3.23 使役と知覚 — have/let/make/get、see O do/doing — Epoché
この課でできるようになること make / let / have / get を 誰の意志か で選び分けられる。 ★ have + 目的語 + 過去分詞で「〜してもらった」が言える。 知覚動詞のあとで do と doing を使い分けられる。 日本語の「させる」が英語では四つに分かれる理由が分かる。 前提 : 3.22 まで。 日本語では「させる」「してもらう」の二つでだいたい足ります。「行かせた」と言えば、無理に行かせたのか、行きたがっていたのを許したのかは 文脈が決めます 。英語は違います。 動詞を選んだ時点で、どちらなのかが決まります 。選ばずに済ませる道が無いのは、 3.18 型編 の冠詞と同じ事情です。 そしてもう一つ、日本語話者がほとんど使えていない形があります。 have + 目的語 + 過去分詞 ——「髪を切ってもらう」「時計を直してもらう」。設計書に挙げた実測では、母語話者に 105 回出るこの形が、日本語話者の英語では 4 回 しか出ていません。日常の話がここで詰まります。 自分でやっていない と言えないと、「髪を切った」が「自分で切った」になってしまうからです。 例文で見る まず 10 文を見ます。1 番めから 7 番めは 誰かに何かをさせる 形、8 番めから 10 番めは 何かが起きるのを見聞きする 形です。語はどれも第 3 期の範囲(上位 1,980 語)の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ He made me go. [1] 彼は私を行かせた。 ★ make 。相手の意志にかかわらず行かせた I made him do so. [2] 私は彼にそうさせました。 同じ形。強いたという含みが残る Let me go. [3] 私に行かせて。 ★ let 。止めずに行かせる=許す Let me know. [4] ご一報ください。 決まり文句。「知らせてください」 I couldn't get him to do it. [5] 彼にそれをさせられなかった。 ★ get + to 。説き伏せようとしてできなかった I had my hair cut. [6] 髪を切ってもらったんだ。 ★ have + 目的語 + 過去分詞。自分で切ってはいない I had my watch fixed. [7] 時計を修理してもらった。 同じ形。直したのは自分ではない I saw him go out. [8] 私は彼が出て行くのを見た。 ★知覚。 go なので 出ていくまで 見た I saw him looking at me. [9] 彼が私を見つめているのが目に映った。 ★ looking なので その最中 を見た She felt someone touch her back. [10] 彼女はだれかが背中をさわるのを感じた。 触られる 瞬間 を感じた 骨組み この課の規則は一つです。 動詞の後ろに「誰が・何をする」を丸ごと置ける。 置くときの形は、外側の動詞によって決まります。 四つの動詞 — 誰の意志で起きたか どんな向きか その形 この課の例 強いる make + 目的語 + 原形 He made me go. [1] 止めずに許す let + 目的語 + 原形 Let me go. [3] 当然として頼む have + 目的語 + 原形 — 説き伏せる get + 目的語 + to + 動詞 I couldn't get him to do it. [5] 四つの並びは 相手の意志をどれだけ尊重しているか の順です。 make は相手が嫌がっていても行わせます。 let は相手がやりたがっているのを止めません。 have は、そうするのが当然という間柄で頼みます(店の人、仕事を頼んだ相手)。 get は、そうでない相手を 説き伏せて 動かします。 I couldn't get him to do it. [5] に「できなかった」と書いてあるのは、 get が 骨の折れる 働きかけだからです。 後ろの形にも注意してください。 get だけが to + 動詞で、残り三つは原形です。原形のほうは 出来事がそのまま起きる 感じ、 to が入ると そこへ持っていく 感じが出ます。理屈で覚えにくければ、 get だけ to と形で覚えてかまいません。 ★ have + 目的語 + 過去分詞 — 自分ではやっていない 同じ have でも、後ろを 過去分詞 にすると意味が変わります。 I had my hair cut. [6] は、自分で自分の髪を切ったのではありません。 誰かに切ってもらった という意味です。 I had my watch fixed. [7] も同じで、直したのは自分ではありません。 なぜ過去分詞なのか。 3.17 型編 と 3.21 型編 で見たとおり、 過去分詞は「される側」の印 だからです。髪は切られる側、時計は直される側。だから過去分詞になります。誰が切ったかは言いません。受動態と同じで、 行為者を言わずに済ませる 形です。 この形は、意に反して起きたことにも使います。「財布をすられた」「窓を割られた」——どちらも自分でやったのではありません。日本語の迷惑の受身( 3.17 型編 )に近い働きですが、英語では 受動態ではなくこの形 で言います。主語は自分のままで、 物のほうが「される側」 になります。 知覚動詞 — do か doing か see ・ hear ・ watch ・ feel の後ろにも、出来事を丸ごと置けます。形は二つあり、 見えたものが違います 。 後ろの形 何を見た・聞いたか この課の例 動詞の原形 始めから終わりまで I saw him go out. [8] -ing その最中のひとこま I saw him looking at me. [9] I saw him go out. [8] は、彼が 出ていくまで を見届けています。 I saw him looking at me. [9] は、彼が見つめて いる最中 が目に入ったということです。日本語ではどちらも「見た」で済みますが、英語は 出来事の全部を見たか、一部を見たか を形で分けます。 この区別は 3.21 型編 の分詞と同じ考え方です。 -ing は 進行中 を表します。だから、途中の一こまだけを見たときは -ing になります。受動の意味なら過去分詞を置くこともできます——「名前が呼ばれるのを聞いた」のような場合です。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも使役と知覚の形があります。 「行かせる」「してもらう」「〜するのを見る」——言えないことはありません。ずれるのは いくつに分けるか です。 ★日本語に無い区別 — 「させる」が四つに分かれる 日本語では どんな場面か 英語では 行かせた 嫌がる相手を行かせた made him go 行かせた 行きたがる相手を止めなかった let him go 来てもらった そうするのが当然の相手に頼んだ had him come 来てもらった 気の進まない相手を説き伏せた got him to come 日本語の側は 二つ 、英語の側は 四つ です。日本語で足りているのは、 場面が分かっていれば誤解しない からです。英語では、動詞を選んだ瞬間に 相手との関係まで伝わります 。だから選び間違えると、思わぬ含みが出ます。 make を使うと、相手を 力ずくで動かした ように聞こえます。 迷ったときの目安を一つ置いておきます。 相手がやりたがっているなら let 、そうでないなら get 。この二つで大半は足ります。 make は本当に強いたときだけ、 have は仕事として頼むときだけにしておくと、角が立ちません。 「〜してもらった」が言えないと何が起きるか 日本語の「切ってもらった」は、 自分でやっていない ことをはっきり言っています。英語でこれを I cut my hair と言うと、 自分で切った という意味になります。実測で 105 対 4 という差が出ているのは、日本語話者がこの形を知らないのではなく、 言わなくても通じると思っている からです。 通じません。英語では、主語がしたことは主語がしたことになります。 やってもらったなら、そう言わないと伝わりません 。日常の話——髪、服の直し、家の修理、写真を撮ってもらう——この形を使う場面は毎日のように出てきます。第 6 編「話」の第 3 期で、店での会話にこの形を組み込んであります。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。この課の道具のうち、 let が丁寧さと深く結びついています。 let は 許しを求める 語だからです。下の四つは、どれも「許してほしい」を伝えています。 英文 日本語訳 どんな相手に Let me go. [3] 私に行かせて。 言い切る。親しい相手 Please let me go. [11] 私に行かせてください。 please を足す Would you let me do it? [12] 私にやらせてくれない? ★頼む形にする。許しを求めること自体を問いにする Would you let me think about it for a while? [13] しばらく考えさせていただけませんか? 時間の幅を足して、さらに低い姿勢で 一行めは言い切りです。二行めは please を足しただけですが、命令の形は残っています。三行めで形が変わりました。 許してくれるかどうかを問いにしています 。問いにすると、相手には断る余地が残ります。四行めは「しばらく」という幅を足して、急かしていないことを示しています。 日本語でも同じことをしています。「行かせて」「行かせてください」「行かせていただけますか」—— 許しを求めるという形 は共通で、日本語のほうはそれを語尾で作ります。英語は 文の形そのもの を変えて作ります。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそのまま持ち込んだ形で、下の誤文は Epoché の作例です。書いた英文ではなく、 話した英文 で自分を確かめてください。 「してもらった」を自分がやったように言う。 I cut my hair. → I had my hair cut. 実測で 105 対 4 という差が出ている形です。英語では、主語がしたことは主語がしたことになります。 やってもらったなら、そう言わないと伝わりません 。髪・服・車・写真——日常の話でいちばん出番が多い形です。 make を何にでも使う。 made him help と言うと 無理にやらせた ように聞こえます。相手がやりたがっているなら let 、そうでないなら get 。日本語の「させる」一語が、英語では四つに分かれています。 知覚動詞のあとに to を入れる。 saw him to go → saw him go want や tell が to + 動詞を取るので、そちらに引きずられます。知覚動詞と make ・ let ・ have は 原形 です。 get だけが to を取ります。 実文で通す この形は物語にとてもよく出ます。 人が人を動かし、人が何かを見聞きする ——物語とはそういうものだからです。五つ引きました。 どの篇から 原文 何が起きているか 8.41 読編 made Dorothy laugh [14] ★ make + 原形。犬が少女を笑わせた 8.62 読編 let the pocket-handkerchief go again [15] ★ let + 原形。握っていた手をゆるめた=止めなかった 8.47 読編 watched the people dance [16] 原形なので 踊りをひととおり 眺めていた 8.67 読編 heard her mother come out on the veranda [17] 原形。出てくるところを 始めから 聞き取った 8.46 読編 saw lying on the table the silver shoes [18] ★ -ing が先、目的語が 後ろへ回っている 五行めは珍しい形です。ふつうなら saw the silver shoes lying on the table の順になります。ここで入れ替わっているのは、 目的語のほうが長い からです(銀の靴には「東の魔女のものだった」という説明が続きます)。英語は 長いものを後ろへ回す 癖があり、この癖は 3.24 型編 の there ・ it の構文で正面から扱います。読むときは、 見慣れない語順に出会ったら「どこかが長すぎないか」を疑う と、たいてい説明がつきます。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Have something done: The causative - BBC English Class BBC Learning English (2:28, 2016) have something done の形 練習 「例文で見る」の 10 文を、行を押して音を聞いてから続けて 音読 する。読むときは 目的語と、その後ろの動詞をつなげて 言う。 made me go は三語だが、ひとかたまりの音になる。3 周する。3 周目は 6 番めと 7 番めの 2 文だけを、音声に重ねて シャドーイング する。この 2 文は have + 目的語 + 過去分詞なので、語順のまま言えるかどうかがそのまま出る。 次の五つを英語で言う。 誰の意志で起きたかを、言う前に決める こと。①彼は私を行かせた(無理に) ②私に行かせて(許して) ③髪を切ってもらった ④時計を直してもらった ⑤彼が出ていくのを見た 次の 3 文には 1 か所ずつ誤りがある。直した形を書き、なぜ誤りかを日本語で 1 行ずつ書く。① I cut my hair yesterday. (美容院で) ② I saw him to go out. ③ I made him to come. この課のまとめ ★ 動詞の