14.70 I で話す — 相手の土俵で論じる法廷陳述 — Epoché
この篇でできるようになること ★ I で話す 文の並びが読める。 ★ 相手の土俵で論じる やり方が分かる。 ★ 短く終わる ことの効き方が言える。 ★ 第 VII 部の九篇 を、ひととおり振り返れる。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は 順番に読む必要がありません 。★ 1 篇が 1 作品 で、★ どの篇から始めてもかまいません。 ★ これは 演説ではありません 。★ 法廷で 判決の前に言うことはあるか と問われて 、★ その場で話したもの です。 読む前に確かめること どこで置いたか ★ 法の考え方(なぜ法の文は硬いのか) ★ 12.20 知編 ★ 聖書とシェイクスピア(引用の二本柱) ★ 12.17 知編 アメリカの成り立ち 12.13 知編 ★ ここまでの篇と 立場が違い ます ——★ 14.61 英語の名文 は国の長、 14.66 英語の名文 も国の長 でした。★ この篇の話し手は 裁かれている側 で、★ 説得しても 判決は変わりません 。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 645 語、段落は 7 に分かれ、文は 30 本、一文の平均は 21.5 語です。 ★ いちばん長い一文は 109 語 ですが、★ 最後の段落は 4 語 しかありません。★ その差が この陳述の形 です。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 私がしたように、神の蔑まれた貧しい者たちのために手出しをしたことは、悪ではなく正しいことだったと私は信じます。私は、はじめからずっと認めてきたこと、つまり奴隷を解き放とうという私の側の企て以外は、すべて否認します。私はたしかに、その件をきれいに片づけるつもりでした。去年の冬にミズーリへ入り、そこで双方どちらの側も一発の銃も鳴らすことなく奴隷たちを連れ出し、国じゅうを通って移し、最後にカナダに残してきたときのようにです。私は同じことを、もっと大きな規模でもう一度するつもりでした。私がもくろんだのは、それだけです。私は決して、殺人も、反逆も、財産の破壊も、奴隷を反乱へとそそのかしたりあおったりすることも、暴動を起こすことも、もくろんだことはありません。 私にはもう一つ異議があります。それは、私がこのような刑罰を受けるのは不正だということです。もし私が、私の認めるやり方で、そしてそれが正しく証明されたと私も認めるやり方で(この件で証言した証人の大部分の誠実さと率直さに、私は感心しています)——もし私がそのように、金持ちや、力のある者や、知恵のある者や、いわゆる偉い人のために、あるいはその友人の誰か——父、母、兄弟、姉妹、妻、子ども、あるいはそうした類の誰か——のために手出しをし、この手出しで私が受けたような苦しみを受け、払ったような犠牲を払ったのなら、それで何の問題もなかったでしょう。そしてこの法廷にいるだれもが、それを罰よりもむしろ報いに値する行いとみなしたことでしょう。 この法廷は、私の思うところ、神の法の効力を認めています。ここで口づけされている本を私は見ていますが、それは聖書、少なくとも新約聖書だと思います。その本は私に、何事でも人にしてもらいたいと思うことは、人にもそのとおりにせよ、と教えています。さらにそれは、「縛られている者を、自分も共に縛られている者として思え」と私に教えています。私はその教えに沿って行おうと努めました。言っておきますが、神が人を分け隔てするなどということは、私にはまだ若すぎて分かりません。私がしたように——私がしたとずっと進んで認めてきたように——神の蔑まれた貧しい者たちのために手出しをしたことは、悪ではなく正しいことだったと私は信じます。さて、もし正義の目的を推し進めるために、私が命を差し出し、私の血を、私の子どもたちの血と、そしてこの奴隷の国で、邪悪で残酷で不正な法令によって権利をないがしろにされている何百万もの人々の血と、さらに混ぜ合わせることが必要だとみなされるのなら——私は従います。そうなるがよい! もう一言だけ言わせてください。 私は、裁判で受けた扱いにすっかり満足しています。あらゆる事情を考えれば、それは私が思っていたよりも寛大なものでした。しかし私は罪の意識をまったく感じません。私は最初から、自分のつもりが何であり、何でなかったかを述べてきました。私はだれの命に対しても何の企ても持ったことはなく、反逆を犯そうとか、奴隷をそそのかして反乱させようとか、何か大がかりな暴動を起こそうとかいう気持ちも持ったことはありません。私はだれにもそうするよう勧めたことはなく、いつもその種の考えを思いとどまらせてきました。 私とかかわりのある者たちの何人かが述べたことについても、一言言わせてください。彼らのうちの何人かが、私が彼らを誘いこんで仲間に加えたと述べた、と聞いています。しかし本当はその逆です。私がこう言うのは、彼らを傷つけるためではなく、彼らの弱さを惜しんでのことです。彼らのうち、自分から進んで私に加わらなかった者は一人もいません。そしてその大部分は、自分の費用で加わったのです。彼らの何人かとは、私のところへ来たその日まで、会ったことも、一言の言葉を交わしたこともありませんでした。そしてそれは、私が述べた目的のためだったのです。 これで終わりました。 語釈 帯の外の語は 23 語だけです。★ この部でいちばん少ない です。★ 法の語( validity ・ penalty )と、信仰の語( Testament ・ respecter )が中心 です。★ 語がやさしいのは、 覚え書きを持たずに話している から です。 語(品詞) 意味 注 Bible en 名 聖書 She keeps an old family Bible on the wooden shelf. 彼女は木の棚に、一家に伝わる古い聖書を置いています。 Canada en 名 カナダ Missouri en 名 ミズーリ。米国の州の名 Testament en 名 聖書の一部。 New Testament で新約聖書 The scholar spent years translating the New Testament into another language. その学者は何年もかけて新約聖書を別の言語に翻訳しました。 candor en 名 率直さ The young reporter answered every question with remarkable candor. その若い記者は、驚くほどの率直さであらゆる質問に答えました。 cruel en 形 むごい The general's cruel treatment of prisoners shocked the entire nation. その将軍の捕虜へのむごい扱いは、国じゅうを震撼させました。 despised en 形 さげすまれた The villagers despised the corrupt merchant for cheating the poor. 村人たちは、貧しい人々をだますその不正な商人をさげすみました。 disregarded en 動 無視した The captain disregarded the warning and sailed straight into the storm. その船長は警告を無視して、嵐の中へまっすぐに進みました。 enactments en 名 定められた法 Several new enactments restricted trade between the two neighboring towns. いくつかの新しい法令が、隣り合う二つの町のあいだの取引を制限しました。 endeavored en 動 努めた The young clerk endeavored to finish every task before sunset. その若い書記は、日没までにすべての仕事を終えようと努めました。 forfeit en 動 失う Any player who breaks the rule will forfeit the entire match. 規則を破った選手は誰でも、その試合をまるごと失うことになります。 furtherance en 名 推し進めること The committee approved the plan in furtherance of the town's safety. 委員会は、町の安全を推し進めるためにその計画を承認しました。 guilt en 名 罪 A deep sense of guilt kept the young soldier awake at night. 深い罪の意識のせいで、その若い兵士は夜も眠れませんでした。 incite en 動 そそのかす The pamphlet was written to incite the farmers against the new tax. その小冊子は、新しい税に対して農民たちをそそのかすために書かれました。 insurrection en 名 蜂起 The governor sent soldiers to put down the sudden insurrection. 知事は、突然の蜂起を鎮めるために兵士を送りました。 mingle en 動 混ぜ合わせる Smoke from the factory began to mingle with the morning fog. 工場から出た煙は、朝の霧と混じり始めました。 rebellion en 名 反乱 The king sent his army to crush the growing rebellion. 王は、広がりつつある反乱を鎮めるために軍を送りました。 respecter en 名 えこひいきする者。 respecter of persons で人を分け隔てする者 The judge insisted that the court was no respecter of persons. 裁判官は、この法廷は人を分け隔てする者ではないと言い張りました。 treason en 名 国に背く罪 The general was accused of treason after abandoning his post. その将軍は、持ち場を放棄したあとで国に背く罪に問われました。 truthfulness en 名 偽らないこと Everyone in the village admired the old teacher's truthfulness. 村の誰もが、その老教師の偽らない人柄を慕っていました。 unjust en 形 正しくない The workers protested against the factory's unjust wage cuts. 労働者たちは、工場の正しくない賃金カットに抗議しました。 whatsoever en 代 何であれ The old man said he wanted nothing whatsoever in return. その老人は、見返りに何であれ望むものはないと言いました。 wicked en 形 悪い The story warns children never to trust a wicked stranger. その物語は、子どもたちに悪い見知らぬ人を決して信じないよう戒めています。 I で話す ★ I が 45 回 出ます。★ 30 本の文のうち 16 本が I で始まり ます。★ we は 0 回以下 です。 どの主語で話すか だれの言葉になるか この部の例 ★ we ★ 集まりの言葉。責めも分け合う ★ 14.62 英語の名文 ・ 14.69 英語の名文 ★ you ★ 相手に向ける言葉 ★ 14.65 英語の名文 ★ I ★ 一人で引き受ける言葉 ★ この篇 ★ なぜ I なのか 。★ ここは 裁判 で、★ 問われているのは この人がしたこと だから です。★ we で話すと 仲間を巻きこみ ます ——★ 実際、最後のほうで 仲間について一言だけ 触れ ます。 I do not say this to injure them, but as regretting their weakness. ★ not … but … の形 です( 3.58 型編 )。★ 「傷つけるためではなく、 弱さを惜しんで 言うのだ」 ——★ 14.61 英語の名文 と 同じ形 で、★ あとに置いた語が 強く残り ます 。 相手の土俵で論じる ★ この陳述は 法を否定しません 。★ 代わりに 法廷が認めているもの を持ち出し ます。 This court acknowledges, as I suppose, the validity of the law of God. ★ acknowledges (認めている) ——★ 主語は This court です。★ 自分の考えではなく、 相手がすでに認めていること から始め ます。 I see a book kissed here which I suppose to be the Bible, or at least the New Testament. ★ 法廷で 証人が手を置く書物 です。★ それを 目に見える事実として 指し ます——★ 「ここで口づけされている本を見ている」 。 どう論じるか 相手はどう受けるか ★ 「この法は不正だ」 ★ 法廷の外の話になる ★ 「この法廷が認めている書物にこう書いてある」 ★ 否定すると自分の手つづきを否定することになる 「私は悪くない」 事実の争いになる ★ 二つめがこの陳述の手 です。★ 14.65 英語の名文 の 「あなたたちもそうした」 と 同じ形 で、★ 相手の中にある基準を使い ます( 6.57 話編 )。 ★ そして その書物から引き ます —— remember them