8.80 赤毛組合(4)— 損の勘定が逆になる — Epoché
この篇でできるようになること ★ 損の勘定が人によって逆になる ことが分かる。 ★ 同じ形(短い問答)が別の働きをする ことに気づける。 ★語り手が 自分に不利なことを書く 意味が分かる。 ★ 項目を並べて時間を見せる やり方に気づける。 前提 : 8.79 まで。型は 3.32 まで。語は 4.48 まで。 読む前に ★ 前の篇までのこと。 ウィルソンは赤毛組合に採用されました。★ 十時から二時、百科事典を写す。 ★ ただし、事務所を出たら職を失う。 この篇では、 八週間が過ぎます 。はじめは管理人のロスが見に来ますが、★ やがて来なくなります 。それでもウィルソンは部屋を出ません。 そして、ある朝、★ 扉に紙が貼ってあります 。★ ウィルソンは組合を探しますが、誰も知りません。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1163 語、文は 82 本、いちばん長い一文は 44 語です。★ 問いが 10 個 あります——★ 読 D でいちばん多い篇です。 扉の紙を見ます。 THE RED-HEADED LEAGUE IS DISSOLVED. October 9, 1890. ★ 七語です。 ★ 説明も、おわびも、連絡先もありません。 ★ 本文は、これを curt と呼んでいます —— 「そっけない」 。★ この短さが、何も説明する気が無いことを表しています。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 「さて、私は一日じゅうこの件を考え直して、夕方にはまた気が沈んでいました。というのも、この一件は全体が何か大がかりないたずらか詐欺に違いないと、すっかり思い込んでしまったからです。もっとも、それが何を狙ったものなのかは見当もつきませんでした。誰かがそんな遺言を残すとか、『ブリタニカ百科事典』を書き写すというような簡単なことにそれほどの額を払うとかいうのは、まったく信じられないことに思えました。ヴィンセント・スポールディングはできるかぎり私を元気づけようとしてくれましたが、寝るころには、私は理屈を立てて、この件全体から手を引く気になっていました。けれども、朝になると、ともかく様子を見てみようと決めました。そこで一ペニーのインクを一瓶買い、羽根ペンと七枚のフールスキャップ判の紙を持って、ポープス・コートへ出かけました。 「すると驚いたことに、そしてうれしいことに、何もかもがこれ以上ないほどちゃんとしていました。机は私のために用意されていて、ダンカン・ロス氏が、私がきちんと仕事に取りかかるのを見届けにそこにいました。彼は私にAの字から始めさせ、それから出て行きました。けれども、ときどき立ち寄っては、私のほうに何も問題がないか確かめました。二時になると、彼は私にさようならと言い、私が書いた量をほめ、私の後から事務所の扉に鍵をかけました。 「これが来る日も来る日も続きました、ホームズさん。そして土曜日には支配人がやって来て、一週間の仕事の代金としてソヴリン金貨を四枚ぽんと置きました。次の週も同じ、その次の週も同じでした。毎朝十時にはそこにいて、毎日午後二時に帰りました。だんだんとダンカン・ロス氏は朝に一度しか顔を出さなくなり、それからしばらくすると、まったく来なくなりました。それでも、もちろん、私は一瞬たりとも部屋を離れる気にはなれませんでした。彼がいつ来るかわかりませんでしたし、この勤め口はとてもよいもので、私にとても合っていたので、それを失う危険を冒すつもりはなかったのです。 「こうして八週間が過ぎ、私は大修道院長(アボット)や弓術(アーチェリー)や甲冑(アーマー)や建築(アーキテクチャー)やアッティカについて書き写し、精を出せばまもなくBの項に進めるだろうと期待していました。フールスキャップの紙にいくらか金がかかりましたし、書いたものでもう棚がほとんど一つ埋まっていました。そして、突然、この仕事全体が終わってしまったのです。」 「終わった?」 「そうなんです。しかもほかでもない今朝のことです。いつものように十時に仕事に行ったのですが、扉は閉まって鍵がかかっていて、羽目板の真ん中に小さな四角い厚紙が鋲で打ちつけてありました。これがそれです。ご自分で読んでみてください。」 彼は便箋一枚くらいの大きさの白い厚紙を掲げました。そこにはこう書いてありました。 「赤毛組合は解散した。1890年10月9日。」 シャーロック・ホームズと私は、このそっけない告知と、その後ろにある悲しげな顔をじっと見つめていましたが、やがてこの一件のこっけいな面がほかのあらゆる思いをすっかり押しのけてしまい、二人とも大声で笑い出してしまいました。 「何がそんなにおかしいのか、私にはわかりませんな」と依頼人は、燃えるような赤毛の生え際まで真っ赤になって叫びました。「私を笑うことしかできないのなら、よそへ行きますよ。」 「いや、いや」とホームズは叫び、半ば腰を浮かせていた彼を椅子へ押し戻しました。「あなたの事件は、何があっても逃したくありません。じつにすがすがしいほど珍しい。しかし、こう言っては失礼ですが、ほんの少しおかしなところがあるのです。扉にあの札を見つけたとき、どんな手を打ったのですか。」 「私は呆然としました。どうしたらよいかわかりませんでした。それから周りの事務所を訪ねてみましたが、どこもそれについて何も知らないようでした。最後に、一階に住んでいる会計士の家主のところへ行って、赤毛組合がどうなったのか教えてもらえないかと尋ねました。家主は、そんな団体のことは聞いたこともないと言いました。そこで、ダンカン・ロス氏とは誰なのかと尋ねました。家主は、その名前は初めて聞くと答えました。 「『それなら』と私は言いました。『4号室の紳士ですよ。』 「『なんだ、あの赤毛の男のことですか。』 「『そうです。』 「『ああ』と家主は言いました。『あの人の名前はウィリアム・モリスですよ。事務弁護士で、新しい事務所の用意ができるまでの間、一時しのぎに私の部屋を使っていたんです。昨日引っ越して行きましたよ。』 「『どこへ行けば会えますか。』 「『ああ、新しい事務所ですよ。住所を教えてくれました。そう、セント・ポール大聖堂の近くのキング・エドワード街17番地です。』 「出かけて行きましたよ、ホームズさん。ところがその住所に着いてみると、そこは人工の膝の皿の製造所で、中の誰も、ウィリアム・モリス氏のこともダンカン・ロス氏のことも聞いたことがありませんでした。」 「それで、それからどうしたのですか」とホームズは尋ねました。 「サックス=コバーグ・スクエアの家へ帰って、助手の助言を聞きました。でも、助手はまったく力になってくれませんでした。待っていれば郵便で知らせがあるだろう、としか言えなかったのです。でも、それではとても十分ではありませんでした、ホームズさん。私はあんな勤め口を、何もせずに失いたくはありませんでした。それで、あなたが困っている貧しい人々に親切に助言をしてくださると聞いていたので、すぐにこちらへ来たのです。」 「それはじつに賢明でした」とホームズは言いました。「あなたの事件はきわめて注目すべきものですから、喜んで調べてみましょう。お話からすると、一見したところよりも重大な問題がこれにかかっているかもしれないと思います。」 「重大ですとも!」とジェイベズ・ウィルソン氏は言いました。「なにしろ、週に四ポンドを失ったんですから。」 「あなた個人に関するかぎり」とホームズは言いました。「この風変わりな組合に対して、あなたに何か不平の種があるとは思えません。それどころか、私の理解では、あなたはおよそ30ポンドほど得をしています。Aの字に入るあらゆる項目について得た細かな知識は言うまでもなく。あなたは彼らのせいで何も失っていません。」 「ええ、そうです。でも私は彼らのことを突き止めたいのです。彼らが誰なのか、そして私にこのいたずらを――もしいたずらだったのなら――仕掛けた目的が何だったのか。彼らにとってはずいぶん高くついた冗談でした。三十二ポンドもかかったのですから。」 「その点はあなたのために明らかにするよう努めましょう。では、まず一つ二つ質問を、ウィルソンさん。最初にあなたにあの広告を教えたというあなたの助手ですが――彼はどのくらいの間あなたのところにいたのですか。」 「そのときでひと月ほどでした。」 「どういういきさつで来たのですか。」 「広告に応募して来ました。」 「応募してきたのは彼だけでしたか。」 「いいえ、十人あまりいました。」 「なぜ彼を選んだのですか。」 「手際がよくて、安く来てくれるからです。」 「実のところ、給金半分で、というわけですね。」 「そうです。」 「どんな男ですか、このヴィンセント・スポールディングは。」 語釈 帯の外の語は 71 語です。★ 百科事典の項目が五つ 入っています。★ 全部 A で始まります。 語(品詞) 意味 注 Abbots en 名 大修道院長(複数)。百科事典の項目 Medieval abbots governed large monasteries and controlled vast farmland. 中世の大修道院長たちは大きな修道院を治め、広大な農地を支配していました。 Archery en 名 弓術。項目 She practices archery every Saturday morning at the local club. 彼女は毎週土曜の朝、地元のクラブで弓術を練習しています。 Armour en 名 よろい。項目 The knight's heavy armour clanged loudly as he climbed the stairs. 騎士の重いよろいは階段を上るとき大きな音を立てました。 Attica en 名 アッティカ。ギリシアの地名。項目 Britannica en 名 ブリタニカ( 8.79 読編 ) B’s en 名 B で始まる項目 Coburg en 名 コーバーグ( 8.78 読編 ) DISSOLVED en 動 解散した。札の大文字 Edward en 名 エドワード。通りの名 Encyclopædia en 名 百科事典( 8.79 読編 ) My grandfather still keeps a full set of encyclopedia volumes. 祖父は今も百科事典の全巻をそろえて持っています。 Grave en 形 重大な。 Grave enough ! で「重大だとも」 The doctor's grave expression told us something was seriously wrong. 医師の重大な表情は何か深刻な問題があることを物語っていました。 Holmes en 名 ホームズ Morris en 名 モリス。赤毛の男が名乗っていた名 Mr en 名 Mister の略 Oh en 間 ああ Oh, I never expected to see you here today! ああ、今日ここであなたに会うとは思いませんでした! Pope’s en 名 ポープの( 8.78 読編 ) Ross en 名 ロス( 8.79 読編 ) Saxe en 名 サックス。 Saxe-Coburg Square (広場の名)の一部 Sherlock en 名 シャーロック Spaulding en 名 スポールディング。助手 St en 名 Saint の略 Vincent en 名 ヴィンセント William en 名 ウィリアム Wilson en 名 ウィルソン accountant en 名 会計士 Our new accountant checked every invoice before the meeting. 私たちの新しい会計士は会議の前にすべての請求書を確認しました。 anyhow en 副 とにかく We missed the train, but we reached the venue anyhow. 電車に乗り遅れましたが、とにかく会場には着きました。 applicant en 名 応募者 Each applicant had to submit three letters of recommendation. 各応募者は三通の推薦状を提出しなければなりませんでした。 artificial en 形 人工の。 artificial knee-caps は義足のひざ The hospital fitted him with an artificial knee after the accident. その病院は事故のあと彼に人工のひざを取り付けました。 bedtime en 名 寝る時刻 The children always brush their teeth before bedtime. 子どもたちはいつも寝る時刻の前に歯を磨きます。 billet en 名 職( 8.79 読編 ) After years of drifting, he settled into a comfortable billet. 何年もさまよったあと、彼は快適な職に落ち着きました。 cardboard en 名 厚紙 She packed the old books into a sturdy cardboard box. 彼女は古い本を丈夫な厚紙の箱に詰めました。 cheer en 動 元気づける A warm cup of tea always seems to cheer her up. 温かい紅茶はいつも彼女を元気づけてくれるようです。 client en 名 依頼人( 8.77 読編 ) The accountant reviewed the client's records before the annual audit. 会計士は年次監査の前に依頼人の記録を見直しました。 comical en 形 こっけいな His comical expression made the entire audience burst out laughing. 彼のこっけいな表情に観