精読:『ソクラテスの弁明』から、知恵と吟味に関する短い一節 — Epoché
解説 知らないことと、知っているつもりを分ける κινδυνεύει μὲν γὰρ ἡμῶν οὐδέτερος οὐδὲν καλὸν κἀγαθὸν εἰδέναι, ἀλλ᾽ οὗτος μὲν οἴεταί τι εἰδέναι οὐκ εἰδώς, ἐγὼ δέ, ὥσπερ οὖν οὐκ οἶδα, οὐδὲ οἴομαι· 訳:私たちは二人とも、立派で善いことについては何も知らないらしい。だが、この人は知らないのに何かを知っていると思っている。私は、実際に知らないのと同じく、知っているとも思っていない。 プラトンの作品で、法廷のソクラテスが吟味を振り返る場面。二人についての比較であり、全人類の全知識を否定していない。 出典1 「わずかな差」が、結論を支える ἔοικα γοῦν τούτου γε σμικρῷ τινι αὐτῷ τούτῳ σοφώτερος εἶναι, ὅτι ἃ μὴ οἶδα οὐδὲ οἴομαι εἰδέναι. 訳:少なくとも私は、知らないことを知っているとも思わない、そのわずかな点で、この人より知恵があるらしい。 「知らないことを、知っているとも思わない」という理由。「私は何も知らないと知っている」とは書かれていない。 出典1 知識の量ではなく、自認の違い 二人とも知らないらしい。それでも、相手は知っていると思い、語り手はそう思わない。この違いから、後者の小さな優位を述べる。 「らしい」という留保を残す。実際の裁判の逐語記録や、プラトン本人の最終見解と同一視しない。 出典1 同じ無知でも、自認は違う 比較 相手 語り手 立派で善いことを知るか 二人とも知らないらしい 二人とも知らないらしい 知っていると思うか 思う 思わない 結論 比較の相手 このわずかな点で知恵があるらしい 21dの限定された対比。あらゆる知識についての一般的な序列ではない。 参考文献 [1] Plato/John Burnet編。原版21dから本教材が独自転写・訳・区切り。「プラトン『ソクラテスの弁明』21d3–7」。 出典 本教材の独自訳・解説 CC BY-SA 4.0(原典は古代の文言)