6.8 語と語が溶ける — 聞き取りの総合 — Epoché
この 課 か で 聞き取れる ききとれる ようになること 語 ご と 語 ご が 溶け合っ とけあっ た 形 かたち を、 元 もと の 二 に 語 ご に 戻し もどし て 聞ける きける 。 鼻音 びおん のあとで 音 おと が 濁る にごる ことを 知り しり 、 濁っ にごっ た 形 かたち から 元 もと の 語 ご を 当て あて られる。 聞 ぶん 編 へん で 学ん まなん だ 七 なな つの 技術 ぎじゅつ を、 一 ひと つの 音 おと の 上 うえ で 使い分け つかいわけ られる。 前提 ぜんてい : 6.7( 朗読 ろうどく を 聞く きく )。 聞き取り ききとり の 最後 さいご の 課 か です。 ここまで 七 なな つの 課 か で、いろいろな 音 おと を 聞い きい てきました。そのたびに 取れ とれ なかった ところがあったはずです。この 課 か では、その 原因 げんいん のうち いちばん 大きな おおきな もの を 扱い あつかい ます。 結論 けつろん を 先 さき に 書き かき ます。 取れ とれ なかった 語 ご の 多く おおく は、 知ら しら ない 語 ご ではありませんでした。 知っ しっ ている 語 ご が、 隣 となり の 語 ご とくっついて 別 べつ の 音 おと になっていただけです。 母音 ぼいん が 落ちる おちる — 二 に 語 ご が 一 いち 語 ご に 聞こえる きこえる ギリシア 語 ご では、 短い みじかい 語 ご の 最後 さいご の 母音 ぼいん が、 次 つぎ の 語 ご の 母音 ぼいん の 前 まえ で 落ち おち ます。 落ち おち た 印 しるし として、 書く かく ときには 右上 みぎうえ に 小さな ちいさな 印 しるし を 付け つけ ます。 表 ひょう は 五行 ごぎょう です。 左 ひだり が 元 もと の 二 に 語 ご 、 右 みぎ が 実際 じっさい に 聞こえる きこえる 形 かたち です。 元 もと の 二 に 語 ご 実際 じっさい に 聞こえる きこえる 形 かたち と、その 意味 いみ σε αγαπώ σ' αγαπώ 。 愛し あいし ている。 二 に 語 ご が ひと続き ひとつづき に 鳴る なる μου αρέσει μ' αρέσει 。 好き すき だ。2.9 で 学ん まなん だ 形 かたち το έχω τό 'χω 。 持っ もっ ている。 動詞 どうし のほうが 削れる けずれる να είσαι να 'σαι 。5.27 の お 達者 たっしゃ で に 出 で てきた 形 かたち και εγώ κι εγώ 。 私 わたくし も。これは 印 しるし を 付け つけ ずに 書く かく この 五 いつ つは、 どれも 会話 かいわ でいちばんよく 出る でる 組み合わせ くみあわせ です。 溶け とけ た 形 かたち のまま 覚え おぼえ てしまってください。 元 もと の 二 に 語 ご に 戻す もどす のは、 書く かく ときだけで 足り たり ます。 そして、 落ちる おちる のは 短い みじかい 機能 きのう の 語 ご のほう だと 決まっ きまっ ています。 三 みっ つ 目 め だけが 例外 れいがい で、 動詞 どうし のほうが 削れ けずれ ます。 短い みじかい ほうが 譲る ゆずる ——この 見当 けんとう で、たいていは 当たり あたり ます。 鼻音 びおん のあとで、 音 おと が 濁る にごる ここからが、この 課 か の 本題 ほんだい です。 聞き取り ききとり でいちばん 多く おおく の 人 ひと がつまずくのが、これ です。 ギリシア 語 ご では、ンの 音 おと のあとに カ・タ・パの 行 ぎょう の 音 おと が 来る くる と、その 音 おと が 濁り にごり ます。 そして、ンの 音 おと そのものは 弱く よわく なるか、 消え きえ ます。 表 ひょう は 三 さん 行 ぎょう です。 左 ひだり が 書か かか れた 形 かたち 、 右 みぎ が 実際 じっさい の 音 おと です。 書か かか れた 形 かたち 実際 じっさい に 聞こえる きこえる 音 おと τον πατέρα トン パテラ ではなく、トンバテラ に 近い ちかい την Κρήτη ティン クリティ ではなく、ティングリティ に 近い ちかい τον καφέ トン カフェ ではなく、トンガフェ に 近い ちかい これが 厄介 やっかい なのは、 語 ご の 頭 あたま の 音 おと が 変わっ かわっ てしまう からです。カフェ を 探し さがし て 耳 みみ を 澄ま すま せていると、ガフェ が 来る くる 。 知っ しっ ている 語 ご なのに、 知ら しら ない 語 ご に 聞こえ きこえ ます。 そして、この 現象 げんしょう は 冠詞 かんし のあとでいちばんよく 起き おき ます。 男性 だんせい と 女性 じょせい の 対格 たいかく の 冠詞 かんし はンで 終わる おわる ので、 その 次 つぎ の 名詞 めいし は 必ず かならず 濁る にごる と 思っ おもっ ておいてよいくらいです。3.1 で 迷っ まよっ たら 冠詞 かんし を 置く おく と 学び まなび ました。 置い おい た 冠詞 かんし が、 次 つぎ の 語 ご の 音 おと を 変え かえ ているのです。 橋 はし を 渡り返す わたりかえす — 日本 にっぽん 語 ご にも 同じ おなじ ことが 起き おき ている ここは、 日本 にっぽん 語 ご 話者 わしゃ にとって いちばん 飲み込み のみこみ やすいところ です。 日本 にっぽん 語 ご でも、まったく 同じ おなじ ことが 起き おき ているからです。 三 さん と 本 ほん をつなぐと、 さんぼん になります。 ハ行 はぎょう の 音 おと が、ンのあとで 濁っ にごっ たのです。 三 さん と 階 きざはし をつなげば さんがい 。 カ行 かぎょう の 音 おと が 濁っ にごっ ています。 ンのあとで、 次 つぎ の 音 おと が 濁る にごる ——ギリシア 語 ご で 起き おき ているのと、まったく 同じ おなじ ことです。 語 ご をつなげたときに 濁る にごる 、という 現象 げんしょう も 日本 にっぽん 語 ご にあります。 ひと + ひと が ひとびと になり、 かみ + さま は 濁り にごり ません。 日本 にっぽん 語 ご 話者 わしゃ は、 こういう 変化 へんか を 規則 きそく として 意識 いしき せずに 使い つかい こなしています。 ギリシア 語 ご のこの 現象 げんしょう も、 同じ おなじ ように 扱っ あつかっ てください。 規則 きそく として 覚える おぼえる のではなく、 濁っ にごっ た 形 かたち のまま 耳 みみ に 入れる いれる 。 トンガフェ という 音 おと の 塊 かたまり で 覚え おぼえ てしまえば、 次 つぎ に 聞い きい たときには 迷い まよい ません。 聞 ぶん 編 へん で 学ん まなん だ 七 なな つの 技術 ぎじゅつ 最後 さいご に、ここまでの 七 なな 課 か をまとめます。 表 ひょう は 七 なな 行 ぎょう です。 音 おと の 種類 しゅるい によって、 使う つかう 技術 ぎじゅつ が 違い ちがい ます。 課 か そこで 身 み につけた 技術 ぎじゅつ 6.1 案内 あんない 放送 ほうそう 全部 ぜんぶ を 聞か きか ず、 数 すう と 地名 ちめい だけを 狙う ねらう 6.2 天気 てんき 予報 よほう 型 かた が 三 みっ つしかないので、 型 かた のほうを 覚え おぼえ ておく 6.3 電話 でんわ 聞き取る ききとる 技術 ぎじゅつ と 同じ おなじ くらい、 立て直す たてなおす 技術 ぎじゅつ を 使う つかう 6.4 道 どう 案内 あんない 取れ とれ た 語 ご を 順 じゅん に 並べる ならべる 。 順番 じゅんばん がそのまま 道順 みちじゅん 6.5 ニュース 一文 かずふみ 目 め に 力 ちから を 全部 ぜんぶ 使い つかい 、そのあとは 休む やすむ 6.6 独話 どくわ 落ち おち たらあきらめ、 次 つぎ の 切れ目 きれめ まで 待っ まっ て 乗り のり 直す なおす 6.7 朗読 ろうどく 節 ふし の 入口 いりぐち と 出口 でぐち を、 音 おと で 捉える とらえる 七 なな つに 共通 きょうつう することが 一 ひと つあります。 どれも「 全部 ぜんぶ 聞き取る ききとる 」ことを 目指し めざし ていません。 狙い ねらい を 絞る しぼる 、 待つ まつ 、あきらめる、 並べ直す ならべなおす 。 聞き取り ききとり とは、 捨て すて 方 かた の 技術 ぎじゅつ です。 母語 ぼご で 人 ひと の 話 はなし を 聞く きく ときも、 実 じつ は 全部 ぜんぶ は 聞い きい ていません。 要る いる ところだけを 拾い ひろい 、あとは 組み立て くみたて て 補っ おぎなっ ています。 外国 がいこく 語 ご でそれをやるのが 難しい むずかしい のは、 拾う ひろう べきところの 見当 けんとう が 付か つか ないからです。 聞 ぶん 編 へん の 八 はち 課 か は、その 見当 けんとう を 付ける つける ための 課 か でした。 問い とい 問い とい 1 — 溶け とけ た 形 かたち を 元 もと に 戻す もどす 音声 おんせい を 聞い きい て、 母音 ぼいん が 落ち おち ている 箇所 かしょ を 五 いつ つ 探し さがし てください。 元 もと の 二 に 語 ご が 何 なん かも 答え こたえ てください。 答え こたえ はこの 課 か の 最後 さいご にあります。 問い とい 2 — 濁っ にごっ た 音 おと から 元 もと の 語 ご を 当てる あてる もう 一 いち 度 ど 聞い きい て、 ンのあとで 濁っ にごっ ている 語 ご を 三 みっ つ 探し さがし てください。 濁る にごる 前 まえ の 形 かたち が 何 なん かを 答え こたえ てください。 問い とい 3 — 七 なな つの 技術 ぎじゅつ のどれを 使う つかう か 音声 おんせい を 通し とおし て 聞き きき 、 どの 技術 ぎじゅつ を 使え つかえ ば 聞ける きける か を 選ん えらん でください。 一 ひと つとは 限り かぎり ません。 問い とい 4 — 音読 おんどく 台本 だいほん を 見 み ながら、 音声 おんせい のあとについて 声 こえ に 出し だし てください。 溶け とけ た 形 かたち を、 二 に 語 ご に 分け わけ ずに 読む よむ こと 。 分け わけ て 読む よむ と、いつまでも 溶け とけ た 形 かたち が 聞き取れ ききとれ ません。 口 くち が 作れる つくれる 音 おと は、 耳 みみ も 取れ とれ ます。 この 課 か のまとめ 取れ とれ なかった 語 ご の 多く おおく は、 知ら しら ない 語 ご ではなく、くっついた 語 ご だった。 短い みじかい 語 ご の 最後 さいご の 母音 ぼいん は、 次 つぎ の 語 ご の 母音 ぼいん の 前 まえ で 落ちる おちる 。 落ちる おちる のは 短い みじかい ほう 。 動詞 どうし のほうが 削れる けずれる 組み合わせ くみあわせ もある。 ンのあとで カ・タ・パの 行 ぎょう が 濁る にごる 。ンそのものは 弱く よわく なるか 消える きえる 。 語 ご の 頭 あたま の 音 おと が 変わる かわる ので、 知っ しっ ている 語 ご が 知ら しら ない 語 ご に 聞こえる きこえる 。 これは 冠詞 かんし のあとでいちばんよく 起きる おきる 。 対格 たいかく の 冠詞 かんし はンで 終わる おわる 。 日本 にっぽん 語 ご の さんぼん や ひとびと と 同じ おなじ こと。 規則 きそく ではなく 音 おと の 塊 かたまり で 覚える おぼえる 。 聞 ぶん 編 へん の 七 なな つの 技術 ぎじゅつ に 共通 きょうつう するのは、 全部 ぜんぶ を 聞き取ろう ききとろう としないこと 。 聞き取り ききとり とは、 捨て すて 方 かた の 技術 ぎじゅつ 。 次 つぎ の 課 か へ これで 聞 ぶん 編 へん は 終わり おわり です。 第 だい 3 期 き の 残り のこり は、 読 よみ 編 へん の 第 だい 3 段 だん へ 進み すすみ ます。 そこでは 初めて はじめて 、 本 ほん 課程 かてい が 書い かい たものではない 文章 ぶんしょう ——ギリシアの 作家 さっか が 書い かい た 文章 ぶんしょう を 読み よみ ます。この 編 へん で 耳 みみ を 作っ つくっ ておいたことが、そこで 効い きい てきます。 答え こたえ 台本 だいほん — 溶け とけ た 形 かたち を 集め あつめ た 会話 かいわ この 課 か の 音声 おんせい は、 本 ほん 課程 かてい が 書き下ろし かきおろし た 会話 かいわ です。 問い とい を 三 みっ つ 終え おえ てから 読ん よん でください。 台詞 せりふ 訳 わけ Θες τον καφέ σου τώρα; コーヒー、 今 いま いる。 Ναι, μ' αρέσει ζεστός. うん、 熱い あつい のが 好き すき なの。 Τό 'χω έτοιμο. Κι εγώ θα πιω. 用意 ようい してある。 私 わたくし も 飲む のむ 。 Είδες τον πατέρα σου χθες; 昨日 きのう お 父 ちち さんに 会っ あっ た。 Όχι, θα τον δω την Κυριακή. ううん、 日曜 にちよう に 会う あう つもり。