14.37 話し言葉で書き切る — 二百六十八語の夜明け — Epoché
この篇でできるようになること ★ 語り手そのものが非標準で書く やり方が読める。 ★ 二重否定と a- の接頭 が見分けられる。 ★ セミコロンで継ぐ長い一文 を切って読める。 ★ 語の短さが声の高さを決める ことが言える。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ この章は 何も起きません 。★ 夜に進み、昼は隠れ、 夜明けを見て、星の話をする ——★ それだけ です。★ 背景は 12.12 知編 にあります 。 ★ 読むときに気をつけること ——★ この本の英語は 学校で教わる形と違います 。★ 間違いではありません ——★ この少年が 実際にそう話す ように書いてあります 。★ 地方ごとの英語の話は 12.3 知編 にあります 。 ★ 読編には 同じ作者の別の本 があります ——★ 8.132 読編 (演説集) 。★ そちらは 大人が人前で話す英語 で、★ この篇は 少年が独りで語る英語 です。★ 同じ作者が 書き分けて います 。 何を見るか この篇 二都物語の冒頭では ★ 4 字以下の語 ★ 69% ★ 60% ★ 8 字以上の語 ★ 5% ★ 13% ★ セミコロン ★ 40 個(文は 34 本) ★ 12 個 ★ 一文の平均は 43.0 語 で、★ 14.32 英語の名文 に次いで長い です。★ ところが 語はいちばん短い ——★ 短い語を、いくらでもつないでいく のが★ この篇の書き方 です。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1462 語、段落は 10 、文は 34 本、一文の平均は 43.0 語です。 ★ いちばん長い文は 268 語 あります。★ 夜明けを書いているところ で、★ この一文だけで 段落の半分 です。 ★ この本には 当時の呼び方 が出てきます ——★ いまは使わない、人を指す語 です。★ 原文は 1 字も変えていません ——★ 語釈では 「当時の語」と断ってあります 。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 二日か三日、昼と夜が過ぎていった。泳いで過ぎていったと言ってもいいくらいだ。それほど静かに、なめらかに、気持ちよく滑っていったのだ。私たちがどうやって時間を過ごしたか、話そう。あのあたりの川は、とんでもなく大きかった——ときには幅が一マイル半もあった。私たちは夜に進み、昼は筏をつないで隠れていた。夜がほとんど明けかかると、すぐに進むのをやめて筏をつないだ——たいていは、砂州の下手のよどんだ水のところだった。それから若いハコヤナギやヤナギを切って、それで筏を隠した。次に釣り糸を仕掛けた。それから川に滑り込んでひと泳ぎし、さっぱりして体を冷やした。それから水が膝くらいの深さの砂の底に座って、日の光がやって来るのを眺めた。どこにも音ひとつしない——すっかり静かで——まるで世界じゅうが眠っているみたいだった。ただときどき、うしがえるがぐずぐず鳴いているくらい、かもしれない。水の向こうを遠く見やって、まず目に入るのは、ぼんやりした線のようなもの——それが向こう岸の森だった。それ以外は何も見分けられなかった。それから空に白っぽいところができ、それから白っぽさがあたりに広がっていき、それから遠くのほうで川がやわらいで、もう黒くはなく灰色になった。ずいぶん遠くに、小さな黒い点が流れていくのが見えた——商いの平底船なんかだ。それに長い黒い筋——筏だ。ときには大きな櫂がきしむのが聞こえた。それとも、ごちゃまぜの人の声が聞こえた。それほど静かで、音が遠くまで届いたのだ。やがて水の上に一本の筋が見えてくる。その筋の見た目で、そこには流れの速いところに沈み木があって、流れがそれに当たって砕け、筋をそんなふうに見せているのだと分かる。それから霧が水から巻き上がるのが見え、東が赤らみ、川も赤らみ、川の向こう岸の、森のへりに丸太小屋が見分けられる。たぶん薪置き場で、あのいかさま者たちの積み方だから、どこからでも犬が通り抜けられるだろう。それから気持ちのいいそよ風が吹き起こって、向こうから扇ぐように吹いてくる。森と花のおかげで、とても涼しくて、さわやかで、いいにおいがする。でもときにはそうでもない。死んだ魚、ガーなんかをそこらに放っておくもんだから、それがずいぶん臭くなるのだ。そして次にはすっかり昼になって、何もかもが日の光の中でほほえんでいて、鳥たちが思いきり歌っているのだ! もう少しくらいの煙なら気づかれないから、釣り糸から魚を何匹か外して、温かい朝ごはんを作ったものだった。そのあとは、川のさびしさを眺めて、なんとなくぶらぶらして、やがてぶらぶらと眠り込んだ。そのうち目が覚めて、何で目が覚めたのかと見てみると、たぶん蒸気船が一隻、咳き込むようにして上流へ進んでいくのが見える。ずっと向こう岸寄りなので、船尾に外輪があるのか横に外輪があるのかのほかは、何も分からない。それから一時間ばかりは、聞こえるものも見えるものも何もない——ただびっしりとさびしさだけだ。次には、ずっと向こうを筏が一つ滑っていくのが見え、たぶんその上で間抜けな男が一人、薪を割っている。筏の上ではたいていそうしているものだからだ。斧がきらりと光って下りるのが見える——音はしない。斧がまた上がるのが見えて、それが男の頭の上まで来たころに、やっとガチンと聞こえる!——水の上を渡ってくるのに、それだけかかったのだ。そうして私たちは、ぶらぶらしながら、静けさに耳をすませて一日を過ごしたものだった。一度、濃い霧が出たことがあって、通りかかる筏やなんかは、蒸気船に乗り上げられないように、ブリキの鍋をたたいていた。平底船か筏がすぐそばを通ったので、乗っている人たちがしゃべったり、ののしったり、笑ったりしているのが聞こえた——はっきり聞こえた。でも、彼らの姿はまったく見えなかった。背筋がぞわぞわした。霊が空でそんなふうに騒いでいるようだった。ジムは、あれは霊だと思うと言った。でも私はこう言った。 「ちがうよ。霊なら『ちくしょう、このちくしょうな霧め』なんて言わないさ。」 外が夜になるとすぐ、私たちは筏を押し出した。川のまん中あたりまで出すと、あとは放っておいて、流れの好きなところへ漂わせた。それからパイプに火をつけ、脚を水にぶらぶらさせて、いろんなことを話した——私たちはいつも裸だった。昼も夜も、蚊が許してくれるときはいつでもだ——バックの家の人たちが作ってくれた新しい服は、上等すぎて着心地がよくなかったし、それにどのみち、私はたいして服が好きではなかった。 ときには、ずいぶん長いあいだ、あの川をまるごと私たちだけのものにしていることもあった。水の向こうには岸と島々があった。それにたぶん、灯りがひとつ——小屋の窓のろうそくだ。ときには水の上に灯りがひとつかふたつ見えた——筏か平底船の上のだよ。それにたぶん、そういう舟のどれかからバイオリンや歌が渡ってくるのが聞こえた。筏で暮らすのは、いいものだ。上には空があって、一面に星がちりばめられていた。私たちはよくあおむけに寝転んで星を見上げ、あれは作られたのか、それともただそうなったのかを話し合った。ジムは、あれは作られたのだと言った。けれど私は、ひとりでできたのだと言った。あんなにたくさん作るには時間がかかりすぎただろう、と私は考えたのだ。ジムは、月が産んだのかもしれないと言った。まあ、それはなんとなく筋が通っているように思えたので、私は何も反対しなかった。蛙がそれとほとんど同じくらいたくさん卵を産むのを見たことがあるから、もちろんできないことではないのだ。私たちはよく、落ちていく星も眺めて、それが筋を引いて落ちるのを見た。ジムは、あれは腐っちまって巣から放り出されたのだと言った。 一晩に一度か二度、蒸気船が暗がりの中を滑るように進んでいくのが見えた。ときどき船は煙突から火の粉を山ほど吐き出し、それが川に雨のように降って、とてもきれいに見えた。それから船は曲がり角を曲がり、灯りがまたたいて消え、騒がしい音もやんで、川はまた静かになった。そしてやがて、船が行ってしまってからずいぶんたって、その波が私たちのところに届き、筏を少し揺らした。そのあとは、どれくらいのあいだか分からないくらい、何も聞こえなかった。蛙か何かのほかは。 真夜中を過ぎると、岸の人たちは寝てしまい、それから二、三時間は岸がまっ暗になった——小屋の窓の灯りはもうなかった。この灯りが、私たちの時計だった——最初にまたひとつ灯りが見えると、朝が来るという意味だったので、私たちはすぐに隠れて筏をつなぐ場所を探した。 ある朝、夜明けごろ、私は丸木舟を見つけて、細い水路を渡って本土の岸へ行った——ほんの二百ヤードだった——そして小川をイトスギの森のあいだを一マイルばかり漕ぎのぼって、木の実が少し取れないかと見に行った。牛の通り道みたいなものが小川を横切っているところを通りかかったちょうどそのとき、男が二人、足の続く限り大急ぎでその道を駆けてきた。私はもうおしまいだと思った。だれかがだれかを追いかけているときは、いつも、それは私——でなければたぶんジム——のことだと思っていたからだ。私は大急ぎでそこから逃げ出そうとしたが、二人はもうかなり私の近くまで来ていて、大声で呼びかけ、命を助けてくれとすがって頼んだ——何も悪いことはしていないのに、そのことで追われているのだと言った——男たちと犬たちがやって来るのだと言った。二人はすぐに飛び込もうとしたが、私はこう言った。 「そうするんじゃない。犬の声も馬の音もまだ聞こえない。やぶを押し分けて、小川を少しのぼるだけの時間はあるよ。それから水に入って、歩いて下って私のところまで来て、乗るんだ——そうすれば犬たちはにおいを見失うから。」 二人はそのとおりにした。そして二人が乗り込むとすぐ、私は自分たちの砂州へ向かって急いで漕ぎ出した。五分か十分ほどすると、ずっと遠くで犬たちと男たちが叫んでいるのが聞こえた。彼らが小川のほうへやって来るのは聞こえたが、姿は見えなかった。しばらく立ち止まって、うろうろしているようだった。それから、私たちがどんどん遠ざかっていくにつれて、ほとんど聞こえなくなった。一マイルの森を後にして川に出たころには、何もかも静かになっていて、私たちは砂州へ漕ぎ渡り、ハコヤナギの中に隠れて、もう安全だった。 語釈 帯の外の語は 83 語です。★ 三つに分かれます ——★ 一つめは川と筏の語 ( scow ・ snag ・ tow )、★ 二つめは生き物と自然の語 ( bullfrogs ・ gars )、★ 三つめはこの土地の言い方 ( warn’t ・ t’other ・ chimbleys )。★ 一つめが多いのは、 この章がずっと川の上だから です。 語(品詞) 意味 注 Buck’s en 名 バックの(前の章に出た少年の名) Dern en 間 ちぇっ(いらだちの声。ののしり語をやわらげた形) Dern it, the fire's gone out again this morning. ちぇっ、今朝また火が消えてしまった。 Jim en 名 ジム。ハックと筏で逃げる逃亡奴隷 aboard en 副 船や筏の上に Two sailors climbed aboard before the tide turned. 二人の船乗りが、潮が変わる前に船に乗り込みました。 anywheres en 副 どこにも( anywhere のこの土地の言い方) We didn't see the dog anywheres near the barn. 私たちは納屋の近くのどこにも、その犬を見かけませんでした。 asleep en 形 眠って。 fall asleep で眠り込む The tired dog fell asleep beside the warm fire. 疲れた犬は、暖かい火のそばで眠り込みました。 axe en 名 斧 He sharpened the old axe before splitting the logs. 彼は丸太を割る前に、その古い斧を研ぎました。 begged en 動 すがって頼んだ The child begged for one more story before bed. その子はベッドに入る前に、もう一つ物語をすがって頼みました。 belch en 動 吐き出す The old chimney would belch smoke whenever the wind shifted. 風向きが変わるたび、その古い煙突は煙を吐き出しました。 berries en 名 小さな木の実 They picked wild berries along the narrow forest path. 彼らは狭い森の小道に沿って、野生の小さな木の実を摘みました。 breeze en 名 そよ風 A light breeze drifted across the quiet river that evening. その晩、軽いそよ風が静かな川を渡っていきました。 bullfrogs en 名 うしがえる Bullfrogs croaked loudly along the riverbank all night. うしがえるたちは、一晩中川岸で大きな声で鳴きました。 cabin en 名 小屋 They slept in a small cabin near the water's edge. 彼らは水辺の近くの小さな船室で眠りました。 candle en 名 ろうそく She lit a single candle before the storm knocked out the lights. 彼女は嵐が灯りを消す前に、一本のろうそくを灯しました。 canoe en 名 丸木舟 He paddled the old canoe quietly across the still lake. 彼はその古い丸木舟を、静かな湖を渡って音もなく漕ぎました。 chimbleys en 名 煙突( chimneys のこの土地の言い方) Smoke