6.31 운수 좋은 날(運のよい日) — Epoché
前提 ぜんてい : 6.30 まで。 この 篇 へん でできるようになること 稼ぎ かせぎ 、 家 いえ までの 道 みち 、 人物 じんぶつ の 不安 ふあん を 追い おい 、 題 だい の 言葉 ことば が 結末 けつまつ でどう 響く ひびく かを 説明 せつめい できる。 長い ながい 地 ち の 文 ぶん の 修飾 しゅうしょく を 分け わけ 、 主語 しゅご と 文末 ぶんまつ から 短い みじかい 文 ぶん を 作れる つくれる 。 金額 きんがく と 時間 じかん の 語 ご を 見分け みわけ 、 古い ふるい 綴り つづり を 今 いま の 形 かたち で 書ける かける 。 この 文章 ぶんしょう について 玄 げん 鎭健の 小説 しょうせつ です。 病む やむ 妻 つま を 家 いえ に 残し のこし て 出 で た 人力 じんりき 車夫 しゃふ の 金 きん 僉知は、 久し ひさし ぶりに 続け つづけ て 客 きゃく を 乗せ のせ ます。 稼げ かせげ た 喜び よろこび と、 家 いえ に 帰る かえる ことへの 怖 こわ さが、 一 いち 日 にち の 中 なか で 重なり かさなり ます。 初め はじめ は 原文 げんぶん を 通し とおし 、 次 つぎ に 対訳 たいやく と 読み比べ よみくらべ てみましょう。 題 だい と 同じ おなじ 言葉 ことば が、 最後 さいご には 誰 だれ の 口 くち から、どんな 気持ち きもち で 出る でる のかに 注目 ちゅうもく します。 語釈 ごしゃく — 稼ぎ かせぎ を 追う おう 語 ご 意味 いみ 인력거 ・ 정류장 ・ 정거장 人力 じんりき 車 しゃ ・ 停留 ていりゅう 場 じょう ・ 停車 ていしゃ 場 じょう 。 운수 ・ 행운 ・ 불행 運 うん ・ 幸運 こううん ・ 不幸 ふこう 。 題 だい と 結末 けつまつ の 対照 たいしょう を 支える ささえる 語 ご 。 설렁탕 ・ 국물 牛 うし の 骨 ほね や 肉 にく を 煮出し にだし た 汁 しる 料理 りょうり ・ 汁 しる 。 妻 つま が 飲み のみ たがっていたもの。 치삼 ・ 개똥이 友人 ゆうじん のチサム・ 赤子 あかご のケトン。 誰 だれ の 声 こえ かを 区別 くべつ する。 내리었다 ・ 고마왔다 ・ 드리겠읍니다 底本 ていほん の 字 じ 。ふつうは 내렸다 ・ 고마웠다 ・ 드리겠습니다 。 전 には、お 金 かね の「 銭 せん 」と 時間 じかん の「 前 まえ 」があります。 金 かね を 受け取る うけとる 文 ぶん では 金額 きんがく の 単位 たんい 、 年 ねん や 日 ひ を 示す しめす 語 ご の 後 あと では 時間 じかん 関係 かんけい として 読み よみ ます。この 作品 さくひん のお 金 かね では、 一 いち 円 えん は 百 ひゃく 銭 せん です。 文法 ぶんぽう メモ — 長い ながい 文 ぶん の 骨 ほね 型 かた 編 へん 13 課 か の 連体形 れんたいけい で、 名詞 めいし を 説明 せつめい する 部分 ぶぶん をくくります。 次 つぎ に、その 名詞 めいし が 文 ぶん 全体 ぜんたい で 何 なん をしているかを、 最後 さいご の 動詞 どうし から 取り とり ます。 型 かた 編 へん 26 課 か の 長い ながい 文 ぶん の 読み よみ 方 かた を 使っ つかっ て、 修飾 しゅうしょく を 外し はずし ても 残る のこる 短い みじかい 文 ぶん を 書い かい てみましょう。 縮め ちぢめ ない 過去 かこ 形 かたち と、 過去 かこ の 状態 じょうたい を 振り返る ふりかえる 形 かたち を 分け わけ ます。 기뻤었다 は、うれしかった 時点 じてん を 後 あと から 振り返る ふりかえる 形 かたち です。 長い ながい からという 理由 りゆう で、 二 ふた つ 目 め の 過去 かこ の 形 かたち を 消す けす と、その 時間 じかん の 距離 きょり が 薄れ うすれ ます。 地 ち の 文 ぶん が「 遠く とおく へ 行く いく のが 嫌 いや だったのだろうか」と 問い とい を 立てる たてる 所 ところ では、その 後 あと の 語り かたり まで 続け つづけ て 読み よみ ます。ここでは 語り手 かたりて が 自分 じぶん で 否定 ひてい し、 幸運 こううん への 怖 こわ さと 妻 つま の 頼み たのみ へ 理由 りゆう を 移し うつし ています。 -리라 は -ㄹ 것이다 (〜だろう)に 当たる あたる 書き言葉 かきことば の 推量 すいりょう です( 모르리라 = 모를 것이다 )。 -음이다 は 名詞化 めいしか に 이다 が 付い つい た 形 かたち で、「〜からである」と 理由 りゆう を 言い いい ます( 사다줄 수 있음이다 = 買っ かっ てやれるからだ)。 対訳 たいやく つんと 澄まし すまし たように 曇っ くもっ た 空 そら 模様 もよう は 雪 ゆき が 降り ふり そうだったのに、 雪 ゆき は 降ら ふら ず、 凍り こおり かけて 凍り こおり きらない 雨 あめ がしとしとと 降っ ふっ ていた。 この 日 ひ こそ、 東 ひがし 小門 こもん の 内 うち で 人力 じんりき 車夫 しゃふ をしている 金 かね 僉知(キム・チョムジ)にとっては、 久し ひさし ぶりにめぐってきた 運 うん のよい 日 ひ だった。 門 もん の 内 うち (といってもそこも 門 もん の 外 そと ではないが)へ 行く いく という 向かい むかい の 家 いえ の 奥 おく さまを 電車 でんしゃ 通り とおり までお 送り おくり したのを 皮切り かわきり に、ひょっとして 客 きゃく があるかと 停留 ていりゅう 場 じょう でうろうろしながら、 降り おり てくる 人 ひと ひとりひとりにほとんど 拝む おがむ ような 目 め を 送っ おくっ ていたが、とうとう 教員 きょういん らしい 洋服 ようふく の 男 おとこ を 東光 とうこう 学校 がっこう まで 乗せ のせ ていくことになった。 一 いち 度 ど 目 め に 三十 さんじゅう 銭 せん 、 二 に 度 ど 目 め に 五十 ごじゅう 銭 せん —— 朝 あさ いちばんにそうざらにあることではなかった。まったく 運 うん に 見放さ みはなさ れて 十 とお 日 か 近く ちかく 金 かね を 見る みる こともなかった 金 かね 僉知は、 十 じゅう 銭 せん 白銅 はくどう 貨 か が 三 さん 枚 まい 、あるいは 五 ご 枚 まい 、ちゃりんと 手のひら てのひら に 落ちる おちる とき、ほとんど 涙 なみだ をこぼすほどうれしかった。しかもこの 日 ひ この 時 とき 、この 八十 はちじゅう 銭 せん という 金 かね が 彼 かれ にどれほど 役 やく に 立つ たつ かしれなかった。からからの 喉 のど にどぶろく 一杯 いっぱい を 流しこむ ながしこむ こともできるし、それよりも 病ん やん でいる 妻 つま にソルロンタンを 一杯 いっぱい 買っ かっ ていってやれるのだ。 妻 つま が 咳 せき をこほこほとするようになってから、もうひと 月 がつ あまりになる。 粟飯 あわめし さえ 食べ たべ たり 食べ たべ なかったりの 暮らし くらし だから、もちろん 薬 くすり の 一服 いっぷく も 使っ つかっ てみたことがない。 無理 むり をすれば 使え つかえ ないこともないのだが、 彼 かれ は「 病 やまい という 奴 やつ に 薬 くすり をやって 帰す かえす と、 味 あじ をしめてまた 来る くる 」という 自分 じぶん の 信条 しんじょう にどこまでも 忠実 ちゅうじつ だった。したがって 医者 いしゃ に 見せ みせ たこともないので 何 なん の 病 やまい かはわからないが、 仰向け あおむけ に 寝 ね たきりで、 起き上がる おきあがる どころか 横 よこ を 向く むく こともできないのを 見る みる と、 重い おもい ことは 重い おもい ようだ。 病 やまい がこれほど 重く おもく なったのは、 十 とお 日 か 前 まえ に 粟飯 あわめし を 食べ たべ て 胃 い をこわしたせいである。 そのときも 金 きん 僉知が 久し ひさし ぶりに 金 かね を 手 て に 入れ いれ て 粟 ぞく 一 いち 升 しょう と 十 じゅう 銭 せん の 薪 たきぎ 一 ひと 束 たば を 買っ かっ てやったところ、 金 きん 僉知の 言い分 いいぶん によれば、あのくたばり 女 おんな がやたらめったら 鍋 なべ にかけて 煮 に た。 気 き は 急く せく のに 火 ひ は 通ら とおら ず、まだ 煮え にえ きらないものを、あのくたばり 女 おんな が 匙 さじ どころか 手 て でつかんで、 両 りょう の 頬 ほお に 握りこぶし にぎりこぶし ほどのこぶが 出る でる ほど、 誰 だれ かに 取ら とら れでもするように 押しこん おしこん だ。するとその 日 ひ の 晩 ばん から、 胸 むね が 引きつる ひきつる 、 腹 はら が 張る はる と 言っ いっ て 目 め を 剥き むき 、ひきつけのような 騒ぎ さわぎ をした。そのとき 金 かね 僉知は 火 ひ のように 腹 はら を 立て たて て、 「ええい、このくたばり 女 おんな 、 生まれつき うまれつき の 薄命 はくめい はどうにもならん。 食え くえ ずに 病気 びょうき 、 食っ くっ て 病気 びょうき 、どうしろというんだ! なぜ 目 め をまともに 開か ひらか んか!」と、 金 きん 僉知は 病人 びょうにん の 頬 ほお を 一 いち 度 ど ひっぱたいた。 剥い むい た 目 め は 少し すこし まともになったが、 露 ろ がにじんだ。 金 きん 僉知の 目頭 めがしら も 熱く あつく なった。 この 病人 びょうにん はそれでも 食べる たべる ことには 飽き あき なかった。 三 みっ 日 か 前 まえ からソルロンタンの 汁 しる が 飲み のみ たいと 夫 おっと にせがんだ。 「このくたばり 女 おんな め! 粟飯 あわめし も 食え くえ ん 女 おんな がソルロンタンだと、また 食らっ くらっ てひきつけを 起こす おこす 気 き か。」と、 怒鳴っ どなっ てはみたものの、 買っ かっ てやれない 心 こころ は 晴れ はれ なかった。 いまならソルロンタンを 買っ かっ てやることもできる。 病む やむ 母 はは のそばで 腹 はら をすかせてぐずる 개똥 (ケトン、 三 みっ つ)に 粥 かゆ を 買っ かっ てやることもできる。—— 八十 はちじゅう 銭 せん を 手 て に 握っ にぎっ た 金 かね 僉知の 心 こころ はゆたかだった。しかし 彼 かれ の 幸運 こううん はそれで 終わら おわら なかった。 汗 あせ と 雨水 あまみず の 混じっ まじっ て 流れる ながれる 首筋 くびすじ を、 油 あぶら 袋 ふくろ のようになった 綿 わた の 手ぬぐい てぬぐい で 拭き ふき ながら、あの 学校 がっこう の 門 もん を 回っ まわっ て 出る でる ときだった。うしろで「 人力 じんりき 車 しゃ !」と 呼ぶ よぶ 声 こえ がする。 自分 じぶん を 呼び止め よびとめ たのがあの 学校 がっこう の 学生 がくせい だと、 金 きん 僉知は 一目 ひとめ で 察し さっし がついた。その 学生 がくせい はいきなり、「 南 みなみ 大門 だいもん 停車 ていしゃ 場 じょう までいくらだ」と 尋ね たずね た。 おおかたあの 学校 がっこう の 寄宿 きしゅく 舎 しゃ にいる 者 もの で、 冬休み ふゆやすみ を 利用 りよう して 帰省 きせい しようというのだろう。 今日 きょう 行く いく と 決め きめ てはいたが、 雨 あめ は 降る ふる 、 荷物 にもつ はある、でどうしたものかと 迷っ まよっ ていたところ、ちょうど 金 きん 僉知を 見 み て 飛び出し とびだし てきたのだろう。そうでなければ、なぜ 靴 くつ もろくに 履け はけ ずに 引きずり ひきずり 、たとえ 木綿 もめん の 洋服 ようふく とはいえ 雨 あめ に 打た うた れるままに、 金 きん 僉知を 追っ おっ て 出 で てきたりするだろうか。 「 南 みなみ 大門 だいもん 停車 ていしゃ 場 じょう まででございますか。」と、 金 きん 僉知はしばらくためらった。 彼 かれ はこの 雨 あめ の 中 なか を 雨具 あまぐ もなしに、あの 遠い とおい 所 ところ までぬかるみを 踏ん ふん で 行く いく のがいやだったのだろうか。 一 いち 度 ど 目 め 、 二 に 度 ど 目 め でもう 満足 まんぞく したのだろうか。いや、 決して けっして そうではない。 不思議 ふしぎ にも 尾 お を 引い ひい てつぎつぎ 押し寄せる おしよせる この 幸運 こううん の 前 まえ に、 少し すこし 怖じ気 おじけ づいたのである。そして 家 いえ を 出る でる ときの 妻 つま の 頼み たのみ が 心 こころ に 引っかかっ ひっかかっ ていた。—— 向かい むかい の 家 いえ の 奥 おく さまから 呼び よび に 来 き たとき、 病人 びょうにん は 骨 ほね ばかりの 顔 かお に、ただ 一 ひと つ 生き物 いきもの のような、ひときわ 大きく おおきく くぼんだ 目 め に 哀願 あいがん の 色 いろ を 浮かべ うかべ て、「 今日 きょう は 出 で ないでちょうだい。お 願い ねがい だから 家 いえ にいてちょうだい。わたしがこんなに 苦しい くるしい のに……」と、 蚊 か の 鳴く なく