3.7 進行形と副詞(頻度・時・強意・態度) — Epoché
この課でできるようになること 進行形を「今この瞬間」ではなく「一時的であること」の形として使い分けられる。 進行形にしない動詞(状態を表す動詞)を見分け、現在形のままにしていられる。 過去進行で「過去のある時点で途中だった」と言える。 頻度・時・強意・態度の副詞を、それぞれの置き場所に置ける。 前提 : 3.6 まで。 日本語には「〜ている」があります。「今、手紙を書いている」の「ている」、「彼は隣に住んでいる」の「ている」、「彼女のことはよく知っている」の「ている」——どれも同じ三文字です。ところが英語では、この三つのうち 進行形になるのは一つめだけ です。二つめと三つめは現在形のままで、三つめにいたっては進行形にすることができません。 3.6 型編 で「た」を過去形と一対一に写すと崩れると書きました。「ている」も同じで、しかもこちらは 崩れ方が逆 です。「た」は 足りない 形(現在完了)に届かないという崩れ方でしたが、「ている」は 要らないところに進行形を足してしまう という崩れ方をします。 この課ではもう一つ、副詞を扱います。副詞は「どれくらいの頻度で・いつ・どのくらい強く・どういう気持ちで」を文に足す語で、覚える手間はほとんどありません。難しいのは意味ではなく 置き場所 です。日本語の副詞は文の中をかなり自由に動けますが、英語の副詞は種類ごとに定位置を持っていて、そこを外すと不自然になります。しかも一種類だけ、日本語話者が 使いすぎている ものがあります。話し手の態度を表す副詞で、母語話者が百万語あたり 137 回のところ、日本人学習者は 347 回——二倍半にのぼりました [1] 。逆に足りていないものもあります。同じ調査で、打ち消しの副詞は母語話者の六割ほどまで落ちていました。多すぎるものと少なすぎるものが同時にある——これが副詞という語群の姿です。 例文で見る まず 10 文を見ます。見てほしいのは二つだけです。前半の六文では 動詞の形 を、後半の四文では 副詞がどこに置かれているか を、指で押さえながら読んでください。訳の側には「〜ている」や「いつも」が出てきますが、英語の側でその働きを担っているのが語のどの部分で、それが文のどこに座っているかを見ます。 英文 日本語訳 見るところ I am writing a letter now. [2] 私は今手紙を書いています。 今、その途中にある。時の語は文の末尾 They are studying these days. [3] 最近彼らは勉強しています。 今この瞬間ではない。この頃だけ、という一時のこと I am staying with a friend. [4] 私は友人の家に滞在している。 住まいそのものではなく、今だけの滞在 He lives next to me. [5] 彼は私の隣に住んでいる。 続いている状態。進行形にしない I know her very well. [6] 私は彼女をとても良く知っています。 知るという動詞は進行形にできない。強める語は強める相手のすぐ前 I was reading a book then. [7] 私はその時本を読んでいました。 過去のある時点で、その途中だった He always leaves home at seven. [8] 彼はいつも七時に家を出ます。 頻度の語は一般動詞の前 He is always late for school. [9] 彼はいつも学校に遅刻する。 同じ頻度の語でも、 be 動詞の後ろに回る I am studying very hard. [10] 私は一生懸命勉強している。 強める語は強める相手のすぐ前。進行形と重ねられる Of course, he is right. [11] もちろん彼は絶対に正しい。 話し手の態度は文の頭。文の全体に掛かる 十の文のうち、進行形になっているのは五つだけです。残りの五つのうち四つには「〜ている」か「いつも」という訳が付いていますが、英語の側は現在形のままでした。そして後半の四文では、副詞が四つとも違う場所に座っています。この二つの分かれ方には理由があります。 骨組み この課の規則は一つです。 英語は、その形が文のどこまでに掛かるかで、形と置き場所を決める。 進行形は 出来事の一部だけ を切り取る形なので、ずっと続いていることには使いません。副詞は 掛かる相手のそば に置くので、動詞に掛かるのか、文の全体に掛かるのかで座る場所が変わります。どちらも「どこまで掛かるか」という一つの問いの、二つの現れ方です。 進行形は「途中で切り取る」形 進行形は be 動詞と、語尾に -ing の付いた動詞の二語で作ります。この形が言っているのは、 その出来事に始まりと終わりがあって、今はその途中にいる ということです。 I am writing a letter now. [2] は、手紙を書き始めていて、まだ書き終わっていません。書き終われば、この形では言えなくなります。つまり進行形は、出来事の全体ではなく 真ん中だけ を指す形です。 ここから、日本語話者がいちばん取り逃す性質が出てきます。 「途中」は今この瞬間でなくてもよい ということです。 They are studying these days. [3] は、その人たちが今この瞬間に机に向かっているという話ではありません。この頃はそういう時期にある、と言っています。 I am staying with a friend. [4] も同じで、今まさに友人の家の中にいるかどうかは問題ではなく、 今はそういう暮らしをしている ということです。だから進行形の芯にあるのは「今」ではなく 「一時的」 です。そう捉え直すと、次の対比が見えてきます。 対比の相手は現在形です。 He lives next to me. [5] は進行形ではありません。隣に住んでいるのは一時のことではなく、当分そうだからです。同じ「住む」でも、今月だけ友人の家に置いてもらっているなら進行形になります。 動詞が決めているのではなく、一時的かどうかが決めている ——ここが要です。 He always leaves home at seven. [8] も現在形です。毎朝そうしているという繰り返しは、一時のことではありません。日本語がどちらも「ている」で言えてしまうので、英語でも進行形にしたくなりますが、そこで足すと意味が変わります。 進行形にできない動詞がある もう一段あります。 そもそも進行形にできない動詞 です。知る・欲しい・好きだ・要る——こういう動詞は、出来事ではなく 状態 を指しています。状態には始まりと終わりの手ざわりが無いので、「途中で切り取る」という進行形の仕事ができません。 I know her very well. [6] は現在形で、進行形にすると英語として通りません。日本語では「知っている」と、まさに「ている」の形で言うので、ここが日本語話者のいちばん引っかかるところです。 同じ仲間には、思う・見える・聞こえる・持っている・信じる・要る、といった動詞が並びます。覚え方は一つでよく、 「今その途中です」と言えるか を自分に訊いてください。手紙を書くことには途中がありますが、彼女を知っていることに途中はありません。途中が無ければ進行形にしない、それだけです。 ただし例外を一つだけ見ておきます。 He is being kind today. [12] のように、状態を指す語をあえて進行形にすると、 今日だけそう振る舞っている という意味に変わります。ここでも働いているのは「一時的」という芯です。この使い方は自分から作らなくてかまいません。見かけたときに「今だけの話をしている」と読めれば十分です。 過去進行 — 過去のある時点で途中だった 進行形の be 動詞を過去の形にすると、 過去のある時点で、その途中だった という意味になります。 I was reading a book then. [7] は、その時に読み始めていて、まだ読み終わっていませんでした。 3.6 型編 で扱った単純過去が出来事を一つの点として置くのに対して、こちらは 点ではなく帯 を置きます。だから、単純過去の文と組み合わせると、「帯の上に点が落ちる」という言い方——何かをしている最中に別のことが起きた——ができます。その組み合わせ方は接続詞の課に送りますが、形そのものはここで作れるようになっておいてください。 副詞は掛かる相手のそばに置く 副詞の置き場所は、種類ごとに決まっています。決まりを丸暗記するより、 何に掛かるか から考えるほうが早く済みます。 頻度の副詞 ——いつも・たいてい・よく・ときどき・決して〜ない——は、動詞に掛かります。だから動詞のそばに置きますが、置き方が二通りに分かれます。一般動詞なら その前 で、 He always leaves home at seven. [8] の形です。 be 動詞なら その後ろ で、 He is always late for school. [9] の形になります。前と後ろで逆に見えますが、どちらも 本動詞の直前 という一つの規則です。 be 動詞は文の骨そのものなので、副詞はその向こう側に回ります。 この仲間には打ち消しの副詞も入ります。 She is never late for school. [13] は「決して遅れない」と言っていて、位置は be 動詞の後ろ、頻度の副詞と同じです。この語は日本語話者に足りていない語で、母語話者の六割ほどしか使われていませんでした。打ち消しを動詞のほうで作らずに、この一語で済ませられる場面は多いので、意識して使ってみてください。 時の副詞 ——今・その時・今日・来週——は、文の全体に時の枠をはめます。英語はこれを 文末 に置きます。 I am writing a letter now. [2] の時の語は末尾にあり、 I was reading a book then. [7] も同じです。日本語では「今、手紙を書いている」と頭に置くのが自然なので、そのまま写すと英語では収まりが悪くなります。 日本語で先に言うものを、英語では後ろに回す ——これは 3.1 型編 で見た語順の考え方と同じ向きです。 強意の副詞 ——とても・本当に・そんなに・〜すぎる——は、文ではなく 一つの語 に掛かります。だから 強める相手のすぐ前 に置きます。 I am studying very hard. [10] では、強めているのは動詞ではなく「一生懸命」に当たる語のほうで、副詞はその直前にいます。 I know her very well. [6] も同じ並びです。この種類は日本語話者が多めに使う語群ですが、位置さえ守れば誤りにはなりません。 態度の副詞 ——明らかに・もちろん・たぶん・残念ながら——は、文の中身ではなく その中身に対する話し手の構え を表します。掛かる相手が文の全体なので、置き場所は 文の頭 です。 Of course, he is right. [11] は、「彼が正しい」という中身の全体に「もちろん」という構えをかぶせています。 Probably he will come soon. [14] も同じ形です。文の頭以外に置けないわけではなく、 He clearly stated that point. [15] のように動詞の前に入ることもありますが、その場合は文の全体ではなく動詞のほうに掛かる読みになります。まずは 文の頭 で覚えてください。そして、この種類だけは 使う回数 に気をつける必要があります。理由は最後の節で述べます。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも、出来事を途中で切り取る言い方があります。 「書く」に対する「書いている」がそれで、動詞のほうを変えて示すという点では英語と同じ土台に立っています。ずれるのは三つです。 「ている」は進行だけの印ではない 日本語の「ている」は、途中であることのほかに、 繰り返し にも、 変わらない状態 にも、 終わったあとに残っている状態 にも付きます。「毎朝七時に家を出ている」は繰り返しで、「彼女のことは知っている」は状態で、「彼はもう出かけている」は終わったあとの話です。英語で進行形になるのは、このうち 最初の一つだけ です。 日本語の言い方 「ている」の働き 英語ではどうなるか 今、手紙を書いている。 その途中にある 進行形。この課で扱う この頃、彼らは勉強している。 この時期だけそうだ 進行形。今この瞬間でなくてよい 彼はいつも七時に家を出ている。 繰り返している 現在形。進行形にしない 彼女のことはよく知っている。 変わらない状態 現在形。進行形にできない動詞 彼はもう出かけている。 終わったあとの状態 現在完了。 3.9 型編 表の三行目と四行目は現在形になり、五行目は現在完了になります。五行目については 3.6 型編 でも触れました。「もう出かけている」は、出かけたという出来事が終わって、その結果が今も残っているという話です。本編は 3.9 型編 にありますから、ここでは 「ている」に三つの行き先がある とだけ押さえてください。 二行目に注意してください。 They are studying these days. [3] のような文は、日本語話者が 思いつきにくい 進行形です。「今この瞬間」という覚え方をしていると、この頃だけの話にこの形を使う発想が出てきません。進行形が足りなくなるのは、たいていここです。 進行形にできない動詞という考え方が日本語に無い 二つめのずれです。日本語では、動詞の種類にかかわらず「ている」を付けられます。「知っている」「持っている」「要っている」——どれも言えます。英語には この形にできない動詞 という区別があり、しかもその区別は語を見ただけでは分かりません。手がかりは意味のほうにあります。 途中があるか ——それだけを毎回自分に訊いてください。 ここは「規則を覚える」より「言えない形を知る」ほうが効きます。知る・好きだ・欲しい・要る・持っている・信じる・思う・見える・聞こえる。この九つを進行形にしないと決めておけば、第 1 期のあいだは足ります。 日本語の副詞はどこにでも置ける 三