11.21 事が起きた日の一報 — 名指しの謝罪 — Epoché
★ 断っておきます。 ★ この課で扱うのは 書式 だけ です——★ 社内へ出す一報・取引先への一通・広く知らせるときの書き方 。 ★ その場で どう言うか は、話編 6.58 が受け持ちます。 ★ また、 法の助言ではありません ( 11.12 商編 と同じ)。 この課でできるようになること ★ 原因が分からないうちに一報を出せる 。 ★ 何にすまないのかを名指して 謝れる。 ★ 責任の言い方 を段で分けられる。 ★ 補償を、条件と期日で書ける 。 前提 : 11.20 まで。商は 11.12 まで。話は 6.58 まで。 場面 ★ 金曜の夕方です。 ★ 四月に出した装置のうち二台が、 同じ止まり方をした と分かりました。 ★ 原因は、 まだ分かりません 。 ★ ここで書かなければならない紙が、 三枚 あります。 ★ 社内へ出す一報、取引先への一通、 使っている人へ知らせる文 です。 ★ いちばんやってはいけないのが、 原因が分かるまで待つこと です。 ★ 待っているあいだに、 相手は別の口から知ります ——★ そうなると、 不具合の話が隠したことの話に変わります 。 語彙 ★原因が分からないうちに出す一報 ★ 一報は、 原因を待ちません 。 ★ 四行で足ります。 ★ 会社も人も架空で、 数はすべて仮 です。 What we know: two units made in April stopped in the same way. [1] What we do not know yet: the cause. [1] What we are doing: we have stopped sending out the rest. [1] Next report: Monday at 10, and every morning after that. [1] 一報に入れる なぜ入れるか ★ 分かっていること ★ 相手が自分で調べ始めるのを止める ★ 分かっていないこと ★ あとで前言を取り消さずにすむ ★ いまやっていること ★ 動いていることが伝わる ★ 次の連絡の時刻 ★ そのあいだの問い合わせが止まる ★ いちばん落ちやすいのは 二行め です。 ★ 分からないことを書かないと、 書いたことが全部「分かっていること」に見えます ——★ あとで違っていたときに、 前言を取り消すことになります 。 ★ 取り消しは、 最初の知らせより高くつきます 。 ★ 11.17 商編 で置いた 「遅れは分かった日に伝える」 の、もっと急ぐ版 です。 ★ 四行めの 時刻 も忘れないでください。 ★ 時差のある相手には、 「分かりしだい」は「ひと晩待て」 と同じ意味になります。 謝罪は、何にすまないのかを名指しする ★ ここが、 この課でいちばん大事なところ です。 ★ sorry という語は、★ 幅がひろい ——★ 「気の毒に思う」から 「私の落ち度だ」 まで です。 ★ どちらに読まれるかを決めるのは、 そのあとに何を置くか です。 どう書くか どう読まれるか ★ We are sorry ★ 気の毒に思っている、と読まれる ★ We are sorry for the delay ★ 遅れについて謝っている ★ We are sorry that our test missed this ★ 自分の落ち度を名指している ★ 三つは、 別のことを言っています 。 ★ 一つめは 謝罪ではありません ——★ 同情 です。 ★ 日本語の「申し訳ございません」は 目的語を取らなくても謝罪になります が、★ 英語では 名指さないと同情のままです 。 ★ だから、 原因が分からなくても謝れます 。 ★ 謝る先を 「かけた迷惑」 にすればよい のです——★ We are sorry for the trouble this has caused 。 ★ この一行は、 原因の判定と切り離されています 。 ★ だから、 金曜の夕方に書けます 。 どの言い方か どこに置けるか ★ Sorry about that ★ 口の中だけ。書面には置かない ★ We apologize for the trouble ★ 社外への一通に置ける ★ We take responsibility for the two units ★ 原因を確かめたあとだけ 責任の言い方は、段で分ける ★ いちばん危ないのが、 原因を確かめる前に落ち度を認める文を書くこと です。 ★ 誠実に見せたくて書いてしまう ——★ けれども、 あとで原因が別だと分かったとき 、その一行だけが残ります。 いつ書くか 何を書けるか ★ 原因を調べているあいだ ★ 事実と、迷惑への謝罪と、いまやっていること ★ 原因が自分の側だと分かったあと ★ 落ち度を名指した謝罪 ★ 原因が外だと分かったあと ★ 分かったことと、これからの手 ★ 三段とも、 謝罪は入っています 。 ★ 変わるのは 謝る先 だけ です——★ 迷惑 → 落ち度 → 迷惑 。 ★ だから、 「原因が外だったから謝らない」はありません 。 補償は、条件と期日で ★ 「誠意をもって対応いたします」は、 英語にすると何も言っていません 。 ★ 相手が知りたいのは 何を・いつ・どういう条件で です。 約束の書き方 相手にできること ★ 誠意をもって対応する ★ 何も待てない ★ 取り替えるか、代金を返す ★ どちらか選べる ★ 五月末までに取り替える ★ 段取りを組み直せる ★ We will replace the two units by the end of May と書けば、★ 相手は 六月の予定を組めます 。 ★ ここでも、 効くのは日付 です( 11.19 商編 と同じ)。 ★ もう一つ、 約束の範囲 です。 ★ 11.17 商編 で置いたとおり、 失う利益はたいてい取れません ——★ だから、 取り替えと代金は約束できても、「損はすべて埋めます」とは書けません 。 ★ 書けないことを書かないのも、 誠実さの一部 です。 社内と社外は、別の紙 ★ 同じ文を三方へ送ってはいけません。 ★ いちばん先に書くことが、 相手ごとに違う からです。 だれに出すか いちばん先に書くこと ★ 社内へ ★ 何が起きたか(事実) ★ 取引先へ ★ 相手の段取りにどう響くか ★ 使っている人へ ★ いま何をすればよいか ★ 三つめが、 いちばん忘れられます 。 ★ 使っている人は、 原因にも責任にも関心がありません ——★ 知りたいのは 使い続けてよいか だけ です。 ★ だから、 その一行を頭に置く 。 日本の商慣習との差 ★ 差は、 謝罪の置き場 です。 謝罪の置き方 どちらに多いか ★ 先に謝り、原因はあとで ★ 日本の取引先に多い ★ 何に対してかを名指して謝る ★ 相手方に多い ★ 前者では、 謝罪そのものが挨拶の働き をします。 ★ 後者では、 謝罪は責任の範囲と結びついています ——★ だから、 名指さない謝罪は書きにくい のです。 ★ けれども、 謝るのが遅いと不誠実に見える のはどちらも同じ です。 ★ その二つを両立させる道が、 迷惑に対して先に謝る ——★ この課でいちばん使える一行 です。 ★ 二つめの差は、 宛先の広さ です。 ★ 「関係者各位」で出すと、 だれが動くのか分かりません 。 ★ 社内の一報は、 動く人と、知っておく人 を分けて出してください(11.4 の だれが・いつまでに )。 ★ 三つめは、 夜と週末 です。 次の連絡の書き方 何が起きるか ★ 分かりしだいご連絡します ★ 夜のあいだ問い合わせが続く ★ 月曜の十時、そのあと毎朝 ★ それまで待ってもらえる ★ 下の書き方には、 もう一つの効き目 があります。 ★ 毎朝出すと決めると、 進んでいない朝も出すことになります ——★ 「まだ分かりません」だけの一通 が、★ いちばん信用を作ります 。 やってみる ★ 一報を四行で書く 。★ 分かっていること/分かっていないこと/いまやっていること/ 次の連絡の時刻 。 ★ いま進めている案件で、 今日それが起きたら という形で書く。 ★ 謝罪を三通り書く 。★ 迷惑に対して/遅れに対して/ 自分の落ち度に対して 。 ★ 三つを並べて、 どれをいつ出せるか を書き添える。 ★ 補償の一行を、日付付きで書く 。★ 何を・いつまでに・ 選べる形 で。 ★ 書けないことは書かない。 ★ 同じ事を三方へ書き分ける 。★ 社内/取引先/使っている人 。★ それぞれ 最初の一行だけ を書けば足ります。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Crisis Communication — The Golden Hour and How to Immediately Respond to a Crisis Hofstra University (3:46, 2022) 大学。危機のときの最初の一時間に何を出すか。 練習 「原因が分からないうちに出す一報」の四行を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。 ★ We are sorry ・ We are sorry for the delay ・ We are sorry that our test missed this を 続けて音読 する。 ★ だんだん長くなります ——★ 長くなった分が 謝っている中身 です。 ★ We are sorry for the trouble this has caused を そらで言えるまで 音読する。 ★ trouble を いちばん強く 読んでください ——★ そこが 謝っている先 だから です。 この課のまとめ ★ 原因が分かるまで待たない 。待つと、不具合の話が隠したことの話に変わる。 ★ 一報は四行 ——分かっていること/分かっていないこと/いまやっていること/次の連絡の時刻。 ★ 落ちやすいのは「分かっていないこと」 。書かないと、あとで前言を取り消すことになる。 ★ 次の連絡は時刻で書く 。時差のある相手に「分かりしだい」は「ひと晩待て」と同じ。 ★ sorry は幅がひろい ——「気の毒に思う」から「私の落ち度だ」まで。決めるのは、そのあとに置く語。 ★ 名指さない謝罪は、同情に読まれる —— We are sorry だけでは謝罪にならない。 ★ 原因が分からなくても謝れる 。謝る先を「かけた迷惑」にする—— We are sorry for the trouble this has caused 。 ★ 落ち度を認める文は、確かめたあとで 。三段とも謝罪は入っていて、変わるのは謝る先だけ。 ★ 口の言い方を書面に置かない —— Sorry about that は書面には残さない。 ★ 補償は、何を・いつまでに・選べる形で —— We will replace the two units by the end of May 。 ★ 書けないことは約束しない 。失う利益はたいてい取れない( 11.17 商編 )。 ★ 社内・取引先・使っている人で、最初の一行が違う 。使っている人が知りたいのは「使い続けてよいか」だけ。 ★ 宛先を分ける ——動く人と、知っておく人( 11.4 商編 )。 ★ 進んでいない朝も出す 。「まだ分かりません」だけの一通が、いちばん信用を作る。 次の課へ 次の課は 11.22 、 経営の古典を読む です。★ ここまでの三課は、 いま書く紙 でした。 ★ 次の課で読むのは、 百年から二百五十年前の文 です ——★ けれども、 言っていることはこの三課とつながっています 。 答え 「やってみる」の四つの答えです。 ★ 四行を書くと、 一行めが短い ことに驚くはずです。 ★ 本当に分かっていることは、 思っているより少ない ——★ 「たぶんこうだろう」は 二行めのほう です。 ★ この振り分けが そのままこの課の練習 です。 ★ 三通り書くと、 三つめが書けない ことがあります。 ★ 落ち度がまだ分からないから ——★ それなら、 いま出せるのは一つめだけ です。 ★ 正しい判断です。 ★ 三つめは、 原因が分かった日に出す一通 に取っておいてください。 ★ 日付を入れると、 書くのが怖くなります 。 ★ 守れるか分からないから ——★ そこで、 守れる日付 を書いてください。 ★ 早い日付を書いて外すのは、 二度謝ること になります ——★ 11.17 商編 で置いた 「守れる日付に置き直す」 と同じ です。 ★ 書き分けると、 三つめがいちばん短い ことが分かります。 ★ 「四月に出した二台と同じ型をお使いの方は、止めずにお使いいただけます」 ——★ これで足ります。 ★ 原因も責任も、 ここには要りません ——★ 要るのは、 いま手を止めるかどうか だけ です。 参考文献 Epoché の作例(不具合が見つかった日の社内の一報と、取引先への一通)。CC BY 4.0。★会社も人も架空、数はすべて仮。https://epoche.app/