10.32 詩の千年 — 詩経から唐詩宋詞まで — Epoché
この課でできるようになること 詩の形の大きな変化を順に説明できます。 絶句と律詩の句数、五言と七言の字数を区別できます。 押韻、平仄、対句と、詞牌の役目を説明できます。 題から場面を取り、短い中国語で書けます。 前提 :10.31「三教 — 儒・仏・道」です。 一句の形から、長い歴史を見る 中国の詩の流れを、まず形の変化として並べます。古い形が次の時代に全部消えるという意味ではありません。その時代に育った形を、読み始めるための道具として見ます。 段階 形の目印 読むときに見る所 『詩経』 四言が中心 四字のまとまり 楚辞 長い句と 兮 長い息の切れ目 漢から六朝の楽府・古詩 五言が育つ 五字のまとまり 唐詩 五言と七言、近体詩 字数と句の数、音と対句 宋詞 長短句 曲の型に合う句の長短 元曲 芝居の歌など 話し言葉に近い運び 大きく見ると、四字、五字、七字へと一句が伸びます。その後は、長さの違う句の組み合わせも目立ちます。同じ漢字の詩でも、いつも同じ長さで息を切ればよいわけではありません。 『詩経』の三部と、三つの技法 『詩経』は三百五篇を収め、四言を中心とする古い詩集です。各地の歌の 风 、宮廷の歌の 雅 、祭りの歌の 颂 という三部に分けて読みます。 表現の方法にも、三つの名前があります。 赋 はそのまま述べること、 比 はたとえることです。 兴 は別のものを先に出してから本題へ進むことです。 興では、気持ちの説明から始めず、川辺の鳥の声のような景色を先に置きます。その後で、恋の話へ入ります。最初の景色が本題と無関係な余りだと思わず、どんな気分を起こすかを読みます。 三部の名前と技法の名前は、分類するものが違います。どこから来た歌かを考える区分と、どう述べるかという方法を、同じ一列に混ぜないようにします。『詩経』は学ぶべき古典として読まれ、後の文章にも多く引用されました。 一句の字数と、句の数を掛ける 五言は一句五字、七言は一句七字です。絶句は四句、律詩は八句。ここでは、唐で整った近体詩を読むための基本の組み合わせを見ます。題や句読点は詩の本文の字数に入れません。 形 一句の字数 句の数 本文の字数 五言絶句 5 4 20 七言絶句 7 4 28 五言律詩 5 8 40 七言律詩 7 8 56 五言という語は、詩全体の句数ではありません。五言律詩なら五字の句が八つあります。絶句か律詩かを先に見分け、一句の字数と掛けます。 日本の漢詩の授業で見た名前も、中国語では 绝句 ・ 律诗 と書きます。よく知った音読みだけで答えず、どちらの数が何を表すのかを中国語でも短く言ってみます。 耳と目で取る、三つの決まり 押韵 :決まった句の末の響きを合わせる。 平仄 :声調を平と仄に分け、その並びを組む。 对仗 :二つの句の語の役割や意味を対応させる。 律詩の真ん中の四句は、二句ずつの対として読みます。一方のどの位置に、もう一方のどんな語が来るかを見ます。そうすると、景色や動作が向かい合っていることが分かります。音だけでなく、文の形にも秩序があります。 古い音と今の共通語の音は同じではありません。今の発音で韻や平仄がそろって聞こえない所があっても、元の詩の決まりが無かったとは考えません。日本語の音読みだけから、中国語の当時の音の並びを判断することも避けます。 詞牌は、作品一つの名前ではない 詞は、先にある曲の型へ言葉を合わせる形です。その型が 词牌 で、句の長さが変わる長短句になります。五言や七言の詩と比べると、読む息の長さも変わります。 水调歌头 ・ 念奴娇 ・ 菩萨蛮 は詞牌の名前です。同じ詞牌を使い、別の作者が別の内容を書けます。作品を示すときは、詞牌に題や書き出しを添えて見分けます。 同じ詞牌の名が付く二作品を、同じ文章だと思わないようにします。前は曲の型、後ろに添えられた部分はその作品を見分ける手がかり、と分けて読みます。 詩の題は、人と人の場面を示す 別れに贈る、集まりで作り合う、遠くの人へ届けるなど、詩は人と人のやりとりでもありました。本文を読む前に題を見ると、誰に向けた言葉かが分かることがあります。 題に出る語 場面の手がかり 送 旅立つ人を見送る 和 相手の詩に応えて作る 题 壁や柱などに書きつける 寄 遠くの相手へ届ける 登 高い所へ登って詠む 「黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る」なら、場所は黄鶴楼です。送る相手は孟浩然で、その行き先は広陵です。「送る」という行為も題にあります。短い詩でも、誰のどんな場面かを考えてから読めます。 前の節までで見た形や音の決まりに、この場面を加えます。整った二十字、二十八字というだけでなく、別れや返事をする一人の言葉として読めるようになります。 語表 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 诗经 固有名詞 詩経 古い詩集の名 读诗经 詩経を読む 楚辞 固有名詞 楚辞 長い句と兮が目印 读楚辞 楚辞を読む 乐府 名詞 楽府 歌と関わる詩 乐府诗 楽府の詩 古诗 名詞 古詩 近体詩と区別しても使う 一首古诗 一首の古詩 唐诗 名詞 唐詩 唐の詩 读唐诗 唐詩を読む 宋词 名詞 宋詞 宋の詞 读宋词 宋詞を読む 元曲 名詞 元曲 元の曲 唱元曲 元曲を歌う 四言 名詞 一句四字 句の数ではない 四言诗 四言の詩 五言 名詞 一句五字 一句の字数 五言诗 五言の詩 七言 名詞 一句七字 一句の字数 七言诗 七言の詩 绝句 名詞 絶句 四句の形 一首绝句 一首の絶句 律诗 名詞 律詩 八句の形 一首律诗 一首の律詩 押韵 動詞 韻を踏む 句末の響きを合わせる 句末押韵 句末で韻を踏む 平仄 名詞 平仄 古い声調の二分類 平仄规则 平仄の決まり 对仗 名詞・動詞 対句・対をなす 語の役割を対応させる 工整对仗 整った対句 词牌 名詞 詞牌 曲の型の名前 这个词牌 この詞牌 长短句 名詞 長短句 長さの違う句 用长短句 長短句を使う 风 名詞 風・各地の歌 詩経の区分の名 风与雅 風と雅 雅 名詞 雅・宮廷の歌 詩経の区分の名 雅与颂 雅と頌 颂 名詞 頌・祭りの歌 詩経の区分の名 雅与颂 雅と頌 赋 名詞 そのまま述べる技法 ここでは表現の方法 用赋 賦を用いる 比 名詞 たとえる技法 ここでは表現の方法 用比 比を用いる 兴 名詞 別のものから本題を起こす技法 ここでは表現の方法 用兴 興を用いる 飞花令 名詞 字を含む詩句を言う遊び 覚えた句を使う 玩飞花令 飛花令で遊ぶ 覚えた句と、特別編の並び 『唐詩三百首』は清の時代に編まれた入門用の選集です。覚えた句を使う遊びには 飞花令 があり、一つの字を決め、それを含む句を順に挙げます。人数や暗唱量を競う前に、自分で一首の形を覚えるところから始められます。 特別編16〜20篇では五言絶句を読み、38〜44篇では七言や律詩へ進みます。93篇には屈原『離騒』、100篇には白居易『長恨歌』があります。短い詩から長い作品へ進むときも、一句の字数、韻、対句、題の場面という道具を持っていきます。 練習 五言絶句の一句の字数と句数を掛け、合計を短い中国語の一文で書いてください。 七言律詩の句数と合計字数を、中国語の二文で書いてください。 七言絶句と五言律詩の合計字数を、一文ずつ中国語で書いてください。 『詩経』で中心になる一句の形と、唐詩がどの時代の詩かを、中国語で一文ずつ書いてください。 宋詞と元曲がそれぞれどの時代に栄え、育ったものか、中国語で一文ずつ書いてください。 七言の句と五言の句の長さを、 比 を使う比べる型で、短い中国語の一文で書いてください。続けて、詞の句の長さがそろわないことも一文で書きます。 今の送別の場面を、詩人と列車の二語を入れた短い一文で書いてください。古い詩の訳ではなく、自分の場面です。 次の実文の主語を列車から船に、動詞を 发车 から 出发 に替えてください。 列车已准备发车。 [1] 送 ・ 和 ・ 题 ・ 寄 ・ 登 を、別れ、返事、壁などへ書くこと、遠くへ届けること、高い所へ行くことと結んでください。 黄鶴楼で孟浩然を送る題から分かることを三つ挙げ、詞牌との違いも日本語で説明してください。 戻り語 自分の場面の文と、昔の詩の原文を区別します。作った現代の文を、詩人の言葉として引用しません。 今の別れや詩を読む場面を、語ごとに短い中国語の一文で書いてください。 诗人 ・ 分手 ・ 列车 。 今の別れや詩を読む場面を、語ごとに短い中国語の一文で書いてください。 航班 ・ 独自 ・ 泪水 。 今の別れや詩を読む場面を、語ごとに短い中国語の一文で書いてください。 激动 ・ 喜爱 ・ 宁静 。 今の別れや詩を読む場面を、語ごとに短い中国語の一文で書いてください。 感兴趣 ・ 鲜花 ・ 外套 。 今の別れや詩を読む場面を、語ごとに短い中国語の一文で書いてください。 箱子 ・ 树林 ・ 窗子 。 音読 語表の 诗经 ・ 楚辞 ・ 唐诗 ・ 宋词 ・ 绝句 ・ 律诗 ・ 押韵 ・ 平仄 ・ 对仗 ・ 词牌 を▶で聞いて読みます。次に自分の字数の答えを読み、一句の字数と句の数を取り違えていないか確かめます。 この課のまとめ 形の流れを見て、一句の字数と句の数を分けます。韻、平仄、対句は当時の音と文の形の決まりです。詞牌は曲の型、題は場面を知る手がかりとして、本文に入る前から使います。 次の課へ 次の10.33は「四大名著」です。『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』『紅楼夢』の内容と生まれ方を見て、白話の物語と、文言を読む特別編との違いを考えます。 答え 五言绝句有二十个字。 五字の句が四つです。 七言律诗有八句。 七言律诗共五十六字。 七言绝句共二十八字。 五言律诗共四十字。 诗经主要是四言诗。 唐诗是唐代的诗歌。 宋词在宋代兴盛。 元曲在元代发展。 七言句比五言句长。 词的句子有长有短。 诗人在列车旁送别朋友。 船已准备出发。 乗り物に合う動詞へ替えます。 順に、別れ、詩への返事、壁などへ書くこと、遠くへ届けること、高い所へ行くことです。題を読むときの手がかりとして使います。 場所、送る相手、行き先が分かります。題はこの詩の場面を示しますが、詞牌は複数の作品が共通して使える曲の型の名です。 诗人在车站送别朋友。 我们分手后还是好朋友。 列车明天出发。 朋友的航班明天出发。 我独自在车站等他。 她的眼里有泪水。 我看见朋友,非常激动。 我喜爱这首送别诗。 夜里的车站很宁静。 我对送别诗感兴趣。 我送朋友一束鲜花。 朋友穿着一件外套。 朋友的箱子很重。 车站外面有树林。 我从窗子看见朋友。 参考文献 Tatoeba 文 #13364036( 列车已准备发车。 )。簡体字に改めた。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoeba.org/en/sentences/show/13364036