3.33 名詞化 I — 文を一語にたたむ — Epoché
この課でできるようになること ★ 名詞化 を見つけられる。 ★ of のうしろが 主語か目的語か を決められる。 ★名詞化を 四段で戻せる 。 日本語の「の」と英語の of が ずれる ことが分かる。 前提 : 3.32 まで。読は 8.104 まで。 例文で見る 10 文を並べます。行を押すと音が鳴ります。 右の列は、何が起きているか です。 英文 日本語訳 何が起きているか I've been thinking about the meaning of life. [1] 人生の意味についてずっと考えている。 ★ いちばんやさしい名詞化 。「生きるとはどういうことか」が一語に The discovery of electricity changed our history. [2] 電気の発見が私たちの歴史を変えた。 ★ the discovery of 。 of のうしろは目的語 ——電気を 発見した The discovery of electric waves made radio possible. [3] 電波の発見により、無線通信が可能になった。 同じ形。 発見が、文の主語になっている The discovery of truth should remain the single aim of science. [4] 真理の発見はいつまでたっても科学の唯一の目的であらねばならない。 ★ of が 二つ 。前は目的語、うしろは所有 The development of the computer industry has been very rapid. [5] コンピューター産業の発展は非常に急速である。 ★ -ment の名詞化。「産業が発展してきた」が主語に The success of our business depends on the weather. [6] 我々の仕事の成功は天候に支配されやすいものです。 ★ the success of 。 of のうしろは主語 ——商売が うまくいく The success of her novel made her rich. [7] 小説が成功して彼女は金持ちになった。 同じ形。 小説がうまくいった His success resulted from hard work. [8] 彼の成功は、彼の勤勉の結果から生じた。 ★ 所有格で主語を示す 。「彼がうまくいった」 His success is the result of hard work. [9] 彼が成功したのはよく働いたらです。 ★ 名詞化が二つ 入っている His success depends on his efforts. [10] 彼が成功するかしないかは彼の努力次第である。 同じ形。 うしろも名詞化 骨組み ★名詞化とは、文を一語にたたむこと 名詞化 ( nominalization )とは、 動詞や形容詞を名詞に変える ことです。 ★ 変えると何がよいのか。 ★ 文の部品になれる ことです。 どう言うか その文は何になれるか ★ 動詞のまま ★ その文だけで終わる ★ 名詞にする ★ 主語にも目的語にもなれる 例文の二つめを見てください—— The discovery of electricity changed our history. [2] 。★ 「人々が電気を発見した」という文が、まるごと主語になっています。 ★ これが、学術の文の骨 です。★ 一つの文の中に、たたまれた文がいくつも入っています。 ★ だから、短く見えて中身が多い。 ★ 学術の文が読みにくいのは、この重なりのため です。★ 語を引いても読めません。 ★ たたみ方をほどかないと読めません。 ★ of のうしろは、主語か目的語か ★ ここが、この課でいちばん大事なところ です。 どんな形 うしろは何か 戻すと the discovery of electricity ★ 目的語 ★ 電気を発見した the success of our business ★ 主語 ★ 商売がうまくいった ★ 形はまったく同じです。 ★ どちらも「名詞 + of + 名詞」。 ★ けれども、中身は逆 です。 ★ どうやって決めるのか。 ★ 元の動詞が「何かに対してする」動詞かどうか で決まります。 元の動詞 どんな動詞か だから of のうしろは discover ★ 何かを 発見する ★ 目的語 succeed ★ 誰かが うまくいく ★ 主語 develop どちらもありうる ★ 文脈で決める ★ 三行目が本当のところ です。★ 多くの動詞は、どちらもありえます。 ★ だから、決めるのは形ではなく意味 です。 例文の五つめ—— The development of the computer industry has been very rapid. [5] 。★ 「産業が発展した」 のか、★ 「誰かが産業を発展させた」 のか。★ ここでは前者です。 ★ うしろに「非常に急速だ」と続くから です。 ★見分ける — 語尾 語尾 例と覚え方 どんな名詞になるか - tion / - sion discover → discovery (不規則)/ introduce → introduction いちばん多い - ment develop → development 動作や結果 - ance / - ence appear → appearance 動作や状態 - al arrive → arrival 動作 - ure fail → failure 動作や結果 ★ 形が変わらない use → use / increase → increase ★ いちばん見落とす ★ いちばん厄介なのは、いちばん下 です。★ 形が変わらない名詞化 があります。 use 、 increase 、 change 、 result 。★ どれも、動詞にも名詞にもなります。 ★ 前に the や a が付いていたら名詞 です。 ★戻し方 — 四段 どの段 何をするか どうやって 一 ★ 名詞化を見つける 語尾で見当をつけ、動詞の意味があるか見る 二 元の動詞に直す discovery → discover 三 ★ of のうしろを決める ★ 主語か、目的語か 四 文を分ける 一文が二文になる ★ 四段目を忘れないでください。 ★ 名詞化をほどくと、文が増えます。 ★ これが、名詞化のいちばん大きな働き です——★ 二文を一文にする。 ★ 長い文は、たいてい二文か三文がたたまれたもの です。 7.9 訳編 で 学術文の和訳 を扱います。★ そこでも、最初にすることは同じ です——★ たたまれた文をほどいて、分ける。 日本語ならどう言うか ★ 日本語も名詞化します。 「発見」「成功」「発展」——★ どれも、そのまま名詞化 です。 ★ だから、この型そのものは難しくありません。 ★ 難しいのは、つなぎ方 です。 日本語 英語 何が違うか 電気 の 発見 the discovery of electricity ★ 目的語 商売 の 成功 the success of our business ★ 主語 彼 の 発見 ★ 二通りに読める ★ 彼が発見した/彼を発見した ★ 日本語の「の」は、どちらも同じ形でつなぎます。 ★ 英語の of も、同じです。 ★ つまり、この曖昧さは両方の言語にあります。 ★ だから、訳すときには気づかずに通り抜けられます。 ★ けれども、自分で書くときには決めなければなりません。 ★ はっきり言いたいときは、名詞化をやめて動詞に戻す ——★ それがいちばん確かです。 丁寧さの段 ★ 名詞化は、丁寧さの道具でもあります。 ★ 動詞をやめると、「誰がするのか」が表に出なくなる からです。 英文 日本語訳 どこが名詞化か Thank you for your help. [11] 手伝ってくれてありがとう。 ★ your help 。「あなたが助けてくれたこと」を一語に Thank you for your understanding. [12] ご理解いただき、誠にありがとうございます。 同じ形。★ -ing も名詞化 Thank you for your time. [13] お忙しいところ、ありがとうございます。 ★ 相手の時間を名詞にして礼を言う I would appreciate a reply. [14] ご返事いただければ幸いです。 ★ a reply 。「返事をくださる」と言わない ★ 四つめを見てください。 ★ 「返事をください」とは言っていません。 ★ 「返事があれば、ありがたい」 です。 どう言うか 相手にどう届くか ★ 動詞で言う ★ あなたがしてください ★ 名詞化で言う ★ それがあれば、ありがたい 10.12 作編 で 「段を上げるほど、頼みごとが動詞から遠ざかる」 と置きました。★ 名詞化は、その最短の道 です。★ 動詞を名詞にした瞬間に、行為者が消えます。 ★ ただし、使いすぎると冷たくなります。 ★ 行為者が消えるということは、「あなた」も消える ということです。★ 礼を言うときは your を残してください ——★ 手本の三つが、どれもそうなっています。 よくある誤り 三つ挙げます。下の誤文は Epoché の作例です。 名詞化のあとに動詞を足す。 the discover of → the discovery of の形に。★ the のうしろは名詞 です。 名詞化を主語にして、動詞を複数形にする。 The discovery of things are → The discovery of things is の形に。★ 主語は discovery であって、 things ではありません。 ★ of のうしろに引きずられます。 書きたいことを全部名詞化する。 ★ これは誤りではありませんが、読めなくなります。 ★ 一文にたためるのは、二つまで と思ってください。★ 三つたたむと、書いた本人も戻せなくなります。 実文で通す 読 D の篇から五つ引きました。★ どれも、たたまれた文です。 どの篇から 原文 ほどくと 8.104 読編 the use of chemicals to kill insects [15] ★ 人が薬品を使って虫を殺す 。 of のうしろは目的語 8.104 読編 reductions in habitat and climate change ★ すみかが減り、気候が変わる 。★ 二つたたまれている 8.104 読編 a decrease of 96 percent ★ 数が九十六パーセント減った ( 9.9 論編 ) 8.103 読編 the introduction of [16] ★ 誰かが持ち込む 。うしろは目的語 8.103 読編 has seen large population growth ★ 人口が大きく増えた 。★ 語尾の無い名詞化 ★ 二つめを見てください。 ★ 一つの句に、二つの文がたたまれています。 ★ 「すみかが減る」と「気候が変わる」。 ★ これが、報道と学術の文の作り方 です。★ 12.10 知編 で「逆ピラミッド」を見ました。 ★ 一文目に全部入れるには、たたむしかありません。 最後に、 8.72 読編 から一つ—— Knowledge is an excellent thing [17] 。★ knowledge も名詞化 です( know から)。★ 「知っていること」が主語になっています。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Common Pitfalls of Graduate-Level Writing: Nominalizations UWC Grad Services (4:21, 2022) 名詞化のしすぎを直す側から見る。大学のライティングセンター 練習 「例文で見る」の 10 文を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。★ of の前で一拍おいて 読む。★ たたみ目が、そこにあります。 ★ 例文の二つめと六つめを、日本語で言い直す。 ★ 「〜が」と「〜を」のどちらになるかを、必ず言葉にする。 ★ 「実文で通す」の五つを、四段で戻す。 ★ 戻した結果を日本語で書く。 ★ 英語で書き直さなくてかまいません ——★ ほどけたかどうかは、日本語で分かります。 今日読んだ日本語の記事を一つ選び、★ 名詞化を三つ探す。 ★ 「〜の増加」「〜の導入」「〜の実施」 ——★ 新聞は名詞化でできています。 この課のまとめ ★ 名詞化とは、文を一語にたたんで、別の文の部品にすること。 ★だから学術の文は短く見えて中身が多い。 ★ 学術の文が読みにくいのは、語ではなく重なりのため。 ★語を引いても読めない。たたみ方をほどかないと読めない。 ★ of のうしろは、主語か目的語のどちらか。 ★形は同じで、中身は逆になる。 ★ 決めるのは形ではなく意味 ——元の動詞が「何かに対してする」動詞かどうか。 ★ 戻し方は四段 ——名詞化を見つける/動詞に直す/ of のうしろを決める/文を分ける。 ★ 四段目を忘れない。 ほどくと文が増える。長い文は、たいてい二文か三文がたたまれたもの。 語尾で見当をつける( -tion ・ -ment ・ -ance ・ -al ・ -ure )。★ 形の変わらない名詞化がいちばん見落とす ( use ・ increase )。 ★ 日本語の「の」も同じ曖昧さを持つ。 ★だから訳すときは気づかず通り抜けられるが、書くときは決めなければならない。 ★ 一文にたためるのは二つまで。 三つたたむと、書いた本人も戻せなくなる。 次の課へ 次の課は 3.34 、 長文の解剖 です。★ この課でほどいたのは、句のたたみ目でした。 ★ 次の課では、四十語の文を四段で切ります。 ★ 主語を探し、動詞を囲み、修飾の入れ子を外す。 ★ 名詞化が分かっていると、主語がすぐ見つかります。 答え 「練習」の四つの答えです。