8.122 足もとから、地球へ — 一片の白墨について(1) — Epoché
この篇でできるようになること ★ 足もとから広げる 導入の組み立てが取れる。 ★ 聞き手の疑いを先に言う 手つきが分かる。 ★ いま役に立たない事実から始める 断りが読める。 ★ 遠い話を台所へ引き戻す 働きが言える。 前提 : 8.121 まで。型は 3.40 まで。論は 9.10 まで。 読む前に ★ 白墨は、大工がポケットに入れて持ち歩くものでした。 ★ 印を付けるため です。★ 聞き手全員が、その日も持っていたはず です。 ★ ハクスリーは、その一片から話を始めます。 ★ ただし、手に取って見せるのではありません ——★ 足もとを掘る ところから始めます。 ★ 8.119 読編 のファラデーは、主題を出してから「なぜこれか」を説きました。 ★ ここは逆です ——★ まず広げて見せてから、問いを出します。 ★ 地名が 15 個 出ます。★ 読みながら、話がどこまで広がるかを見てください。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1224 語、文は 36 本、一文の平均は 34.0 語、いちばん長い一文は 89 語です。 書き出しです。 If a well were to be sunk at our feet in the midst of the city of Norwich ★ 「もし、このノリッジの町の真ん中で、われわれの足もとに井戸が掘られたなら」。 ★ 仮定法です( 3.30 型編 ) ——★ 実際には掘っていません。 ★ そして、掘ったら何が出るかを言います ——★ 「岩と呼ぶには柔らかすぎる、あの白い物」。 ★ 名は最後に置かれます ——★ 「白墨」。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 もしこのノリッジの町のまん中で、私たちの足もとに井戸を掘ることになったら、掘る人たちはじきに、岩と呼ぶにはやわらかすぎるほどの、あの白い物質の中で仕事をしていることに気づくでしょう。私たちがみな「白墨」としてよく知っている物です。 ここだけではありません。ノーフォーク州全体で、井戸掘りは白墨の終わりに行き着くことなく、何百フィートも縦穴を掘り下げられるでしょう。そして海岸では、波が向かい合う陸の面を削り取ったところで、高い崖の切り立った面が、しばしばまるごと同じ物でできています。北へは、白墨をヨークシャーまでたどることができます。南の海岸では、ドーセットの絵のように美しい西の湾に突然あらわれ、ワイト島のニードルズとなって砕けています。そしてケントの海岸では、イングランドがアルビオンという名を負っている、あの長く続く白い崖をなしています。 それを覆っている薄い土がすべて洗い流されたなら、ところどころ広く、ところどころ狭くなった、白い白墨の曲がった帯が、ドーセットのラルワースからヨークシャーのフランバラ岬まで、イングランドを斜めに横切ってたどれるでしょう。直線距離で二百八十マイルを超える長さです。 この帯から東の北海まで、そして南の英仏海峡までは、白墨の大部分がほかの堆積物に隠れています。しかし、ケントとサセックスのウィールドを除けば、白墨は南東部のすべての州の土台そのものに入り込んでいます。 ところによっては千フィートを超える厚さに達するのですから、イングランドの白墨はかなりの大きさの塊だと認めなければなりません。それでもそれは、地球上の白墨層が占める全面積のうちの、取るに足りない一部を覆っているにすぎません。白墨層は私たちのものとまったく同じ一般的な性質を持ち、イングランドのものより小さいもの、大きいものと、ばらばらの区画になって見つかります。 白墨はアイルランドの北西部にあります。フランスの広い部分にわたって広がっています――実際、パリの下にある白墨は、ロンドン盆地の白墨の続きなのです。デンマークと中央ヨーロッパを通り、南は北アフリカにまで及びます。そして東では、クリミアとシリアにあらわれ、中央アジアのアラル海の岸までたどることができます。 本物の白墨が出るすべての地点を囲んでみると、それらは長径がおよそ三千マイルの不規則な楕円の中に収まるでしょう。その面積はヨーロッパと同じほどの広さで、現存する最大の内海である地中海の面積の何倍にもなるでしょう。 このように白墨は、地殻という石組みの中で決して取るに足りない要素ではありません。そして、それが出ている地方の景色に、さらされている条件によって変わる独特の刻印を押しています。私たちの内陸の白墨の地方の、甘い草の芝に覆われた起伏する丘陵や丸い谷は、穏やかで家庭的な、羊肉を思わせるかわいらしさを持っていますが、壮大とも美しいとも言いがたいものです。しかし私たちの南の海岸では、何百フィートもの高さの壁のような崖が、用心深い鵜の止まり木になるほど鋭く孤立した巨大な針や尖塔を海に突き出させていて、白墨の岬にすばらしい美しさと壮大さを与えています。そして東方では、白墨は、レバノンのような最も古く尊い山脈のいくつかの形成に一役買っています。 地球の表面に広く行きわたったこの成分は、いったい何なのでしょうか。そして、どこから来たのでしょうか。 これはあまり見込みのある問いではない、とお思いかもしれません。このような問題を解こうとしても、問う者を、反駁も検証もできない漠然とした思弁に絡め取る以外には、何の結果にも至りえない――そう考えられるのも無理はありません。 もし本当にそうなら、私はこの講演の題に、「一片の白墨」ではない何かほかの題を選んだことでしょう。けれども実のところ、さんざん考えたあげく、物理科学の最も驚くべき結論のいくつかが拠って立つ土台がいかに固いかを、皆さんにわかっていただくのに、これほどうってつけの話題をほかに思いつくことができなかったのです。 白墨には、世界の歴史の大きな一章が書かれています。今夜、皆さんがご自分の目で読めるようにしたいと願っている地球の歴史の断片、その真実を証言している直接・間接の証拠ほどに圧倒的な量の証拠に支えられている箇所は、人類の歴史の中にもほとんどありません。 さらに付け加えさせてください。人類の歴史の章のうちで、私たち自身にとってこれより深い意味を持つものはほとんどありません。よく言葉を量ったうえで申し上げますが、どの大工もズボンのポケットに入れて持ち歩いている白墨のかけらの本当の歴史を知っている人は、ほかの歴史を何ひとつ知らなくても、その知識を突きつめて最後の帰結まで考え抜くなら、人類の記録に深く通じていながら自然の記録を知らない最も博学な学者よりも、この驚くべき宇宙と、それに対する人間の関係について、より真実な、したがってより良い考えを持つことになるでしょう。 白墨の言葉は、それが語る物語の大筋をつかみたいだけなら、覚えるのは難しくありません。ラテン語よりずっとやさしいのです。そこで、これからみんなで取りかかって、その物語を一字一字読み解いていこうではありませんか。 白墨を「焼く」と生石灰ができることは、だれでも知っています。実のところ白墨は炭酸ガスと石灰の化合物で、とても熱くすると炭酸ガスが飛んでいき、石灰が残るのです。 このやり方では、石灰は見えますが、炭酸ガスは見えません。逆に、白墨を少し粉にして、強い酢をたっぷり入れたところに落とすと、ぶくぶくしゅうしゅうと盛んに泡が立ち、最後には澄んだ液が残って、白墨の跡はどこにも見えなくなるでしょう。ここでは泡の中に炭酸ガスが見えています。石灰のほうは酢に溶けて、見えなくなります。白墨が本質的に炭酸ガスと生石灰にほかならないことを示す方法は、ほかにもたくさんあります。化学者は、このことを証明するすべての実験の結果を、白墨はほぼ全部が「炭酸石灰」でできている、と言い表します。 この事実を知ったところから出発するのが望ましいのです。私たちの求めるものに向かって、それほど先まで進む助けにはならないように見えるかもしれませんが。というのも、炭酸石灰は広く行きわたった物質で、じつにさまざまな条件のもとで見られるからです。あらゆる種類の石灰岩は、多かれ少なかれ純粋な炭酸石灰でできています。石灰岩を通って染み出た水がしばしば残す、石筍とか鍾乳石とか呼ばれる形の皮殻も、炭酸石灰です。あるいは、もっと身近な例をとれば、やかんの内側の湯あかも炭酸石灰です。そして化学の教えるところには、そうではないと言える材料は何もありませんから、白墨は、下のほうがかなり熱く保たれている「地球のやかん」の底についた、一種の巨大な湯あかなのかもしれません。 語釈 帯の外の語は 110 語です。★ 地名と、地形の語が二つの山 です——★ cliffs (崖)・ headlands (岬)・ limestone (石灰岩)。 ★ 地名は覚えなくてかまいません。 語(品詞) 意味 注 Africa en 名 アフリカ Africa is home to an incredible variety of wildlife and cultures. アフリカには驚くほど多様な野生動物と文化があります。 Albion en 名 アルビオン。イギリスの古い呼び名 Poets once called Britain by its ancient name, Albion. 詩人たちはかつてイギリスを古い呼び名アルビオンと呼びました。 Aral en 名 アラル。中央アジアの海の名 Asia en 名 アジア Asia is the largest and most populous continent on Earth. アジアは地球上で最も大きく人口の多い大陸です。 Crimea en 名 クリミア Crimea is a peninsula located on the northern coast of the Black Sea. クリミアは黒海の北岸に位置する半島です。 Denmark en 名 デンマーク Denmark is known for its colorful houses and quiet canals. デンマークはカラフルな家々と静かな運河で知られています。 Dorset en 名 ドーセット。イングランドの州 England en 名 イングランド England has a long and fascinating history stretching back centuries. イングランドには何世紀にもわたる長く興味深い歴史があります。 English en 名 英語。また、イングランドの(人・もの) She studies English every evening to improve her vocabulary quickly. 彼女は語彙を早く伸ばすため毎晩英語を勉強しています。 Europe en 名 ヨーロッパ Europe contains dozens of countries, each with its own language. ヨーロッパにはそれぞれ独自の言語を持つ数十の国々があります。 Flamborough en 名 フランバラ。海に突き出た岬 France en 名 フランス France is famous worldwide for its cheese, wine, and art. フランスはチーズとワインと芸術で世界的に有名です。 Ireland en 名 アイルランド Ireland is well known for its lush green countryside. アイルランドは緑豊かな田園風景で知られています。 Isle en 名 島 The isle was covered with wildflowers every spring season. その島は毎年春になると野の花で覆われました。 Kent en 名 ケント。イングランドの州 Latin en 名 ラテン語 Many English words trace their roots back to Latin. 多くの英単語はその語源をラテン語にさかのぼります。 Lebanon en 名 レバノン。中東の山脈の名 London en 名 ロンドン London attracts millions of tourists from around the world every year. ロンドンは毎年世界中から何百万もの観光客を引き寄せます。 Lulworth en 名 ラルワース。入り江の名 Mediterranean en 名 地中海 The Mediterranean climate offers warm summers and mild winters. 地中海性気候は暖かい夏と穏やかな冬をもたらします。 Needles en 名 ニードルズ。海に立つ岩の名 Norfolk en 名 ノーフォーク。イングランドの州 Norwich en 名 ノリッジ。町の名 Paris en 名 パリ Paris is often called the city of light and love. パリはしばしば光と愛の都市と呼ばれます。 Sussex en 名 サセックス。イングランドの州 Syria en 名 シリア Syria has a rich history dating back thousands of years. シリアには数千年にさかのぼる豊かな歴史があります。 Weald en 名 ウィールド。イングランド南部の地 Wight en 名 ワイト。島の名 Yorkshire en 名 ヨークシャー。イングランドの州 abruptly en 副 急に The meeting ended abruptly when the fire alarm sounded. 火災報知器が鳴ったとき、会議は急に終わりました。 attaining en 動 達して After years of practice, she finally succeeded in attaining her goal. 何年もの練習の後、彼女はついに目標に届くことに成功しました。 bays en 名 入り江 Fishing boats shelter