7.12 機械翻訳との付き合い方 — 決まった型で壊れる — Epoché
この課でできるようになること ★ 機械翻訳が壊れる八つの型 が言える。 ★ 点検の順 で直せる。 ★ 訳文だけを読んで直さない ことができる。 ★ AI に頼むときの定型 が使える。 前提 : 7.11 まで。作は 10.16 まで。知は 12.15 まで。 なぜ訳す ★ いまは、 下訳を自分で作る人はほとんどいません 。 ★ 機械に作らせて、直します。 ★ これを 後編集 といいます。 どちらのやり方か かかる時間 何が要るか ★ 一から訳す ★ 長い ★ 訳す力 ★ 後編集 ★ 短い ★ 壊れ方を知る力 ★ 二行目に注意してください。 ★ 後編集に要るのは、 訳す力ではなく、壊れ方を知る力 です。 ★ そして、 壊れ方は決まっています ——★ 八つ です。 手順 ★機械翻訳が壊れる、八つの型 どの型か 何が起きるか どう見つけるか ★ 一 訳抜け ★ 一文が丸ごと落ちる ★ 文の数を数える ★ 二 用語のぶれ ★ 同じ語が三通りに ★ 用語表を先に渡す ★ 三 文体の混在 ★ 敬体と常体が混ざる ★ どちらかを指定する ★ 四 主語の取り違え ★ 日本語の無主語を埋め間違える ★ 「誰が」を確かめる( 7.10 訳編 ) ★ 五 否定の及ぶ範囲 ★ どこまで否定か変わる ★ 否定の文だけ読み直す ★ 六 数と単位 ★ 桁・幅・単位が変わる ★ 数を突き合わせる( 7.11 訳編 ) ★ 七 固有名詞 ★ 人名や地名が訳される ★ そのままにする指定 ★ 八 作り話 ★ 原文に無い文が入る ★ 文の数と、順を見る ★ 八つのうち、 一・六・八は数えれば見つかります 。 ★ 読まなくてよい ——★ だから、いちばん先にやります。 ★いちばん怖いのは、読めてしまう誤り どんな誤りか 誰が直すか ★ 日本語として読めない ★ 誰でも直す ★ 読めるが、意味が違う ★ 原文を見ないと分からない ★ 機械翻訳は、 読める文を作るのが上手い です。 ★ だから、 二行目の誤りが残ります 。 ★ 11.11 商編 で「分からない語より、分かったつもりの語が危ない」と置きます。 ★ 訳でも同じ です——★ 読めない訳より、 読める誤訳が危ない 。 ★訳文だけを読んで直さない ★ これが、後編集でいちばん守りにくい決まり です。 ★ 訳文を読むと、 直したくなるところがたくさん出ます ——★ 言い回しが硬い、語が重複している。 ★ そちらに時間を使うと、 意味の誤りを見落とします 。 先にやること あとでやること ★ 原文と並べて、意味を確かめる ★ 読みやすさを直す ★ 順を逆にすると、 きれいで間違った訳 ができます。 ★点検の順 何番めか 何をするか 何を見るか 一 ★ 数える ★ 文の数・数の個数 二 ★ 突き合わせる ★ 原文と並べて、順に 三 用語 同じ語が同じ訳語か 四 文体 敬体か常体か、そろっているか ★ 一と二が終わるまで、 言い回しには手を付けないでください 。 ★用語表を、先に渡す ★ 用語のぶれは、 あとから直すのがいちばん高い 誤り です——★ 全文を探さなければならない からです。 ★ 先に渡せば、起きません。 ★ 9.14 論編 で「争われている語を決めて使う」と置きました ——★ 機械に渡す用語表も、同じもの です。 ★ 十語ほどで足ります。 ★ その文章の 芯になる語 だけ です。 実例 ★ 10.17 作編 の抄録を機械に訳させたとして、 どこを見るか を順に置きます。 一 — 数える ★ 原文の文の数と、訳文の文の数を数えます。 ★ 合わなければ、 訳抜けか、文の割れ です。 ★ 次に、 数の個数 を数えます ( 7.11 訳編 )——★ 三十、三、四。 ★ 幅も一つと数えます。 二 — 突き合わせる ★ 原文と訳文を、 並べて 読みます。 ★ 一文ずつ、順に。 ★ とくに見るのが、 否定 です ——★ We cannot say why が 「なぜかは言えない」 か、★ 「なぜ言えないのか」 になっていないか。 ★ この二つは、 日本語ではよく似ていますが、意味が逆に近い です。 三 — 用語 ★ 同じ語が、同じ訳語になっているか を見ます。★ 7.9 訳編 で「術語をそろえる」と置いたのと同じ です。 四 — 文体 ★ 最後に、 敬体と常体 をそろえます。 ★ ここは、 機械にもう一度やらせてもよい ところ です——★ 意味を変えないから です。 ★AI に頼むときの定型 何を頼むか どう頼むか ★ 用語を先に渡す ★ 「次の語はこう訳してください」と一覧で ★ 文体を指定する ★ 「である調で」「敬体で」 ★ 落ちたものを出させる ★ 「原文にあって訳文に無い内容を挙げてください」 ★ 足したものを出させる ★ 「訳文にあって原文に無い内容を挙げてください」 ★ 三つめと四つめを、 必ず両方 やってください。 ★ 落ちたものと足されたものは、 別の誤り だから です。 ★ 四つめが、 八つめの型(作り話) を見つけます。 ★ 原文に無い文が入るのは、 まれですが起きます ——★ そして、 いちばん読みやすい文 であることが多い です。 やってみる ★ 自分の文章を機械に訳させ、文の数を数える。 ★ 合わなければ、どこで割れたか探す。 ★ 数の個数を数える。 ★ 幅も一つと数えること ( 7.11 訳編 )。 ★ 否定の文だけを読み直す。 ★ 否定がどこまで及んでいるか を原文と比べる。 ★ 用語表を十語で作り、もう一度訳させる。 ★ 前の訳と、どれだけ変わったか を見る。 練習 ★ We cannot say why を そらで言えるまで 音読する。★ 訳で壊れやすい形 です。 ★ 自分の用語表の十語 を音読する。★ 英語と日本語を続けて 。★ 口で言えない語は、 まだ自分の語になっていません 。 ★ 機械の訳した自分の文章を音読する。 ★ 読みながら引っかかるところが、 たいてい壊れているところ です。 この課のまとめ ★ 後編集に要るのは、訳す力ではなく、壊れ方を知る力。 ★ 壊れ方は八つ ——訳抜け/用語のぶれ/文体の混在/主語の取り違え/否定の範囲/数と単位/固有名詞/作り話。 ★ 一・六・八は、数えれば見つかる。 読まなくてよいので、いちばん先にやる。 ★ いちばん怖いのは、読めてしまう誤り。 読めない誤りは誰でも直す( 11.11 商編 )。 ★ 訳文だけを読んで直さない。 言い回しを先に直すと、きれいで間違った訳ができる。 ★ 点検の順は、数える → 突き合わせる → 用語 → 文体。 一と二が終わるまで、言い回しには手を付けない。 ★ 用語表は先に渡す。 あとから直すと、全文を探すことになる。十語ほどで足りる( 9.14 論編 )。 ★ 落ちたものと足されたものを、必ず両方出させる。 ★ 足された文は、いちばん読みやすいことが多い。 次の課へ 訳編の第 6 期はここで終わりです。★第 6 期の学習順では、訳の次は 読 です。次の課は 8.137 、 読 F のはじめ ——★ プラトン『ソクラテスの弁明』 です。 ★ ここから三十二篇、 二千四百年ぶんの思想 を読みます。 ★ この期の聞編と話編で材料に使ってきた篇が、 ここでそろって出てきます 。 答え 「やってみる」の四つの答えです。 ★ 数えてみると、 訳文のほうが多い ことがよくあります。 ★ 長い一文が、 二文に割られた から です。★ これ自体は、悪くありません ——★ 7.9 訳編 で「長い文を割る」と置きました。 ★ 確かめるのは、 割った結果、意味が変わっていないか です。 ★ 数の個数は、 合うことのほうが多い です。 ★ 機械は、数を落としません ——★ けれども、 幅を平均にすることがあります 。 ★ 「三、四冊」が「三・五冊」になっていないか ——★ 個数は同じでも、中身が違います。 ★ 否定の文を読み直すと、 ほとんどは合っています 。 ★ 合っていないのは、 否定が二つ重なった文 です ——★ 「〜でないとは言えない」。 ★ そういう文は、 原文のほうを直す のがいちばん早い です。 ★ 用語表を渡すと、 訳がずいぶん変わります 。 ★ そして、 読みにくくなることがあります ——★ 自分の選んだ訳語がこなれていないから です。★ そのときは、 用語表のほうを直してください ——★ 訳を直すのではなく。 参考文献 この課に引用はありません。例はすべて Epoché の作例です。