7.10 英訳 — 主語を立てる — Epoché
この課でできるようになること ★ 「誰が」を決めて 主語を立てられる。 ★ 決められないときに、消す形 を選べる。 ★ 日本語の一文を、英語の二文に 割れる。 ★ 「〜と思われる」を正しく訳せる ( 3.36 型編 )。 前提 : 7.9 まで。型は 3.40 まで。作は 10.12 まで。 なぜ訳す ★ 英訳をする場面は、たいてい二つ です。 どんな場面か 求められるもの ★ 自分の書いたものを英語にする ★ 正確さと読みやすさ ★ 人の書いたものを英語にする ★ 正確さだけ ★ この課で扱うのは、一行目 です。★ 自分の日本語を、自分で英語にする。 ★ このとき、いちばんよい方法は「日本語を直さずに訳す」ことではありません。 ★ 日本語のほうを、英語にしやすい形に直してから訳します。 ★ 自分の文章なら、それができます。 ★ そして、直したあとの日本語のほうが、たいてい読みやすい ——★ 英訳は、日本語の推敲にもなります。 手順 ★四段 何段目か 何をするか どうやって 一 ★ 「誰が」を決める ★ 決められなければ、二段目へ 二 ★ 消す形を選ぶ 受動( 3.35 型編 )か名詞化( 3.33 型編 ) 三 動詞を決める 日本語の述語が名詞のことがある 四 ★ 文を分ける ★ 日本語の一文 = 英語の一文ではない ★一段目 — 「誰が」を決める ★ 日本語は、主語を書かなくても文になります。 ★ 「この点については、すでに述べた」。 ★ 誰が述べたのか、書いてありません。 ★ 英語では、必ず決めなければなりません。 ★ そして、決め方は四通り あります。 どんなときか どうするか たとえば ★ 人が決まる その人を主語に The researchers measured it. ★ 決まらない ★ 受動にする It was measured. ★ 行為そのものが主 ★ 名詞化する The measurement was slow. ★ 原因が主 ★ 原因を主語に ( 3.39 型編 ) Heat slowed the growth. ★ 一行目がいちばんはっきりします。 ★ 今の学術の文章は、この形に戻りつつあります ( 3.35 型編 )。 ★ 二行目と三行目が、日本語の無主語にいちばん近い形 です。★ 行為者が文から消えます。 ★ 四行目が、日本語話者がいちばん使わない形 です( 3.39 型編 )。★ けれども、これが書けると英語らしくなります。 ★三段目 — 日本語の述語が名詞のことがある ★ 「この点が問題である」。 ★ 述語は「問題」という名詞 です。 日本語 そのまま訳すと 動詞を決めると この点が問題である This is a problem. ★ This raises a problem. 結果は明らかである The result is clear. ★ The result shows this. ★ 右の列のほうが、動きがあります。 ★ 英語は、動詞に重さを置く言語 です。★ be 動詞ばかりになったら、動詞を探し直してください。 ★四段目 — 日本語の一文 = 英語の一文ではない ★ 日本語は、「〜で、〜て、〜が、」でいくらでも続きます。 ★ 英語では、続きません。 ★ 3.40 型編 で「日本語の『て』は主語が違ってもつなげる」 と置きました。★ だから、日本語の一文の中で主語が変わっていることがあります。 ★ 変わっていたら、そこで割ってください。 ★「〜と思われる」の落とし穴 ★ 3.36 型編 で置いたとおり、日本語の「思われる」は誰が思うかを消します。 ★ 英語の It seems は、「私にはそう見える」 です。 日本語 よくある訳 合う訳 〜と思われる It seems that … ★ The data suggest that … 〜と考えられている It is thought that … ★ そのままでよい 〜と思う I think … そのままでよい ★ 一行目が要注意 です。★ 「思われる」が「データがそう示している」の意味なら、主語をデータにしてください ( 3.36 型編 )。★ そのほうが、学術の文として強い です。 実例 ★ 一文を、四段で英訳します。 もとの日本語 ——★ 「昨年の調査では数が大きく減っており、原因はまだ分かっていないと思われる。」 一段目 — 「誰が」を決める ★ 前半は「数が減った」。主語は「数」 です。★ 後半は「分かっていない」。主語がありません。 二段目 — 消す形を選ぶ ★ 後半は、「原因ははっきりしない」という形にします。 ★ 8.104 読編 の記事と同じ形 です。 三段目 — 動詞を決める ★ 「大きく減った」は fell sharply 。 ★ 「調査では」は、副詞句にするか、調査を主語にします。 四段目 — 分ける ★ 日本語は一文ですが、英語では二文 にします——★ 「調査は、数が大きく減ったことを示した。原因は、まだはっきりしていない。」 ★ 「思われる」を It seems にしなかった ことに注意してください。★ ここは、「まだ分かっていない」という事実 であって、★ 書き手の印象ではありません。 やってみる ★ 自分が 10.9 作編 で書いた説明文の一段落を、英語にする。 ★ まず、日本語のほうを直してください。 ★ 主語を決められなかった文を数える。 ★ その文に、四通りのどれを使ったか を書く。 ★ be 動詞を数える。 ★ 半分をこえていたら、動詞を探し直してください。 ★ 日本語の一文が、英語で何文になったかを数える。 練習 実例の英文(四段目のもの)を 音読 する。★ 二文に割れているところで一拍おく。 ★ 「この点が問題である」を、動詞を変えて三通り書く。 ★ 「〜と思われる」を含む日本語を一つ選び、主語をデータにして訳す。 この課のまとめ ★ 日本語には主語が無いことが多い。英語には要る。 ★英訳の第一歩は「誰が」を決めること。 ★ 決め方は四通り ——人/受動( 3.35 型編 )/名詞化( 3.33 型編 )/原因( 3.39 型編 )。 ★ 受動と名詞化が、日本語の無主語にいちばん近い。 ★ 原因を主語にする形が、日本語話者のいちばん使わない形 ——★けれども、書けると英語らしくなる。 ★ 日本語の述語が名詞のことがある。 ★英語は動詞に重さを置く言語。 be 動詞ばかりなら探し直す。 ★ 日本語の一文 = 英語の一文ではない。 ★日本語の一文の中で主語が変わっていたら、そこで割る( 3.40 型編 )。 ★ 「〜と思われる」を It seems にしない ( 3.36 型編 )。★データがそう示しているなら、主語をデータにする。 ★ 自分の文章なら、日本語のほうを直してから訳せる。 ★英訳は、日本語の推敲にもなる。 次の課へ 訳編の第 5 期はここで終わりです。★第 5 期の学習順では、訳の次は 読 です。次の課は 8.105 、 読 E の一篇目 です。★ フランクリン『自伝』 から始まります。★ 物語ではありません。 ★ 一人の人が、自分の来し方を振り返って書いた文章 です。★ 第 5 期の型と語が、ここで全部要ります。 答え 「やってみる」の四つの答えです。 ★ 日本語を直す段で、半分の仕事が終わります。 ★ 直すというのは、主語を書き足し、長い一文を割ること です。★ そこまでやれば、英語にするのは機械的な作業になります。 ★ 受動と名詞化に偏っていたら、それは日本語をそのまま移しています。 ★ 一つか二つは、人を主語にしてみてください。 ★ 急に読みやすくなります。 ★ be 動詞が多いのは、日本語の「である」をそのまま移したから です。★ 「である」の前の名詞を見て、そこから動詞を作れないか を考えてください。 ★ 増えていれば、正しく割れています。 ★ 同じ数なら、日本語が短かったか、まだ割れていないか です。★ 四十字をこえる日本語の一文は、たいてい英語で二文になります。 参考文献 この課に引用はありません。例はすべて Epoché の作例です。