8.107 漠とした目標を、項目に割る — 十三の徳 — Epoché
この篇でできるようになること ★ 漠とした目標を項目に割る 手つきが読める。 ★ 名を増やして中身を減らす という選び方が分かる。 ★ 並べた順に理由をつける 書き方が見える。 ★ 帳面の作りを言葉で描く 書き方が読める。 前提 : 8.106 まで。型は 3.40 まで。 読む前に ★ フランクリンは二十代の終わりに、とんでもないことを思いつきます ——★ 一つも過ちを犯さずに生きよう、と。 ★ 言うだけなら、誰でも言えます。 ★ 面白いのは、そこから先の手つきです。 ★ この人は、その願いを 十三の名前 と 十三の短い戒め と 一枚の帳面 に落とします。 ★ これは、いまで言えば仕様書です。 ★ 漠とした望みを、数えられる形にする ——★ 読 E で読む実務の文章は、どれもこの手つきでできています。 ★ この篇には、徳の名が 13 個 並びます。★ 並び順に意味があるので、順を見ながら読んでください。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1187 語、文は 71 本、一文の平均は 16.7 語、いちばん長い一文は 99 語です。 書き出しです。 It was about this time I conceived the bold and arduous project of arriving at moral perfection. ★ 「このころ私は、道徳的完全に到達するという、大胆で骨の折れる企てを思いついた」。 ★ project という語に注意してください ——★ 「計画」です。 ★ 最初から、願いではなく計画として書かれています。 そして、すぐに失敗を認めます。 But I soon found I had undertaken a task of more difficulty than I had imagined. ★ 「だが私はすぐに、思っていたより難しい仕事を引き受けたのだと気づいた」。 ★ この一文が、以下の工夫を呼び出します。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 このころ私は、道徳的完全に到達するという、大胆で骨の折れる企てを思いつきました。私は、いつどんなときにも一つの過ちも犯さずに生きたいと願いました。生まれつきの好みであれ、習慣であれ、付き合う仲間であれ、私をそこへ導きかねないものはすべて打ち負かそうと思ったのです。何が正しく何が間違っているかを私は知っている、あるいは知っていると思っていたので、なぜいつも正しいほうを行い、間違ったほうを避けることができないのか、分かりませんでした。だが私はすぐに、思っていたより難しい仕事を引き受けたのだと気づきました。[66] 一つの過ちを防ごうと気を配っているあいだに、しばしば別の過ちに不意を突かれたのです。習慣は不注意につけこみ、好みはときに理性よりも強すぎました。私はついに、完全に徳のある者であることが自分の利益になるという、ただ頭の中だけの確信では、私たちがつまずくのを防ぐには足りないこと、そして、着実でむらのない正しい行いを当てにできるようになるには、その前に、逆の習慣が壊され、良い習慣が身につけられ、定まらなければならないことを悟りました。そこでこの目的のために、私は次のような方法を考え出しました。 [66] ピリピ人への手紙 4 章 8 節を参照。 私がこれまでの読書で出会った道徳上の徳のさまざまな数え上げでは、書き手によって同じ名のもとに含める考えが多かったり少なかったりするので、一覧の数も多かったり少なかったりしました。たとえば節制は、ある人々によっては食べることと飲むことに限られていましたが、ほかの人々によっては、体のものであれ心のものであれ、ほかのあらゆる快楽・欲求・好み・情念を、貪欲や野心にいたるまで、ほどよく抑えることまで意味を広げられていました。私は、分かりやすさのために、少ない名にそれぞれ多くの考えを結びつけるよりも、むしろ名を多くし、それぞれに結びつける考えを少なくしようと決めました。そして、そのとき私にとって必要または望ましいと思われたものをすべて、十三の徳の名のもとに含め、それぞれに短い戒めを付けて、私がその意味に与えた範囲を十分に言い表しました。 これらの徳の名と、その戒めは次のとおりです。 1. 節制。 鈍くなるまで食べるな。浮つくまで飲むな。 2. 沈黙。 他人か自分のためになることのほかは話すな。くだらない会話は避けよ。 3. 規律。 持ち物はすべて置き場所を決めよ。仕事はそれぞれの部分に時間を決めよ。 4. 決断。 なすべきことを行うと決めよ。決めたことは必ず行え。 5. 倹約。 他人か自分のためになることのほかには金を使うな。すなわち、何も無駄にするな。 6. 勤勉。 時間を失うな。いつも何か有用なことに携われ。不必要な行いはすべて断て。 7. 誠実。 人を傷つける偽りを用いるな。罪なく正しく考えよ。そして話すなら、それに従って話せ。 8. 正義。 害を加えたり、自分の務めである恩恵を怠ったりして、誰にも不正をするな。 9. 中庸。 極端を避けよ。受けた害を、それに値すると思うほどに恨むのは控えよ。 10. 清潔。 体にも、衣服にも、住まいにも、不潔を許すな。 11. 平静。 つまらないことや、ありふれた、あるいは避けられない出来事に心を乱すな。 12. 純潔。 性の交わりは、健康か子孫のためでなければめったに用いるな。決して、鈍さや弱さに至るほど、あるいは自分や他人の平穏や評判を傷つけるほどに用いるな。 13. 謙譲。 イエスとソクラテスにならえ。 私の意図はこれらの徳すべてを習慣として身につけることだったので、一度に全部を試みて注意を散らすのではなく、一度に一つの徳に注意を据え、それを自分のものにしたら次へ進み、そうして十三を一通り終えるまで続けるのがよいと判断しました。そして、先に得たいくつかが、ほかのものを得やすくするだろうから、その考えのもとに、上に並んでいるとおりの順に並べました。まず節制です。節制は、頭の冷静さと明晰さをもたらすからで、それは、絶えず用心を怠らず、昔からの習慣のやむことのない引力と、絶え間ない誘惑の力に対して守りを固めておかなければならないところでは、とても必要なものです。これを身につけ定まらせれば、沈黙はもっとたやすくなるでしょう。そして、私の望みは徳を高めると同時に知識を得ることであり、会話では知識は舌を使うことよりも耳を使うことによって得られると考え、それゆえ、つまらない仲間にしか受けない、無駄口・地口・冗談の癖に入りかけていたのを断ちたいと願って、私は沈黙を二番目に置きました。これと次の規律は、私の企てと勉強に向ける時間をもっと与えてくれるだろうと期待しました。決断は、ひとたび習慣になれば、それに続くあらゆる徳を得ようとする努力において私を揺るがずにいさせてくれるでしょう。倹約と勤勉は、私に残っていた借金から私を解き放ち、富と独立をもたらして、誠実と正義などの実践をもっとたやすくしてくれるでしょう。そこで、ピタゴラス[67]がその『黄金の詩』で勧めているのに従って、毎日の点検が必要だろうと考え、私はその点検を行うための次のような方法を考え出しました。 私は小さな帳面を作り、徳の一つずつに一頁を割り当てました。[68] 各頁には赤いインクで罫を引いて七つの列を作り、一週間の一日ごとに一列とし、それぞれの列にその日の頭文字を記しました。これらの列に十三本の赤い横線を交差させ、各行の初めに徳の一つの頭文字を記しました。そして、その行の、その日の列の中に、点検してみてその日その徳に関して犯したと分かった過ちを一つずつ、小さな黒い点で記すことができるようにしました。 [67] 紀元前 582 年ごろから 500 年ごろまで生きた、有名なギリシアの哲学者。ここで彼のものとされる『黄金の詩』は、おそらくもっと後に作られたものである。「彼がこの務めに勧める時は、夕方か寝る時ごろである。それは、一日の行いを良心の裁きで締めくくり、自分の行状の点検を神への夕べの歌とするためである」。 [68] この「小さな帳面」には 1733 年 7 月 1 日の日付がある。――W. T. F. 頁の様式。 節制。 私は、それぞれの徳に順番に一週間ずつ厳しい注意を向けることに決めました。こうして、最初の週には、私の大きな用心は、節制に反することはどんな小さなことでも避けることであり、ほかの徳はふだんの成り行きにまかせて、ただ毎晩その日の過ちを記すだけにしました。こうして、もし最初の週に、T と記した最初の行を点のないきれいなままに保てたなら、その徳の習慣はずいぶん強まり、その反対の習慣は弱まったと考えて、注意を広げて次の徳も含め、続く週には両方の行を点のないままに保とうと思い切ってもよいだろう、と考えました。こうして最後まで進めば、十三週で一巡を終え、一年で四巡できます。そして、草取りをする庭を持っている人が、悪い草を一度に全部抜こうとはせず――それでは手も力も及ばないでしょう――一度に一つの畝に取りかかり、最初の畝を片づけてから二つ目へ進むように、私も、行から次々に点を消していくことで、自分が徳において遂げた進歩を頁の上に見るという励みになる喜びを得られるだろう、そしてついには、何巡もしたのち、十三週にわたる毎日の点検のあとで、きれいな帳面を眺める幸せを得られるだろう、と願ったのです。 語釈 帯の外の語は 104 語です。★ wish'd ・ employ'd のように、 e を省いた綴りが目につきます ——★ 十八世紀の書き方です。 ★ いまの綴りに直して読んでかまいません。 語(品詞) 意味 注 B en 略 B . C .(紀元前)の B Dulness en 名 鈍さ。 dullness の古い綴り Frugality en 名 倹約 Frugality helped the young couple save enough money for a house. 倹約のおかげでその若い夫婦は家を買うのに十分なお金を貯められました。 Greek en 名 ギリシア語。また、ギリシアの(人・もの) He studied Greek for three years to read ancient philosophy. 彼は古代の哲学書を読むために三年間ギリシア語を学びました。 Jesus en 名 イエス Philippians en 名 ピリピ人への手紙 Pythagoras en 名 ピタゴラス Sincerity en 名 誠実 Her sincerity convinced the committee to approve the small loan. 彼女の誠実さは委員会にその小額の融資を承認させる決め手になりました。 Socrates en 名 ソクラテス Temperance en 名 節制 Temperance in food and drink kept him healthy well into old age. 飲食における節制は彼を老年まで健康に保ちました。 Verses en 名 詩句 The children memorized several verses from the old hymn book. 子どもたちはその古い賛美歌集からいくつもの詩句を暗唱しました。 W en 略 W . T . F .(編者の頭文字)の W accomplish'd en 動 成し遂げた。 accomplished の古い綴り accordingly en 副 それに従って The forecast predicted rain, so we planned the picnic accordingly. 予報は雨を予測していたので、私たちはそれに従ってピクニックを計画しました。 acquir'd en 動 身につけた。 acquired の古い綴り affluence en 名 富み栄えること The town's sudden affluence came from a new copper mine nearby. その町の急な富み栄えは近くの新しい銅鉱山によるものでした。 agreeably en 副 agreeably to =〜に従って The evening passed agreeably with music, food, and quiet conversation. その夜は音楽と食事、静かな会話とともに気持ちよく過ぎていきました。 allotted en 動 割り当てた Each worker was allotted a small plot of land to farm. 各労働者には耕すための小さな区画の土地が割り当てられました。 ambition en 名 望み・野心 Her greatest ambition was to become a respected surgeon someday. 彼女の一番の望みはいつか尊敬される外科医になることでした。 annex'd en 動 付け足した。 annexed の古い綴り annexed en 動 付け足した The neighboring farmland was annexed to the growing town years later. 隣の農地は何年もあとに成長するその町に付け足されました。 appetite en 名 食欲 The long hike gave the hikers a huge appetite for dinner. 長いハイキングはハイカーたちに夕食への大きな食欲を与えました。 arduous en 形 骨の折れる The climb up the icy mountain proved far more arduous than expected. その氷に覆われた山を登るのは予想よりはるかに骨の折れる作業だとわかりました。 arrang'd en 動 並べた。 arranged の古い綴り ascribed en 動 〜の作とされた The old villagers ascribed the stra