると、食器棚や本棚でいっぱいでした。ところどころに、地図や絵が掛けくぎに掛かっています。アリスは通りすがりに棚の一つから瓶を一つ取りました。「オレンジ・マーマレード」とラベルが貼ってありましたが、とてもがっかりしたことに、中は空っぽでした。下にいる誰かを死なせてしまうのが怖くて瓶を落とす気にはなれなかったので、落ちながらそばを通った食器棚の一つに、なんとかしまいこみました。 「まあ!」とアリスは心の中で思いました。「こんなに落ちたあとなら、階段から転げ落ちるくらい何とも思わないわ! 家のみんなは、わたしのことをなんて勇敢だと思うでしょう! だって、たとえ家のてっぺんから落ちたって、わたしはそのことを何も言わないもの!」(これは、たぶんほんとうだったでしょう。) 下へ、下へ、下へ。落ちるのはいつまでも終わらないのでしょうか。「もう何マイルくらい落ちたのかしら」とアリスは声に出して言いました。「地球の真ん中あたりに近づいているにちがいないわ。ええと、それだと四千マイル下になるはずね、たしか――」(というのも、アリスは教室での勉強でこの種のことをいくつか習っていたのです。聞いてくれる人が誰もいないので、知識をひけらかすにはあまりいい機会ではありませんでしたが、それでも口に出して言ってみるのはよい練習になりました)「――そう、だいたいそのくらいの距離ね――でも、それじゃあ、わたしはどの緯度か経度のところまで来たのかしら?」(アリスには、緯度が何なのかも、経度が何なのかも、まったく分かっていませんでしたが、口にするにはすてきな立派な言葉だと思ったのです。) やがてアリスはまた話しはじめました。「地球をまっすぐ突き抜けて落ちていくのかしら! 頭を下にして歩いている人たちのあいだに出てきたら、どんなにおかしいでしょう! たしか、 Antipathies (アンチパシー)っていうのよね――」(今度は聞いている人が誰もいなくて、むしろよかったと思いました。ちっとも正しい言葉に聞こえなかったからです)「――でも、国の名前をその人たちにたずねなくちゃいけないわね。『すみません、奥さま、ここはニュージーランドですか、それともオーストラリアですか?』」(そしてアリスは、話しながらひざを曲げてお辞儀をしようとしました――空中を落ちながらお辞儀をするなんて、考えてもみてください! あなたならできると思いますか?)「そんなことをたずねたら、なんて物を知らない女の子だと思われるでしょう! だめ、たずねるなんてとんでもないわ。たぶん、どこかに書いてあるのが見えるでしょう。」 下へ、下へ、下へ。ほかにすることもないので、アリスはすぐにまたしゃべりはじめました。「ダイナは今夜、わたしがいなくてとてもさみしがるでしょうね!」(ダイナは猫です。)「お茶の時間に、ダイナのミルクのお皿のことをみんなが忘れないといいけど。ダイナ、かわいい子! おまえもここで一緒にいてくれたらいいのに! 空中にはネズミはいないみたいだけど、コウモリなら捕まえられるかもしれないわ。コウモリはネズミにとてもよく似ているのよ。でも、猫はコウモリを食べるのかしら?」 ここでアリスはだんだん眠くなってきて、夢見るような調子で「猫はコウモリを食べるかしら? 猫はコウモリを食べるかしら?」と、ときには「コウモリは猫を食べるかしら?」とひとりごとを言いつづけました。というのも、どちらの問いにも答えられないのだから、どちらの言い方をしてもたいして変わらなかったのです。アリスはうとうとしてきたのを感じ、ダイナと手をつないで歩きながら、とても真剣に「さあ、ダイナ、ほんとうのことを言ってちょうだい。コウモリを食べたことはある?」と話しかけている夢を見はじめたところでした。そのとき突然、どすん! どすん! とアリスは小枝と枯れ葉の山の上に落ち、落下は終わりました。 アリスは少しもけがをしていなかったので、すぐにぴょんと立ち上がりました。上を見上げましたが、頭の上は真っ暗です。目の前にはまた長い通路があり、白ウサギがまだ見えていて、その通路を急いで走っていきます。一刻もぐずぐずしてはいられません。アリスは風のように駆けだし、ちょうどウサギが角を曲がりながら「ああ、わたしの耳とひげにかけて、なんて遅くなってしまったんだ!」と言うのが聞こえるところまで追いつきました。アリスが角を曲がったときには、すぐ後ろにいたのですが、ウサギの姿はもう見えませんでした。気がつくとアリスは、天井から下がった一列のランプに照らされた、細長く天井の低い広間にいました。 語釈 帯の外の語は 48 語です。★ 半分近くが名前と、物の名 です。★ 話の筋を追うのに要るのは、物の名のほうです。 語(品詞) 意味 注 Alice en 名 アリス。主人公 Antipathies en 名 ★アリスの言いまちがい。 Antipodes (対蹠地)のつもり Australia en 名 オーストラリア Dinah en 名 ダイナ。アリスの飼い猫 Dinah’ll en 名 Dinah will の縮約 Latitude en 名 緯度 We checked our latitude before drawing the ship's new course. 船の新しい進路を引く前に緯度を確かめました。 Longitude en 名 経度 The captain recorded the longitude every hour during the long voyage. 船長は長い航海の間、毎時経度を記録しました。 MARMALADE en 名 マーマレード。びんの札なので大文字 Ma’am en 名 奥さま。知らない人への呼びかけ The polite clerk addressed the stranger simply as Ma’am. その丁寧な店員は見知らぬ女性に「マーム」と呼びかけました。 Oh en 間 ああ Oh, I completely forgot to lock the front door! ああ、玄関のかぎをかけ忘れてしまいました! Presently en 副 やがて Presently, the tired travelers reached a small village near the river. やがて疲れた旅人たちは川の近くの小さな村に着きました。 Rabbit en 名 ウサギ。白ウサギを指す The rabbit dashed across the garden and vanished into a hole. そのウサギは庭を走り抜けて穴の中に消えました。 Zealand en 名 New Zealand の一部 afterwards en 副 あとになって We finished the long hike and rested afterwards under a tall tree. 私たちは長いハイキングを終え、あとになって大きな木の下で休みました。 aloud en 副 声に出して She read the letter aloud so everyone in the room could hear. 彼女は部屋にいる全員に聞こえるよう、手紙を声に出して読みました。 bat en 名 コウモリ A small bat flew silently through the dark evening sky. 小さなコウモリが暗い夕方の空を静かに飛びました。 bats en 名 コウモリ(複数) Several bats hung upside down from the ceiling of the old cave. 数匹のコウモリが古い洞窟の天井から逆さまにぶら下がっていました。 brave en 形 勇ましい The brave firefighter ran straight into the burning building to help. その勇ましい消防士は助けるために燃えている建物へまっすぐ走りました。 cupboards en 名 戸だな(複数) Grandmother keeps all her old dishes inside the kitchen cupboards. 祖母は古い食器をすべて台所の戸だなにしまっています。 curiosity en 名 好奇心 The child's curiosity led her to open every drawer in the house. その子どもの好奇心は、家中のすべての引き出しを開けさせました。 curtsey en 動 ひざを折ってお辞儀する The young girl learned to curtsey before greeting the visiting queen. その少女は訪れた女王に挨拶する前にひざを折ってお辞儀することを習いました。 curtseying en 動 ひざを折ってお辞儀すること The dancers practiced curtseying gracefully before the sta