8.64 くじらののど(後) — 投げたものを拾う — Epoché
この篇でできるようになること ★ 投げたものを拾う 形を、本文の中で追える。 語り手が自分で伏線を指さす一行を見つけられる。 説明されない冗談があることに気づける。 帯の外の語を、語釈を見ながら読み通せる。 前提 : 8.63 まで。型は 3.24 まで。語は 4.36 まで。 読む前に 前半で、くじらは船乗りを飲みこみ、腹の中で暴れられて しゃっくり が止まらなくなりました。ここからが後半です。 読みながら、 ズボンつりがいつ出てくるか を待っていてください。前半で四度も念を押されたものです。 出てくる名 何を指すか white-cliffs-of-Albion イギリスの白い崖。船乗りの故郷 Fitchburg Road アメリカの鉄道の名。くじらが車掌の真似をする Sloka サンスクリットの詩の形。ここでは冗談で使われている Equator 赤道。かしこい魚が隠れる場所 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 541 語です。最後に 詩がひとつ ついています。 ‘Tell him to come out,’ said the ‘Stute Fish. 前半と同じく、まず 声に出して 読んでください。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 そこでクジラはかしこい魚に言いました。「この男はひどくごつごつしているし、そのうえ、おれはしゃっくりが出てきた。どうしたらいいだろう?」 「出てこいと言いなさい」とかしこい魚は言いました。 そこでクジラは、自分ののどの奥にいる難破した船乗りに呼びかけました。「出てきて、おとなしくしろ。しゃっくりが出ているんだ。」 「いやいや!」と船乗りは言いました。「そうはいかない、まったく逆だ。おれの生まれ故郷の岸、アルビオンの白い崖まで連れていってくれたら、考えてやろう。」そして前よりもいっそう激しく踊り出しました。 「その人を家まで送っていったほうがいいですよ」とかしこい魚はクジラに言いました。「言っておくべきでしたが、その人は限りない知恵と才覚の持ち主なのです。」 そこでクジラは、両方のひれと尾を使い、しゃっくりをしながらできるかぎり力いっぱい、泳いで泳いで泳ぎました。そしてとうとう、船乗りの生まれ故郷の岸と、アルビオンの白い崖が見えてきました。クジラは浜辺を半分ほど駆け上がり、口を大きく、大きく、大きく開けて言いました。「ウィンチェスター、アシュエロット、ナシュア、キーン、フィッチバーグ線の各駅へは、こちらでお乗り換えください。」そしてちょうど「フィッチ」と言ったところで、船乗りが口から歩いて出てきました。けれども、クジラが泳いでいるあいだに、本当に限りない知恵と才覚の持ち主だった船乗りは、ジャックナイフを取り出して、いかだを切り刻み、縦横に組んだ小さな四角い格子にしていました。そしてそれをズボン吊りでしっかりと縛り(さあ、ズボン吊りを忘れてはいけなかったわけがこれでわかったでしょう!)、その格子をクジラののどにぎゅうぎゅうと引きずりこんだので、格子はそこにつかえてしまいました! それから船乗りは次のシュローカを唱えました。あなたはまだ聞いたことがないでしょうから、これからお話ししましょう—— 格子( grating )を使って、おまえの食い( ating )を止めてやったぞ。 というのも、その船乗りはアイルランド人( Hi-ber-ni-an )でもあったのです。そして船乗りは小石の浜に降り立ち、足の指を水にひたしてもいいと許してくれていた母親のところへ帰りました。それから結婚して、その後ずっと幸せに暮らしました。クジラもそうでした。けれどもその日から、のどにつかえた格子は、吐き出すことも飲みこむこともできず、クジラはとてもとても小さな魚のほかは何も食べられなくなりました。そういうわけで、今のクジラは、大人の男も男の子も小さな女の子も、決して食べないのです。 小さなかしこい魚は、赤道の戸口の敷居の下の泥の中へ行って隠れました。クジラが自分に腹を立てているかもしれないと心配したのです。 船乗りはジャックナイフを持って帰りました。小石の浜に歩いて出てきたとき、船乗りは青い帆布のズボンをはいていました。ズボン吊りは、ほら、格子を縛るのに使ったので、置いてきてしまったのです。これでこのお話はおしまいです。 船室の丸窓が暗く緑になるとき、/外の海のせいで。/船がぐらりと揺れ(そのあいだにくねりも入って)、/給仕がスープの深皿に落っこち、/トランクがすべり出すとき。/ばあやが床にどさりと倒れて寝ころび、/ママが「寝かせておいてあげなさい」と言い、/だれも起こしてくれず、顔も洗ってくれず、服も着せてくれないとき、/そう、そのときわかるでしょう(まだ気づいていなければ)、/ここは「北緯五十度、西経四十度」なのだと! 語釈 帯の外の語は 67 語です。★地名が多いのは、くじらが 鉄道の車掌の真似 をする一行のためです。 語(品詞) 意味 注 Albion en 名 アルビオン。イギリスの古い呼び名 Ashuelot en 名 アシュエロット。アメリカの地名 Equator en 名 赤道 The old ship finally crossed the Equator after weeks at sea. その古い船は数週間の航海の末に、ついに赤道を越えました。 Fitch en 名 Fitchburg の言いかけ Fitchburg en 名 フィッチバーグ。アメリカの地名 Keene en 名 キーン。アメリカの地名 Mariner en 名 船乗り The mariner tied his boots together before he swam ashore. その船乗りは岸まで泳ぐ前にくつをひもで結びました。 Mariner’s en 名 船乗りの The mariner's raft drifted slowly toward the rocky shore. その船乗りのいかだは岩の多い岸へゆっくりと流れていきました。 Mummy en 名 お母さん The little girl ran to tell Mummy the exciting news. その女の子はお母さんに楽しい知らせを伝えに走りました。 Nashua en 名 ナシュア。アメリカの地名 Nay en 間 いや。古い言い方 Nay, I will not travel on such a stormy night. いや、そんな嵐の夜には出かけません。 Nursey en 名 ばあや Nursey sang a quiet song until the baby fell asleep. ばあやは赤ちゃんが眠るまで静かな歌を歌いました。 Sailor en 名 船乗り The old sailor told stories about storms at sea. その年老いた船乗りは海の嵐についての話をしました。 Sloka en 名 シュローカ。サンスクリットの詩の形 Stute en 形 astute を縮めた形 Whale en 名 くじら A huge whale rose slowly to the surface of the water. 一頭の大きなくじらが水面へゆっくりと浮かび上がってきました。 Whale’s en 名 くじらの The whale's huge tail sent a wave across the bay. そのくじらの大きな尾は湾いっぱいに波を送りました。 Winchester en 名 ウィンチェスター。アメリカの地名 afterward en 副 そののち They finished the long walk and rested afterward by the fire. 彼らは長い散歩を終え、そのあと暖炉のそばで休みました。 ating en 動 eating を崩した形 behave en 動 行儀よくする Please behave yourself while the guests are visiting our house. お客様がいらっしゃる間は、行儀よくしてください。 ber en 名 Hi-ber-ni-an の一部 breeches en 名 半ズボン He wore old brown breeches tucked into his tall boots. 彼は古い茶色の半ズボンを長靴の中にたくし込んでいました。 cabin en 名 船室 The captain called everyone into the small ship's cabin. 船長はみんなを小さな船室に呼び集めました。 canvas en 名 帆布 Strong wind filled the ship's white canvas sails at dawn. 夜明けに強い風が船の白い帆布をふくらませました。 cliffs en 名 崖(複数) Tall cliffs rose sharply above the narrow rocky shore. 高い崖が狭い岩場の岸の上に切り立っていました。 cough en 動 せきをする The cold air made the old sailor cough loudly. 冷たい空気でその年老いた船乗りは大きくせきをしました。 criss en 副 criss-cross で「十文字に」 dragged en 動 引きずった The tired dog dragged the heavy stick across the yard. その疲れた犬は重い棒を庭の中で引きずりました。 flippers en 名 ひれ(複数) The seal moved quickly using its two strong flippers. そのアザラシは二枚の強いひれを使ってすばやく動きました。 grating en 名 格子 Sunlight came through the iron grating above the cellar. 地下室の上にある鉄格子から日の光が差し込みました。 happily en 副 しあわせに The children played happily together in the warm sand. 子どもたちは暖かい砂の上でしあわせに遊びました。 heap en 名 山。 in a heap で「くずおれて」 Exhausted from the climb, he fell in a heap. 登山で疲れきった彼はくずおれてしまいました。 hiccough en 動 しゃっくりをする A sudden hiccough interrupted him in the middle of dinner. 夕食の途中で急なしゃっくりが彼の話をさえぎりました。 hiccoughs en 名 しゃっくり(複数) Loud hiccoughs kept the baby awake through the night. 大きなしゃっくりのせいで赤ちゃんは夜通し眠れませんでした。 infinite en 形 限りない The night sky seemed to hold an infinite number of stars. 夜空には限りない数の星があるように見えました。 jack en 名 jack-knife で折りたたみナイフ knife en 名 ナイフ She sliced the bread with a sharp kitchen knife. 彼女は鋭い包丁でパンを切りました。 mud en 名 どろ The children's boots sank deep into the soft mud. 子どもたちの長靴は柔らかいどろに深く沈みました。 natal en 形 生まれた Every year they celebrate her natal day with a cake. 毎年、彼らはケーキで彼女の生まれた日を祝います。 nay en 間 いや He would accept no excuse, nay, not even one word. 彼はどんな言い訳も、いや、一言も受け入れませんでした。 ni en 名 Hi-ber-ni-an の一部 nowadays en 副 今では Nowadays most ships use engines instead of large canvas sails. 今では、ほとんどの船は大きな帆布の帆の代わりにエンジンを使います。 nubbly en 形 ごつごつした The old blanket felt nubbly and rough against his skin. その古い毛布は肌に対してごつごつして粗く感じられました。 port en 名 port-hole で船の丸窓 raft en 名 いかだ They built a simple raft from wood and old rope. 彼らは木と古いロープで簡単ないかだを作りました。 recited en 動 唱えた The old sailor recited a long tale about the sea. その年老いた船乗りは海についての長い話を唱えました。 sagacity en 名 賢さ The wise old captain was known for his great sagacity. その賢い老船長は大きな賢さで知られていました。 shingle en 名 小石の浜 Waves rolled small stones along the quiet shingle beach. 波は静かな小石の浜に沿って小石を転がしました。 shipwrecked en 形 難破した The shipwrecked sailor lived alone on a tiny island. その難破した船乗りは小さな島で一人暮らしをしました。 shore en 名 岸 Waves