3.22 条件文 I — if 現在/仮定法過去/wish — Epoché
この課でできるようになること ありうる条件を if + 現在形で言える。 ★ありえない条件を 過去形 で言える( If I were you )。 wish で、今そうでないことへの願いを言える。 過去形が「昔」ではなく 今から遠い 印だと分かる。 前提 : 3.21 まで。 設計書に挙げた実測があります。母語話者の英語に 452 回出る仮定法過去が、日本語話者の英語では 155 回しか出ません 。三分の一です。これは「間違えている」のではなく、 言わずに済ませている ということです。言えないぶんだけ、言いたいことが言えずに終わっています。 なぜ出てこないのか。日本語では「私があなただったら」と「雨が降ったら」が同じ形だからです。同じ形で言えるものを、わざわざ二つに分けようとは思いません。だからこの課では、 形の作り方 より先に なぜ二つに分かれるのか を見ます。理由が分かれば、形は一つ覚えるだけで済みます。 例文で見る まず 10 文を見ます。1 番めから 3 番めは ありうること 、4 番めから 7 番めは ありえないこと 、8 番めと 9 番めは 願い 、10 番めは やわらげる言い方 です。語はどれも第 3 期の範囲(上位 1,980 語)の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ If you can, come with us. [1] もし来れたら、私たちと一緒に来なさい。 ありうること。 if の中は現在形 If you see, let me know. [2] 見かけたら知らせてよ。 同じくありうること。条件が先、主役の文が後 If it is worth doing, do it well. [3] それをやる価値があるなら、立派にやれ。 一般に成り立つこと。両方とも現在形 If I were you, I wouldn't do it. [4] 私だったらやらないけどなあ。 ★ありえないこと。 were が使われている I wouldn't do it if I were you. [5] もし私があなただったらそれをしないでしょう。 同じ文の順を入れ替えたもの。どちらも自然 If he were here, what would he say? [6] もし彼がここにいたら、なんと言うだろう? その場にいない人のことを言う If you were me, what would you do? [7] あなたなら、どうする? 相手に「あなただったら」と訊く I wish I were young. [8] 今若ければなあ。 ★ wish + 過去形。今そうでないことを願う I wish I knew. [9] わかっていればいいのに。 短い形。知らない、と言っている It would be better if you didn't go there. [10] そこには行かない方がいいよ。 やわらげる言い方。 would + if + 過去形 4 番めの were に目を留めてください。主語は I なのに was ではありません。これがこの課の目印です。 骨組み この課の規則は一つです。 ありうることは現在形、ありえないことは過去形。 過去形を使うのは、そのことが「昔」だからではありません。 今の現実から遠い という印です。 二つの段を並べる どちらの段か その形 この課の例 ありうる if + 現在形/主役の文は will など If you see, let me know. [2] ありえない if + 過去形/主役の文は would If I were you, I wouldn't do it. [4] 一行めは 3.16 型編 で見たとおりです。時と条件の節では、未来のことでも現在形にします。二行めが、この課で新しく置くものです。 if の中を過去形にし、主役の文には would を置きます。 両方が一段ずつ下がる と覚えてください。片方だけ下げると形が崩れます。 ★なぜ過去形なのか — 遠さの印 過去形は、もともと「今ではない」ことを言う形です。英語はこの形を 時間の遠さ以外にも使い回します 。 3.10 型編 で見た Could you …? がそうでした。 Can you …? より丁寧に聞こえるのは、 今この場から一歩引いた 言い方だからです。 仮定法も同じ仕掛けです。「私があなただったら」は、時間的に過去のことではありません。 現実から遠い ——つまり実際にはそうでない。その遠さを、英語は過去形という道具で表します。 一つの形に二つの仕事 をさせているわけで、英語はこういう使い回しをよくします。 この見方をすると、覚えることが減ります。「丁寧さの過去形」と「仮定の過去形」を別々に覚えるのではなく、 過去形=遠さ という一つの原理で通せます。第 5 期の 3.38 型編 で扱う婉曲な言い方も、根は同じです。 was ではなく were ありえない条件のとき、 I ・ he ・ she でも were を使います。 If I were you, I wouldn't do it. [4] 、 If he were here, what would he say? [6] がその形です。文法の規則としては古い形が残ったものですが、学ぶ側には ありがたい目印 になります。 were が見えたら、 その文は現実の話ではない と分かるからです。 話し言葉では was も使われます。けれども If I were you だけは were のままです。決まり文句として固まっているので、 この一つは形ごと覚えて ください。助言をするときにいちばんよく使う言い方です。 wish — 今そうでないことを願う wish の後ろにも過去形を置きます。理由は同じで、 今そうではない からです。 I wish I were young. [8] と言う人は、今は若くありません。 I wish I knew. [9] と言う人は、今は知りません。 wish と言った時点で、そうでないことが伝わっています 。 hope との違いはそこです。 hope は ありうること を願うので、後ろは現在形か未来の形になります。 wish は ありえないこと を願うので過去形。日本語では「〜だといいな」で両方言えてしまうので、 ありうるかどうかを先に決めて から動詞を選んでください。 やわらげる言い方としての条件文 ありえない形は、 言いにくいことを言うとき にも使います。 It would be better if you didn't go there. [10] は、「行くな」を直に言わずに済ませた形です。 It would be better if you went by train. [11] も同じ作りです。実際には行くかもしれないので、 ありえない話ではありません 。それでも過去形を使うのは、 押しつけから一歩引く ためです。 3.21 型編 の丁寧さの段で見た It would be better … は、まさにこの形でした。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも条件の言い方があります。 「〜たら」「〜れば」「〜なら」「〜と」——英語より数が多いくらいです。ずれるのは ありうるかどうかを形で分けない ことです。 ★日本語に無い区別 — ありうるか、ありえないか 伝えたいこと 日本語では 英語では 雨が降ったら行かない 降っ たら if it rains (現在形) 私があなただったらしない だっ たら if I were you (過去形) 若ければなあ 若けれ ば I wish I were young (過去形) 日本語の側は三行とも 同じ作り です。「たら」「ば」に、ありうるかどうかの情報は入っていません。では日本語話者はどうやって区別しているのか。 中身で分かる からです。「私があなただったら」は、聞けば誰でもありえないと分かります。言わなくても伝わるので、形で分ける必要がありません。 英語も中身で分かるはずなのに、なぜ形まで変えるのか。 形を変えることで、言い方の幅が生まれる からです。上で見たとおり、ありえない形は「言いにくいことをやわらげる」ためにも使われます。中身はありうることなのに、あえて遠い形で言う—— この使い方ができるのは、形が分かれているから です。日本語では「行かないほうがいいですよ」のように、別の道具で同じことをしています。 日本語の「なら」に近いもの 日本語の「〜なら」は、相手の言ったことを受けて使います。「行くなら早く出たほうがいい」——相手が行くと言ったのを受けています。英語では If you want, you can stay here. [12] のように、 if + 現在形で言います。 ありうることなので現在形 です。ここで過去形にすると「どうせ行かないだろうけど」という含みが出るので、気をつけてください。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。この課の道具は 断るときにそのまま効きます 。 wish は「今そうでない」ことを言う形なので、 できたらいいのに=できない という含みが出ます。下の四つは、どれも「手伝えません」を伝えています。 英文 日本語訳 どんな相手に I'm afraid I can't. [13] 残念ですが、できません。 残念だと前置きして断る I'm afraid I can't help you. [14] 申し訳ないけど、手伝ってあげられないんだ。 何を断っているのかを言う I wish I could. [15] できればそうしたいけど。 ★仮定法で言う。できたらいいのに=できない I wish I could help you. [16] 私があなたを援助できればよいのだが。 相手の用件に触れて、できたらいいのにと言う 一行めと二行めは、できないことを直に言っています。三行めで言い方が変わりました。言っているのは 「できたらいいのに」 だけで、「できない」とは一言も言っていません。それでも断りとして通じます。 wish が 今そうでない ことを含むからです。四行めは相手の用件に触れて、その気持ちをはっきり向けています。 日本語でも同じことをしています。「できません」より「お手伝いできればよかったのですが」のほうが角が立ちません。 できなかったことを惜しむ という形まで同じです。違うのは、英語では 動詞の形だけ でそれを作れることです。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそのまま持ち込んだ形で、下の誤文は Epoché の作例です。書いた英文ではなく、 話した英文 で自分を確かめてください。 ありえないことを現在形で言う。 If I am you → If I were you 日本語ではどちらも「だったら」なので、区別する習慣がありません。いちばん多いのは、この形を 使わずに済ませてしまう ことです。助言をするときは If I were you から始めると決めておくと、口が覚えます。 片方だけ下げる。 If I were you, I will not go. → would にします。 if の中を過去形にしたら、主役の文も下げます。 両方が一段ずつ下がる 。片方だけだと、ありうるのかありえないのかが分からない文になります。 wish の後ろを現在形にする。 I wish I am young → I wish I were young wish は 今そうでない ことを願う語です。ありうることを願うなら hope を使い、後ろは現在形か未来の形にします。日本語の「〜だといいな」で両方言えるので、 ありうるかどうかを先に決めて ください。 実文で通す 読 C の 32 篇ぜんたいで、 if の文は多くありません。物語は起きたことを書くものなので、「もし」の出番がそもそも少ないのです。だからこそ、出てきたものには 意味があります 。五つ引きました。 どの篇から 原文 どちらの段か 8.53 読編 if any one wants to break in a young horse well [17] ありうる 。読者に向けて一般のことを言っている 8.59 読編 do them a good turn if we can [18] ありうる 。できるならそうしよう、という相談 8.65 読編 if I were you [19] ★ ありえない 。魔神がらくだに助言している 8.42 読編 as if she were going up in a balloon [20] ★ as if も同じ。実際に気球に乗ってはいない 8.61 読編 if it had not had so much water in it [21] ★もう一段 前 のこと。次の期で扱う形 三行めと四行めを並べて見てください。 were が両方に出ています。三行めは魔神がらくだに「私が君だったら、二度とそうは言わない」と助言している場面、四行めはドロシーが家ごと竜巻に持ち上げられて「気球で上がっていくような気がした」と感じている場面です。 助言と、たとえ ——用途はまるで違うのに、形は同じです。どちらも 現実ではない という一点で共通しています。 五行めは、この課より一段深い形です。水さえ入っていなければ隠れ場所として上等だったのに、実際には水が入っていた—— 過ぎたことについて、そうでなかった ことを言っています。第 4 期の条件文 II で扱いますが、読むぶんには今から出会います。 had が二つ並んでいたら この形だ と覚えておいてください。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 The second conditional - Grammar: Conditionals with Georgie BBC Learning English (3:06, 2025) 第二条件文(仮定法過去) The first conditional - Grammar: Cond