11.5 論語 述而 — 三人行けば必ず我が師あり — Epoché
この篇でできるようになること 文末の字が表す「そこに」を訳に残せます。 よい人・よいところを表す名詞のまとまりを作れます。 従う相手と、改める自分を分けて説明できます。 前提 :11.4「論語 為政 — 之を知るを之を知ると為す」。指す語の位置と、文末の字の働きを見ます。 三人の中に師を見つける 三人行 は、三人で歩くという場面です。その後に 必有我師焉 と続きます。師とは、自分が学ぶ手がかりを得る相手です。誰が立派かを順位づけるだけでなく、自分がどう受け取るかを後半で述べています。 必 は、必ず、という副詞です。存在を述べる 有 より前に置きます。 型編 33課 で見た副詞の位置を使って読めます。自分の師がそこにいる、と言い切った後で、どのように学ぶのかを読み進めましょう。 そこに、を一字で受ける この句の 焉 は、「そこに」という場所を表します。 於是 ・ 於此 のような、場所を結ぶ語と指す語の二語ぶんを、一字で担うと考えられます。このような働きを兼詞と呼びます。 文末にあるため、問いの結びと同じように見えるかもしれません。しかし、ここでは三人の中に、という場所を受けています。「必ず師がいる」で訳を終えると、この一字の働きが見えなくなります。「その中に」を入れて読みます。 文末の字がすべて同じ働きとは限りません。 特別編 1篇 の反語の結びと比べると、この句は問いを作らず、場所を示していることが分かります。文末の字は、文ごとに働きを確かめましょう。 焉 を文末の飾りとして落とさないでください。師がいるのは「そこに」、いま述べた三人の中です。 よい人、よいところ 善者 と 不善者 は、よいものとよくないものを取り出すまとまりです。 者 は直前の語句を受けて、名詞として使える形を作ります。 文編 4課 で見た働きの確認です。 よい人・よくない人と訳すことも、よいところ・よくないところと訳すこともできます。この篇では、相手のよいところを学び、よくないところを自分に照らす読みを中心にします。人を表す訳だけが正しく、点を表す訳は誤り、という関係ではありません。 現代語の 好的 ・ 不好的 とも比べられます。 的 の後ろに名詞を出さず、まとまりだけで名詞のように使う形です。漢文も、 善 という性質を述べて終わりにはしません。 者 まで読んで取り出した対象をつかみます。 前に置く語と後ろに置く語 其善者 の 其 は、前に述べた人々を受けます。その中のよい人・ところというまとまりを作ります。名詞のまとまりより前にあり、どの範囲の話かを示しています。 從之 と 改之 の 之 は、動詞の後ろの対象です。「その」と修飾する位置と、「それを」と受ける位置を分けます。いずれも何を指すかは、前の話と結び付けて読まなければ決まりません。 字の意味を一語に固定するより、まず動詞を見つけ、その前と後を確かめてください。 其 のまとまりを読んでから、 之 が受ける対象へ戻ると、二つの働きがつながります。 二つの結論の向き A 読み B 読み 違い 擇其善者而從之 其の善なる者を擇びて之に從ひ 其不善者而改之 其の不善なる者は之を改む 相手のよさには従い、よくないところは自分を改める手がかりにする 二つの句は、どちらも七字です。後の句は初めの 擇 を省いた代わりに 不 が入り、字数がそろっています。よい・よくないという対と、従う・改めるという結論が、同じ長さの句の中で対応しています。 よくない人を見て、その人を改めさせる話ではありません。自分にも同じところがないかを見て、自分を直します。よい人だけでなく、よくない例からも学べるので、必ず師がいると言えるのです。 従うのは相手のよさに向かい、改めるのは自分に向かいます。二つとも相手に何かをする文だと取ると、師から学ぶという結び付きが崩れます。 語釈 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 行 動詞 歩く・行く 行を数える意味ではない 三人行 三人で歩く 必 副詞 必ず 有の前に置く 必有我師焉 その中に必ず自分の師がいる 焉 兼詞 そこに ここでは場所を受ける 必有我師焉 その中に必ず自分の師がいる 擇 動詞 選ぶ 後ろのまとまりが対象 擇其善者 その中のよい人を選ぶ 其 代詞 その・その中の 名詞のまとまりの前に置く 其善者 その中のよい人・ところ 者 助詞 名詞のまとまりを作る 人にも点にも訳せる 善者 よい人・よいところ 從 動詞 従う・見習う ここでは介詞ではない 從之 それに従う 改 動詞 改める 自分を直す向きで読む 改之 それを改める 練習 空欄を埋め、本文の句を書いてください。 必有我師_ 空欄を埋め、本文の句を書いてください。 擇_善_而從_ 空欄を埋め、本文の句を書いてください。 其不善者_改之 善者 と 不善者 を、現代語の名詞のまとまりに書き換えてください。 現代語の 好的 ・ 不好的 を、本文の 者 を使う形に戻してください。 必有我師焉 の最後の字を、場所を結ぶ二字に開いて書いてください。 本文の 其 と 之 について、名詞の前・動詞の後ろのどちらかを選び、指す内容を書いてください。 必ず師がいると言える理由を、後半の二句から説明してください。 人から学ぶことを言う現代語の文を、二通り作ってください。一つは 优秀 、もう一つは 能干 を使います。 音読:▶ で 三人行 ・ 必有我師焉 ・ 擇其善者而從之 ・ 其不善者而改之 の手本を聞きます。 三人行 と 必有我師焉 を区切り、後半は二句を同じ調子で読みます。場所を示す末尾の字は伸ばさずに読みます。 この篇のまとめ 文末の字も意味を担っています。名詞を作るまとまりと、対象を受ける代詞を位置から読み、相手に従うことと自分を直すことを分けて受け取ります。 次の篇へ 次の11.6では、寒い季節になって分かる松や柏の姿を読みます。主語と述語の間に置く字を確かめます。 答え 必有我師焉 擇其善者而從之 其不善者而改之 好的 ・ 不好的 善者 ・ 不善者 必有我師於是 ( 於此 と開いてもかまいません) 其 は名詞のまとまりの前で、三人の中の人々を受けます。 之 は動詞の後ろで、従うよさ、改めるべき自分の同じところを受けます。 よいところに従うだけでなく、よくないところも自分を直す手がかりにするためです。よくない例からも学べます。 我要跟优秀的朋友学。 (優れた友だちに学ぼう。) 我想跟能干的人学。 (有能な人に学びたい。) 参考文献 孔子の弟子たち『論語 述而』。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。本文は抄。 出所: 当館所蔵の文書