8.175 見えざる手 — 一度しか出てこない、条件つきのたとえ — Epoché
この篇でできるようになること ★ 条件つきのたとえ を、条件ごと読める。 ★ 前後を落とすとどう変わるか が見える。 ★ 二重否定 の効き方が分かる。 ★ intend の繰り返し に気づける。 前提 : 8.174 まで。 読む前に ★ 先に、数を一つ置きます。 ★ invisible hand は、この篇で 1 回しか出ません。 ★ 『国富論』全体でも 一度だけ です。 ★ にもかかわらず、 この句はスミスの主張そのもの のように扱われてきました。 どう扱われがちか 本文ではどうか ★ 市場の仕組みの名前 ★ 一度きりのたとえ ★ 無条件に働く ★ 条件が前に書いてある ★ 8.154 読編 で 「例外を落として引くと別の主張になる」 と置きました。 ★ この篇は、その いちばん大きな実例 です。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1614 語、文は 47 本、一文の平均は 34.3 語、いちばん長い一文は 77 語です。 ★ intend の語が 4 回 出ます。★ 「狙う」という語をこれだけ繰り返すのは、 「狙っていない」ことを言うため です( 8.174 読編 )。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 しかし、どの社会の年々の収入も、つねにその社会の産業の年々の生産物全体の交換価値とちょうど等しいのです。あるいはむしろ、その交換価値とまったく同じものなのです。ですから、各人はできるだけ、自分の資本を国内の産業を支えることに用い、しかもその産業の生産物が最大の価値を持つように産業を導こうと努めるので、各人は必然的に、社会の年々の収入をできるだけ大きくしようと働くことになります。たしかに、彼はふつう、公共の利益を進めようと意図してもいなければ、自分がそれをどれほど進めているかを知ってもいません。外国の産業より国内の産業を支えるほうを選ぶことで、彼は自分の安全だけを狙っています。そして、その産業を、生産物が最大の価値を持つようなやり方で導くことで、彼は自分の利得だけを狙っています。そして彼は、このことにおいても、ほかの多くの場合と同じように、見えざる手に導かれて、自分の意図の一部ではなかった目的を進めるのです。それが彼の意図の一部でなかったからといって、社会にとっていつも悪いわけでもありません。自分の利益を追うことで、彼は、本当に社会の利益を進めようと意図するときよりも、しばしばもっと効果的に社会の利益を進めます。公共の善のために商売をするふりをする人々によって、多くの善がなされたのを、私は見たことがありません。もっとも、それは商人のあいだではあまりよく見られるふりではなく、彼らにそれをやめるよう説くのに、言葉はほとんど要りません。 自分の資本が用いることのできる国内の産業のうち、どの種類の産業の生産物が最大の価値を持ちそうかについては、各人は、自分の置かれた場所において、いかなる政治家や立法者が代わりにするよりもはるかによく判断できることは明らかです。私人が自分の資本をどのように用いるべきかを指図しようとする政治家は、まったく不要な気苦労を自分に背負い込むだけでなく、どんな一個人にも、それどころかどんな評議会や元老院にも安心して任せることのできない権限を引き受けることになるでしょう。しかもその権限は、自分にはそれを行う資格があると思い込むほどの愚かさとうぬぼれを持った人の手にあるときほど、危険なことはどこにもないでしょう。 どれか特定の技術や製造業において、国内の市場の独占を国内の産業の生産物に与えることは、ある程度まで、私人が自分の資本をどのように用いるべきかを指図することであり、ほとんどすべての場合に、無用な規制か有害な規制のどちらかであるに違いありません。もし国内の産業の生産物を外国の産業の生産物と同じくらい安く市場に出せるなら、その規制は明らかに無用です。もし出せないなら、その規制はたいてい有害であるに違いありません。買うより作るほうが高くつくものを家で作ろうとは決してしないこと、それが分別のある一家の主人の心得です。仕立て屋は自分の靴を作ろうとはせず、靴屋から買います。靴屋は自分の服を作ろうとはせず、仕立て屋を雇います。農夫はそのどちらも作ろうとはせず、そうした別々の職人を雇います。彼らはみな、自分が隣人より何かしら有利な点を持っているやり方に自分の勤労のすべてを用い、その生産物の一部で、あるいは同じことですが、その一部の値段で、ほかに必要なものは何でも買うことが、自分の利益になると考えます。 一つひとつの私的な家族のふるまいにおいて分別であることが、大きな王国のふるまいにおいて愚かであるはずはまずありません。もし外国が、ある商品を我々が自分で作るより安く供給してくれるなら、我々が何かしら有利な点を持っているやり方で用いた我々自身の産業の生産物の一部で、それを外国から買うほうがよいのです。国の産業全体は、それを用いる資本につねに比例しているので、上に述べた職人たちの場合と同じく、それによって減ることはありません。ただ、最も有利に用いられるやり方を自分で見つけるのに任されるだけです。作るより安く買える物に向けてこのように導かれるとき、産業は確かに最も有利に用いられてはいません。作るよう導かれる商品より明らかに価値の高い商品を作ることから、このようにそらされるとき、その年々の生産物の価値は、確かに多かれ少なかれ減ります。仮定によれば、その商品は国内で作るより安く外国から買えるのです。したがって、同じ額の資本が用いる産業が、自然の成り行きに任されていたなら国内で生み出したであろう商品の一部だけで、あるいは同じことですが、その商品の値段の一部だけで、それを買うことができたはずです。ですから、国の産業は、このようにして、より有利な用途からより不利な用途へとそらされます。そして、その年々の生産物の交換価値は、立法者の意図どおりに増えるどころか、そうした規制のたびに必ず減るに違いありません。 たしかに、そうした規制によって、特定の製造業が、そうでない場合より早く手に入ることがときにはあり、ある期間ののちには、外国と同じくらい安く、あるいはもっと安く国内で作れるようになるかもしれません。しかし、社会の産業がこのようにして、そうでない場合より早く、特定の水路へ有利に運び込まれることがあるとしても、そこから、その社会の産業の総額、あるいは収入の総額が、そうした規制によって増えることがありうる、ということには決してなりません。社会の産業は、その資本が増えるのに比例してしか増えることができず、その資本は、その収入から少しずつ蓄えられるものに比例してしか増えることができません。ところが、そうした規制のどれもが、すぐに及ぼす効果は、その収入を減らすことです。そして、収入を減らすものが、資本と産業の両方がそれぞれ自然な用途を自分で見つけるのに任されていた場合に資本がおのずから増えたであろう速さよりも速く、資本を増やすとは、とても考えにくいのです。 そうした規制がないために、社会が狙っていた製造業をいつまでも手に入れられないとしても、そのために、その社会が存続するどの時期においても、必ずより貧しくなるわけではありません。その存続のどの時期においても、その資本と産業の全体は、対象は違っても、そのときに最も有利なやり方で用いられていたかもしれません。どの時期においても、その収入は、その資本が生み出しうる最大のものであったかもしれず、資本も収入も、ありうる限り最も速く増えていたかもしれません。 ある国が特定の商品を作るうえでほかの国に対して持っている自然の利点は、ときにとても大きく、それと争っても無駄だと世界じゅうが認めるほどです。ガラスや温床や温め壁を使えば、スコットランドでもとてもよいぶどうを育てることができ、そこからとてもよいワインを造ることもできます。ただし、少なくとも同じくらいよいワインを外国から運んでこられる費用の、およそ三十倍の費用がかかります。スコットランドでクラレットやブルゴーニュを造ることを奨励するためだけに、すべての外国のワインの輸入を禁じるのは、筋の通った法律でしょうか。しかし、必要な商品を同じ量だけ外国から買うのに要るより三十倍も多くの国の資本と産業を、何かの用途に向けることが明らかにばかげているなら、そうした用途に、そのどちらかを三十分の一、いや三百分の一でも多く向けることも、それほどひどく目立ちはしないにせよ、まったく同じ種類のばかげたことであるに違いありません。ある国がほかの国に対して持っている利点が自然のものか、身につけたものかは、この点では何の違いもありません。一方の国がその利点を持ち、もう一方の国がそれを欠いている限り、後者にとっては、自分で作るより前者から買うほうが、いつでも有利でしょう。ある職人が別の商売をしている隣人に対して持っている利点は、身につけた利点にすぎません。それでも二人とも、自分の商売に属さないものを作るより、互いに買い合うほうが有利だと考えるのです。 国内市場のこの独占からいちばん大きな利益を得るのは、商人と製造業者です。外国の牛と塩漬けの食料の輸入の禁止は、ほどほどの豊作の年には禁止にも等しい外国の穀物への高い関税と合わせても、グレートブリテンの牧畜業者や農夫にとって、同じ種類のほかの規制がその国の商人や製造業者にとって有利であるほどには、まるで有利ではありません。製造品、とりわけ上等の種類の製造品は、穀物や牛よりたやすく国から国へ運ばれます。ですから、外国貿易が主に携わっているのは、製造品を運び込み運び出すことです。製造品では、ほんのわずかな利点があれば、国内の市場においてさえ、外国人が我々自身の職人より安く売ることができます。土地の未加工の産物でそうするには、とても大きな利点が要るでしょう。もし外国の製造品の自由な輸入が許されたなら、国内の製造業のいくつかはおそらく痛手を受け、そのうちのいくつかはことによると完全に潰れ、いまそこに用いられている元手と産業のかなりの部分は、何かほかの用途を見つけざるをえなくなるでしょう。しかし、土地の未加工の産物をどれほど自由に輸入しても、国の農業にそのような影響を与えることはありえません。 語釈 帯の外の語は 45 語です。★ exchangeable (交換できる)・ lawgiver (法を定める人)・ expedients (その場しのぎの手)が要 です。★ rude produce は 「加工していない産物」 ——★ rude は「粗野な」ではありません。 語(品詞) 意味 注 Britain en 名 ブリテン(英国の島) Many tourists visit Britain every summer to see its castles. 多くの観光客は毎年夏に、城を見るためにブリテンを訪れます。 Burgundy en 名 ブルゴーニュ。フランスの葡萄酒の産地 Our chef recommended a bottle of red wine from Burgundy. シェフは、ブルゴーニュ産の赤ワインを一本勧めてくれました。 Scotland en 名 スコットランド She spent her college years studying history in Scotland. 彼女は大学時代、スコットランドで歴史を学んで過ごしました。 abovementioned en 形 前に述べた The abovementioned rules must be followed by every new employee. 前に述べた規則は、すべての新入社員が守らなければなりません。 absurdity en 名 ばかげていること Everyone laughed at the sheer absurdity of his wild excuse. 誰もが、彼のとっぴな言い訳のあまりのばかばかしさに笑いました。 advantageous en 形 都合のよい Moving closer to the office proved advantageous for her daily commute. 会社の近くに引っ越したことは、彼女の毎日の通勤にとって都合がよいとわかりました。 affectation en 名 気取り His polished accent seemed like nothing more than pure affectation. 彼の洗練されたなまりは、ただの気取りにすぎないように見えました。 artificer en 名 手仕事の職人 The old artificer carved delicate patterns into the wooden box. その年老いた職人は、木箱に繊細な模様を彫りました。 artificers en 名 手仕事の職人たち Skilled artificers repaired the cathedral's stone carvings over several years. 熟練の職人たちは、数年かけて大聖堂の石の彫刻を修復しました。 augment en 動 増す The company hired more staff to augment its production capacity. 会社は生産能力を増すために、さらに人員を雇いました。 augmented en 動 増された( augment の過去分詞) Her small salary was augmented by a generous holiday bonus. 彼女のわずかな給料は、気前のよいボーナスによって増されました。 augments en 動 増す( augment の三単現) A daily walk augments both her mood and her energy. 毎日の散歩は、彼女の気分と元気の両方を増します。 chiefly en 副 主に The museum's collection consists chiefly of paintings from the nineteenth century.